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遊☆戯☆王V☆S(ファイブスター)/Episode76:神速の決闘 作:カズ

MEIJI→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


HUGO→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0


*TURN01
 先攻はユーゴから。ユートやユーリとも肩を並べるほどの実力を持つ彼のデュエルタクティクスは如何ほどのものか。


「よっしゃあ、アクセル全開で行くぜ!自分フィールドにモンスターが存在しないことで、俺は手札から『SRベイゴマックス』を特殊召喚!さらにその効果で、デッキから『SRタケトンボーグ』を手札に加えるぜ」


 今も尚制限カードに規定されているベイゴマックスを1ターン目から引き当て、後続のタケトンボーグもデッキから回収し、手札からそれを特殊召喚した。


「タケトンボーグの効果発動!このカードをリリースして、デッキから『SR赤目のダイス』を特殊召喚!赤目のダイスの効果で、ベイゴマックスのレベルを6に変更するぜ」
「…いきなり『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』を呼ぶつもりか」


 ユーゴの持つ禁忌の四龍ことクリアウィング・シンクロ・ドラゴンには、「レベル5以上のモンスター効果の発動」及び「レベル5以上のモンスターを対象とするモンスター効果」を無効にして破壊する効果を持っている。しかしユーゴはその予想の逆を行き、命慈に目にものをみせるつもりだ。


「甘いぜ。俺のクリアウィングが1種類だけだと思うなよ!俺はレベル6のベイゴマックスに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!!現れよ、『クリアウィング・ファスト・ドラゴン』!!」



〇クリアウィング・ファスト・ドラゴン(Lv7 風)
ドラゴン族/シンクロ/ペンデュラム/効果
攻2500/守2000
【Pスケール:青4/赤4】
「クリアウィング・ファスト・ドラゴン」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。①:レベルの合計が7になるように、自分フィールドの表側表示の、「スピードロイド」チューナー1体とチューナー以外のモンスター1体を墓地へ送って発動できる。Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。
【モンスター効果】
チューナー+チューナー以外の風属性モンスター1体以上
「クリアウィング・ファスト・ドラゴン」の①のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。①:エクストラデッキから特殊召喚された相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化される。この効果は相手ターンでも発動できる。②:モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。



「ファスト……ドラゴン?!」
「どーだ!しかもこいつはシンクロペンデュラムモンスターだから、フィールド次第で何度でも復活できるぜ!」


 禁忌の四龍と呼ばれるオッドアイズ、ダーク・リベリオン、クリアウィング、スターヴ・ヴェノムは姿形を変え、別個体としてこの世界に浸透していた。その内の1体が『クリアウィング・ファスト・ドラゴン』であり、オッドアイズと同様にペンデュラムの力を内包している。


「まだ通常召喚はやってねーからな。俺は手札から『SRダブルヨーヨー』を召喚し、効果発動!墓地の赤目のダイスを特殊召喚!」


 墓地から赤目のダイスを復活させたが、そのモンスター効果は失われていない。そのメリットを上手く活用し、ダブルヨーヨーのレベルを変動させることで更なるシンクロ召喚へと紡いだのだ。


「俺はレベル5のダブルヨーヨーに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!シンクロ召喚!!現れよ、レベル6『HSR魔剣ダーマ』!!」


 わずか2枚の手札消費で2体のシンクロモンスターを速攻で呼び出した。ユートやユーリとは違い、ユーゴは終始フルスロットルで全てのデュエルを行なうようにプログラムされている。クリアウィング・シンクロ・ドラゴンをコアとしたことで形成された彼の性格と相俟って、4体のアンドロイドの中で最も超攻撃型なスタイルになったのだ。


「魔剣ダーマの効果発動!俺の墓地からダブルヨーヨーを除外して、お前に500ポイントのダメージだ!」
「うっ…!だけど、このくらい掠り傷さ」
「油断してると痛い目に遭うぜ?俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」
HUGO→LP:8000 手札:2 デッキ:33 Mゾーン:2 M・Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN02
「僕のターン、ドロー!」
「この瞬間、俺はファスト・ドラゴンを対象として永続罠『追走の翼』を発動だ!」


〇追走の翼(永続罠)
自分フィールドのSモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターは戦闘及び相手の効果では破壊されない。②:対象のモンスターがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスターを破壊する。対象のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。③:対象のモンスターがフィールドから離れた場合にこのカードは破壊される。


「戦闘破壊は不可能……か。なら丁度いいや」
「どーした?お前も【スピードロイド】使いだったってエースから聞かされていたけど、もう諦めちまったのか?」
「まさか。僕のエースを最大限活躍させるにはこれ以上ないサンドバッグになりそうだなって思っただけ!まずは手札から永続魔法『カスタム・ボックス』を発動!」


 命慈のデッキは永続魔法を起点とすることで、少ない手札でもデッキから欲しいモンスターを確実に特殊召喚できる。尤も先ほど発動したカスタム・ボックスのように、装備魔法をコストとしなければならないカードも存在するが、大したディスアドバンテージになるわけではない。


「自分フィールドにモンスターが存在しないことで、手札から『PTスパナ』を特殊召喚!スパナの効果で、デッキから『PTシザーズ』を手札に。そして永続魔法『カスタム・ボックス』の効果発動!手札の装備魔法『白銀の翼』をデッキに戻し、デッキから『PTアダプター』を特殊召喚する!」
「……面白ぇ。デッキがガンガン回ってやがる」
「アダプターの効果発動!スパナのレベルを3から4に変更する。そしてレベル4のスパナに、レベル3のアダプターをチューニング!シンクロ召喚!!出でよ、『パワー・ツール・ドラゴン』!!」


 ここまでは召喚権を使わずユーゴの出方を伺うプレイングに徹しているが、ファスト・ドラゴンの効果をどのタイミングで発動してくるかがこのターンの鍵になる。


「『パワー・ツール・ドラゴン』の効果発動!デッキから装備魔法3枚を相手に見せ、その中から1枚を相手が選び、僕はその選んだカードを手札に加えることが出来る!」
「なら俺は、ここでファスト・ドラゴンの効果発動!パワー・ツールの効果を無効にして、その攻撃力を0にする!」


 もしもユーゴがファスト・ドラゴンではなくシンクロ・ドラゴンの方を呼び出していればパワー・ツール・ドラゴンは無残に散っていたところだったが、そうでなくてもファスト・ドラゴンは追走の翼によって破壊効果を獲得している。戦闘及び効果でも破壊不可能という鬼門を突破したいところだが、まだこのターンでは行えないことを命慈は分かっている。しかし、このままターンエンドと言わず次の手を講じるのが彼だ。


「僕はレベル7のパワー・ツール・ドラゴン1体でアナザー・ディメンションゲートを解放!ビヨンド召喚!!グレード7『ハイパワー・ツール・ドラグーン』!!」
「シンクロの次はビヨンドか。だが、ソイツを呼んだところでファスト・ドラゴンは倒せねえ!」
「それはそっちも同じこと。レベルを持たないビヨンドモンスターは、追走の翼による破壊効果を受けないからね」


 戦闘時に追走の翼の効果を発動させないためには、レベル5以上でなければよい。レベル4以下に頼るのは望みが薄いが、レベルという概念が存在しないエクシーズモンスターやビヨンドモンスターを用いればその条件を容易に満たせる。


「僕は魔法カード『再充填』を発動!フィールドの機械族モンスターは全部で2体。よって1000ポイントのライフを回復し、デッキから『PTキッド』を特殊召喚!そして特殊召喚したキッドの効果で手札を1枚捨てて、デッキから『PTボルト』と装備魔法『団結の力』を手札に加える。そしてハイパワー・ツール・ドラグーンのモンスター効果発動!自分がデッキから装備魔法を加えたことで、僕のライフを1000ポイント回復する!」
MEIJI→LP:9500


 巧みにデッキを操作しながらも自分のライフゲインを怠らない。精一・命慈の双方が得意とした戦術によって着々と差をつけようとしているが、これもスピードロイドの爆発力を見越した上での行為である。自分が以前使っていたデッキだからこそ、その対処法も自分が一番よく分かっているのだ。


「俺より1ターンが長いんじゃねえか?」
「そろそろ終わるよ。僕は『PTボルト』を通常召喚して、効果発動!このカードのレベルを1から5に変更する!そしてレベル1の『PTキッド』にレベル5の『PTボルト』をチューニング!虚空を貫く眩い弾丸よ、音速を超えて天に轟け。シンクロ召喚!!現れよ、レベル6『SPTシルバー・ブレット』!!」


 鈍く輝く純銀の弾丸は、命慈が自分の意志を貫くかのごとく唯々真っ直ぐに天空を割りながらフィールドに降りた。シンプルな外見に反してその一撃は何よりも鋭く、一撃で全てを粉砕する。


「バトル!シルバー・ブレットで魔剣ダーマを攻撃!」
「ぐっ…!だが、たったの100ダメージくらいどうってことないぜ!」
「それはどうかな?『PTボルト』をシンクロ素材としたシルバー・ブレットが戦闘で相手モンスターを破壊したことで、モンスター効果発動!破壊した魔剣ダーマを自らの装備カードにし、このカードの攻守を500ポイントアップさせる!」


 「スピードロイド」の関連カードに『ヒドゥン・ショット』があるが、そのカードは墓地の『スピードロイド』を2体まで除外することで、除外した枚数まで相手のカードを破壊する効果を持っている。しかし、高速シンクロで次々とモンスターを墓地へ送るスピードロイドにとって、命慈が発動した「装備カードとする」効果や「墓地へ送らず除外する」効果を持つ相手とは噛み合わない。命慈にとって馴染み深いデッキだったからこそ、少ない弱点を正確に狙い撃つことが出来たのだ。


「続けてハイパワー・ツール・ドラグーンでクリアウィング・ファスト・ドラゴンを攻撃!」
「追走の翼の効果でファスト・ドラゴンは破壊されねえが、ダメージは受ける…!ぐっ」
HUGO→LP:7600


 このターンで与えたダメージは僅か400だが、同時に自身のライフゲインによって差を広げることは出来た。スピードロイドは一撃が重く、尚且つ速攻に特化しているため少しでも気を緩めれば一瞬で敗北するやもしれないデッキだ。そのために彼は攻撃よりも守備に重きを置いたのだ。


「僕はカードを1枚伏せてターンエンド!」
MEIJI→LP:9500 手札:2 デッキ:29 Mゾーン:2 M・Tゾーン:3 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN03
「俺のターン、ドロー!」


 ユーゴのフィールドに追走の翼が存在し続ける間、ファスト・ドラゴンを戦闘および効果で破壊することは不可能であり、仮にそれを凌いだとしても後続に控えているモンスターで追撃をかけてくる。長期戦になればなるほど、命慈は進退窮まる状況に追いやられてしまうが、果たしてどうするのか。


「いくぜ、俺は手札から魔法カード『スピードリバース』を発動!その効果で墓地のベイゴマックスを特殊召喚!そしてベイゴマックスの効果で、デッキから2体目のタケトンボーグを手札に加えるぜ」
「僕はここで永続罠『ロック・ボックス』を発動!これで僕のパワー・ツールモンスターは1ターンに1度だけ戦闘と効果による破壊を防げる!」
「それしきの小細工をしたところで、俺を止めることは出来ねえぜ!ベイゴマックスの効果で手札に加えたタケトンボーグを特殊召喚し、効果発動!このカードをリリースし、デッキから『SR-OMKガム』を特殊召喚!」



〇SR-OMKガム(Lv1 風)
機械族/チューナー/効果
攻0/守800
①:自分・相手のバトルフェイズに自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。②:このカードの効果でこのカードが特殊召喚に成功したバトルフェイズに発動できる。このカードを含む自分フィールドの風属性モンスターのみをS素材としてS召喚する。③:このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、そのカードが「スピードロイド」モンスターだった場合、このカードをS素材としたSモンスターの攻撃力は1000アップする。



「俺はレベル3のベイゴマックスに、レベル1のOMKガムをチューニング!幾千の顔を持つ迷宮の影よ、その鋭き刃で混沌の闇を切り裂け!シンクロ召喚!!現れよ、レベル4『HSR快刀乱破ズール』!!」


〇HSR快刀乱破ズール(Lv4 風)
機械族/シンクロ/効果
攻1300/守1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
①:このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージステップ終了時まで倍になる。②:S召喚したこのカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、「HSR快刀乱破ズール」以外の自分の墓地の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。



快刀乱破ズールは命慈も使用したことのないシンクロモンスターだが、その効果は頭に入っている。元々の攻撃力は乏しいものの、一時的に攻撃力を倍化して相手モンスターを倒す様は正に快刀乱麻といってもよいだろう。


「まだまだ!シンクロ素材として墓地へ送られたOMKガムの効果発動!デッキの一番上のカードを墓地へ送り、そのカードがスピードロイドだった場合、ズールの攻撃力は1000ポイントアップする!頼むぜ……俺のデッキ!」
「…吉と出るか、凶と出るか」


 ユーゴは静かにデッキトップをめくった。彼が引き当てたカードは『SRドミノバタフライ』であり、「スピードロイド」に属するモンスターの中では珍しい「ペンデュラムモンスター」だ。モンスターカードを引き当てただけでも外れではなくなったのだが、この場合は当たりとも言い難い。
 先述した通り、ドミノバタフライは貴重なペンデュラムモンスターであるため、本来なら手札に来るべきカードだったのだ。これにはユーゴも唸り声を上げたが、切り替えが早いのも彼の性質。即座に次のモンスターを呼ぶつもりだ。


「俺は手札から『SRオハジキッド』を通常召喚して、効果発動!お前の墓地から『PTアダプター』を特殊召喚して、このカードとPTアダプターでシンクロ召喚を行なう!」
「くっ…!互いにシンクロを使うことが、徒になるとはね」
「俺はレベル3のオハジキッドに、レベル2のアダプターをチューニング!鉄(くろがね)の双翼携えて、光をも上回る速さで天空を駆け上がれ!シンクロ召喚!!現れよ、レベル5『HSRマッハゴー・イータ』!!」



〇SRオハジキッド(Lv3 風)
機械族/効果
攻1000/守 200
①:このカードが召喚に成功した時、自分または相手の墓地のチューナー1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、そのモンスターとこのカードのみを素材として風属性のSモンスター1体をS召喚する。


〇HSRマッハゴー・イータ(Lv5 風)
機械族/シンクロ/効果
攻2000/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「HSRマッハゴー・イータ」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードをリリースして発動できる。フィールドの全ての表側表示モンスターのレベルはターン終了時まで1つ上がる。この効果は相手ターンでも発動できる。②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スピードロイド」チューナーが存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は風属性モンスターしか特殊召喚できない。



 怒濤の連続シンクロを決め、3ターン目にしてユーゴのフィールドには3体のシンクロモンスターが集った。そして、ここからがユーゴの真骨頂。


「ファスト・ドラゴンの効果発動!ターン終了時までシルバー・ブレットの効果を無効にして、攻撃力を0にする!どうやら、先にサンドバッグ用意できたのは俺だったな!バトルだ!マッハゴー・イータで、シルバー・ブレットに攻撃!」
「うぐぅっ…!」
MEIJI→LP:7500


 1度だけ戦闘及び効果での破壊を防げる永続罠『ロック・ボックス』の効果までも逆手に取り、命慈を痛みつけていった。続くファスト・ドラゴンの第二打によって追加で2500ものダメージを受け、残りライフは5000になった。


「まだまだぁ!!攻撃力2300の快刀乱破ズールで、ハイパワー・ツール・ドラグーンを攻撃!そしてズールの効果で、ダメージステップ終了時まで攻撃力を2倍にする!」
「ぐっ…!」
MEIJI→LP:3200



 あっという間に6000ポイント以上ものライフを削られたが、すんでの所で3000を下回っていないことを考えればまだ救いはある。まだ召喚していないが、ユーゴのエースモンスターはレベル5以上のモンスターならば如何なる攻撃力を持とうが全てが無力となり、このデュエルの勝利を約束する「禁呪の四龍」の内の1体。
 命慈がこのデュエルに勝利するためには、その「禁呪の四龍」が召喚される前にユーゴのライフポイントを0にするか、自らのライフポイントを底上げして繋げる以外に道が絶たれてしまったのだ。


「おいおい、あっけねえなぁ。俺はこれでターンエンド!」
HUGO→LP:7600 手札:1 デッキ:29 Mゾーン:3 M・Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN04
「僕のターン…ドロー!」


 まだ負けていないとはいえ、命慈は返しのターンだけでここまで劣勢に追い込まれるほどの損失を被ったのだ。しかし、彼はこのまま食い下がるような男ではない。


「まだ、やれる!手札から魔法カード『パーツ交換』を発動!手札の『PTシザーズ』をデッキに戻してシャッフル。そしてデッキからカードを2枚ドローする!」
「…このドローが、このデュエルの展開を大きく左右するのか……」


 固唾を呑んで見守っていた尚志も、この時ばかりは切に願っていた。何せこれは、ユーゴから第二次アストラル大戦よりも重要な情報を引き出すために、命慈には是が非でも勝ってほしいデュエル。しかし今の状況は決してよくないため、それさえ好転すれば逆転の可能性を掴めるかもしれないのだから。


「…よし、来てくれた。永続魔法『アイテム・ボックス』を発動!その効果でデッキの一番上のカードを公開し、そのカードが『パワー・ツール』モンスターだった場合、特殊召喚できる!」
「出た!命慈さんのキーカード!」
「そのカードは……『PTシザーズ』!このカードを特殊召喚して、効果発動!このカードをリリースすることで、デッキから装備魔法カード『USBメモリー』を手札に加える。そして相手フィールドのカード1枚を破壊する!そのターゲットは……追走の翼!!」


 クリアウィング・ファスト・ドラゴンが効果を無効に出来るのは「エクストラデッキから特殊召喚したモンスター」のみ。そして『追走の翼』はモンスターに完全耐性を付与できるものの自らを守る術はない。どんなに強力なカードが盤面に並べられていようとも、必ず弱点というものは存在する。命慈はそれを完璧に攻略したのだ。


「くっそー!!……だが、クリアウィング・ファスト・ドラゴンの効果発動!ハイパワー・ツール・ドラグーンの効果を無効にして、攻撃力を0にするぜ!」
「なら僕も、今手札に加えた装備魔法『USBメモリー』をハイパワー・ツール・ドラグーンに装備。そして『PTリサイクラー』を通常召喚して、効果発動!墓地の『PTボルト』を特殊召喚!」


 命慈は墓地から蘇ったボルトの効果を発動し、リサイクラーのレベルを4から5へと変更し、その2体をチューニングしてレベル6の『SPTアームド・クレーン』をシンクロ召喚した。


「アームド・クレーンがシンクロ召喚に成功したことで、僕は墓地の『PTシザーズ』を手札に戻す。そして速攻魔法『サイクロン』を発動し、僕の永続罠『ロック・ボックス』を破壊する!」
「自分で自分のカードを破壊するだと?!ってことは……何かあるだろ?」
「まあね。破壊されたロック・ボックスの効果発動!墓地のレベル4以下のパワー・ツールと名の付いたモンスター2体を守備表示で特殊召喚する!蘇れ、『PTスパナ』『PTボルト』!!」


 命慈のデッキのサポートカードは永続魔法と永続罠、そして装備魔法が大半を占めており、破壊するための手段が無い限りフィールドに残り続ける。5枚という限られた枠組みの中で永続魔法・罠と装備魔法、この3種類のカードがどういったバランスで存在するかによって、このデッキの明暗がはっきりするというわけであり、綿密なバックコントロールを要するのだ。


「スパナの効果でデッキから『PTドロイド』を手札に加えて、ボルトの効果で自らのレベルを1から2へと変更する。そして僕はレベル6のアームド・クレーンにレベル2のボルトをチューニング!シンクロ召喚!!レベル8『SPTデルタギア』!!」


 ビューティ・ライフをシンクロ召喚できない現状に於ける最強のモンスターを顕現させ、このターンでユーゴとの差を縮めようと命慈は躍起になっていた。只管に目の前にいる敵に勝ちたいという思いが、今の、そしてこれからの彼を築く礎となっているのだ。
 連続攻撃のデルタギア、装備魔法により戦闘に於いてほぼ無敵になったハイパワー・ツール・ドラグーンの2体が存在しているこの状態で、ユーゴにはセットカードがない。ましてや残り1枚しかない手札も、これから起こる波状攻撃を鎮めるカードではなかった。


「シンクロ素材として墓地へ送られたアームド・クレーンの効果発動!墓地の『SPTシルバー・ブレット』『PTアダプター』『PTキッド』の3枚をデッキに戻し、カードを1枚ドローする!」
「おいおい……まだ回るのかよ」
「勿論。自分フィールドにパワー・ツールと名の付いたモンスターが2体以上存在することで、手札の『PTステープラー』は特殊召喚できる!」


 命慈のフィールドにはまだスパナが残っており、尚且つ、先ほど特殊召喚したステープラーはチューナーモンスターだ。彼はレベル4のスパナとレベル1のステープラーを素材として、レベル5の『SPTリニアモーター“Zero”』をシンクロ召喚した。


「リニアモーター“Zero”がシンクロ召喚に成功したことで、モンスター効果発動!フィールドの機械族モンスター以外の全てのモンスターの攻撃力を0にする!アブソリュート・ダウンフォース!!」
「なぁっ!俺のファスト・ドラゴンが丸裸に!?」


 第2ターン目とは打って変わって、今度は攻撃にシフトチェンジした。攻守のギアチェンジのタイミングをしっかりと見極め、即座に実行に移せるスキルはデュエルに於いて欠かせないものだが、命慈にはその素質がある。


「バトル!まずはデルタギアでファスト・ドラゴンを攻撃!ギア・ブーメラン第一打!!」
「ぐぅっ!だがファスト・ドラゴンは、破壊された時にペンデュラムゾーンへ……」
「置かせない!PTボルトをシンクロ素材としてシンクロ召喚したデルタギアが、戦闘で相手モンスターを破壊したことで、そのカードを自身の装備カードにできる。これでファスト・ドラゴンがペンデュラムゾーンから復活することはなくなったよ!」



 デッキという工具箱に収納された部品を巧みに使い分け、翻弄する。ユーゴという強敵相手でも【PT】本来の戦術を使いこなしており、命慈はデュエルの中で、3つの目標達成へ向けて着々と歩を進めていた。


「まだまだ!デルタギアでマッハゴー・イータを攻撃!ギア・ブーメラン第二打!!」
「うぐっ…!」
「デルタギアが戦闘破壊したマッハゴー・イータも、装備カードとして頂戴するね」
HUGO→LP:2700


 チューナーがフィールドに存在することで復活出来るマッハゴー・イータは、フィールドよりも墓地に留まっていることで光るカードだ。しかし、そのカードから発生するコンボの凶悪さを理解していた命慈は、本来の居場所をも奪い去ったのだ。
 この2回の攻撃だけで4900もの特大ダメージをお見舞いし、ユーゴの残りライフは早くも2700となり、大逆転を果たした。命慈は続けてハイパワー・ツール・ドラグーンで攻撃を仕掛けたが、ファスト・ドラゴンの打ち込んだ楔によって攻撃力は0になっている。彼が単に自爆特効をするような人間ではないと分かっているユーゴは、間髪入れずにズールの効果を発動した。


「快刀乱波ズールの効果発動!このバトルのダメージステップ開始時から終了時まで、自らの攻撃力を倍にする!」
「この瞬間、ハイパワー・ツール・ドラグーンに装備した装備魔法『USBメモリー』の効果発動!ダメージ計算時に、装備モンスターの攻撃力は、戦闘を行なう相手モンスターの攻撃力に100を加えた数値となる!」


 しかし命慈はその上を行く。彼の発動したUSBメモリーにより、たとえユーゴが攻撃力10000を超えるモンスターを召喚したとしても、発動タイミングの都合により攻撃力が必ず100だけ上回る。つまり、ユーゴはUSBメモリーを破壊しない限り、ハイパワー・ツール・ドラグーンを倒すことは不可能なのだ。


「これでラスト!リニアモーター“Zero”でダイレクトアタック!」
「ぐわあぁぁーーっ!!」
HUGO→LP:600


 辛うじて生き延びたユーゴだったが、モンスターも伏せカードも無く、おまけに手札は1枚のみ。次のターンで何もアクションを起こさなければ命慈の勝利は確定だが、ライフが0になるかデッキのカードが無くなるまで決着が付かないのがデュエルであり、ユーゴの運命力次第では次のターンで大どんでん返しも起こり得る状況なのもまた事実。


「流石にこのターンでは決めきれなかったか……。だけど僕はこのデュエル、絶対に勝つ!エンドフェイズに移行し、墓地の『PTステープラー』の効果発動!墓地の魔法カード『再充填』を回収してターンエンド。そしてファスト・ドラゴンの効果も終了し、ハイパワー・ツール・ドラグーンの攻撃力は元に戻る」
MEIJI→LP:3200 手札:3 デッキ:25 Mゾーン:3 M・Tゾーン:5 Fゾーン:0 Pゾーン:0





~現在の状況~
MEIJI→LP:3200 手札:3 デッキ:25 Mゾーン:3 M・Tゾーン:5 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


HUGO→LP:600 手札:1 デッキ:29 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0
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ター坊
ユーゴはどの次元でもソリティアするな。
お互いにサンドバックにする果敢な攻め、案外似た者同士でしょうかね? (2017-11-14 16:20)
カズ
ター坊さん
お久しぶりです。そしてコメントありがとうございます。
ユーゴといえばやはりソリティア且つ攻撃的なデュエルですが、命慈もそれに負けぬような攻防一体のデュエル運びをしてきました。命慈が圧倒的有利な状況で終わりましたが、次回、このデュエルがどう決着するのか。お楽しみに。
>お互いにサンドバックにする果敢な攻め、案外似た者同士でしょうかね?
ユーゴは熱い闘志を全力で表に出していますが、命慈もユーゴに負けない程の闘志を内に秘めており、一度スイッチが入ったら止められません。そう考えれば似た者同士ですね。 (2017-11-14 19:18)

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4 Episode31:禁断の無限暗黒竜 528 2 2015-12-12 -
6 番外編02:凛と紅葉が… 371 0 2016-01-05 -
6 Episode32:パワー・ツール 385 3 2016-01-29 -
6 Episode33:死した希望の使者 318 2 2016-01-31 -
5 Episode34:高貴の翼 397 4 2016-02-04 -
6 Epi35:戦慄のリバースビヨンド 356 1 2016-02-13 -
8 Epi36:加速するカウントダウン 401 2 2016-02-20 -
7 Epi37:希望のカード『V☆S』 398 3 2016-03-25 -
5 Episode38:朱色の夜 319 0 2016-04-11 -
5 Episode39:並び立つ盟友 385 2 2016-04-22 -
8 Episode40:精一と彩 452 2 2016-05-30 -
5 Episode41:漆黒の鎮魂歌 373 4 2016-06-22 -
5 Episode42:涅槃の境地へ 372 2 2016-07-02 -
4 Episode43:トワノキズナ 332 3 2016-07-23 -
2 Episode44:銀河と宇宙 350 3 2016-08-09 -
5 Episode45:銀河眼vs宇宙眼 333 0 2016-08-20 -
2 Episode46:絶望の凱旋 265 0 2016-08-24 -
4 Episode47:刻まれた記憶の欠片 259 1 2016-09-06 -
10 Episode48:希望の行方 245 0 2016-09-13 -
4 Episode49:悪夢の決戦前夜 252 0 2016-10-03 -
5 Episode50:創世の星屑竜 245 0 2016-10-25 -
0 Episode51:託された未来 256 0 2016-10-30 -
1 番外編03:遊弥と花奈の... 256 2 2016-11-02 -
3 未投稿オリカ紹介① 280 0 2016-11-09 -
2 未投稿オリカ紹介② 225 0 2016-11-26 -
2 未投稿オリカ紹介③ 267 0 2016-12-08 -
3 未投稿オリカ紹介④ 261 0 2016-12-20 -
6 未投稿オリカ紹介⑤ 215 0 2016-12-30 -
4 Episode52:極寒の夏 192 2 2017-01-01 -
31 Episode53:闇の邂逅 213 2 2017-01-07 -
3 Episode54:呪縛竜復活 180 0 2017-01-11 -
5 Episode55:届かぬ声で... 181 2 2017-01-15 -
2 Episode56:禁忌の目覚め 206 5 2017-01-19 -
3 Episode57:共鳴する四龍 210 4 2017-01-25 -
5 Episode58:本当の気持ち 204 3 2017-01-30 -
4 Episode59:真実への鍵 198 2 2017-02-08 -
4 IF01:バレンタインデー 247 6 2017-02-11 -
1 Episode60:エレンとアレックス 235 3 2017-02-16 -
30 ルール改訂と今後の進行について 340 2 2017-02-18 -
4 Episode61:想いの証 201 5 2017-02-21 -
3 Episode62:茨の道標 237 5 2017-02-27 -
5 Episode63:光と闇の花 187 3 2017-03-20 -
7 Episode64:渇望と葛藤 177 2 2017-03-23 -
5 Episode65:麗しき孤月 150 2 2017-03-29 -
44 Episode66:月夜のイリュージョン 223 2 2017-04-21 -
15 Episode67:常闇に消える月華 292 1 2017-05-05 -
10 Episode68:模索者たち 107 4 2017-07-22 -
12 Episode69:純黒の反逆者 119 0 2017-07-27 -
8 Episode70:紅と黒の禁呪 118 2 2017-08-07 -
7 Episode71:希望は往く 116 3 2017-08-17 -
9 Episode72:リリーの過去 103 2 2017-08-24 -
5 Episode73:異次元の亡霊 96 2 2017-09-13 -
4 Episode74:覚醒の鼓動 91 3 2017-09-22 -
5 Episode75:挑戦者の儀 96 0 2017-10-05 -
3 Episode76:神速の決闘 65 2 2017-11-14 -

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