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30:ルナ、またまたデュエルします! 作:ほーがん
第30話「ルナ、またまたデュエルします!」
ルナは海岸沿いを離れ、街中へと戻っていた。
「遊牙があんな風に思ってたなんて・・・えへへ。」
にやけながら歩くルナ。その時、後方から声を掛けられた。
「ちょっと待って。」
ハッとして、ルナは足を止める。振り返ったそこには、見覚えのある姿があった。
「ふふふ、あなたもバトルロイヤルに参加してるんでしょ?」
「そ、そうだけど・・・。ってなんで街中で水着なの・・・?」
その人物、海藤奈々はビーチに居た時と変わらぬ白いビキニ姿で立っていた。
「だって今日暑いじゃない?それに見せたって減るものじゃないし、いいでしょ?」
ルナは複雑な心境で言う。
「うーん、いいのかなぁ・・・?」
奈々はルナにぐいっと顔を寄せた。
「ふーん、あなたが遊牙君のねぇ~・・・うふふ。」
含みのある笑みを浮かべる奈々。
「わ、私に何か用なの?」
ルナの問いに奈々は顔を上げる。
「遊牙君のハートを射止めた彼女が、どんな腕前なのか気になっちゃって。お相手願えるかしら?」
奈々の言葉にルナは顔を赤くした。
「いいい、射止めた!?それに、私はまだ・・・彼女じゃないし・・・。」
「あら、”まだ”ってことは予定があるの?」
からかうように笑う奈々に、ルナは首を横にぶんぶん振った。
「ちが、いや、ちが・・・くはないかも・・で、でも!今はいいの!!」
奈々は笑って言う。
「うふふ、可愛いわね。けど、可愛いからってデュエルは手加減しないわよ。」
「手加減なんていらないもん!」
ルナは頬を膨らませる。
「それじゃ、本当に全力で行っちゃうわよ!ポイントは30でどうかしら?」
「それでいいよ!負けないんだから!」
奈々は心の中で呟く。
「(お手並み拝見ね、遊牙君の彼女さん。)」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのは奈々。
「先攻は貰うわ!私のターン!手札からフィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》を発動!」
道路の真ん中に立っていた二人の周りが、一気に美しいサンゴ礁へと変貌する。
「ううっ・・・やっぱり苦しくなりそう・・。」
ルナは周りを見渡し呟く。奈々はさらに手札のカードを取り出した。
「さらに私は《グレートブルー・サウザンドニードル(☆4/闇/海竜/1900・1200)》を召喚!」
サンゴ礁のフィールドに体表に無数の棘を持った巨大魚が出現する。
「この瞬間、《グレートブルー・サウザンドニードル》の効果発動!通常召喚したこのモンスターは、召喚直後に破壊される!」
「ええっ!?」
巨大魚は棘を突き立て、暴れ回りながら爆散した。
「どういうこと・・・?」
困惑するルナ。しかし、奈々は笑って言った。
「それはね、こういう事よ!フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの「グレートブルー」モンスターが破壊された時、デッキからレベル4以下の「グレートブルー」モンスターを特殊召喚できる!私はデッキから《グレートブルー・スピアー(☆3/水/海竜/0・2000)》を特殊召喚!」
鋭い嘴を持った細長い海竜が、うねりながらサンゴ礁を泳ぎ回る。
「《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果で攻撃力500アップ!(ATK0→500)そして、《グレートブルー・スピアー》の効果発動!このモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地からレベル4以下の「グレートブルー」モンスターを守備表示で特殊召喚できる!戻って来なさい!《グレートブルー・サウザンドニードル》!」
棘を持つ巨大魚は仲間の力を受け復活する。
「そして、特殊召喚に成功した《グレートブルー・サウザンドニードル》の効果発動!私はデッキからあるカードを1枚、手札に加える事ができる!そのカードは・・・。」
デッキから迫り出したカードを、奈々はウィンクしてルナに見せた。
「魔法カード《グレートブルー・フュージョン》!」
ルナは身構える。
「あのカードは確か・・・!」
奈々は笑って、そのカードをD・ディスクにセットした。
「さぁイクわよ!魔法カード《グレートブルー・フュージョン》発動!フィールドの《グレートブルー・サウザンドニードル》と《グレートブルー・スピアー》を融合!」
2体の海竜は、神秘の渦に溶け込みその姿を変えて行く。
「陽の光届かぬ深淵に眠る海の王者よ!怒濤の荒波を引き連れ、今こそ姿を現せ!融合召喚!来ちゃいなさい!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン(☆6/水/海竜/融合/2500・2300)》!!」
その長い身体をうねらせ、絶海の王者は鋭い牙を光らせた。
「フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果で、その攻撃力は500アップ!(ATK2500→3000)」
「攻撃力3000・・・!ま、負けないんだから!」
ルナの額に汗が伝う。奈々はいたずらっぽく笑い、手札のカードを取り出した。
「私はカードを1枚セットしてターンエンド!さぁ、あなたの力みせてくれるかしら?」
ルナはデッキに手を伸ばした。
「頑張れ、私・・・!ドロー!」
引いたカードを確認し、ルナは手札とにらめっこする。
「えっと、私は手札から《フレグランス・アーチャー(☆4/風/植物/1500・800)》を召喚!」
弓矢を携えた花の妖精は、ルナの前に降り立った。
「それから《フレグランス・ダンサー(☆4/風/植物/1800・1300)》を特殊召喚!このモンスターは自分フィールドに「フレグランス」モンスターが居る時、手札から特殊召喚できる!」
妖艶に舞いながら、妖精はフィールドに躍り出た。
「私は《フレグランス・アーチャー》の効果発動!自分フィールドに他の「フレグランス」モンスターが存在する時、1ターンに1度、相手モンスター1体を破壊できる!私は《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を破壊する!」
妖精は弦を引き絞り狙いを定める。弦を持つ手を放したと同時に、水中を切り裂きながら鋭い矢が飛び出した。しかし。
「私は墓地の《グレートブルー・フュージョン》の効果発動!自分の「グレートブルー」モンスターが効果対象になった時、墓地のこのカードを除外する事でその効果を無効にできる!」
矢は海竜の直前で消える。ルナは悔しそうな顔をした。
「ああ!もうちょっとだったのに・・・!でも、まだ出来ることはある!私はレベル4の《フレグランス・アーチャー》と《フレグランス・ダンサー》でオーバーレイ!」
二人の妖精は手をつなぎ、光の渦へ飛び込んで行く。
「月光に冴える可憐な花よ!奇術を振るい、幸せの香りを運べ!エクシーズ召喚!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー(★4/風/植物/エクシーズ/2100・500)》!!」
シルクハットとステッキを身につけた奇術師は、笑顔を振り撒きフィールドに舞い降りた。
「へぇ、エクシーズ召喚ねぇ。面白いじゃない?」
興味深そうに奈々は呟く。
「この大会に出る為に、皆から教わったの!私は《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、相手の手札を1枚捨てさせる!そして捨てさせたカードがモンスターカードだった場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力分アップする!」
奇術師はウィンクしてステッキを振るい、香りの風を巻き起こした。その風が奈々の手札を吹き飛ばす。
「私が捨てたカードは《グレートブルー・ギャング(☆4/水/海竜/2000・400)》。当りね、やるじゃない!」
ルナは飛び上がってはしゃぐ。
「やったぁ!これで《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の攻撃力は2000アップ!(ATK2100→4100)」
そして、ルナは奈々のフィールドを泳ぐ海竜を指差した。
「バトルします!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》で《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を攻撃!『フローラル・マジック』!!」
奇術師は宙に飛び上がると、ハットを投げた。回転しながら進むハットはやがて香りの竜巻となって、絶海の王を巻き込んだ。
「私の《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》は戦闘で破壊されないわ!」
「でも、ダメージは通るもん!」
奈々は竜巻の余波を受け、たじろいだ。
「うっ・・!(LP4000→2900)でも、この瞬間、《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》の効果が発動するわ!自分がダメージを受けた時、このカードの攻撃力は受けたダメージ分アップする!(ATK3000→4100)」
ルナは手札のカードを取り出した。
「私はカードを2枚セットして、ターンエンド!ターンの終わりに《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の攻撃力は元に戻ります。(ATK4100→2100)」
奈々はデッキからカードを引いた。
「私のターン!ふふふ、ルナちゃん。さっきの攻撃は間違いだったわね!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》の効果発動!」
その言葉と共に絶海の王は怒号を上げる。
「1ターンに1度、このモンスターの攻撃力を1000下げる事で、相手モンスター1体を破壊できる!私はこの効果で《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》を破壊!(ATK4100→3100)」
奇術師は絶海の王が放った衝撃波を受け、耐えきれずに吹き飛んだ。
「そんな・・・!私のモンスターが・・!」
「ショックを受けてられるのも今のうちよ!バトル!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》でダイレクトアタック!」
奈々の命令を受け、絶海の王は身体をくねらせ突撃する。ルナは慌てて言った。
「えっと、えっと、これだ!罠カード発動!《緊急増草》!自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキからレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚できる!」
しかし、それに合わせて奈々のフィールドでカードが開く。
「甘いわね!カウンター罠《絶海の渦潮》発動!自分フィールドに「グレートブルー」モンスターが存在する時、相手が発動した魔法・罠カードを無効にして破壊する!」
「そんな!」
ルナの発動した罠カードは渦潮に飲まれて消える。その渦潮が止んだそこには、絶海の王の牙が光っていた。
「きゃああぁっ!!(LP4000→900)」
ダメージによろめき、ルナはへたり込んだ。
「このくらいで音を上げちゃうの?まだまだよ!速攻魔法《グレートブルー・タイダルストーム》発動!自分フィールドの「グレートブルー」モンスターが相手に2000以上の戦闘ダメージを与えた時、その「グレートブルー」モンスターを破壊することで、デッキから破壊したモンスターのレベルと等しいレベルになるように「グレートブルー」モンスターを、効果を無効にして特殊召喚できる!」
魔法カードの発動により、奈々のデッキからカードが迫り出す。
「私は《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を破壊して、デッキから2体の《グレートブルー・ハンター(☆3/水/海竜/2000・200)》を特殊召喚!《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果を受け、それぞれ攻撃力は500アップね♪(ATK2000→2500)」
絶海の王が消え、奈々の前に2体の獰猛な捕食者が現れた。
「さ・ら・に!「グレートブルー」モンスターが破壊された事で、フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果発動!デッキから《グレートブルー・ギャング》を特殊召喚!もちろん攻撃力500アップ!(ATK2000→2500)」
3体の海竜は威圧するようにルナを取り囲んだ。
「ふぇえ・・・こ、怖いよ遊牙・・・。」
涙目になりながらルナは3体の海竜を見つめる。
「終わりね!《グレートブルー・ギャング》でダイレクトアタック!」
絶海のギャングは飛び出し、ルナに向かって大口を開けた。
「私は、負けないもん・・・!罠カード《フレグランス・イリュージョン》発動!」
ルナのフィールドでカードが開き、ギャングの動きが止まる。
「このカードは、自分のライフポイント以上の攻撃力を持つ相手モンスターが攻撃してきた時に発動できる!その攻撃を無効にして、墓地の「フレグランス」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する!戻って来て!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》!」
奇術師はステッキを振るい、フィールドに舞い戻った。
「この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、相手の効果を受けず戦闘で破壊されない!」
しかし、奈々は笑って言った。
「でも、ダメージは受けるのよね?私は残りの《グレートブルー・ハンター》で《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》を攻撃!!」
飛び出した2体のハンターは長い尾をしならせ、衝撃波を飛ばした。その波は奇術師を飛び越えルナを襲う。
「ああっ!!(LP900→500→100)」
ルナは両膝をついた。奈々は得意げに言う。
「バトルした《グレートブルー・ハンター》は本来、その後に破壊される。だけど《グレートブルー・タイダルストーム》によって、その効果は無効になってるわ!よって《グレートブルー・ハンター》は破壊されることなく私の元に残る!私はこれでターンエンド。さぁ、どうするルナちゃん?残りライフポイント100で巻き返せるかしら?」
ルナは立ち上がって、デッキに手を伸ばした。
「私が勝ったら遊牙が喜んでくれる・・・そんな遊牙を見ると、私も嬉しくなるの。」
その言葉に奈々は呟く。
「急にノロケ話?最近の娘はストレートなのね〜。」
ルナは赤面する。その赤面した顔のまま、ルナは言った。
「だって、私・・・ゆ、遊牙の事・・・す、す・・・き・・・だ、だから!遊牙の喜ぶ顔が見たいの!それが私の幸せなんだから!私のターン!!」
勢いよく引かれるカード。そのカードを確認し、ルナは笑った。
「私は・・・負けないんだから!私は《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》でオーバーレイネットワークを再構築!」
奇術師は笑顔で光の渦へ飛び込んだ。
「気高き花よ!幸せの香りを振りまき、愛する人を守り抜け!エクシーズ召喚!咲き誇れ!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト(★5/風/植物/エクシーズ/2600・1700)》
薔薇の甲冑に身を包んだ妖精の騎士は、舞い散る花びらの中からその姿を現した。
「ど、どういうこと!?エクシーズ召喚には対応するレベルのモンスターが必要なはず・・・!」
驚く奈々にルナは得意げに説明する。
「ふふーん!私の《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》は、オーバーレイユニットを持ってないランク4の「フレグランス」モンスターに重ねてエクシーズ召喚できるんだよ!」
奈々は笑う。
「へぇ〜、エクシーズはそんな召喚方法があるんだ。融合にもそういうの欲しいなぁ〜。」
ルナは笑って手札のカードを取り出した。
「まだまだ行くよ!魔法カード《フレグランス・スピリッツ》発動!自分フィールドの「フレグランス」モンスター1体を選択して、墓地からレベル4以下の植物族モンスターを除外する!私は《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》を選択して、墓地から《フレグランス・ダンサー》を除外!」
墓地から迫り出したカードを取り、ルナは言葉を続けた。
「このターン、選択したモンスター以外は攻撃できない代わりに、そのモンスターの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分アップする!(ATK2600→4400)」
「こ、攻撃力4400・・・!」
奈々は思わず身構えた。
「さらに!このターン《フレグランス・スピリッツ》の効果を受けたモンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない!これで《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果は使えない!」
「そして!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分フィールドの「フレグランス」モンスター1体は2回攻撃できる!」
その言葉に奈々は驚愕する。
「まさか本当に巻き返してくるなんて・・・!やっぱりこれが、愛の力なのね・・・。」
ルナは奈々の前を泳ぐハンターを指差した。
「行っくよー!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》で《グレートブルー・ハンター》を攻撃!」
水中を切り裂くように飛び出した花の騎士は、その手に携えた長剣を突き出しハンターを貫いた。
「ぐっ!!(LP2900→1000)」
「もう一回!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》で、2体目の《グレートブルー・ハンター》を攻撃!!『スイートローズ・フルーレ』!!」
花の騎士は身体を半回転させ、もう一体のハンターに剣を突き立て一気に突き抜けた。
「ふふふ、面白いカップルね。あなたたち。(LP1000→0)」
奈々は笑って膝をついた。
『勝者:ルナ』
奈々は立ち上がりルナの両肩に手を置いた。
「これから先、愛する二人にはきっと様々な困難が訪れるわ。」
ルナはドキッとして首を振る。
「あ、愛する二人って・・・!まだ、そんなんじゃないんだけど・・・。」
奈々は構わず言葉を続ける。
「でも、その困難に屈しちゃだめよ。あなたが本当に遊牙君の彼女なら、どんな困難も笑顔で乗り越えなくちゃ!」
「だ、だから!私、彼女じゃないってばぁ!」
ルナは顔を真っ赤にして、訂正する。奈々はわらって言った。
「うふふ、いずれそうなるわよ。あなたが遊牙君を放さない限りね。あの子結構かわいい顔してるから、ボケッとしてると誰かに取られちゃうわよ?」
その言葉にルナは慌てる。
「遊牙が・・他の人に・・・!」
奈々はルナの左手を取り、D・ディスクのリーダーを読み込ませた。
「ま、あの子はあなたにゾッコンだから心配ないと思うけどね♪」
「ぞ、ぞっこん・・・って何?」
ルナの言葉に奈々はボソッと呟く。
「さ、最近の子には通じないのね・・・。まぁ、いいわ。それじゃあね!遊牙君によろしく!」
そう言うと奈々は来た道へ歩き去って行った。
「遊牙・・・。」
ルナはD・ディスクに取り付けられた連絡機能を起動した。
D・ディスクを腕から外し、耳に当てる。しばらくすると聞き慣れた声が聞こえた。
『ルナか。どうした、何かあったのか?』
「・・・。」
ルナは黙り込み、その場に立ち尽くす。
『ルナ、何かあったのか。今どこにいる?』
しばらくの沈黙の後、ルナは小さく口を開いた。
「・・・好きだよ。」
通信を切り、ルナは耳からD・ディスクを外した。そして途端に顔を赤くし、その場にしゃがみ込んだ。
「(な、何してるの私ー!!!)」
遊牙はD・ディスクを耳から外し呟く。
「最後、ノイズが入って聞き取れなかった・・・ルナ、なんて言ったんだ・・・?」
同時刻。木嶋は街中の見回りをしていた。
「トラブルは無しか・・・。とりあえず今日は順調っぽいな。」
周りを見渡す。木嶋が歩いている場所は、瓦礫の撤去作業がまだ終わっていない区域だった。
「ここら辺もしっかり整備しねぇとな。帰ったらリチャードに言ってやらなきゃ。」
その時。
「な、なんだ!?」
轟音と共に瓦礫の向こうから何かの影が飛び出した。
その影は火花を散らし、木嶋の前に止まる。思わず目を瞑った木嶋は、ゆっくりと目を開けた。そしてようやく、そこに現れたものが2つの車輪を持った乗り物らしき物体だと気づいた。
その赤いボディの乗り物に乗る人物は、ヘルメットを外し木嶋に向かって口を開いた。
「そこのお前、訊ねたい事がある。」
次回第31話「光差す道となれ!スターダスト・ワイバーン」
ルナは海岸沿いを離れ、街中へと戻っていた。
「遊牙があんな風に思ってたなんて・・・えへへ。」
にやけながら歩くルナ。その時、後方から声を掛けられた。
「ちょっと待って。」
ハッとして、ルナは足を止める。振り返ったそこには、見覚えのある姿があった。
「ふふふ、あなたもバトルロイヤルに参加してるんでしょ?」
「そ、そうだけど・・・。ってなんで街中で水着なの・・・?」
その人物、海藤奈々はビーチに居た時と変わらぬ白いビキニ姿で立っていた。
「だって今日暑いじゃない?それに見せたって減るものじゃないし、いいでしょ?」
ルナは複雑な心境で言う。
「うーん、いいのかなぁ・・・?」
奈々はルナにぐいっと顔を寄せた。
「ふーん、あなたが遊牙君のねぇ~・・・うふふ。」
含みのある笑みを浮かべる奈々。
「わ、私に何か用なの?」
ルナの問いに奈々は顔を上げる。
「遊牙君のハートを射止めた彼女が、どんな腕前なのか気になっちゃって。お相手願えるかしら?」
奈々の言葉にルナは顔を赤くした。
「いいい、射止めた!?それに、私はまだ・・・彼女じゃないし・・・。」
「あら、”まだ”ってことは予定があるの?」
からかうように笑う奈々に、ルナは首を横にぶんぶん振った。
「ちが、いや、ちが・・・くはないかも・・で、でも!今はいいの!!」
奈々は笑って言う。
「うふふ、可愛いわね。けど、可愛いからってデュエルは手加減しないわよ。」
「手加減なんていらないもん!」
ルナは頬を膨らませる。
「それじゃ、本当に全力で行っちゃうわよ!ポイントは30でどうかしら?」
「それでいいよ!負けないんだから!」
奈々は心の中で呟く。
「(お手並み拝見ね、遊牙君の彼女さん。)」
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのは奈々。
「先攻は貰うわ!私のターン!手札からフィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》を発動!」
道路の真ん中に立っていた二人の周りが、一気に美しいサンゴ礁へと変貌する。
「ううっ・・・やっぱり苦しくなりそう・・。」
ルナは周りを見渡し呟く。奈々はさらに手札のカードを取り出した。
「さらに私は《グレートブルー・サウザンドニードル(☆4/闇/海竜/1900・1200)》を召喚!」
サンゴ礁のフィールドに体表に無数の棘を持った巨大魚が出現する。
「この瞬間、《グレートブルー・サウザンドニードル》の効果発動!通常召喚したこのモンスターは、召喚直後に破壊される!」
「ええっ!?」
巨大魚は棘を突き立て、暴れ回りながら爆散した。
「どういうこと・・・?」
困惑するルナ。しかし、奈々は笑って言った。
「それはね、こういう事よ!フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの「グレートブルー」モンスターが破壊された時、デッキからレベル4以下の「グレートブルー」モンスターを特殊召喚できる!私はデッキから《グレートブルー・スピアー(☆3/水/海竜/0・2000)》を特殊召喚!」
鋭い嘴を持った細長い海竜が、うねりながらサンゴ礁を泳ぎ回る。
「《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果で攻撃力500アップ!(ATK0→500)そして、《グレートブルー・スピアー》の効果発動!このモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地からレベル4以下の「グレートブルー」モンスターを守備表示で特殊召喚できる!戻って来なさい!《グレートブルー・サウザンドニードル》!」
棘を持つ巨大魚は仲間の力を受け復活する。
「そして、特殊召喚に成功した《グレートブルー・サウザンドニードル》の効果発動!私はデッキからあるカードを1枚、手札に加える事ができる!そのカードは・・・。」
デッキから迫り出したカードを、奈々はウィンクしてルナに見せた。
「魔法カード《グレートブルー・フュージョン》!」
ルナは身構える。
「あのカードは確か・・・!」
奈々は笑って、そのカードをD・ディスクにセットした。
「さぁイクわよ!魔法カード《グレートブルー・フュージョン》発動!フィールドの《グレートブルー・サウザンドニードル》と《グレートブルー・スピアー》を融合!」
2体の海竜は、神秘の渦に溶け込みその姿を変えて行く。
「陽の光届かぬ深淵に眠る海の王者よ!怒濤の荒波を引き連れ、今こそ姿を現せ!融合召喚!来ちゃいなさい!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン(☆6/水/海竜/融合/2500・2300)》!!」
その長い身体をうねらせ、絶海の王者は鋭い牙を光らせた。
「フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果で、その攻撃力は500アップ!(ATK2500→3000)」
「攻撃力3000・・・!ま、負けないんだから!」
ルナの額に汗が伝う。奈々はいたずらっぽく笑い、手札のカードを取り出した。
「私はカードを1枚セットしてターンエンド!さぁ、あなたの力みせてくれるかしら?」
ルナはデッキに手を伸ばした。
「頑張れ、私・・・!ドロー!」
引いたカードを確認し、ルナは手札とにらめっこする。
「えっと、私は手札から《フレグランス・アーチャー(☆4/風/植物/1500・800)》を召喚!」
弓矢を携えた花の妖精は、ルナの前に降り立った。
「それから《フレグランス・ダンサー(☆4/風/植物/1800・1300)》を特殊召喚!このモンスターは自分フィールドに「フレグランス」モンスターが居る時、手札から特殊召喚できる!」
妖艶に舞いながら、妖精はフィールドに躍り出た。
「私は《フレグランス・アーチャー》の効果発動!自分フィールドに他の「フレグランス」モンスターが存在する時、1ターンに1度、相手モンスター1体を破壊できる!私は《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を破壊する!」
妖精は弦を引き絞り狙いを定める。弦を持つ手を放したと同時に、水中を切り裂きながら鋭い矢が飛び出した。しかし。
「私は墓地の《グレートブルー・フュージョン》の効果発動!自分の「グレートブルー」モンスターが効果対象になった時、墓地のこのカードを除外する事でその効果を無効にできる!」
矢は海竜の直前で消える。ルナは悔しそうな顔をした。
「ああ!もうちょっとだったのに・・・!でも、まだ出来ることはある!私はレベル4の《フレグランス・アーチャー》と《フレグランス・ダンサー》でオーバーレイ!」
二人の妖精は手をつなぎ、光の渦へ飛び込んで行く。
「月光に冴える可憐な花よ!奇術を振るい、幸せの香りを運べ!エクシーズ召喚!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー(★4/風/植物/エクシーズ/2100・500)》!!」
シルクハットとステッキを身につけた奇術師は、笑顔を振り撒きフィールドに舞い降りた。
「へぇ、エクシーズ召喚ねぇ。面白いじゃない?」
興味深そうに奈々は呟く。
「この大会に出る為に、皆から教わったの!私は《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、相手の手札を1枚捨てさせる!そして捨てさせたカードがモンスターカードだった場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力分アップする!」
奇術師はウィンクしてステッキを振るい、香りの風を巻き起こした。その風が奈々の手札を吹き飛ばす。
「私が捨てたカードは《グレートブルー・ギャング(☆4/水/海竜/2000・400)》。当りね、やるじゃない!」
ルナは飛び上がってはしゃぐ。
「やったぁ!これで《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の攻撃力は2000アップ!(ATK2100→4100)」
そして、ルナは奈々のフィールドを泳ぐ海竜を指差した。
「バトルします!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》で《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を攻撃!『フローラル・マジック』!!」
奇術師は宙に飛び上がると、ハットを投げた。回転しながら進むハットはやがて香りの竜巻となって、絶海の王を巻き込んだ。
「私の《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》は戦闘で破壊されないわ!」
「でも、ダメージは通るもん!」
奈々は竜巻の余波を受け、たじろいだ。
「うっ・・!(LP4000→2900)でも、この瞬間、《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》の効果が発動するわ!自分がダメージを受けた時、このカードの攻撃力は受けたダメージ分アップする!(ATK3000→4100)」
ルナは手札のカードを取り出した。
「私はカードを2枚セットして、ターンエンド!ターンの終わりに《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》の攻撃力は元に戻ります。(ATK4100→2100)」
奈々はデッキからカードを引いた。
「私のターン!ふふふ、ルナちゃん。さっきの攻撃は間違いだったわね!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》の効果発動!」
その言葉と共に絶海の王は怒号を上げる。
「1ターンに1度、このモンスターの攻撃力を1000下げる事で、相手モンスター1体を破壊できる!私はこの効果で《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》を破壊!(ATK4100→3100)」
奇術師は絶海の王が放った衝撃波を受け、耐えきれずに吹き飛んだ。
「そんな・・・!私のモンスターが・・!」
「ショックを受けてられるのも今のうちよ!バトル!《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》でダイレクトアタック!」
奈々の命令を受け、絶海の王は身体をくねらせ突撃する。ルナは慌てて言った。
「えっと、えっと、これだ!罠カード発動!《緊急増草》!自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキからレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚できる!」
しかし、それに合わせて奈々のフィールドでカードが開く。
「甘いわね!カウンター罠《絶海の渦潮》発動!自分フィールドに「グレートブルー」モンスターが存在する時、相手が発動した魔法・罠カードを無効にして破壊する!」
「そんな!」
ルナの発動した罠カードは渦潮に飲まれて消える。その渦潮が止んだそこには、絶海の王の牙が光っていた。
「きゃああぁっ!!(LP4000→900)」
ダメージによろめき、ルナはへたり込んだ。
「このくらいで音を上げちゃうの?まだまだよ!速攻魔法《グレートブルー・タイダルストーム》発動!自分フィールドの「グレートブルー」モンスターが相手に2000以上の戦闘ダメージを与えた時、その「グレートブルー」モンスターを破壊することで、デッキから破壊したモンスターのレベルと等しいレベルになるように「グレートブルー」モンスターを、効果を無効にして特殊召喚できる!」
魔法カードの発動により、奈々のデッキからカードが迫り出す。
「私は《グレートブルーR・ネプチュヌスドラグーン》を破壊して、デッキから2体の《グレートブルー・ハンター(☆3/水/海竜/2000・200)》を特殊召喚!《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果を受け、それぞれ攻撃力は500アップね♪(ATK2000→2500)」
絶海の王が消え、奈々の前に2体の獰猛な捕食者が現れた。
「さ・ら・に!「グレートブルー」モンスターが破壊された事で、フィールド魔法《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果発動!デッキから《グレートブルー・ギャング》を特殊召喚!もちろん攻撃力500アップ!(ATK2000→2500)」
3体の海竜は威圧するようにルナを取り囲んだ。
「ふぇえ・・・こ、怖いよ遊牙・・・。」
涙目になりながらルナは3体の海竜を見つめる。
「終わりね!《グレートブルー・ギャング》でダイレクトアタック!」
絶海のギャングは飛び出し、ルナに向かって大口を開けた。
「私は、負けないもん・・・!罠カード《フレグランス・イリュージョン》発動!」
ルナのフィールドでカードが開き、ギャングの動きが止まる。
「このカードは、自分のライフポイント以上の攻撃力を持つ相手モンスターが攻撃してきた時に発動できる!その攻撃を無効にして、墓地の「フレグランス」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する!戻って来て!《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》!」
奇術師はステッキを振るい、フィールドに舞い戻った。
「この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、相手の効果を受けず戦闘で破壊されない!」
しかし、奈々は笑って言った。
「でも、ダメージは受けるのよね?私は残りの《グレートブルー・ハンター》で《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》を攻撃!!」
飛び出した2体のハンターは長い尾をしならせ、衝撃波を飛ばした。その波は奇術師を飛び越えルナを襲う。
「ああっ!!(LP900→500→100)」
ルナは両膝をついた。奈々は得意げに言う。
「バトルした《グレートブルー・ハンター》は本来、その後に破壊される。だけど《グレートブルー・タイダルストーム》によって、その効果は無効になってるわ!よって《グレートブルー・ハンター》は破壊されることなく私の元に残る!私はこれでターンエンド。さぁ、どうするルナちゃん?残りライフポイント100で巻き返せるかしら?」
ルナは立ち上がって、デッキに手を伸ばした。
「私が勝ったら遊牙が喜んでくれる・・・そんな遊牙を見ると、私も嬉しくなるの。」
その言葉に奈々は呟く。
「急にノロケ話?最近の娘はストレートなのね〜。」
ルナは赤面する。その赤面した顔のまま、ルナは言った。
「だって、私・・・ゆ、遊牙の事・・・す、す・・・き・・・だ、だから!遊牙の喜ぶ顔が見たいの!それが私の幸せなんだから!私のターン!!」
勢いよく引かれるカード。そのカードを確認し、ルナは笑った。
「私は・・・負けないんだから!私は《月華の奇術師 フレグランス・ソーサラー》でオーバーレイネットワークを再構築!」
奇術師は笑顔で光の渦へ飛び込んだ。
「気高き花よ!幸せの香りを振りまき、愛する人を守り抜け!エクシーズ召喚!咲き誇れ!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト(★5/風/植物/エクシーズ/2600・1700)》
薔薇の甲冑に身を包んだ妖精の騎士は、舞い散る花びらの中からその姿を現した。
「ど、どういうこと!?エクシーズ召喚には対応するレベルのモンスターが必要なはず・・・!」
驚く奈々にルナは得意げに説明する。
「ふふーん!私の《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》は、オーバーレイユニットを持ってないランク4の「フレグランス」モンスターに重ねてエクシーズ召喚できるんだよ!」
奈々は笑う。
「へぇ〜、エクシーズはそんな召喚方法があるんだ。融合にもそういうの欲しいなぁ〜。」
ルナは笑って手札のカードを取り出した。
「まだまだ行くよ!魔法カード《フレグランス・スピリッツ》発動!自分フィールドの「フレグランス」モンスター1体を選択して、墓地からレベル4以下の植物族モンスターを除外する!私は《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》を選択して、墓地から《フレグランス・ダンサー》を除外!」
墓地から迫り出したカードを取り、ルナは言葉を続けた。
「このターン、選択したモンスター以外は攻撃できない代わりに、そのモンスターの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分アップする!(ATK2600→4400)」
「こ、攻撃力4400・・・!」
奈々は思わず身構えた。
「さらに!このターン《フレグランス・スピリッツ》の効果を受けたモンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない!これで《グレートブルー・コーラルリーフ》の効果は使えない!」
「そして!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で、自分フィールドの「フレグランス」モンスター1体は2回攻撃できる!」
その言葉に奈々は驚愕する。
「まさか本当に巻き返してくるなんて・・・!やっぱりこれが、愛の力なのね・・・。」
ルナは奈々の前を泳ぐハンターを指差した。
「行っくよー!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》で《グレートブルー・ハンター》を攻撃!」
水中を切り裂くように飛び出した花の騎士は、その手に携えた長剣を突き出しハンターを貫いた。
「ぐっ!!(LP2900→1000)」
「もう一回!《月華の花騎士 フレグランス・ナイト》で、2体目の《グレートブルー・ハンター》を攻撃!!『スイートローズ・フルーレ』!!」
花の騎士は身体を半回転させ、もう一体のハンターに剣を突き立て一気に突き抜けた。
「ふふふ、面白いカップルね。あなたたち。(LP1000→0)」
奈々は笑って膝をついた。
『勝者:ルナ』
奈々は立ち上がりルナの両肩に手を置いた。
「これから先、愛する二人にはきっと様々な困難が訪れるわ。」
ルナはドキッとして首を振る。
「あ、愛する二人って・・・!まだ、そんなんじゃないんだけど・・・。」
奈々は構わず言葉を続ける。
「でも、その困難に屈しちゃだめよ。あなたが本当に遊牙君の彼女なら、どんな困難も笑顔で乗り越えなくちゃ!」
「だ、だから!私、彼女じゃないってばぁ!」
ルナは顔を真っ赤にして、訂正する。奈々はわらって言った。
「うふふ、いずれそうなるわよ。あなたが遊牙君を放さない限りね。あの子結構かわいい顔してるから、ボケッとしてると誰かに取られちゃうわよ?」
その言葉にルナは慌てる。
「遊牙が・・他の人に・・・!」
奈々はルナの左手を取り、D・ディスクのリーダーを読み込ませた。
「ま、あの子はあなたにゾッコンだから心配ないと思うけどね♪」
「ぞ、ぞっこん・・・って何?」
ルナの言葉に奈々はボソッと呟く。
「さ、最近の子には通じないのね・・・。まぁ、いいわ。それじゃあね!遊牙君によろしく!」
そう言うと奈々は来た道へ歩き去って行った。
「遊牙・・・。」
ルナはD・ディスクに取り付けられた連絡機能を起動した。
D・ディスクを腕から外し、耳に当てる。しばらくすると聞き慣れた声が聞こえた。
『ルナか。どうした、何かあったのか?』
「・・・。」
ルナは黙り込み、その場に立ち尽くす。
『ルナ、何かあったのか。今どこにいる?』
しばらくの沈黙の後、ルナは小さく口を開いた。
「・・・好きだよ。」
通信を切り、ルナは耳からD・ディスクを外した。そして途端に顔を赤くし、その場にしゃがみ込んだ。
「(な、何してるの私ー!!!)」
遊牙はD・ディスクを耳から外し呟く。
「最後、ノイズが入って聞き取れなかった・・・ルナ、なんて言ったんだ・・・?」
同時刻。木嶋は街中の見回りをしていた。
「トラブルは無しか・・・。とりあえず今日は順調っぽいな。」
周りを見渡す。木嶋が歩いている場所は、瓦礫の撤去作業がまだ終わっていない区域だった。
「ここら辺もしっかり整備しねぇとな。帰ったらリチャードに言ってやらなきゃ。」
その時。
「な、なんだ!?」
轟音と共に瓦礫の向こうから何かの影が飛び出した。
その影は火花を散らし、木嶋の前に止まる。思わず目を瞑った木嶋は、ゆっくりと目を開けた。そしてようやく、そこに現れたものが2つの車輪を持った乗り物らしき物体だと気づいた。
その赤いボディの乗り物に乗る人物は、ヘルメットを外し木嶋に向かって口を開いた。
「そこのお前、訊ねたい事がある。」
次回第31話「光差す道となれ!スターダスト・ワイバーン」
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>ター坊さん
これからもルナちゃんと動向にご注目ください(笑)
次回は、”彼”ではないんですがよく似た人物が登場します。お読みいただけたら嬉しく思います。
>ギガプラントさん
可愛く書けるようにこれからも努力いたします。
次回のサブタイは長過ぎて入りませんでした・・・(汗)。
(2015-07-11 20:43)