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第07話水面下 作:風鼠
???2「…この家だ。あの厄災女が出入りしてる家は…(ほ、ほんとにありやがったぁ…)」
???1「兄貴…本気でやるんですかぁ?」
???2「た、たりめぇだ!…もし、あの厄災女と一日近くにいれれば、どんな有名高校、大学…さらに有名な大手優良企業の内定すら用意に手に入る!(そして、のんびり暮らす!)」
???1「その噂、本当なんですかね?ネットに書かれてただけですし…」
???2「うるせぇ!やってみなきゃ分からんだろ!」
???3「兄貴~ホントだったとしても…一日とはいえど、危険ですぜ?」
???2「しょ、承知のうえよ!それに…あの厄災女の不運伝説全てが本当と限らんしな…(そ、そうだ、嘘ってことも…)」
3人の不良学生が、ネットに書かれた噂を頼りに遊樹の家へと訪れる。
老人「やめときなさい。あの少女に近づくのは、死にに行くようなものじゃ。」
???2「あぁ?!」
老人「おぬしらのように、一時の欲に駆られあの子に近づく人間は皆、もうこの世にはおらん。」
???2「な、何だ、ばばぁ!俺等がそいつらを同じ運命を辿るっていうのか!?(そ、そんな運命に会うぐらいだったらにげてぇよ!)」
???1「あ、兄貴!」
???3「や、やめてください!」
何処からともなく現れた老人が不良学生達に警告を始めると、リーダー格と思われる少年が、大声を上げながら老人へと詰め寄り始めると、取り巻きの二人がその少年その行方を遮る。
老人「少女の横で生きて行けるのは、人智を超えたあの化け物だけじゃ。お主ら…地獄を見るぞ?」
???2「じょ、じょじょ、上等だ!」
老人「なら、何も言うまい…」
老人は何かを悟った眼差しを少年に向けた後、その場を立ち去る。
???1「人智を超えた化け物って…小鳥遊一樹の事だよな?」
???3「あの女に近くにいる奴って言ったらそいつしかいないけどよ…化け物って流石にひどい言い方だな。」
???2「…とにかく、俺達はそんな化け物に一日付き合って英雄になるんだ。腹くくろうぜ」
???2「(す、すごく怖えぇ・・・すぐ、あったら逃げよう
)」
リーダー格と思われる不良学生が玄関の扉を開ける
遊華「ひゃあ!?」
遊樹「あ」
ドスン
???2「…あぁ?」
???1、???3「あ、兄貴!?」
遊華の叫び声と共に不良少年の体に鈍い衝撃が走る
不良少年が自身の体に視線を移すと、下腹部に包丁らしき物体が刺さり、血が滴っている事を視認した。
???2「…いだぁあああぁ!?…(意識が…遠のく…)」
現状を理解すると現実と少し遅れて激痛が全身に駆け廻り、少年は家中に響き渡る程の悲鳴を上げ、気を失う
遊華「遊樹ぃ…またやっちゃったぁ…」
遊樹「はぁ…今日で何回目だ…」
数分後
???2「…は、俺は一体…いだ!?…包帯?!」
???1「あ、兄貴!?良かった、目覚ましてくれて…」
遊樹「すまなかったな。手が滑って包丁が飛んで、お前の腹に刺さったんだ。ま、致命傷じゃなかったのが不幸中の幸いだがな。」
遊華「ごめんね~♪悪気はなかったんだ~♪」
遊樹「反省してないだろ…」
遊華「てへ♪」
遊樹「はぁ…ま、応急処置はやっといたから、後は病院でも行って診察してもらうんだな」
???2「…それはできないな。」
遊華「?」
???2「俺たちは、今日一日お前に付きまとってやるぜ!」
???3「そ、そうだ!そ、それで、いい学校に進学してやるんだ」
???1「お、おれたちはその為に来たんだ!」
遊樹「…なんだ。『証明書』目的か。」
???2「しょうめいしょ?な、なんだ、証明書ってのは…?」
遊樹「…なんだ。そこまでは知らないのか。こいつの近くに1日中いた事を証明する国公認の証だ。確認しだい俺がすぐに発行してやる。」
???2「お、おう!そ、その、証明書の為だ!」
遊華「しょ、証明書なんて、私、知らなかったよ!」
遊樹「お前は知らなくても、良い情報だからな。」
遊華「うぅ…ひどい…」
???1「と、とにかく、証明書の為に付きまとうぜ!」
遊樹「その必要はない。今すぐ発行してやる。」
???3「ほ、ホントか!?」
遊樹「あぁ…1日付きまとわれるのもうっとおしいからな。」
???1「や、やりましたぜ、兄貴!」
???2「(こ、ここは、引き下がれねぇ…)…い、いや…一日付きまとったうえで貰おうか。」
???3「あ、兄貴!」
遊樹「死んでも知らんからな?」
???2「おう!」
遊華「よろしくね~♪えっと~…お名前なんだっけ?」
???2→狼一「俺は、亜羅中の総番長!高宮狼一(たかみね ろういち)!」
???1→龍次郎「俺は、番長の右腕!「クラッシャー」、高山龍次郎!」
???3→虎三郎「俺は、番長の左腕!「虎拳」、高村虎三郎!」
狼一「(もう…もどれねぇ…。やるしかねぇ…名を上げるには…)」
遊華が笑顔で名前を聞くと、3人は自称番長という狼一から名乗りを上げる。
亜羅呉中学校…通称、亜羅中
全国屈指の不良校として有名な中学校。この中学校出身の多くは、暴走族として名乗りを上げる物、暴 力団や殺し屋等の裏稼業を営む者が多い。桜木町近辺にあることもあいまって治安の悪さは最悪レベルだが、生徒のデュエルの平均実力は非常に高く、プロデュエリストも
多い。
遊華「うん、3人とも今日一日よろしくね♪」
狼一、狼次郎、虎三郎「おう!」
遊樹「…」
バット「遊樹様、どういたしましたか?」
遊華と狼一たちが、和やかに会話を楽しむ中、遊樹がタブレットで調べ物をしながら3人を真剣なまなざしで見つめる
遊樹「…2つクリアだ。」
バット「…といいますと?まさか、仲間の条件ですか?」
遊樹「あぁ。最低限の条件は3つ用意した。1つ目はデュエルの実力。これはあいつらが亜羅中だということ。それに、公式記録でやつらの公式大会優勝が何個かあった。規模こそ中規模だったがな。」
遊樹はそういって、狼一たちの名前が書かれた大会の記録を、バットに見せる
バット「実績あり…ですか。では、もうひとつは?」
遊樹「もうひとつは、遊華の運の悪さに対し恐れていない、その精神力だ。」
バット「…そうなのですか?」
遊樹「あぁ…。遊華の運の悪さは世間的にも有名だからな。近づく事は、死に赴くことと同義。それを理解して近づくには、並大抵の精神力じゃ無理だ。」
バット「…条件はほかにもあるのですか?」
遊樹「後二つ…遊華の運の悪さに対する対応能力と、本当に信用できるかどうか、だな」
バット「…見極める必要がありますね。あの3人を…」
遊華「遊樹~♪買い物いこ~♪」
遊樹「ん…買い物って何を買うんだ?」
遊華「食べ物!今週分♪」
遊樹「昨日も買ったよな…冷蔵庫一杯によ…」
遊華「全部むしゃむしゃしてやった。今は反芻してる。けぷー♪」
葵は笑顔でそういうと、ゲップをする
遊樹「はぁ…仕方ねえな…。おい、不良3兄弟、お前らが買い物手伝え」
狼一「おう!」
龍次郎「買い物ぐらい朝飯前だぜ!」
虎三郎「だがな…」
狼一、龍次郎、虎三郎「俺たちは兄弟じゃねぇ!」
遊華「…ん?お前ら『が』手伝えって…遊樹こないの?」
遊樹「あぁ。今日会いたいやつがいるからな…」
遊華「そっか…。じゃあ、3人でいこ~♪」
道中
遊華「あ、信号青になったよ~♪わったろ~♪」
龍次郎「…ん?え、あ、兄貴!向こうからトラックが突っ込んできますぜ!」
スーパーへ向かう道中、交差点を渡ろうとした遊華に無人と思われる2tトラックが勢いよく向かってくる
狼一「何ぃ!?遊華アブねぇ!!」
遊華「え、ひゃあぁ!?」
狼一「ぐはぁ!」
狼一が遊華に駆け寄り、遊華を向かい側の歩道へ突き飛ばし、狼一が代わりにトラックに轢かれ下敷きになる
虎三郎「あ、兄貴ぃ!?だ、大丈夫ですかい!?」
狼一「な、なんとか…」
男「いや~すまんすまん、サイドブレーキかけ忘れたわ~」
虎三郎「気をつけてくれよ!」
スーパー内
遊華「なに買おうかな~」
狼一「(まさか…遊華の顔パスで、すべて無料とはな…)」
龍次郎「兄貴!この際、俺らの分まで買いましょうぜ!」
狼一「お、おう!」
虎三郎「今日はパーティーですね!」
狼一たちが、遊華から視線を外さないようにしながら、おのおの自身がほしいものを買い物カゴに入れていく
パァン
遊華「え、ひゃあ!?」
男「そこの学生共!金を出せ!」
突然、破裂音が鳴り響き、覆面を被った男が遊華を抱え、狼一たちに向け拳銃を向けている
狼一「あぁ!?っち、強盗か」
龍次郎「ど、どうします。兄貴」
虎三郎「背後から回って…」
男「おっと、それはさせねぇ!この女がどうなってもいいのかぁ?」
虎三郎「くっ…」
狼一「(どうする…)」
バット「…」
遊樹「…さて、どうする?」
遊樹は男に会うまでの道中遊華たちを尾行させていたバットにつけたカメラに映し出された映像をタブレットで眺める。
確認していた。彼らが信用できるのかを、どのレベルまでトラブルに対応できるのかを…
そして、彼らの覚悟を
男「どうしたぁ!餓鬼共!さっさと金ださねぇか」
狼一「(通路が狭いから背後にも回れねぇ。相手は拳銃、こっちには武器はねぇ。突っ込んでっても、撃たれるのが落ち…どうする)」
遊華「(もぐもぐ…)あ、おいしい♪」
狼一「(あのやろう…この状況で商品勝手に食って…。…!そうか)…わかった。金を出そう。」
龍次郎「あ、兄貴…」
狼一「大丈夫だ。策はある」
虎三郎「策?」
狼一「俺たちの財布を、中央に置く。それをお前がとりに来る…。…それでいいな?」
男「っち。それでのんでやらぁ。さっさと置け」
狼一「あぁ…」
そういって、狼一たち3人は男と自身たちの中間付近に財布を置く。
男「くくく…。なかなかの厚みの財布だなぁ…」
狼一「今だ!」
龍次郎、虎三郎「お、おう!」
男「な!」
狼一の号令とともに、龍次郎、虎三郎の2人は男に向かい、両側の棚からスーパーの大量の商品を男に向かって投げる
遊華「いた、いたたた!痛いよ!私にも当たってるよ!」
男「こしゃくなぁ!…な!」
狼一「懐に入っちゃ、こっちの勝ちだよなぁ?」
男が商品の投擲を手で振り払うと、目の前に、メリケンを右手につけた狼一の姿があった。
男「くそがぁ!」
狼一「悪いな…。この距離じゃ、拳銃より拳の方がはえぇよ!」
男「ぐっ…」
男が狼一に拳銃を向ける前に、男の腹に右拳をたたきつける
狼一「よし、これでしゅうりょ…う?」
遊華「ふぇぇ…だれかたしゅけてぇ…」
男が気絶したのを確認した狼一が拳銃を取り上げるとともに視線を移すと、大量の商品の山に埋もれた遊華の姿が。
狼一「しかたねぇな…。助けるz」
ガチャ
狼一「あ゛?」
ガチャ
龍次郎「へ?」
ガチャ
虎三郎「…手錠?」
警官1「暴行、および銃刀法の現行犯で逮捕する!」
遊華を助けようと、商品を手に取ろうとした瞬間、3人に手錠がかけられる。
狼一「こ、これは正当防衛で…つーか、この拳銃はこいつの…て、いねぇ!?」
龍次郎「あ、あそこだ!」
虎三郎「い、いつの間に?!」
狼一たちが正当防衛を訴えようとした瞬間、拳銃を持っていた男は煙のようにその場から逃げ去り、スーパーの入り口付近まで逃げていた。
警官2「君にも、容疑がかかってるから、来てもらおう」
遊華「ふえぇ…」
狼一「俺たちは無実だぁ!」
遊樹「…及第点だな。後で警察に釈放の電話だな・・・。・・・さてと、あいつの『今の』勤め先はここか。」
大帝国病院
世界で一番大規模、最先端の医療機材が揃い、各分野に精通する医者が所属するグループが経営する病院。利益は毎年数兆規模となり、医療界を牽引している。
遊樹はある人物に会いにきた。
自身の条件を高水準で満たす人物に。
バット『遊樹様、病院にあてがあるのですか?』
遊樹「あぁ。イカレタ奴だがな。」
受付
受付嬢「いらっしゃいませ。本日はいかがしましたか?」
遊樹「いや、今日はこの医者に用があって…」
遊樹は受付の女性に、とある人物の写真を見せる
受付嬢「英先生ですね。お約束はされているでしょうか?」
遊樹「約束はしてませんが…。悪鬼が来たっていえば、すぐ仕事を空けるはずです」
受付嬢「あっき?…わ、わかりました」
遊樹は言葉使いに気をつけ、丁寧に受付嬢と会話すると、受付嬢は少し困惑しながらも電話をかけはじめる
受付嬢「お、お待たせしました。『第4会議室にて待つ』との事です」
遊樹「わかりました。ありがとうございます。(第4会議室ね…)」
第4会議室
本来、病院やホテルは4という数字を避ける。
4は、死を連想させ、縁起が悪いというからだ。
本来無いはずの数字の会議室…それは秘密の会議室ということ
10階の薄暗く迷路のような構造。何度同じ箇所をめぐったような感覚に陥り、多々行方不明者を出しているこの階に、秘密の会議室はあった。
第4会議室という寂れた標識の部屋のドアを開けると目の下に隈があり、金髪、碧眼、薄気味悪いほど色白の肌の青年が、火が点った数本のろうそくで照らされただけの薄暗い部屋に待っていた
遊樹「よう…殺 人医者」
英「やぁ…久しぶり。怪童、小鳥遊君。いや…殺 人鬼君」
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