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ベクター「悪魔の死後」 作:ゼット

──暗い。

アストラル世界にも、バリアン世界にも行けないだろうとは思っていたが、こんな場所に着くとは……ここが地獄とでも言うんだろうか。

ドン・サウザンドに取り込まれてからの記憶は無かった。しばらくして、大嫌いなヤツと共に戦う羽目になって、ヤツが敗北した。すると俺は、この暗闇に放り込まれたわけだ。

他のヤツらは、アストラル世界に行けただろうか。

……いや、それよりも、だ。

アイツは──遊馬は……どうしているだろうか。

笑える話だ。あんなにムゴい裏切り方をしてやったのに、今はソイツの心配をしている俺がいる。

そもそも俺が遊馬に近づいたのは、何故だったんだろう。


「──ベクター……」


誰かの呼び声。聞き覚えがある。これは……

ベクター「アストラル……か……」

アストラル「久しぶりだな。助けに来た」

ベクター「助けに、ね……ククッ……どうかしちまったのか?」

アストラル「憎まれ口は健在のようだな、まったく」

ベクター「悪いな、これが俺なんでね」

アストラル「……ベクター。君を人間として遊馬たちの元に生き返らせたい」

ベクター「……する価値があんのか?他の七皇は、そんなの望んじゃいねぇだろうよ」

これは本音だ。

確かに助かりたい自分もいる。でも、俺がしたことは許されることじゃない。最期に遊馬を見て、そう思った。

ベクター「少なくともナッシュは、それを許さねぇ……」

アストラル「……ナッシュは、君も助けるつもりだったようだぞ。彼は決して、君たちの命を諦めなかった」

ベクター「……だとしても、だ」

アストラル「……なら、こうしよう。私はヌメロンコードの力を手にしている。言わば、神にも等しい存在だ。君は神の命令に背くというのか?」

ベクター「ハッ、そんな脅しに俺が従うと思ってんのか?甘ぇんだよ」

アストラル「……フッ、君らしいな」

ベクター「……そうかもな」

アストラル「……君には断られたが、私は使命を果たすぞ?」

ベクター「バリアン世界を滅ぼす──か?」

アストラル「いや。君たち七皇を救う、だ」

ベクター「……勝手にしろ。どこへ行こうと、俺にとっては地獄だ」

アストラル「……では、そうさせてもらおう」



そして、俺は生き返った。

それで今はこうして、七皇やトロン一家……遊馬たちと共に、アストラル世界を救いに行こうとしている。

アストラルには感謝してるつもりだ。その恩返しとしても、今回の戦い──負けるわけにはいかない。

遊馬「な……なぁ、真げ……ベ、ベクター」

ふと、遊馬が恥じらいながら話しかけてきた。

ベクター「なんだよ?」

遊馬「その……俺たち、仲間でいいんだよな?」

ベクター「……」

──本当に馬鹿馬鹿しい。

でも、悪い気分じゃない。遊馬は、俺を──

「何言ってるんだ、遊馬」

急に割って入ってきたのは──俺の大嫌いだった、アイツだった。

ベクター「ナッシュ……」

シャーク「いや……今の俺は、神代凌牙……シャークだ」

自分で自分をシャークとか、馬鹿みてぇだ。でも、アイツはシャークであることが嬉しいみたいだ──遊馬の仲間である、神代凌牙でいられることが。

シャーク「ベクターも、バリアン七皇の一人。仲間に決まってるだろ」

遊馬「そうか……そうだよな!」

お人好しが嬉しそうにしてやがる。

遊馬「よし、し……ベクター!一緒に頑張ろうぜ!」

ベクター「……やめてくれよ、遊馬君」

遊馬「え?」

そうだ……

ナッシュがシャーク……神代凌牙であるように、俺も。

ベクター「真月、でいいぜ」

遊馬「……!」

真月「……何、黙ってんだよ」

遊馬「……っ、何でもねぇよ!よっしゃ、頑張ろうぜ、真月!」

真月「ああ……よかれと思って、全力で戦うぜ!」

真月零でいられるのが、すごく嬉しいのかもしれない。

そして……また「真月」って呼んでくれてありがとな、遊馬。



END

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