第１７話 憎悪の連撃　作：提馬風

――プレーリィ、都市郊外――

ヴゥン……

神馬「着いたようだね……、別次元」

ヒロ「凄い景色だな。空飛ぶ島から滝が流れ落ちている」

エルヴィラ「大自然、ってやつだね」

神馬「僕もこの雄大さには驚かされるが……、目的を見失ってはいけない。
　　　向こうの山の中腹に街が見える。あそこで、情報収集を……」


奈良「……いや待って、何か聞こえない？」

神馬「聞こえる？ 何が？」

奈良「どこからだろう……今見てる方の反対側から……
　　　われ……へつ……え……」

神馬「奈良、もっと詳しく！」

奈良「……ダメ、分からない。でも、後ろの山の方から聞こえてくる」

奈良はそう言って、高い山を指した。深い森に覆われた山。山頂が、不気味な紫の光を滲ませている。

神馬「あの山から……か。
　　　『頂のデッキ』と言うからには、あのような所にあるのかもしれないな」

奈良「そうかも……でも、確信はないよ」

エルヴィラ「高い所から見渡す、というのも、何かを探す時には有効です。
　　　どうせ次元は広いでしょう、ここで一つ寄り道をしたところで、どうということはないかと」

神馬「よし、なら慎重にあの山を登るとしよう」

エルヴィラ「フェスティーナ・レンテ！」ﾋﾞｼｯ

――別の山――

遊陽「私のターン……！」ﾋﾞｼｯ

セン「手札は4枚か……どうだ、行けるか？
　　　しかし、無理はしなくていい。相手はエルストロームではないから、落ち着いて……」

遊陽「いいえ……、エルストロームを握ろうとする者は、エルストロームと同等に危険です！
　　　私は手札から『拡散する波動』を発動！
　　　これにより、エルフ・ソーサラーは相手モンスター全員に攻撃しなければならない！」

　　　私は永続トラップ『杜の化身-ミスティック・ミスルトウ』を発動！
　　　これにより、このターンの間、自分の植物族以外のモンスター1体は植物族としても扱う！
　　　さらに、ミスティック・ミスルトウを守備表示で特殊召喚！」

『エルフ・ソーサラー』にくっついた種からヤドリギが生え、その身体にまとわりつく。
そして、『エルフ・ソーサラー』はうっすらと緑のオーラを放ち始めた。

エルフ・ソーサラー TYPE:PLANT

ミスティック・ミスルトウ ☆2 DEF1600

杜の化身-ミスティック・ミスルトウ　永続罠
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：植物族以外の自分フィールドに表側表示で存在するモンスター１体を対象として発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの種族は植物族として扱う。このカードは発動後、通常モンスター（植物族・地・星２・攻２００／守１６００）となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。②：このカードがフィールドから墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「杜の化身」魔法・罠カード１枚を自分フィールドにセットする。

遊陽「さらに、植物族扱いのエルフ・ソーサラーに『憎悪の棘』を装備！」

エルフ・ソーサラー ATK3300

遊陽「憎悪の棘を装備したモンスターの戦闘では相手モンスターは破壊されず、貫通ダメージが発生する！」

遊陽「伏せ次第では、これで終わり。バトルフェイズに移行し――」

万罪「バトルフェイズ開始時、トラップ発動！ 『Chow down(ﾁｬｳ ﾀﾞｳﾝ)』！」

セン「トラップカード……！」

Chow down(ﾁｬｳ ﾀﾞｳﾝ)　通常罠
このカードを発動するターン、自分は「ハイエナ」モンスター以外のモンスターの効果を発動できない。①：自分または相手のバトルフェイズ開始時に、自分フィールドに「ハイエナ」モンスターが存在する場合に発動できる。自分フィールドのモンスターは全て攻撃表示になる。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はモンスターの表示形式を変更できず、自分フィールドの「ハイエナ」モンスターの攻撃力は１０００アップする。

万罪「これにより、俺のモンスターは全て攻撃表示になる。
　　　さらに、このターンの間、俺のハイエナモンスターの攻撃力が1000アップする！」

素早いハイエナ ATK2800
デス・ハイエナ「グァウッ！」☆3 ATK1000→1800→2800

デス・ハイエナ　レベル3　地
獣族／リバース／効果
①：自分が「ハイエナ」モンスターの効果でデッキからモンスターを特殊召喚する場合、代わりにデッキからこのカードを特殊召喚できる。②：このカードを特殊召喚する場合、同時に２体以上のモンスターを特殊召喚できない。③：このカードがリバースした場合に発動できる。デッキから獣族の「デス」モンスターを２体まで表側攻撃表示または裏側守備表示で特殊召喚する。
攻撃力 1000　守備力 500

万罪「さらに、リバースした『デス・ハイエナ』の効果発動！
　　　デッキから獣族の『デス』モンスター1体を表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚する！
　　　俺はデッキから『ダーク・ハイエナ』を特殊召喚！」

ダーク・ハイエナ「ウウゥ……」☆3 ATK1000→1800→2800

ダーク・ハイエナ　レベル3　闇
獣族／効果
①：自分が「ハイエナ」モンスターの効果でデッキからモンスターを特殊召喚する場合、代わりにデッキからこのカードを特殊召喚できる。②：このカードを特殊召喚する場合、同時に２体以上のモンスターを特殊召喚できない。③：このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから闇属性・レベル３モンスターを２体まで特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。
攻撃力 1000　守備力300

万罪「ヘッ、これで俺のモンスターを全て殴っても俺は耐え切れるぜ。
　　　破壊できれば新たなハイエナを殴って勝てたかもしれねぇのになぁ……？」ﾆﾔ

セン「くっ、このターンでは決着は……」

遊陽「いいえ……、大いなる記憶の樹のために入れたカードが意外なところで役に立ちました。
　　　おかげで、このままデュエルが片付きます！」ﾋﾞｯ

遊陽は手札から、1枚のカードを勢いよく引き抜いた。
それに合わせて、バイクの隣を飛ぶ『エルフ・ソーサラー』が緑に光る枝の杖を構える。

遊陽「手札からこのカードを墓地へ送り――」ｼｬｺｯ

遊陽は、抜き取ったカードを直接墓地へ送る。

遊陽「『D.D.クロウ』のモンスター効果発動。相手の墓地のモンスター1体を除外する。
　　　私が除外させるのは――、ハイエナのカード！」

万罪の墓地から1枚のカードが飛び出し、『D.D.クロウ』が発生させた空間の裂け目へ消える。

万罪「墓地のカードを1枚除外したところで……」

素早いハイエナ ATK2800→2000
デス・ハイエナ ATK2800→2000
ダーク・ハイエナ ATK2800→2000

万罪「んなっ！？ 何で攻撃力が下がるんだ！？」

遊陽「一族の結束の効果です。唯一墓地に存在していたモンスター、ハイエナが除外されたことで、
　　　あなたの墓地のモンスターの種族が無くなった。
　　　よって、その効果は消滅する！」

万罪「ぐぬぬ……！」

遊陽「モンスターが破壊されれば、一族の結束の効果を再起動できたけれど……そうはさせない。
　　　エルフ・ソーサラーで素早いハイエナ、デス・ハイエナ、ダーク・ハイエナを攻撃！
　　　『ディフュージョン・エルフ・ソーサリー』！！」

『エルフ・ソーサラー』の杖から衝撃波が放たれ、それがハイエナを次々に破壊していく。
それは、万罪の乗るボードをも吹き飛ばした。

万罪「ぐあああぁぁーっ！！」LP2300→1000→0

WINNER YUHI


万罪の乗っていたボードは木っ端微塵に砕け、万罪は灰の上に投げ出される。

万罪「ぐ……、チクショウ……」ﾖﾛ

セン「約束だ。フエルストロームを渡せ」ｷｷｯ

万罪「わーってるよ……これで全部だ」ｽｯ

セン「ああ、確かに受け取った」


万罪「……クッソー！ 覚えてろよ！！」

万罪はカードを差し出すと、すぐに走って逃げた。

遊陽「……尾けますか？」

セン「えげつないことを言うな。その必要はない。これがあればね……」ﾋﾞｯ

『精神寄生体』

センがそれを召喚すると、それは万罪の逃げた方向へ飛んでいった。

遊陽「もっとえげつないじゃないですか……」

セン「さ、掴まれ。みんなのところに戻って、テントの設営をしよう」ﾊﾞﾙﾝ

センのバイクは灰を巻き上げながら、走り出した。