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HOME > 遊戯王SS一覧 > 五符「運命と微かな希望」

五符「運命と微かな希望」 作:ツバサ

「ちっ・・・ドローよ」


苛立ちながらもドローを行うレミリア。
手札は2枚、そのうえ相手の場には攻撃力0の「幻想絆・小鈴」が棒立ちしている状況。
が、魔理沙は魔法カード、「光の護封剣」を発動し、レミリアの攻撃を封じた。
今はまだレミリアが有利と言える状況だが、それも魔理沙次第ですぐに覆る。
・・・フィールドを見て、レミリアは止む得ず手札1枚に手をかける。


「・・・この状況を美鈴と一妖怪に任せるのは心もとないわ。
だから・・・そろそろ見せてあげる。
『幻想絆・美鈴』と『幻想絆・ルーミア』をリリースし・・・『幻想絆・レミリア』をアドバンス召喚!!」


宣言した2枚のカードが地面に吸い込まれていく。
そしてフィールドに紅く、巨大な槍が突き刺さり、紅い光を撒き散らしながら破裂すると・・・プレイヤーとしてのレミリアとうり二つの姿を持った「幻想絆・レミリア」が現れた。
攻撃力2800のその数値は、最上級モンスターとして申し分ないステータスだ。


「ついに出やがったな・・・そいつがエースってことでいいんだな?」

「咲夜のカードを出すことなくこのカードを出すっていうのは少々気が引けるけど、私自らが相手をするわ。光栄に思いなさい。
さらに『幻想絆・レミリア』の効果を発動!運命操作!!」


「幻想絆・レミリア」がその手から鎖のような弾幕を放つと、その鎖はレミリアのデッキと魔理沙のデッキ、両方に突き刺さる。


「なんだ、この鎖は・・・」

「私の手札が3枚以下の場合に発動できる能力。
私の手札は2枚、発動条件は満たした。まずはお互いにカードを1枚ドローするわ」


鎖が少し引き寄せられ、1枚のカードも引き寄せられる。
互いにそれを引き、手札に加えた。
レミリアは3枚、魔理沙は4枚。一見魔理沙も有利にするようなカードだが・・・レミリアの鎖が消えた一方で、魔理沙のデッキの鎖は未だに消えていなかった。


「・・・何?」

「ふふ、あなたのこの先の運命は私が決めてあげる・・・。
ドローした後、私の手札の枚数分相手のデッキの上のカードを『自分だけが』確認し、その順番を任意で入れ替えて元に戻す!」


地味に見えるこの能力、実際は相当厄介な効果である。
望むカードをドローできないという戦術的面、及び精神的面・・・両方を攻める作用がある。
レミリアは3枚を確認することになり、引き寄せられた鎖につながれた3枚のカードを見る。
当然その3枚を魔理沙が見ることはできない。レミリアは1番上のカードを2番目のカードと入れ替えた後、それらのカードをデッキの上に戻した。


「そして・・・あなたのターンよ」


攻撃できない状況自体はまだ変わらないが・・・魔理沙は嫌な予感がした。


「私のターン・・・」


魔理沙がドローしたカード・・・それは「マジシャンズ・サークル」。
魔法使い族を特殊召喚できる強力な罠カードだが・・・今、この場面では必要のないカードだ。
何せ、「幻想絆」モンスターが主な戦闘部隊となったため、魔法使い族がこのフィールドにいないためである。


(「幻想絆」モンスターは、いずれも幻想族・・・発動トリガーになることは無い。
やっぱドローしない方がよかったな・・・あれ使えばよかったんだから)


そう、魔理沙はこの場面、ドローしない手もあった。
それをしなかったのは・・・デッキ操作自体がブラフの可能性もあったからである。
とはいえ、これによってレミリアがこちらのカード効果を把握できていないのが確定した。
次からは問題なく動くことが可能。だが、「幻想絆・レミリア」のドロー効果によって、魔理沙の手札には新たなカードが加わった。
これは彼女がまだ知らないカード。魔理沙はそのカードの発動条件を満たすべく、新たにモンスターを召喚した。


「よし、ここはこいつらに任せるぜ。
私は『幻想絆・サニー』を通常召喚する!」


光り輝きながら決闘陣に舞い降りたのは、ブラウスに身を包む金髪セミロングの少女、サニーミルク。
攻守ともに700しかないが、能力自体は侮れない。


「その効果を最大限発揮するためには、他の連中も必要なんだよな・・・だからこいつを召喚させてもらう。
小鈴がいる限り、私は通常の召喚に加えてさらに1回、『幻想絆』モンスターを召喚できる!
来い、『幻想絆・ルナ』!!」


今度はサニーと似た服装だが、亜麻色に近い金髪と赤い瞳が特徴的な少女が出現。
・・・したのはいいが、盛大にずっこけ、サニーに笑われる始末である。


「・・・?」

「ああ、そうか・・・ルナは召喚、特殊召喚に成功したら守備表示になるんだったな・・・。
まあいいさ。これであと1体。の前にさらにルナの永続効果が発動するぜ!
自分の場に存在するレベル2以下の『幻想絆』モンスターの攻撃力は、300ポイントアップするぜ!」


月の光を受け、レベル2のサニーとルナの攻撃力は1000となる。
これだけではまだ頼りないが・・・魔理沙は再び手札を1枚使用する。


「さらに魔法カードも使うぜ!
『幻想絆の召喚陣』は、自分の場にモンスターが存在しない場合、または幻想族モンスターが2体以上存在する場合に発動可能な通常魔法。
デッキからレベル3以下の『幻想絆』モンスター1体を特殊召喚できるのさ!
この効果でレベル2の『幻想絆・スター』を特殊召喚するぜ!」


今度は腰までの黒髪ロングヘアーで黒い瞳の少女が出現。
こちらも攻撃力は700だが、ルナの効果で1000へと上昇する。


「さて、これで光の三妖精が揃った。その力を見せてやるぜ!
自分の場にレベル2以下の『幻想絆』モンスターが3体以上存在する場合、『幻想絆・サニー』の効果で相手はそれらを攻撃対象に選択することはできない!」


サニーの能力で3体の周囲の光が屈折。
歪んだと思うと、すぐにその姿が消えていった。


「ちっ・・・『幻想絆・小鈴』も他の『幻想絆』が存在すれば攻撃されない能力があった。
つまり、護封剣が無くなってもロックが形成されることになったわけね・・・」

「そういうことだな。
そしてルナがいる限り・・・私の場のレベル2以下の『幻想絆』モンスターは、ダイレクトアタックが可能となる!」

「!?」

「ルナ自身は守備表示で攻撃できないが、サニーとスターは攻撃可能だ!
行くぜ!姿をくらまして音も消し、隙を見つけてダイレクトアタック!!」


すると、本当に音もなく小さな弾幕が複数レミリア自身へと飛んでいく。
2体のダイレクトアタックを受けたことで2000のダメージを受け、残りライフは5600へと減少。
・・・では終わらず、今度は「幻想絆・レミリア」にさらに小さな星屑のような弾幕が飛び、その体を傷つけていく。


「何っ・・・!?」

「レベル2以下の『幻想絆』モンスターがお前にバトルダメージを与えるたび、スターの効果でお前の場のモンスターの攻撃力は200ポイントずつダウンしていく!
さらに、スターは相手がセットしたカードを確認する能力も持っているぜ!
ようやく形勢逆転だな。小鈴を守備表示に変更してターン終了だ」


小鈴が守備態勢を取ったところで、レミリアは罠カードを発動させた。


「罠カード、『幻想絆のメイド妖精部隊』!
自分フィールド上にレベル1、光属性、幻想族、攻守50の『メイド妖精トークン』4体を特殊召喚する!さあ、来なさい!!」


今度はレミリアの場にメイド服を着て、箒を持った妖精達が現れる。
いずれも貧弱なステータスだが、十分有力な使い方が存在する。


「このトークン達は幻想族モンスターが発動する効果のリリースコスト、アドバンス召喚のためのリリース以外ではリリースできず、さらに幻想族モンスターのシンクロ召喚の素材にも使用できないわ」

「幻想族モンスターを使うためなら何の問題もないわけか・・・厄介だぜ」

「私のターン」


カードを引いてレミリアの手札は4枚、一方魔理沙の手札は2枚。
状況としては隠れつつ攻撃ができる魔理沙の方が圧倒的に有利である。
だが、レミリアが引いた1枚・・・それは魔理沙にとって最悪の1枚となるカードだった。


「ふふ・・・まずはこの妖精達の弾幕を受けなさい!!」

「何・・・!?」


メイド妖精達がその手を魔理沙らに向けると、そこから無数の弾幕が放たれる。
それを受けた魔理沙のライフは4000へと減少し、サニー、ルナ、スターらの攻撃力は400ポイントダウンして600へと減少する。


「ちっ・・・それぞれ100ポイントずつ私のライフとモンスター達の攻撃力を奪うのか・・・!」

「そうよ、そして見せてあげる・・・切り札をね!
2体の『メイド妖精トークン』をリリースし・・・『幻想絆・フランドール』をアドバンス召喚!!」


遂に現れる。
今度は紅蓮の炎で形作られた剣が上空からレミリアのフィールドに突き刺さり・・・それが螺旋を描きながら霧散していくと、その場に真紅の服に瞳、金髪の少女が現れた。
フランドール・スカーレット。幻想郷の住民の中でも強力な能力を持つ吸血鬼である。
その攻撃力は2900・・・万全のレミリアすら上回る。


「このカードは特殊召喚できないのだけど・・・召喚に成功したとき、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!」

「!」

「そうね・・・この局面で鬱陶しいのは小鈴、サニー、そして護封剣の3枚・・・けどここはあえて『幻想絆・サニー』を破壊させてもらうわ!!」


フランはその手をサニーに向けると・・・手を握りしめる。
するとサニーは唐突に爆発、その場で消滅してしまった。


「・・・ありとあらゆる物を破壊する程度の能力・・・やっぱ恐ろしいな、それは」

「そしてフランの召喚によって私の手札は3枚。再び『幻想絆・レミリア』の効果によって運命を操作させてもらうわ!!」


レミリアから鎖が再び飛び出す。デッキに突き刺さり、まずは互いに1枚ずつドローしてレミリアは4枚、魔理沙は3枚。
そしてレミリアは魔理沙のデッキの上から4枚を確認。
それを見たレミリアは・・・思考に入る。


(次のドローは「死者蘇生」・・・運がいいのね。いいえ・・・この場合は運が無かったと言うべきかしら・・・。
そんなのをドローさせるわけにはいかない。このまま4番目に配置させてもらう。
さて、「幻想絆・霖之助」・・・あまり脅威じゃないけど、「幻想絆」を手札に加えさせるのは得策じゃない・・・3番目でいいわね。
残ったのは「マジシャンズ・クロス」と「メタル化・魔法反射装甲」・・・なら次にドローさせるのは「マジシャンズ・クロス」で決まりね)


その順番でレミリアはデッキトップを操作。
魔法使い族がいないため「マジシャンズ・クロス」は完全に腐る。本来はリリーをサポートするためのものなのだろうが、それが仇となった。
さらに、レミリアは先ほど引いた1枚をそのまま使用する。


「速攻魔法、『サイクロン』!フィールドの魔法、罠カード1枚を破壊するわ。
当然『光の護封剣』を破壊!!」


文字通りの「サイクロン」がフィールドに発生。「光の護封剣」を消し飛ばし、攻撃を妨げる障害を取り除いた。


「これは・・・まずいな」

「さらに罠カード、『メテオ・レイン』!このターン、自分のモンスターは守備モンスターを攻撃したとき、その守備力を攻撃力が超えていた分の貫通ダメージを相手に与える!
雑魚モンスターを蹴散らし、その痛みを受けなさい!!」


「幻想絆・レミリア」は紅い槍を手に、「幻想絆・フランドール」は炎の剣を手にして、それぞれ「幻想絆・ルナ」と「幻想絆・スター」に突進を仕掛ける。
レミリアの槍はルナを貫いて破壊し、フランの剣はスターを斬り裂いて破壊、その衝撃は魔理沙へと伝わり、そのまま吹き飛ばした。


「ぐっ・・・あっ!!」


ドサッ、と地面にたたきつけられる魔理沙。
大ダメージではあるが、2400-700の1700、2900-700の2200、合計3900のダメージであったため、ギリギリライフを100残すことに成功した。


「ふん、惜しくも残ったか・・・けど次のターンになれば、『メイド妖精トークン』でとどめを刺せる数値になる・・・もうあなたに手は残されていない・・・ターン終了よ」


カードを伏せることなくターンを終了させたレミリア。
が、もはや魔理沙に余裕は残されていない。何せ・・・。


(・・・伏せカードに臆することなくせめてくるんだもんなぁ・・・こいつは「死者転生」・・・手札1枚をコストにモンスターを墓地から手札に戻すカードだ。
うーん、こんなことならリリーを加えて攻めたほうがよかったか・・・?いや、それはそれでやばかったか・・・)


今度はライフが2400となり、「メイド妖精トークン」の効果を受けることでライフが2000。ギリギリ支払えない数値となり、そのままとどめを刺されていたのだ。これは正しい判断である。
どうにか立ち上がり、決闘陣に戻る魔理沙。しかし・・・体へのダメージは想像以上だった。


(こいつは確かにきつい。このまま負けたら・・・なんて考えたくもないな)

「もう一つ教えてあげるわ。『幻想絆・フランドール』は相手のメインフェイズ1終了時に、フィールドのカード1枚を破壊する能力を備えている。
下手な布陣を敷いて攻めに回っても・・・無意味よ」

(このうえ運命を操作されているんだもんなぁ・・・もはや絶望的・・・と言いたいところだが。
・・・その運命操作が、この状況を打開するきっかけとなるんだぜ?)


そして魔理沙は自分のターンへ移行・・・すると、魔理沙の墓地が光を漏らす。


「・・・何・・・!?」

「こいつか?こいつはな・・・希望の光・・・かもな?」


ライフが満身創痍の状況。
魔理沙の希望は・・・まだ潰えてはいなかった。




後書き

長い!でも書きました。うーん、情景描写がだいぶ甘くなってきたなー。
今回はどちらも「幻想絆」を軸にして動いています。
が、魔理沙の方はリリービートと混合させたツケが回ってきています。「幻想絆・レミリア」の効果によって完全に腐る要因となる魔法使いサポートを無理やり手札に加えさせられているわけですからね・・・みんなは必ずどっちかのコンセプトに統一しろよ!

さて、次回も長くなるかもですが、魔理沙VSレミリアは次で終わらせたいです。
さっさと早苗さんの方にもシフトしたいですしね・・・では。
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