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第二話 磯野の息子!? 作:海馬マジック
ツァンは愕然とした。
目の前のアカデミア生徒が海馬コーポレーションと関係のある人物だという。
しかも、その海馬コーポレーションの社長 海馬瀬人に長い間ついていた部下 磯野の息子、天賀山(てんがざん)玄(げん)だと名乗った。
それだけではない。
彼は海馬瀬人の使っていた3枚の『青眼の白龍』を持っている。本当なのかはまだ分からないけど...。
ツァン「あんたサテライト出身ってホント?」
まずこれが疑問。
そんなすごいお方がなんでサテライト出身?
玄「オレの生まれたところはシティだ。しかし、オレが6歳のときに誘拐された」
ツァン「...え?」
誘拐?
玄「オレは誘拐される3日前、海馬社長に3枚の『青眼の白龍』を渡された。海馬社長はこう言っていた。“弟のモクバを頼む”と...。その日を境に海馬社長は失踪した」
玄がいきなり誘拐とは別の話を始めた。
確かに、今の海馬コーポレーションの社長は海馬モクバ。海馬瀬人の弟だ。
随分前に海馬瀬人が行方不明になったというニュースが流れていた。
あの時はボクも小さかったっけ。
玄「オレが『青眼の白龍』を持っていることを知ってなのか、海馬コーポレーション関係者の息子だと知ってなのかの犯行どうかは知らないが、誘拐された」
身代金目当てなのか、カード目当てなのかってこと?
玄は続ける。
玄「オレは車の中に無理やり入れられて、眠らされた。いつの間にか変な場所にいた。犯人の住処なんだろうと、オレは思った。しばらくして、変なサングラスとマスクをした男が現れた。オレに逆らったら殺すってよ。ガキだったオレはムチャクチャ怖かった。終わりだと思った」
話を聞くだけで目の前のアカデミア生徒のことを気の毒に感じた。
誘拐されたことのないボクがそんな目に遭ったらどうなるだろう...?
玄「その男はどこかに行ってしまった。しばらくして、別の奴らが現れた。オレを誘拐した男の仲間かと思ったけど、どうも違った。先頭の男 健次さんって言うんだが、その人は車からオレを運び出す男を見て不審におもったらしい。で、盗み聞きした結果、やっぱりあやしい男だったんでボコボコにしてやったらしい」
まさかの急展開ね...。
玄「健次さんは誘拐犯の住処のあるサテライトの沿岸部Dブロックのエリアを制していたデュエルギャングのリーダーだった。父親がセキュリティの仕事についていて、その父親が物凄い正義漢だったんだよ。父親の遺伝子をもっているんだろうな。オレはあの人のおかげで助かった」
へぇ。命拾いしたってわけね。
そういえば...。
ツァン「...!そうだ!まだそのときはサテライトとシティの行き来はできなかったハズよ!なんでその男はシティからサテライトへ行けたの?」
玄「そこが問題なんだ。誘拐犯はただモンじゃないってことだな...」
ツァン「じゃあ、何者よ」
玄「まだ分からんが、海馬コーポレーションのことを敵視している会社 シュレイダー社が関係しているのかもしれない、とオレは考えてる」
シュレイダー社。
最近、有名になってきた玩具・ゲームメーカー。
元々、ヨーロッパの大企業であったが、ここ日本にもシュレイダー・トイズ・ジャパンとして進出している。
玄「社長のジークフリードは昔、海馬社長に敗北した。しかし、それでは懲りずにまだ海馬コーポレーションを恨んでやがる。今や海馬コーポレーションの力は絶大だ。だが、あの会社は打倒海馬コーポレーションを掲げている」
会社間でも色々起きているみたいね。
ツァン「でも、シュレイダー社はなんであんたを誘拐したの?メリットでもあるわけ?」
玄「当たり前だ。メリットがなきゃオレを誘拐したりしない。奴らの狙いはこれだ!」
そう言い、玄は3枚の『青眼の白龍』を見せつけてきた。
ツァン「カード狙いってわけ?」
玄「そうだ!このカードを失えば、海馬コーポレーションのシンボルをなくすことになる。シュレイダー社はこのカードを量産しようとしていたのかもしれん」
それを最初っから言おうか...ねぇ?
玄「シティとサテライトとの壁がなくなったとき、オレは海馬コーポレーションに戻ることができた。オレがいない間、シュレイダー社も力をつけてきたらしいな...気になるぜ」
ま、ボクには関係ないけどね。
玄「あ、そうそう。お前、他人事だと思うなよ」
ツァン「え?」
なんで?
玄「この話を聞いた以上、強力させてもらうぞ。もうすぐ始まるWTGP。その大会にシュレイダー社の社員が出場するらしい。当然オレも参加する。だが、タッグパートナーがいない...ここまで言えば分かるよな?」
◇ ◇ ◇
ツァン「なんでボクが強制的にあんたのタッグパートナーになるってことになるの!!」
玄「デュエルで負けたくせに」
う...それは。
ツァン「関係ない!」
玄「とにかく、何がなんでもパートナーになってもらう!」
こういう奴とタッグなんて組めるわけないでしょ!
ツァン「帰る!」
玄「バカヤロウ!待て!」
ブッ!親父か!
思わず笑ってしまったわ。
玄「何がおかしい。オレを侮辱しているのか!」
笑われて、玄は相当怒っている。
ヤバ...めんどくさ。
「やめるんだ!!」
?
突如、大声がした。
デュエルスペースの入り口に男子生徒がいた。
釜戸野だった。
釜戸野は玄を指さして叫ぶ。
釜戸野「そこのお前!それ以上、ツァンちゃんに迷惑をかけるな!」
玄の悪人面が困惑顔になった。
玄「誰?お前の知り合いか?もしかしてタッグパートナー?」
ツァン「...違います」
その言葉を聞いたのか、釜戸野はショックを受けているようだ。
あーはいはいボクが悪かったですよ。
釜戸野「...ツァンちゃん。僕のどこが悪いって言うんだ!勉強だって、ルックスだって、デュエルだって...できる方なのに...」
玄「そういうことを自分から言っている時点でお前のルックスはダメダメだぜ。オレもだけどよ...」
そこだけ同感ね。
釜戸野は玄を睨みつけた。
釜戸野「お前みたいな奴に言われたくはない」
玄がニヤけ顔になった。その顔やめて。
まさに悪人のニヤけ面。
玄「オレみたいな奴に言われてもしょうがないぜ?まぁ、お前がコイツを積極的に誘っている努力だけは認めてやるぜ。デュエルでどうだ?オレと勝負して勝ったら、オレが引く。負けたら、お前が引け」
ちょっと!勝手に決めないでよ!
釜戸野「いいだろう」
二人して勝手に決めた!
こうしてボクの同意なしでデュエルが始まった。
「「デュエル!!」」
■釜戸野 先行
LP4000
■玄 後行
LP4000
・1ターン目・
釜戸野「僕のターン。ドロー」
●釜戸野 手札5→6
釜戸野は一体どんなデッキを使うのだろう...。
釜戸野「『ライオウ』を召喚!」
〇『ライオウ』 光属性
✪4
【雷族・効果】
攻1900/守800
◎このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事はできない。また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。
うわ...面倒なのキタ。
玄「け!特殊召喚andサーチ封じのライオウ様かよ!」
釜戸野が不敵な笑みを浮かべている。
どっちも悪人面するのやめてってば。
釜戸野「1ターン目からコイツを引けるなんて、今日はついているなぁ。僕はカードを3枚伏せてターン終了!」
玄「豪華に伏せたな」
釜戸野 LP4000
手札2
■『ライオウ』
□セットカード3
・2ターン目・
玄「オレのターン。ドロー!」
●玄 手札5→6
玄「お!こりゃ勝てた」
釜戸野「何?」
玄は何を引いたのだろう...。
玄「オレの手札にエグゾディアパーツが揃った...」
釜戸野&ツァン「「なんだってー!!!」」
ツァン「あんた!いつの間にデッキ変えたの!?しかも初手からエグゾディアパーツが揃うなんて...!」
玄「...と言うのは嘘だ」
しばし静寂。
玄だけがかまわず続ける。
玄「オレは手札から『大嵐』を発動!フィールドの魔法・罠カード全て破壊!」
〇『大嵐』
通常魔法
◎フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。
不意をつかれた釜戸野は何が起きたのか未だ状況が理解できていない。
〝バババン〟
破壊の炸裂音で気付いた。
釜戸野「な...なんだってぇーーー!!」
破壊されたカードは『聖なるバリア―ミラーフォース―』、『激流葬』、『神の警告』。
どれも強力なモンスター破壊罠だ。
でも破壊されれば意味はない。
しかし序盤から『大嵐』を引くなんて結構、強運の持ち主。
この厄介な伏せ+ライオウはキツイからね。
玄「そして魔法カード『ブラック・ホール』!フィールドのモンスターは闇に葬られる」
〇『ブラック・ホール』
通常魔法
◎フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。
釜戸野「な!」
フィールド上に凛々しく立っていたライオウは巨大な黒い渦に飲み込まれて哀れに散っていった。
『ライオウ』〝破壊〟
玄「これでフィールドのお掃除も終わった。仕上げにかかる!」
釜戸野「...ク!」
余裕だった釜戸野の表情が崩れる。
ここから玄の強襲が始まる。
玄「オレは魔法カード『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動!手札の『青眼の白龍』を墓地へ送る」
釜戸野「ブルーアイズ!?」
玄「デッキから『青眼の白龍』2枚を手札に加える」
釜戸野「ブルーアイズを3枚も!?」
〇『ドラゴン・目覚めの旋律』
通常魔法
◎手札を1枚捨てて発動できる。デッキから攻撃力が3000以上で守備力が2500以下のドラゴン族モンスターを2体まで手札に加える。
玄「まだまだー!速攻魔法『手札断殺』!手札の『青眼の白龍』2枚を捨てて2枚ドロー!お前も2枚捨てて2枚ドローしろ!」
〇『手札断殺』
速攻魔法
◎お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。
釜戸野の手札は2枚。
選ぶことも許されずに手札全てを捨てた。
釜戸野「...手札の『死霊騎士デスカリバー・ナイト』と『速攻のかかし』を墓地へ...2枚ドロー...ちっくしょうぉーーー!!」
『速攻のかかし』は手札から捨てることで、相手モンスターの直接攻撃を防ぐことができる。墓地にあっても効果を使うことはできない。玄と違って、デュエルの運に見放されている。
玄「引いたカードもよくなかったみたいだなぁ。オレは手札から『龍の鏡』を発動!墓地のドラゴン族を融合させる!」
〇『龍の鏡』
通常魔法
◎自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)
玄の墓地には『青眼の白龍』が3枚...。
『ドラゴン・目覚めの旋律』、『手札断殺』のコストを利用して融合素材を揃えたワケね。
玄「3体のブルーアイズを融合!青い瞳が6つとなる!強靭にして無敵!究極の最強!これが『青眼の究極龍』だぁーーー!!」
3体の『青眼の白龍』が1つになる...!
これが...伝説のモンスターが三位一体となった融合モンスター。
3つの首を持つ巨大な龍が豪快に現れた。
玄「『青眼の究極龍』を融合召喚!!」
〇『青眼の究極龍』 光属性
✪12
【ドラゴン族・融合】
攻4500/守3800
○「青眼の白龍」+「青眼の白龍」+「青眼の白龍」
究極龍が咆哮する。
途端、強風が飛んでくる。
ソリッドビジョンの力はすごい...!
釜戸野「...あ...あ」
釜戸野が放心したマヌケな顔をしている。
こんなモンスターが出たら絶望する。
攻撃力は『青眼の白龍』の攻撃力×3の半分の4500!
4000LPルールのこのデュエルでは1回の直接攻撃で決着が着く。
玄「終わりだ。『青眼の究極龍』のダイレクトアタック!“圧勝のアルティメットバースト”!!」
究極龍に似つかわしい派手な攻撃が釜戸野を襲う。
釜戸野「ギィャァァァーーー!!!」
釜戸野 LP4000→0
玄「運に見放されたな!」
1ターンキル。
釜戸野は手札を落とした。
釜戸野の手札には『ネクロ・ガードナー』が2枚あった。
玄 WIN
◇ ◇ ◇
玄「...というわけで、パートナーになってもらうぞ!」
ツァン「なんでよ!」
玄「お前、WTGPに出るつもりあるのか?この大会に出れば成績上がるぞ?」
ぐ...確かにそうだけど。
玄「どうせお前パートナーいないんだろ?ここは1つの会社を救うために貢献してくれよ」
ツァン「タッグパートナーはお互いのデッキの相性が合わないとダメなのよ!六武衆は展開型デッキなの!『大嵐』とか『ブラック・ホール』とか使われると困るんだけど!しかもあんたとボクの使うデッキの種族だって違うし...」
玄「確かにな。オレのデッキは数より力だしな...」
ツァン「あんたがボクと同じデッキを使うんなら話は別だけど...」
玄「無理だ!オレはこのデッキで大会に臨みたい」
まったく...タッグパートナーと合わせる気ゼロね...。
どうしようもないわ。
ツァン「いい?これであんたとボクがタッグを組むことができないことが分かったでしょ?いい加減...」
ボクが言い終わる前に玄はその言葉を遮った。
玄「仮タッグだ」
ツァン「え?」
玄「オレとお前、まだタッグ組んでデュエルしていねぇだろ?それならば、仮にだけタッグを組んで、他の奴らと闘い、力を試してみる。オレとお前のタッグデュエルの実力を考えて、ダメならばオレは別の奴とタッグを組んで大会に出る。タッグデュエルの戦績が良ければお前とのタッグで大会出場だ」
ツァン「か...仮タッグ?」
玄「まずは実践で試すべしだな」
>つづく
◆今回の目玉カードのコーナー◆
玄「今回はオリカが出なかったから、オレのコーナーが潰れちまった」
ツァン「だからってボクのコーナーに割り込まないでよ!」
玄「今回の目玉カードはコレだろ?」
『青眼の究極龍』
ツァン「もう!勝手に決めないでよ!コレにするつもりだったけど...」
玄「まさに究極のドラゴンだな。LP4000ルールなら一回の直接攻撃で決まるぜ!さすが、海馬社長が“ふつくしい”と思わずつぶやいたモンスターだぜ」
ツァン「負けフラグ」〝ボソ〟
玄「ん?なんか言った?」
●海馬コーポレーション
ナレーション「このssはご覧のスポンサーの提供でお送りしました」
目の前のアカデミア生徒が海馬コーポレーションと関係のある人物だという。
しかも、その海馬コーポレーションの社長 海馬瀬人に長い間ついていた部下 磯野の息子、天賀山(てんがざん)玄(げん)だと名乗った。
それだけではない。
彼は海馬瀬人の使っていた3枚の『青眼の白龍』を持っている。本当なのかはまだ分からないけど...。
ツァン「あんたサテライト出身ってホント?」
まずこれが疑問。
そんなすごいお方がなんでサテライト出身?
玄「オレの生まれたところはシティだ。しかし、オレが6歳のときに誘拐された」
ツァン「...え?」
誘拐?
玄「オレは誘拐される3日前、海馬社長に3枚の『青眼の白龍』を渡された。海馬社長はこう言っていた。“弟のモクバを頼む”と...。その日を境に海馬社長は失踪した」
玄がいきなり誘拐とは別の話を始めた。
確かに、今の海馬コーポレーションの社長は海馬モクバ。海馬瀬人の弟だ。
随分前に海馬瀬人が行方不明になったというニュースが流れていた。
あの時はボクも小さかったっけ。
玄「オレが『青眼の白龍』を持っていることを知ってなのか、海馬コーポレーション関係者の息子だと知ってなのかの犯行どうかは知らないが、誘拐された」
身代金目当てなのか、カード目当てなのかってこと?
玄は続ける。
玄「オレは車の中に無理やり入れられて、眠らされた。いつの間にか変な場所にいた。犯人の住処なんだろうと、オレは思った。しばらくして、変なサングラスとマスクをした男が現れた。オレに逆らったら殺すってよ。ガキだったオレはムチャクチャ怖かった。終わりだと思った」
話を聞くだけで目の前のアカデミア生徒のことを気の毒に感じた。
誘拐されたことのないボクがそんな目に遭ったらどうなるだろう...?
玄「その男はどこかに行ってしまった。しばらくして、別の奴らが現れた。オレを誘拐した男の仲間かと思ったけど、どうも違った。先頭の男 健次さんって言うんだが、その人は車からオレを運び出す男を見て不審におもったらしい。で、盗み聞きした結果、やっぱりあやしい男だったんでボコボコにしてやったらしい」
まさかの急展開ね...。
玄「健次さんは誘拐犯の住処のあるサテライトの沿岸部Dブロックのエリアを制していたデュエルギャングのリーダーだった。父親がセキュリティの仕事についていて、その父親が物凄い正義漢だったんだよ。父親の遺伝子をもっているんだろうな。オレはあの人のおかげで助かった」
へぇ。命拾いしたってわけね。
そういえば...。
ツァン「...!そうだ!まだそのときはサテライトとシティの行き来はできなかったハズよ!なんでその男はシティからサテライトへ行けたの?」
玄「そこが問題なんだ。誘拐犯はただモンじゃないってことだな...」
ツァン「じゃあ、何者よ」
玄「まだ分からんが、海馬コーポレーションのことを敵視している会社 シュレイダー社が関係しているのかもしれない、とオレは考えてる」
シュレイダー社。
最近、有名になってきた玩具・ゲームメーカー。
元々、ヨーロッパの大企業であったが、ここ日本にもシュレイダー・トイズ・ジャパンとして進出している。
玄「社長のジークフリードは昔、海馬社長に敗北した。しかし、それでは懲りずにまだ海馬コーポレーションを恨んでやがる。今や海馬コーポレーションの力は絶大だ。だが、あの会社は打倒海馬コーポレーションを掲げている」
会社間でも色々起きているみたいね。
ツァン「でも、シュレイダー社はなんであんたを誘拐したの?メリットでもあるわけ?」
玄「当たり前だ。メリットがなきゃオレを誘拐したりしない。奴らの狙いはこれだ!」
そう言い、玄は3枚の『青眼の白龍』を見せつけてきた。
ツァン「カード狙いってわけ?」
玄「そうだ!このカードを失えば、海馬コーポレーションのシンボルをなくすことになる。シュレイダー社はこのカードを量産しようとしていたのかもしれん」
それを最初っから言おうか...ねぇ?
玄「シティとサテライトとの壁がなくなったとき、オレは海馬コーポレーションに戻ることができた。オレがいない間、シュレイダー社も力をつけてきたらしいな...気になるぜ」
ま、ボクには関係ないけどね。
玄「あ、そうそう。お前、他人事だと思うなよ」
ツァン「え?」
なんで?
玄「この話を聞いた以上、強力させてもらうぞ。もうすぐ始まるWTGP。その大会にシュレイダー社の社員が出場するらしい。当然オレも参加する。だが、タッグパートナーがいない...ここまで言えば分かるよな?」
◇ ◇ ◇
ツァン「なんでボクが強制的にあんたのタッグパートナーになるってことになるの!!」
玄「デュエルで負けたくせに」
う...それは。
ツァン「関係ない!」
玄「とにかく、何がなんでもパートナーになってもらう!」
こういう奴とタッグなんて組めるわけないでしょ!
ツァン「帰る!」
玄「バカヤロウ!待て!」
ブッ!親父か!
思わず笑ってしまったわ。
玄「何がおかしい。オレを侮辱しているのか!」
笑われて、玄は相当怒っている。
ヤバ...めんどくさ。
「やめるんだ!!」
?
突如、大声がした。
デュエルスペースの入り口に男子生徒がいた。
釜戸野だった。
釜戸野は玄を指さして叫ぶ。
釜戸野「そこのお前!それ以上、ツァンちゃんに迷惑をかけるな!」
玄の悪人面が困惑顔になった。
玄「誰?お前の知り合いか?もしかしてタッグパートナー?」
ツァン「...違います」
その言葉を聞いたのか、釜戸野はショックを受けているようだ。
あーはいはいボクが悪かったですよ。
釜戸野「...ツァンちゃん。僕のどこが悪いって言うんだ!勉強だって、ルックスだって、デュエルだって...できる方なのに...」
玄「そういうことを自分から言っている時点でお前のルックスはダメダメだぜ。オレもだけどよ...」
そこだけ同感ね。
釜戸野は玄を睨みつけた。
釜戸野「お前みたいな奴に言われたくはない」
玄がニヤけ顔になった。その顔やめて。
まさに悪人のニヤけ面。
玄「オレみたいな奴に言われてもしょうがないぜ?まぁ、お前がコイツを積極的に誘っている努力だけは認めてやるぜ。デュエルでどうだ?オレと勝負して勝ったら、オレが引く。負けたら、お前が引け」
ちょっと!勝手に決めないでよ!
釜戸野「いいだろう」
二人して勝手に決めた!
こうしてボクの同意なしでデュエルが始まった。
「「デュエル!!」」
■釜戸野 先行
LP4000
■玄 後行
LP4000
・1ターン目・
釜戸野「僕のターン。ドロー」
●釜戸野 手札5→6
釜戸野は一体どんなデッキを使うのだろう...。
釜戸野「『ライオウ』を召喚!」
〇『ライオウ』 光属性
✪4
【雷族・効果】
攻1900/守800
◎このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事はできない。また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。
うわ...面倒なのキタ。
玄「け!特殊召喚andサーチ封じのライオウ様かよ!」
釜戸野が不敵な笑みを浮かべている。
どっちも悪人面するのやめてってば。
釜戸野「1ターン目からコイツを引けるなんて、今日はついているなぁ。僕はカードを3枚伏せてターン終了!」
玄「豪華に伏せたな」
釜戸野 LP4000
手札2
■『ライオウ』
□セットカード3
・2ターン目・
玄「オレのターン。ドロー!」
●玄 手札5→6
玄「お!こりゃ勝てた」
釜戸野「何?」
玄は何を引いたのだろう...。
玄「オレの手札にエグゾディアパーツが揃った...」
釜戸野&ツァン「「なんだってー!!!」」
ツァン「あんた!いつの間にデッキ変えたの!?しかも初手からエグゾディアパーツが揃うなんて...!」
玄「...と言うのは嘘だ」
しばし静寂。
玄だけがかまわず続ける。
玄「オレは手札から『大嵐』を発動!フィールドの魔法・罠カード全て破壊!」
〇『大嵐』
通常魔法
◎フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。
不意をつかれた釜戸野は何が起きたのか未だ状況が理解できていない。
〝バババン〟
破壊の炸裂音で気付いた。
釜戸野「な...なんだってぇーーー!!」
破壊されたカードは『聖なるバリア―ミラーフォース―』、『激流葬』、『神の警告』。
どれも強力なモンスター破壊罠だ。
でも破壊されれば意味はない。
しかし序盤から『大嵐』を引くなんて結構、強運の持ち主。
この厄介な伏せ+ライオウはキツイからね。
玄「そして魔法カード『ブラック・ホール』!フィールドのモンスターは闇に葬られる」
〇『ブラック・ホール』
通常魔法
◎フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。
釜戸野「な!」
フィールド上に凛々しく立っていたライオウは巨大な黒い渦に飲み込まれて哀れに散っていった。
『ライオウ』〝破壊〟
玄「これでフィールドのお掃除も終わった。仕上げにかかる!」
釜戸野「...ク!」
余裕だった釜戸野の表情が崩れる。
ここから玄の強襲が始まる。
玄「オレは魔法カード『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動!手札の『青眼の白龍』を墓地へ送る」
釜戸野「ブルーアイズ!?」
玄「デッキから『青眼の白龍』2枚を手札に加える」
釜戸野「ブルーアイズを3枚も!?」
〇『ドラゴン・目覚めの旋律』
通常魔法
◎手札を1枚捨てて発動できる。デッキから攻撃力が3000以上で守備力が2500以下のドラゴン族モンスターを2体まで手札に加える。
玄「まだまだー!速攻魔法『手札断殺』!手札の『青眼の白龍』2枚を捨てて2枚ドロー!お前も2枚捨てて2枚ドローしろ!」
〇『手札断殺』
速攻魔法
◎お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。
釜戸野の手札は2枚。
選ぶことも許されずに手札全てを捨てた。
釜戸野「...手札の『死霊騎士デスカリバー・ナイト』と『速攻のかかし』を墓地へ...2枚ドロー...ちっくしょうぉーーー!!」
『速攻のかかし』は手札から捨てることで、相手モンスターの直接攻撃を防ぐことができる。墓地にあっても効果を使うことはできない。玄と違って、デュエルの運に見放されている。
玄「引いたカードもよくなかったみたいだなぁ。オレは手札から『龍の鏡』を発動!墓地のドラゴン族を融合させる!」
〇『龍の鏡』
通常魔法
◎自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)
玄の墓地には『青眼の白龍』が3枚...。
『ドラゴン・目覚めの旋律』、『手札断殺』のコストを利用して融合素材を揃えたワケね。
玄「3体のブルーアイズを融合!青い瞳が6つとなる!強靭にして無敵!究極の最強!これが『青眼の究極龍』だぁーーー!!」
3体の『青眼の白龍』が1つになる...!
これが...伝説のモンスターが三位一体となった融合モンスター。
3つの首を持つ巨大な龍が豪快に現れた。
玄「『青眼の究極龍』を融合召喚!!」
〇『青眼の究極龍』 光属性
✪12
【ドラゴン族・融合】
攻4500/守3800
○「青眼の白龍」+「青眼の白龍」+「青眼の白龍」
究極龍が咆哮する。
途端、強風が飛んでくる。
ソリッドビジョンの力はすごい...!
釜戸野「...あ...あ」
釜戸野が放心したマヌケな顔をしている。
こんなモンスターが出たら絶望する。
攻撃力は『青眼の白龍』の攻撃力×3の半分の4500!
4000LPルールのこのデュエルでは1回の直接攻撃で決着が着く。
玄「終わりだ。『青眼の究極龍』のダイレクトアタック!“圧勝のアルティメットバースト”!!」
究極龍に似つかわしい派手な攻撃が釜戸野を襲う。
釜戸野「ギィャァァァーーー!!!」
釜戸野 LP4000→0
玄「運に見放されたな!」
1ターンキル。
釜戸野は手札を落とした。
釜戸野の手札には『ネクロ・ガードナー』が2枚あった。
玄 WIN
◇ ◇ ◇
玄「...というわけで、パートナーになってもらうぞ!」
ツァン「なんでよ!」
玄「お前、WTGPに出るつもりあるのか?この大会に出れば成績上がるぞ?」
ぐ...確かにそうだけど。
玄「どうせお前パートナーいないんだろ?ここは1つの会社を救うために貢献してくれよ」
ツァン「タッグパートナーはお互いのデッキの相性が合わないとダメなのよ!六武衆は展開型デッキなの!『大嵐』とか『ブラック・ホール』とか使われると困るんだけど!しかもあんたとボクの使うデッキの種族だって違うし...」
玄「確かにな。オレのデッキは数より力だしな...」
ツァン「あんたがボクと同じデッキを使うんなら話は別だけど...」
玄「無理だ!オレはこのデッキで大会に臨みたい」
まったく...タッグパートナーと合わせる気ゼロね...。
どうしようもないわ。
ツァン「いい?これであんたとボクがタッグを組むことができないことが分かったでしょ?いい加減...」
ボクが言い終わる前に玄はその言葉を遮った。
玄「仮タッグだ」
ツァン「え?」
玄「オレとお前、まだタッグ組んでデュエルしていねぇだろ?それならば、仮にだけタッグを組んで、他の奴らと闘い、力を試してみる。オレとお前のタッグデュエルの実力を考えて、ダメならばオレは別の奴とタッグを組んで大会に出る。タッグデュエルの戦績が良ければお前とのタッグで大会出場だ」
ツァン「か...仮タッグ?」
玄「まずは実践で試すべしだな」
>つづく
◆今回の目玉カードのコーナー◆
玄「今回はオリカが出なかったから、オレのコーナーが潰れちまった」
ツァン「だからってボクのコーナーに割り込まないでよ!」
玄「今回の目玉カードはコレだろ?」
『青眼の究極龍』
ツァン「もう!勝手に決めないでよ!コレにするつもりだったけど...」
玄「まさに究極のドラゴンだな。LP4000ルールなら一回の直接攻撃で決まるぜ!さすが、海馬社長が“ふつくしい”と思わずつぶやいたモンスターだぜ」
ツァン「負けフラグ」〝ボソ〟
玄「ん?なんか言った?」
●海馬コーポレーション
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