Ep8　動き出す敵　作：ター坊

ハゲに殴られ踞る遊路。
「ったく。でしゃばんじゃねぇ…あっ？」
ハゲの腕を掴む手―遊月のものだった。
「なんだこのアマ？」
「よくも遊路様を…」








グイッ！ゴキャベキャッ！！

「あ゛あ゛ぁぁっ！」
遊月はハゲの手首と肩を抑え思いっきり腕を真後ろに引き上げると、激しく骨が折れる音と共にハゲの肘が本来曲がる筈のない方向に直角に固定される。
「この野郎！」
デブが突進する。が―
「ぐべぁ！」
カウンター気味に遊月のストレートが決まり、デブの口から歯が３、４本飛び散る。
「う、うわぁぁっ！」
チビは転んで靴が脱げたのも忘れて逃げていく。
「ひ、ひひぇぇぇ！」
「あ゛…あ゛…！待って゛！！」
デブも口を抑えながら走り逃げたがハゲは骨折の激痛で上手く動けない。
「お待ちなさい」
「ひっ！」
遊月がハゲの折れてない方の腕を掴む。
「遊月。もう止めてやれ」
その時、遊路がストップを掛ける。
「ですが…」
「ここまで痛めつければ充分だ。俺はもう大丈夫だから」
「…はい」
怒りで熱くなっていた遊月も遊路の言葉で冷静さを取り戻し、ハゲの腕を離した。
「あぁぁっ！」
ハゲは折れた腕を抑えながら逃げ去った。
「やり過ぎた感はあるけど向こうもああいう阿漕なマネをしている以上、表立って訴えたりはしないだろう。よく頑張ったな遊月」
遊路は遊月の頭を労うように撫でる。
「でも遊路様…何故わざわざ殴られるような事を…」
「騒いでただけの奴等をぶちのめしたって言うよりも俺や美奈子さんを守るために戦った、と言った方が聞こえは良いだろ？」
「えっ！？それじゃあ…」
「まぁ…彼女の面子を守るのも彼氏の役目だからな」







遊路達が帰ったその日の夜の虹宮家。
「ただいま」
「おかえり詩音…」
また誰かと喧嘩したのか、帰ってきた詩音は不機嫌そうで、顔には小さな擦り傷があった。詩音の視界にあるものが目に入る。
「アタシのパスケース！結局家にあったのかよ！？」
「…昼間に遊路さんって人が来て届けてくれたのよ…」
「アイツが！？」
「その…詩音…。遊路さんに何か迷惑を？」
詩音は昨晩のことを思い返す。遊路の余裕そうな態度、襲われた時に恐怖した情けない自分、綺麗事を並べた偉そうな説教。全て忌々しく、詩音にとって最悪の記憶として昨晩のことは刷り込まれていた。
「うっせぇんだよ！！アタシ疲れたからもう寝る！！」
詩音は学校の鞄を床に叩きつけてドスドスと自分の寝床に向かった。
「あっ！詩音…」
美奈子は不幸な環境に追いやってしまったという罪の意識から、苛立つ娘を母として毅然と叱ることは出来なかった。






一方あのチビはある人物に説教されていた。
「ったく情けねぇのぅ！女にむざむざやられて、ピーピー泣いて帰って来やがったのか！！」
「ひっ！だ、だけどよ親父ぃ。そいつがべらぼうに強ぇんだよ…」
チビは正座をしながら親父と呼ぶ男に話す。
「で？その女は？」
「いや、誰か分かんねぇけど…あっ！でも連れの男だったら見覚えがある！！」
チビは大急ぎでスマホを操作し、それを男に見せる。
「ん？風峰遊路…。今年のデュエリンピックで優勝しおった奴か…。ふん…ワシに考えがある」




おまけの次回予告

（電車内にて）
遊月「ひゃあっ！や、止めて下さい」ﾊｧﾊｧ
遊路「安心しろって。今この車両には誰もいないから」ｻﾜｻﾜ,ﾓﾐｭﾓﾐｭ
遊月「でも、んぁ、見つかったら…遊路様、捕まっひゃ…あっ、あん！」
遊路「いやこのスリリングな感じがなんともな…。それに遊月のここ、もうこんなに濡れてるよ」ｸﾁｭｸﾁｭ
遊月「あぁっ！中でいじっひゃらめれすぅ…。これ以上やったら打ち切りになって次回なくなっひゃいまひゅ…あんっ！」