第46話　深まる謎　作：ター坊

俺達が到着した頃、クロノス先生とゴーシュはデュエルに勝った様子であった。
「この女の子2人があいつらが言ってた逃亡者か…」
「あ、貴方たちはなんですの？」
「璃緒さん。こちらはユイさんよ。それに万丈目さんとアキさん」
「ちょっと小鳥ちゃ~ん。オイラのことも忘れないで~」
「うるさい！お前は引っ込んでろ」
「イヤーン」
「…あはは…。…と、おジャマイエローよ。それとさっきデュエルしてくれたのが」
「はじめましてシニョーラ･璃緒。ワターシ、クロノス･デ･メディチと言いまスーノ」
「クロノス先生！どうしてこちらに！？」
「シニョーラ･明日香…。無事そうで何よりナノーネ。話せば長くなるノーネ」
クロノス先生は明日香と璃緒に今までの経緯を話した。
「そんなことがあったなんて…」
「えぇ…。信じられませんわ。…はっ！そうだ、凌牙！」
璃緒は何か思い出したように倒れてる男に駆ける。
「小鳥。あの倒れてるのは誰なんだ？凌牙って言ってるけど」
「璃緒さんのお兄さんなんです」
「え？じゃあ、兄貴が妹を襲ったということなのか？」
「うーん…。それはよく分かりません」
「もう一人については？」
「私も見たことがない人なので…」
他のみんなに聞いても、誰なのかは知らないらしい。


ビッターーン！！

不意に大きな音がして何事かと見ると璃緒が凌牙に結構マジっぽいビンタを食らわせていた。
「こら！凌牙！起きなさい！」
「…っ！何すんだ璃緒！」
あんなビンタされたら起きるよな…。
「あれ？戻ってる？…凌牙！」
「なんだ！？急に抱きつくんじゃねぇ！」
「…ん？なんじゃ騒がしい」
もう一人も目覚めたか。今度は俺が二人に今までの経緯を説明する。
「俺が璃緒に？」
「覚えてないノーネ？」
「あぁ。まったく…」
「俺もじゃい」
「しかも俺達に負けたこともか？」
「あぁ。俺が覚えてるのは吹雪と一緒に黒タイツの集団と戦って…」
「凌牙くん！そう言えば兄さんは？」
「いや、いつの間にか…」
俺はここで考える。

-あるところからデュエルに負けるまでの記憶がない。

-正気ではない眼差し。

これはクロウにも見られた特徴だ。それに龍牙が言っていた『あの方』という謎の人物。そこから俺は１つの仮説を立てた。
「もしかして、凌牙や梶木、それにクロウは誰かに操られたんじゃないか？」
「ちょっと待ぃ！俺らが操られたじゃと！？」
「とんだサイコな話だな…」
「俺自身そう思うさ。けれど、それが一番納得できる理屈なんだ」
「どういうことなの？ユイ」
「まず、梶木はともかく凌牙が自分の意志で璃緒に襲いかかると思うか？」
「それは…」
「それに俺達が自分が知る世界とは違う世界にいるという非常識な状況だ…。何が起きてもおかしくはないだろう」
「そうね。サイコデュエリストとの戦いもあったし、洗脳も考えられなくは…」
「それに俺達はここに来る前、龍牙というデュエリストと戦ったが、そいつが言った『あの方』が引っ掛かるんだ」
「だがユイ。あいつは自分の意志で挑んできたように見えたが…？」
「闘心高校で戦った羽蛾の野郎も操られてる感じじゃなかったぞ？」
「うーん。それは…」
いくらなんでも洗脳説は考えすぎか…？
「すまない。やっぱ洗脳説はなし」
「あ、ユイさん投げた」
「さて、話は変わるけど」
「ユイのダンナ、話反らしたぁ~」
「璃緒、明日香さん、凌牙、梶木。俺達と一緒に来るか？生活できる場所もあるし、他にも仲間がいるんだが…」
少々、4人は考える素振りを見せたが
「…まぁ、小鳥さんがついてきてるなら悪人ではなさそうですし…」
「クロノス先生や万丈目くんがいるなら…」
「他に行く宛もないしな」
「そうじゃな。なんとかなるじゃろ」
4人とも概ね納得してくれたようだ。
「よし！それじゃあ1回戻ろうか」





-数十分後-

俺達はDuelyに戻ってきた。
「みんなー！帰ってきたぞ！」
「ユイお兄ちゃんおかえりー！」
「ユイさん、おかえりなさい」
「おかえり、ユイ。そっちの子達が見つけてきた子なの？…ん」
「あれ？梶木じゃねぇか！」
「おぉぉ！城之内！お前もおったんか！？」
「ずいぶんと賑やかな場所ですわね」
「みんなこの世界で会った人たちなんですよ」
「ほぅ。全員デュエリストなのか…」
「新たな仲間…男権現坂、熱い思いだ！」
和やかな雰囲気だ…。そうだ、今日は食糧奮発して歓迎会的なものやろうかな？そう考えていると
「覚悟ぉ！」
「今日こそは！」
「イヤッハァァ！」
またあの集団か…。いや、ひとり違うのが混じっている。すらりとしていて爽やかな、俺より歳上な感じの見た目だ。しかしその眼差しは正気ではないを通り越し、狂気に満ちた瞳だった。
「そんな！」
信じられないという眼で見ていたのは明日香さんだった。
「兄さん！」