43話 晒される本性　作：名無しのゴーレム

ジュニアユース選手権も1回戦が終了し、いよいよ2回戦に入った。郁也、智が勝利し、一早く2回戦突破を決めた。そして今、美愛と直人君のデュエルも終盤を迎えていた。


直人 LP1500 手札1枚 轟雷帝ザボルグ 進撃の帝王
美愛 LP2300 手札3枚


「私のターン、ドロー。暗躍のドイルド・ドリュースを召喚。ドリュースの効果発動。墓地のシャドール・ドラゴンを特殊召喚。レベル4のドイルド・ドリュースとシャドール・ドラゴンでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。来て、No.39 希望皇ホープ！ さらに、装備魔法、ストイック・チャレンジ発動。 ホープに装備！ ホープの攻撃力をオーバーレイユニットの数×600ポイント上昇させ、相手に与えるダメージを2倍にする。」

ホープ 攻撃力2500→3700

「バトル。希望皇ホープでザボルグを攻撃。」
「うわぁぁぁ！！」

直人 LP1500→0


「…これでうちの2連勝だね。」
「くっ…」
「2人とも、まだ張り合っていたんですか？」
「お母さんの言う通りだよ。自分たちが戦ってるわけでもないのに。」
「「ぐっ…」」
…2人とも、本当は仲いいでしょ。



夜、俺は自室でデッキ調整を行っていると、急に扉が開いた。
「お兄さん、居る？」
「京子か。どうした？」
「いや～、ちょっと聞きたいことがあってさ。」
「？ ああ、明日のデュエルのことか。確か京子の相手は…」
「東雲 心希。幹治に勝った子だよ。…って、そうじゃなくてさ！」
京子が腕をブンブンと振って否定する。
「お兄さん、この頃なんかどんなことにも上の空って感じだからさ。何かあったのかなって思って…」
…そうだったのか。
「…すまないな。ちょっと、いろいろあってな。」
「そっか。…私たちには言えないことなの？」
「……」
「…分かったよ。でもさ、困ったことがあったら相談してね。力になるからさ。」
「…まったく、やっぱり親子なんだな。」
「…？ 何か言った？」
「いや、なんでも。それより、早く部屋に戻ったらどうだ？ 試合、明日だろう？」
「…そうだね。おやすみ～！」
「ああ、おやすみ。」

京子が部屋を出ていってから、俺は再び自分のデッキに目を落としていた。
「……」
選手権を勝ち進めば、やがて危険な目に会うかもしれない。だが、京子たちは勝ち上がって自分たちの塾を世に知らしめることを目標にしている。
（…一体、どうしたらいいってんだ…）



「では次の試合、東雲 心希選手 対 仙波 京子選手！ 」

――いよいよ京子の試合の番だ。
「じゃあ行ってくるよ！」
「ああ、頑張ってこいよ！」
「京子、気を付けて下さいね。」
「大丈夫大丈夫！」
…本当に大丈夫か？

「ハロー！ 君が次の対戦相手？」
「うん。幹治の仇、とらせてもらうよ！」
「大げさだなぁ～、死んだわけでもないのに。」


「それではアクションフィールド、『バトル・コロッセオ』発動！」

「バトル・コロッセオ…モンスターの攻撃力を上下させるアクションカードが多いところだな。」
なるほど…京子にとっては相性のいいフィールドになるのか…


「「デュエル！！」」


心希 LP4000 手札5枚
京子 LP4000 手札5枚


「私のターン、私はカードを3枚セット。これでターンエンド！」


心希 LP4000 手札2枚 伏せカード3枚
京子 LP4000 手札5枚


「私のターン、ドロー！ 剣闘獣ラクエルを召喚！ バトル！ ラクエルでダイレクトアタック！」
「リバースカードオープン！ 永続罠、メタル・リフレクト・スライム！ 守備力3000のモンスターとして私の場に特殊召喚！」
「…バトル続行！ 行け、ラクエル！」

京子 LP4000→2800

「くうっ、でもラクエルの効果発動！ラクエルをデッキに戻して、剣闘獣ベストロウリィを特殊召喚！ ベストロウリィの効果発動。真ん中の伏せカードを破壊！」
「させないよ！ リバースカードオープン！ 通常罠、偽物のわな！ 罠カードが破壊されるとき、代わりにこのカードを破壊する！ 伏せカードは永続罠、王宮のしきたり。よってこのカードの破壊は無効！」
「…駄目だったか～。なら、カードを1枚セットしてターンエンド！」


心希 LP4000 手札2枚 メタル・リフレクト・スライム 伏せカード1枚
京子 LP2800 手札4枚 剣闘獣ベストロウリィ 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ カードを2枚セット。カードカーDを召喚。カードカーDをリリースして、カードを2枚ドロー！ これでターンエンド！」


心希 LP4000 手札2枚 メタル・リフレクト・スライム 伏せカード3枚
京子 LP2800 手札4枚 剣闘獣ベストロウリィ 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ 剣闘獣ダリウスを召喚！ バトル！ダリウス、ベストロウリィでメタル・リフレクト・スライムを攻撃！」

「…おい、そんなことをしたら…」
メタル・リフレクト・スライムの守備力は3000。いくら剣闘獣の効果を使うためとはいえ、京子のライフがほとんどなくなってしまう。

「…すごい自爆をするんだね。」
「それはどうかな？ リバースカードオープン！ 通常罠、ディフェンシブ・タクティクス！ このターン、私が受ける戦闘ダメージを0にする！ これで私は無傷！」

剣闘獣たちはメタル・リフレクト・スライムに突撃し、同時に相手を受け流していく。これで戦闘は成立した。

「ベストロウリィの効果発動！ このモンスターをデッキに戻して、デッキから剣闘獣アウグストルを特殊召喚！ アウグストルの効果で手札から剣闘獣ホプロムスを特殊召喚するよ。さらにダリウスをデッキに戻して、ベストロウリィを特殊召喚！ ベストロウリィの効果発動！ その伏せカード、王宮のしきたりを破壊！」

ベストロウリィの起こした竜巻が伏せカードを破壊した。よし、これで罠モンスターの無敵化を防げた。

「…さあ、ここからが本番だよ！ 私は剣闘獣ベストロウリィとホプロムスをデッキに戻す。融合召喚！ 行っけー！！ 剣闘獣ガイザレス！」

「あいつ…いつの間に融合召喚を…」
「私が教えたんです。京子が以前に私に融合召喚を教えて欲しいと言って来て…」
…なるほど。2人で抜け出していたのは融合召喚をマスターするためだったのか。


「ガイザレスの効果発動！ メタル・リフレクト・スライムと伏せカード1枚を破壊！」
一気に京子の有利になった。これなら…


「……融合召喚、だって？」


…？ 何だ、急に相手の様子が…

「…ふざけるな！ お前たちのようなやつらが、融合召喚を使うなど！」
「え？ ちょ、いきなり何を…」
「黙れ！ さあ、早くターンを進めろ！」
「…カードを1枚セット。私はこれでターンエンド。」


心希 LP4000 手札2枚 伏せカード1枚
京子 LP2800 手札2枚 剣闘獣アウグストル、剣闘獣ガイザレス 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ …私はカードを2枚セット、これでターンエンド！」


心希 LP4000 手札1枚 伏せカード3枚
京子 LP2800 手札2枚 剣闘獣アウグストル、剣闘獣ガイザレス 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ 私は剣闘獣エクイテを召喚！ さらに装備魔法、剣闘獣の闘器デーモンズシールドをガイザレスに装備！ バトル！ ガイザレスでダイレクトアタック！」
「させるか！ リバースカードオープン！ 永続罠、デモンズ・チェーン！ ガイザレスの効果を無効にして、攻撃を行えないようにする！」
「くっ…アウグストルで攻撃！」
「リバースカードオープン！ 永続罠、スクリーン・オブ・レッド発動！ これで相手モンスターは攻撃出来ない！」

…完全に封じ込められた。京子も相手の気迫に圧されてしまっている。
「京子！」
郁也が叫ぶ。しかしその声は京子には届いていないようだ。

「…ターン、エンド。」
「リバースカードオープン！ 永続罠、カース・オブ・スタチュー！ 私の場に特殊召喚！」


心希 LP4000 手札1枚 カース・オブ・スタチュー デモンズ・チェーン（ガイザレス指定）、スクリーン・オブ・レッド
京子 LP2800 手札1枚 剣闘獣アウグストル、剣闘獣ガイザレス、剣闘獣エクイテ 剣闘獣の闘器デーモンズシールド 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ …キヒヒ！ これで終わりだ！ 私は3枚の永続罠を墓地に送って、神炎皇ウリアを特殊召喚！」

来たか。幹治を一撃で打ち破ったモンスター。

「ウリアの攻撃力は、墓地の永続罠の枚数×1000ポイントアップする！ 墓地の永続罠は6枚！ よってウリアの攻撃力は6000！」
「な…攻撃力、6000… でも、」
「ウリアの効果発動！ 1ターンに1度、伏せカードを1枚破壊する。消えろ！」
「…リバースカードオープン！ …あれ、なんで発動しないの？」
「ウリアの効果発動に対して、カード効果を発動することは出来ない。バトル！ ウリアで ガイザレスを攻撃！」

京子 LP2800→0

「きゃぁぁぁ！！」


「京子！！」
ウリアの攻撃を受けた京子は、そのまま倒れ伏した。大丈夫なのか…？
東雲 心希が倒れた京子の元へ歩いていく。どうやら京子に何か言っているようだが、ここからでは聞き取れない。



「…うう～、負けちゃった～…」
京子はなんとかこちらに戻ってきたが、衝撃が強かったのかフラフラしていた。
「…なあ、デュエルが終わった後に相手に何を言われてたんだ？」
「……」
俺の疑問に対して、京子は答えにくそうにしている。
「おい、なんて言われたんだよ。」
郁哉からも尋ねられ、京子は渋々口を開いた。
「…『融合召喚はお前みたいなやつが使っていいものじゃない、もう2度と使うな。』だってさ。…なんでなんだろうね…」
「…京子？」

気付くと、京子の目に涙が浮かんでいた。

「…ごめん、なんか悔しくてさ。私なりに頑張ったつもりだったんだけど、あの子からしてみれば『お前なんか』だったんだなって思ってさ…」
「…大丈夫ですよ、京子。京子は十分に頑張りました。だから、あまり自分を責めないで下さい。」
「…美愛の言う通りだ、京子。それに、…あいつは、俺が倒す。」
「…美愛、郁哉…」
美愛たちが京子を励ます。…それにしても、東雲 心希のあの態度、あれはどう考えても異常だ。やはりあいつには何かがある…

「まさか…」


――こうして、京子たちの2回戦は終了した。…このときはまだ、誰もこの後に起きる事態を知ることはなかった。