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虹彩竜と歩むもの/第50話:理由 作:光芒






☆TURN01(鈴音)


「さあ、どこからでもかかってくるがいい!!」
「ひっ……わ、わたしの先攻です。ええっと……」

 たどたどしい手つきで手札を確認する鈴音。その様はまるでまだデュエルに慣れていない初心者のようであった。イースト校からわざわざこのセントラル校に短期編入してくるくらいなのだから、その実力は相当のはず。
 また、デュエルの前に対AI相手のデュエルで35戦無敗ということについても聞いていた留奈はそんな鈴音に負けてたまるか、とばかりに気合を入れていたため、今目の前で対峙する少女にやや肩透かしを喰らった気分になった。

(みょうだな。あんまりはくりょくをかんじないぞ?)
「わ、わたしは手札から“おろかな埋葬”を発動します!」


※おろかな埋葬
通常魔法(制限カード)
(1):デッキからモンスター1体を墓地へ送る。


「わたしはデッキから“堕天使マリー”を墓地に送ります」
「堕天使マリー? めずらしいカードをつかうんだな」


※堕天使マリー
効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻1700/守1200
このカードが墓地に存在する場合、自分のスタンバイフェイズ時に1度だけ、自分は200ライフポイント回復する。


 堕天使マリーは墓地に存在する限り、スタンバイフェイズごとにライフを200回復する効果を持っている。墓地に存在する限り確実にライフを回復できるのだが、その回復力はわずか200であり、モンスター自体のステータスが低いことからかあまり採用されないモンスターである。
 マイナーなモンスターであるため、相手に警戒されず相手に効果を妨害されにくいという利点はあるのだが、そのためこのカードからある程度相手のデッキを推測することができてしまうのだ。堕天使マリーの効果の特徴としてはやはりライフ回復効果であるため、鈴音のデッキはライフを重要視するデッキであることが誰の目にも明らかだった。

「わたしはモンスターをセットします。そしてカードを1枚セットしてターンエンドです」


鈴音 LP8000 手札:2枚
デッキ:34 モンスター:1 魔法・罠:1 墓地:2 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:15(0)
留奈 LP8000 手札:5枚
デッキ:35 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:0 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:15(0)


☆TURN02(留奈)


「わたしのターンだ、ドロー! わたしは手札から月光黒羊の効果を発動する! このカードを墓地に送り、デッキから融合1枚を手札にくわえる!」
「【月光】……」
「わたしは手札から永続魔法、炎舞-「天キ」を発動する! デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札にくわえる! わたしが手札にくわえるのは月光彩雛だ。そして今手札にくわえた月光彩雛を召喚!」

 留奈のフィールドには雛鳥をモチーフにした黄色い服を着た少女のようなモンスターが召喚される。一見すると小さく可愛らしいモンスターであるが、融合モンスターの素材に融合素材を指定する【月光】デッキにおいてこの月光彩雛の効果は決して欠かせないものであった。

月光彩雛 ATK1400→1500

「月光彩雛の効果を発動! エクストラデッキから月光舞猫姫を墓地に送り、月光彩雛を月光舞猫姫として扱う! そして私は手札から融合を発動! フィールドの月光舞猫姫として扱う月光彩雛と手札の月光蒼猫を融合!“月明かりに舞う美しき野獣よ。蒼き闇を徘徊する猫よ。満月輝く闇夜に舞う漆黒の舞姫となりてしなやかなる舞踏であらゆるものを切り刻め!”融合召喚! 躍り出ろ!月光舞豹姫!!」

 留奈のエースモンスターの1体が、この月光舞豹姫である。攻撃力は2800と最上級モンスターの基準を満たしており、また相手の効果で破壊されない効果を持つ。そして2つ目の効果で相手モンスターに一度だけ戦闘破壊から守る効果を付与しつつ、全ての相手モンスターに二度目の攻撃を行うことができる。これにより相手フィールドに攻撃表示モンスターが存在すれば3つ目の効果と合わせて一気にライフを削ることができるのだ。
 そして墓地に月光舞猫姫として送られた月光彩雛は墓地の融合1枚をサルベージする効果がある。この効果で絶えず手札の月光を融合素材にして融合モンスターを高速召喚してはフィールドを埋め尽くすのが留奈の得意とする戦術なのである。

「月光舞豹姫の攻撃力は天キの効果により、100ポイントアップする! そして月光舞豹姫の効果を発動、いくぞ! バトルフェイズだ! 月光舞豹姫でセットモンスターを攻撃!“月光黒豹乱舞”!」

月光舞豹姫 ATK2900 VS ダンディライオン DEF300

「むっ“ダンディライオン”か」


※ダンディライオン
効果モンスター(準制限カード)
星3/地属性/植物族/攻300/守300
(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。


「だが、ダンディライオンは月光舞豹姫の効果でいちどだけバトルで破壊されない! そして月光舞豹姫のにどめの攻撃! 月光黒豹乱舞 第二曲!」

月光舞豹姫 ATK2900 VS ダンディライオン DEF300

「戦闘で相手モンスターを破壊した月光舞豹姫の効果を発動! バトルフェイズ終了時までこのカードの攻撃力は200ポイントアップする!」
「そ、その効果にチェーンしてダンディライオンの効果も発動します!」

チェーン2(鈴音):ダンディライオン
チェーン1(留奈):月光舞豹姫

「自分フィールド上に綿毛トークン2体を守備表示で特殊召喚します!」
「チェーン1の月光舞豹姫の効果で攻撃力がアップするぞ!」

月光舞豹姫 ATK2900→3100

「綿毛トークンで守りをかためて、というつもりだな! だが、むだだ! 月光舞豹姫で綿毛トークンを攻撃! 月光黒豹乱舞 第三曲!」

月光舞豹姫 ATK3100 VS 綿毛トークン DEF0

「綿毛トークンは破壊されない。二度目の攻撃で綿毛トークンを破壊! そして月光舞豹姫の攻撃力はさらにあがる!」

月光舞豹姫 ATK3100→3300

「そしてさいごの綿毛トークンも攻撃だ!」

月光舞豹姫 ATK3300 VS 綿毛トークン DEF0

 月光舞豹姫の効果で綿毛トークンと二度の戦闘が行われ、二度目の戦闘で綿毛トークンは破壊される。これによって月光舞豹姫の攻撃力は更に上昇して3500にまで達するが、この攻撃力アップが持続するのはバトルフェイズ終了時まで。
 全てのモンスターが破壊されたことでバトルフェイズが終了し、月光舞豹姫の攻撃力は元の2900へと戻った。留奈からしてみれば相手モンスターを殲滅させることに成功したものの、ダメージを与えることができず、鈴音からしてみればライフこそ減らされなかったものの、ダンディライオンの効果を十二分に生かすことができないという両者痛み分けのバトルフェイズであった。

「わたしはバトルフェイズをしゅうりょうする。メインフェイズ2、カードを1枚セットしてターンエンドだ!」


鈴音 LP8000 手札:2枚
デッキ:34 モンスター:0 魔法・罠:1 墓地:3 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:15(0)
留奈 LP8000 手札:3枚
デッキ:32 モンスター:1(月光舞豹姫)魔法・罠:2(炎舞-「天キ」)墓地:2 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:14(0)


☆TURN03(鈴音)


「わたしのターンです、ドロー。えっと……スタンバイフェイズに墓地の堕天使マリーの効果を発動します。私のライフを200回復します」

鈴音 LP8000→8200

「ライフ200くらいふやしたところでなんにもならないぞ!」
「……わたしは“アロマージ-ローズマリー”を召喚します」


※アロマージ-ローズマリー
効果モンスター
星4/水属性/植物族/攻1800/守700
(1):自分のLPが相手より多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の植物族モンスターが攻撃する場合、ダメージステップ終了時まで相手はモンスターの効果を発動できない。
(2):1ターンに1度、自分のLPが回復した場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。そのモンスターの表示形式を変更する。


「やはりおまえのデッキは【アロマ】か!」

 【アロマ】は属するモンスターの大半が植物族のデッキであり、ライフ回復時に発動する効果および自分のライフが相手のライフを上回っている時に発動できる効果を持ったモンスターの多いカテゴリーだ。
ライフポイントで優勢を保っていなければアドバンテージを得ることは難しい反面、相手のライフが少なくなれば少なくなるほど、自分のライフが相手のライフを上回れば上回るほど強大なパワーを発揮するテクニカルなデッキであるといえる。

「はい。でも堕天使マリーの効果より後に召喚したのでアロマージの効果は活かせません……でも、こうすればいいんです。私はリバースカードを発動します。永続罠“潤いの風”を発動します」


※潤いの風
永続罠
「潤いの風」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):1000LPを払ってこの効果を発動できる。デッキから「アロマ」モンスター1体を手札に加える。
(2):自分のLPが相手より少ない場合にこの効果を発動できる。自分は500LP回復する。


「わたしは潤いの風の1つ目の効果を発動します。ライフを1000支払ってデッキからアロマモンスター1体を手札に加えます」

鈴音 LP8200→7200

「わたしが手札に加えるのは“アロマージ-ジャスミン”です。そして自分のライフが相手より少ない場合に2つ目の効果を発動します。わたしのライフを500回復します」

鈴音 LP7200→7700

「そしてライフが回復した時にローズマリーの効果が発動します。フィールドのモンスター1体を守備表示にします。私はローズマリー自身を守備表示にします」

アロマージ-ローズマリー DEF700

 ローズマリーの攻撃力は1800と下級モンスターの中では比較的高い方に入る。また、条件さえそろえば月光モンスターをも上回るだけの攻撃力も得ることができる。
しかし、現状鈴音のフィールドにはローズマリーしかアロマモンスターは存在しないため、ここでローズマリーを守備表示にすることで受けるダメージを少しでも減らすというものは理に適ったものだと言える。
それでも自分のターンであるにも関わらず鈴音が既に守勢に回ってしまっている、ということにその場でデュエルを観戦していた誰もが気づいていた。

「……わたしはこれでターンエンドです」


鈴音 LP7700 手札:3枚
デッキ:32 モンスター:1(アロマージ-ローズマリー)魔法・罠:1(潤いの風)墓地:3 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:15(0)
留奈 LP8000 手札:2枚
デッキ:32 モンスター:1(月光舞豹姫)魔法・罠:2(炎舞-「天キ」)墓地:2 除外:0 Pゾーン:青/赤 エクストラデッキ:14(0)


☆TURN04(留奈)


「わたしのターン、ドローだ! スタンバイフェイズからメインフェイズ1にそのままうつるぞ!」
「で、では潤いの風の2つ目の効果を発動します!」
「なに?」
「わたしのライフを500回復します!」

鈴音 LP7700→8200

「そしてライフが回復した時にローズマリーの強制効果を発動! 月光舞豹姫を守備表示に変更します!」
「あ、ああ……かまわないが」

月光舞豹姫 DEF2500

 ローズマリーの効果で月光舞豹姫を強制的に守備表示へと変更された留奈であったが、彼女は別の意味での戸惑いを見せていた。何故ならこの時鈴音は致命的なプレイングミスを犯してしまっていたのである。
 それを見た遊大はやや困惑した様子を見せながらも、隣でデュエルを見守る遊希に話しかけた。遊大の顔を見た遊希は彼が何を言いたいかを即座に理解した。

「あの、遊希さん……これって」
「……あからさまなプレイングミスね。何故このタイミングで浜部さんは潤いの風のライフゲイン、そしてローズマリーの強制効果の発動に繋げてしまったのかしら」

 デュエルモンスターズにおける『表示形式の変更』というルールには3つの制約がある。

〇表示形式の変更は、モンスター1体につき1ターンに1回まで。
〇召喚・特殊召喚されたモンスターは“そのターン”に表示形式を変更できない。
〇攻撃を行ったモンスターはメインフェイズ2で表示形式の変更ができない。

「潤いの風は罠カード。相手ターンでもその効果を発動できる……相手の攻撃宣言の後にもね」

 鈴音が犯したのは3つ目の制約である『攻撃を行ったモンスターはメインフェイズ2で表示形式の変更ができない』というところであった。もし留奈が月光舞豹姫で攻撃宣言をした後に潤いの風の2つ目の効果で自分のライフを回復していれば、ローズマリーの強制効果で攻撃宣言をした月光舞豹姫は強制的に守備表示に変更させられる。
 もし留奈のフィールドに“最終突撃命令”のような特定のカードが無ければ月光舞豹姫の表示形式は次の留奈のターンまで守備表示のまま固定される。守備力も2500あるとはいえ、天キで強化された攻撃力2900に比べれば超えるのは容易と言えるだろう。しかし、今はメインフェイズ1であり、月光舞豹姫は攻撃宣言をまだしていないのだ。

「わたしは月光舞豹姫を攻撃表示にもどす!」
「っ……!?」
「きづいたか。いまのはかんぜんなプレイングミスだったな。きづかなかったのかわざとか……どっちでもいいが、そういうプレイングミスをするとしょうりのめがみにきらわれるぞ? もっとも、わたしのてふだにはこのカードがきていたんだがな! わたしはPゾーンにスケール1の月光狼をセッティング!」

 留奈の片方のPゾーンには濃い紫の毛皮を纏った人狼のようなモンスターがぼんやりと浮かび上がる。メインデッキに入る月光唯一の上級モンスターであり、2種存在するうちの1種であるPモンスターである月光狼にはある効果が隠されていた。

「そしてPゾーンの月光狼の効果を発動! フィールド・墓地から月光モンスターを除外して月光モンスターを融合召喚する!」
「融合魔法を必要としない……融合!?」
「わたしはフィールドの月光舞豹姫、墓地の月光舞猫姫と月光黒羊を除外して融合!」





―――“月光の原野で舞い踊るしなやかなる黒豹よ。月明かりに舞い踊る美しき猫よ。漆黒の闇に潜む羊よ。月の光に導かれ、新たなる命をもって生まれ変われ!” ―――



―――融合召喚!!―――



―――吠えろ、満月輝く原野に君臨する獣の女王! 月光舞獅子姫!!―――





 留奈のデッキの切り札にして月光モンスター最高の攻撃力を誇る月光舞獅子姫がフィールドに華麗に降り立つ。月光舞猫姫そして月光舞豹姫はモンスターにしか複数回攻撃できないのだが、月光舞獅子姫はモンスター、デュエリストに関係なく一度のバトルフェイズに二度の攻撃が可能であるのだ。

月光舞獅子姫 ATK3500→3600

「そしてわたしは手札から魔法カード“月光香”を発動する!」


※月光香
通常魔法
(1):自分の墓地の「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
(2):墓地のこのカードを除外し、手札を1枚捨てて発動できる。デッキから「ムーンライト」モンスター1体を手札に加える。


「わたしは墓地の月光蒼猫を特殊召喚! そしてバトルフェイズだ! まずは月光蒼猫でアロマージ-ローズマリーを攻撃!」

月光蒼猫 ATK1700 VS アロマージ-ローズマリー DEF700

 月光蒼猫の鋭い爪の一撃が神秘的な香りを漂わせる乙女を引き裂いた。守りを固めるためにローズマリーを守備表示にしていたが、攻撃表示のままであれば月光蒼猫に一方的に戦闘破壊されることも無かったというのは皮肉なものである。

「っ、ローズマリー……」
「これでおまえのフィールドはがらあきだ! 月光舞獅子姫でダイレクトアタック!」

月光舞獅子姫 ATK3600

「そしてこのしゅんかん、リバースカードを発動する! 罠カード、幻獣の角だ! このカードを月光舞獅子姫に装備するぞ!」

月光舞獅子姫 ATK3600→4400

「攻撃力……4400!?」
「そして攻撃力の上がった月光舞獅子姫でダイレクトアタック! 月光幻獣獅子輪舞 第一曲!!」

月光舞獅子姫 ATK4400

鈴音 LP8200→3800

「きゃあっ!」
「月光舞獅子姫は2回の攻撃ができる! 月光幻獣獅子輪舞 第二曲! これでフィナーレだ!!」

月光舞獅子姫 ATK4400

鈴音 LP3800→0










「うう……わたしの負けです……」
「わたしのかちだ! あのプレイングミスがしょうぶのきめてだったな。でもどっちにしても月光狼はドローしていたし、月光舞獅子姫を融合召喚できていたがな!」

 腰に手を当ててゲラゲラと笑う留奈。その様はまさに勝者のそれであり、その一方で敗れた鈴音は一度の負けにしてはどうにも酷い落ち込みようであった。当事者である留奈はそんな鈴音の様子をさほど気にしていないようだったが、このデュエルの経緯をずっと見守っていた遊大と礼たち四人は鈴音のデュエルに違和感を覚えていた。
 遊希は落ち込む鈴音を見てどうしようか、と対応に困った様子の詩織にそっと耳打ちをする。詩織は一瞬驚いたような様子を見せるも、小さく首を振る遊希を見て決意を固めたようであった。

「さて……高海君、大空さん、音無さん、孫さん。このデュエルを見て何か感じたことはありませんか?」
「感じたこと、というのは?」
「読んで字のごとく、です。率直な感想をお願いします」

 突然率直な感想を、と求められたところですぐに言葉にすることはできない。いや言葉にしてしまうのは簡単であるが、時に言葉は人を傷つける武器となる。そのためどのように感想を述べていいか礼たち女子生徒三人はわかりかねているようだった。

「……あの、いいですか。俺は浜部さんがAI相手に35戦無敗、というのを聞いていたんですが」

 そんな三人の心を汲み取った遊大が重い口を開く。デュエルの世界とは厳しい世界である。故に誰かが汚れ役を買って出なければいけない時もある。遊大の感想というのは先の試験でアイギスを始めとした昨今のデュエルAIと激戦を繰り広げた彼ならではの感想であった。

「AIはとても正確です。それこそ人間以上に容赦はないし、相手のプレイングミスだって見逃さない」
「……」
「プレイングミスは誰にもあることです。俺だってプレイングミスをよくします。でも今の舞原さんとのデュエルで初歩的なミスを犯すデュエリストが、相手のミスに厳しいAI相手に35戦無敗という成績を残せるのか……ちょっと疑問に思いました」

 思ったことを率直に述べた遊大。彼なりに言葉を選んだつもりであったかもしれないが、逆にその気遣いが鈴音の心に突き刺さってしまった。

「……」
「鈴音?」
「高海くんの言う通り……です。わたしは、本当は全然強くなんかないんです。強くなんか……だから、わたしのことなど忘れてください……!」

 そう言って鈴音は留奈が止めるのも厭わずデュエルフィールドから走り去ってしまった。その時の表情は前髪に隠れてわからなかったが、どのような表情をしていたかなど想像するまでもなかった。留奈は遊大の方を一瞥すると、鈴音を追ってその場を走り去った。留奈の姿が見えなくなると、遊大は小さく息を吐いてはすいません、と遊希に対して頭を下げた。

「高海くんは悪くないわよ。むしろ嫌われ役を押し付けてごめんなさい」
「ええ、本当は私たち上級生が対処しなければいけないことなのですが……」
「あの、浜部さんには一体何があったんですか? 留奈に負けただけであの様子はちょっと……」
「……浜部さんがここに来たのには当然理由があるのよ。高海くんが言った通り、AI相手のデュエルでは35戦無敗。それは真実よ。でも……」
「でも?」
「彼女はAI相手にはとても強い。でもその反面―――






―――対人戦では一度も勝てたことが無いらしいのよ。そしてそれが、彼女がここに来た理由。








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ター坊
圧倒的凡ミス(泣)
動揺しやすい性格が仇になって完全にタイミングを外しましたな。対人戦で1回も勝てないとは重症ですが、果たして治るのか?
(2017-07-03 07:12)
から揚げ
デュエルの勝敗は決闘者のメンタルに依る所がありますよね。心理フェイズという言葉があるくらいですし。

AIはプログラムに沿って行動しますが、人間の場合は色んな性格の方々がいらっしゃるので、鈴音ちゃんが対人戦で勝てないのは今回の様に相手の方のペースに呑まれてしまうからかもしれませんね。

遊大がみんなの為に率先して汚れ役を担っていた所を見て、遊大の心優しい所はこの様な心配りが出来る所なんだなと実感させて頂きました!仲間想いな所も遊大の魅力の一つですね!

そして前回の質問に真摯に答えて下さって、本当にありがとうございます!礼ちゃん・美鈴ちゃん・林檎ちゃんがそれぞれ可愛らしい服装をしている中、留奈ちゃんのジャージ姿に興味を惹かれました!巨乳+ジャージの組み合わせ・・・最高ですね!

私的には、是非とも留奈ちゃんには胸開きタートルネックや深めのVネックなどを着て欲s(このコメントはポーラスター・オベイされました) (2017-07-04 07:58)
Ales(from PC)
うーん……動揺とはいえ、完全にタイミングを間違えるとは……鈴音嬢、存外に重症ですな(押しつけた本人)。
ローズマリーの効果もそうですが、《潤いの風》も第2ターンに効果を適用していればまた、違った展開になったのかもしれませんね。【アロマ】において重要なのはライフアドよりテンポコントロールですから、その辺の操作をミスってしまう辺り動揺が感じ取れます。この子ちゃんとデュエルできるようになるんですかねぇ……?個人的には【アロマ】特有の粘り強い攻めも見てみたいですが、もうしばらく駄目駄目な鈴音ちゃんを見てみたいという願望もあるのです。

前回のコメント返信への回答ですが、チルビメは初手でロンファしか選択肢がない場合へのケアとして投入しています。ギガプラはそもそも、《増草材》3枚投入したデッキで召喚権を消費するカードはお荷物なので、ベルガモットに枠を回した方が良かった、と思う訳です。その辺りの詰めの甘さも鈴音ちゃんらしいですけど。 (2017-07-04 18:11)
光芒
ター坊さん
こういうのを書いていると改めてデュエルモンスターズをはじめとしたTCGってメンタルのゲームだな、と思いますね。対人戦で勝てない彼女を矯正することから交流戦へと繋がっていきます。

から揚げさん
鈴音が対人戦で勝てない理由は、次回で詳述しますが、だいたいから揚げさんの仰られている通りですね。AIはどんな相手であろうとプログラムに従って動きますが、対人戦となると性格がそれぞれ違うために留奈のように勢いのあるデュエリスト相手だと……という感じでしょうか。

>礼ちゃん・美鈴ちゃん・林檎ちゃんがそれぞれ可愛らしい服装をしている中、留奈ちゃんのジャージ姿に興味を惹かれました!巨乳+ジャージの組み合わせ・・・最高ですね!
>私的には、是非とも留奈ちゃんには胸開きタートルネックや深めのVネックなどを着て欲s(このコメントはポーラスター・オベイされました)
留奈の部屋着はファッションに無頓着な彼女を表したつもりでしたが……そうでもないようですね。

Alesさん
その設定を考えたお方が何をおっしゃる。でも確かにアロマを使ってみて思ったのはライフゲイン効果の発動タイミングが一番大事だってことですね。勝負を決めるのはローズマリーとベルガモットの超火力ですが、そこに繋ぐまでが大事ですし。

>個人的には【アロマ】特有の粘り強い攻めも見てみたいですが、もうしばらく駄目駄目な鈴音ちゃんを見てみたいという願望もあるのです。
うーん……早く交流戦に移りたいのでそこはご勘弁ください(え

>チルビメは初手でロンファしか選択肢がない場合へのケアとして投入しています。ギガプラはそもそも、《増草材》3枚投入したデッキで召喚権を消費するカードはお荷物なので、ベルガモットに枠を回した方が良かった、と思う訳です。その辺りの詰めの甘さも鈴音ちゃんらしいですけど。
確かにギガプラはそんなに出番なかったですね。ロンファ暴走召喚からのベルガモットローズマリーチルビメとかはやってましたが……作中の流れでデッキに手を加えてしまうかもしれません。
(2017-07-04 23:46)

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11 第53話:自信 256 5 2017-07-20 -
16 第54話:克服 227 4 2017-07-24 -
15 第55話:猛攻 261 6 2017-08-02 -
14 第56話:障壁 181 3 2017-08-08 -
8 第57話:意地 171 3 2017-08-13 -
9 第58話:提案 268 3 2017-08-17 -
11 第59話:来訪 221 3 2017-08-27 -
17 第60話:交錯 232 3 2017-09-04 -
14 第61話:諜報 198 3 2017-09-11 -
67 遊大たちが10月制限について語るそうです 309 5 2017-09-14 -
10 第62話:暴露 174 2 2017-09-21 -
13 第63話:決意 202 4 2017-09-25 -
6 第64話:結束 197 4 2017-10-02 -
10 第65話:渇望 344 3 2017-10-07 -
12 第66話:証明 171 4 2017-10-13 -
10 第67話:空想 146 2 2017-10-16 -
9 第68話:魔鎖 138 2 2017-10-23 -
6 第69話:喝采 114 2 2017-10-27 -
8 第70話:胸愛 158 3 2017-11-01 -
10 第71話:点火 139 4 2017-11-07 -
5 第72話:誘惑 107 3 2017-11-15 -
3 第73話:憤怒 92 3 2017-11-18 -

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