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遊戯王WW(ワンダーワールド)/4話 救世の女神 作:名無しのゴーレム



「さあ皆様、付いてきてください。」


メシアさんに案内されて、僕たちは彼女の住んでいるという教会に向かう。ちなみにナーサリーはメシアさんを見た瞬間に森の中へと駆け出した。


「メシア。さっきの子、ナーサリーとは知り合いなの?」
「はい。彼女はたまにここに立ち寄った旅人を迷わせてしまうことがあるので、そんなことの無いように監視を。……まあ、彼女には助けられることも多いのですが。」
「ふーん。俺たちの名前を知っていたのはどうしてだ? やっぱり超能力みたいなものか?」
「ええと、私の結界の中に住む方の名前は一通り頭に入っているので……」
「……『結界』?」
「ああ、勇者様はご存じありませんでしたか。その辺りの説明も私の教会で行いますので……」


それも気になるけど、やっぱり一番は……


「『勇者様』って、僕のことを言ってるんですよね。どうしてそんな風に……」
「それも後々。長い話になってしまうので……さあ、着きましたよ。」


僕たちの目の前にはやや小さめの教会があった。ここが、メシアさんの……


「どうぞ、お入りください。大したおもてなしは出来ませんが……」
「おじゃましまーす!」
「あ、マッハ! ……それでは、お邪魔するわ。」
「お、お邪魔します……」




教会の中は、僕の知っているそれと大して変わらないものだった。メシアさんに付いて僕たちはさらに中に進み、やがて小さな一室へと辿り着いた。


「ここは?」
「私の部屋です。狭くて申しわけございませんが、今からする話はあまり大っぴらに出来ることではありませんので……」


……ここが、『神様』なんて呼ばれる人の部屋? 信じられない。これなら僕の部屋と大して変わらないじゃないか。


「え? メシアともあろう人がこんな部屋に? 冗談でしょう?」


プリンセスさんも同じ疑問を持ったようだ。


「私にはこのくらいの広さがちょうどいいのですよ。そんなことよりも、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。プリンセスもいいよな。」
「……ええ、もちろん。」


まだ納得いってないようだが、渋々という風にプリンセスさんは返事をした。


「それではさっそく……まず、どこから話しましょうか。」
「なら、ユージについて話して。あなたがこの世界に連れてきたんでしょう?」
「……はい。すみません、異界の勇者様。突然このようなことに巻き込んでしまって……」
「いいえ、気にしないでください。それより、どうして僕を?」
「それは……実は現在、この世界に災いが迫っているのです。」
「災い? そんなの聞いたこと無いわよ?」
「プリンセスは私の結界の中心部に近いところに居るんでしょう。既に結界の外部付近では被害が出始めています。」
「その、災いというのは?」
「……順を追って話しましょう。今、この教会を中心に広範囲に結界を張っています。これは結界の外部に存在する『悪しきもの』を近寄らせないためのものです。ですが最近になって、彼らの力も強くなってきていて、いずれは結界を破壊してしまう恐れが出てきたのです。それゆえ……」
「……僕が呼ばれたということですか? 『異界の勇者』として。」
「はい。古い伝説にも書かれていまして……『世に暗雲立ち込めるとき、異界よりいでし勇者が世界に光をもたらす。』それを信じて、あなたを召喚したわけです。」
「……どうして、僕を?」
「あなた個人を呼び出した訳ではありません。私はただ、古来より伝わる儀式を行っただけですので……」


……つまり、『勇者』に僕が選ばれたということ? いやホント、突拍子の無さもついにここまで来たか。


「…………」
「異世界から来た勇者様からすれば、私の話は信じられないものかもしれません。しかし、これは紛れもない事実なのです。」
「……僕に何をしろと? 僕は見た目通りの非力な子供です。出来ることなんて……」
「彼らに対抗するのに力は必要ありません。あなたはデュエルモンスターズを知っていますか?」
「え? ……はい、もちろん。まさか……」
「勇者様にして頂きたいこと、それはデュエルモンスターズにて彼らを打ち負かすことなのです。」
「……嘘でしょぉ……」


そんなの、アニメの中の主人公じゃないか……


「ユージ、さっきのデュエルを見ていたでしょう? 私たちのデュエルでは絶対に相手のライフを0にはしない。何故だか分かる?」
「え、それは……」
「よく覚えておきなさい。私たちの世界ではライフが0になることは、すべての力を失うことに直結しているの。つまり……」
「……ライフが0になった者は、長い眠りに就きます。いつか再び目覚めますが、それはとても、本当に長い時間になります。ですから勇者様には、彼らの封印に力を貸して頂きたいのです。」


この世界のデュエルが、そんなに重いものだったなんて……


「……じゃあ、僕が負けても?」
「いいえ、勇者様はデュエルに敗北しても眠りに就くことはありません。それなりのダメージを負うことにはなるでしょうが……」


……つまり、僕だけが負けることを許されているのか。


「でも……」
「ユージ、勇者になれるんだぜ? あんまり怖じ気づくなって。」
「いや、そうじゃなくて……」
「……? 勇者様、どうかなさいましたか?」
「メシアさん、それが……」


とても言い出しづらい。でも、言わないわけにはいかないだろう。……よし、言うぞ……




「僕、今はデュエルディスクとデッキを持っていないんですけど……」



「「……えぇ!?」」
「……そ、そんな……」


教会の中にマッハとプリンセスさんの叫びが響き渡った。





「……どうしたものでしょうか。」
「……あの、何かすみません。」
「勇者様は気にしないでください。……そうだ、あの方なら。」
「あの方?」
「水鏡(みかがみ)様ならば、きっと力を貸してくれるはずです。」
「水鏡さん、ですか。」
「はい。水鏡様が守る『水面写しの鏡』は、それを見た者に相応しい力を授けると言われています。その力を借りれば、きっと……」
「へぇ、そんなのがあったんだ。で、その水鏡ってのはどこに?」
「それが、その……」
「メシア? どうかしたの?」
「……実は、水鏡様は世界中を旅していて、今どこに居るかは私も分からないのです。」
「そ、そんなぁ……」


それじゃあ、結局振り出しに戻っただけなんじゃ……


「しかし、水鏡様に会う方法はあります。」
「ん? 相手の居場所も分からないのに会えるのか?」
「『運命の賢者』。彼なら水鏡様の居場所へと導いて下さるでしょう。」
「運命の賢者……ねぇ。その人の居場所は分かっているんでしょうね?」
「はい。ここから北に向かったところにある、大都市『フォーチュンシティ』に居ます。」
「……あそこか。かなり広い街だったはずだが、どこに住んでいるとかは?」
「……すみません。彼も放浪癖があって、具体的にどこに居るのかまでは……」
「……結局、人探しをしなくちゃならないことには変わらないんだな。」
「申しわけありません……」
「メシアさんのせいじゃありませんよ。それじゃあ、次の目的地は……」
「フォーチュンシティね。私も行ったことないし、少し楽しみだわ。」
「プリンセス、はしゃいで迷子になるなよ?」
「ならないわよ。さあ、行き先も決まったことだし、さっさとここを出ましょうか。」
「プリンセス、マッハ。勇者様を頼みましたよ。」
「言われなくても。俺とユージはもう友達だからな。」
「この世界の危機なんでしょ? ならこれくらい当たり前よ。……それに、マッハの言う通り、友達の為だもの。」


……友達、か。訳のわからないことに巻き込まれてしまったけれど、この2人となら大丈夫かもしれない。


「……僕、うまく出来るか自信はありませんけど、メシアさんの期待に答えられるように頑張ってみます。」
「……ありがとうございます。けれど、もう駄目だと思ったらいつでも私に言ってください。いつでもあなたを元の世界に送りますから。」
「はい、ありがとうございます。……それでは。」
「行ってらっしゃいませ、勇者様。あなた方の無事をここから祈っていますから……」




「さて、じゃあ早いこと……?」


……? マッハが目を向けている先には……


「あ、ナーサリー。」
「……遊んでくれないの?」


ナーサリーが木の陰から話し掛けてきた。よっぽど遊んでほしいらしい。


「……ハァ。さっきも言ったように、私たちは急いでいるの。だから……」
「次に来るときは必ず遊ぶよ。それで許してくれない?」
「ちょっと、ユージ……」
「……約束してくれる?」
「うん。絶対、またここに来るからね。」
「……分かった。」


……良かった。


「それじゃあ、またね。」
「……ん、バイバイ!」




「ねぇユージ、さっきは何であんなことを?」
「……ナーサリーは、ずっとこの森に居るんですよね。さっき彼女が、『久し振りのお客さん』って言ってたのを思い出したんです。こんなところでメシアさんと2人っきりっていうのは、どれだけ寂しいのかなと思うと、つい……」
「……優しいな、ユージは。」
「ただのお人好しよ。……でも、ユージの言う通りだわ。ここに戻ってきたらあの子と遊んであげましょう。」




メシアさんとナーサリーの見送りを受けて、僕たちは森を後にした。そして、僕の知っている理屈の通用しない、不思議の世界での冒険が、本当の意味で始まりを迎えたのだった。
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ター坊
絵本を読んでるような読みやすさと分かりやすさが良かったです。
それにしてもここからが冒険のスタートなのですね。運命の賢者や水鏡さんに会えるのか? (2015-07-27 08:32)
名無しのゴーレム
ター坊さん、コメントありがとうございます。
この企画にはこれくらい分かりやすい設定の方が合っていると思いまして。これならいくらでも寄り道出来ますしね。読みやすいと言っていただけて嬉しいです!
次から本格的にユージたちの冒険が始まります。水鏡様はまんまにしても、運命の賢者とは一体何者なのか? 予想しながら続きを待って頂けると幸いです。 (2015-07-27 09:44)

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