3話・《それぞれの戦い》　作：Holic

ハリー・シャロック
「決闘！！！」

DUEL START

ハリー「私が先行をいただく！
私は魔法カード《打ち出の小槌》を発動！手札を3枚デッキに戻し、3枚ドローする！」


シャロック「いきなり手札交換か。
豪快だな。しかし《打ち出の小槌》は総合的には手札が減ってしまうカードだ。あなたそれでもいいのかい？」


ハリー「・・・。
私はカードを2枚セット！さらにモンスターを1枚伏せてターンを終了する。」


シャロックの意見を無視しゲームを進めていくハリー。その表情からは考えが読み取れない。
しかしシャロックはそんなことは意に介さず、決闘盤に手を乗せた。


シャロック「胎動しているぞ、僕のデッキが・・・！

僕のターン！ドロー！」


シャロックは一度手札を確認した。すると、準備万端と言わんばかりに迷いなく決闘盤にカードを置いた。


シャロック「 （これとこれがあるから問題なし。むしろ順調過ぎて怖いくらいだ。） 」


シャロック「僕は手札から《終末の騎士》を召喚し、効果を発動。デッキから《シャドール・ヘッジホッグ》を墓地へ送る。そして僕は効果で墓地へ送られた《シャドール・ヘッジホッグ》の効果を発動。デッキから《シャドール・ファルコン》を手札に加えるよ。」


ハリー「 （シャドール、だと？
何だそのカードは！？「シャドール」とか言うカード何ぞ聞いたこともないぞ！） 」


ハリーはのんびりとゲーム展開を見ていたが、見たことのないカードを見た瞬間態度を変えた。
腕を組み少し余裕を持った感じで見ていたが、決闘盤を装着した左腕を前にし、体に力を入れた。
シャロックを見る目も、「経験が浅く無謀なガキ」から、「未だかつてない未知の敵」を見る目に変わっていた。


シャロック「さぁ見せてあげる。
僕は魔法カード《影依融合》を発動！手札の《シャドール・ファルコン》と《シャドール・ビースト》を墓地へ送る。」










【影を這う糸よ　今心に住まう邪念と交わりて　闇の中に光を探し求めよ！　

融合召喚！！

現れろ！レベル5　《エルシャドール・ミドラーシュ》！！！】










現れたるは木で構築された躰を持つ緑髪が美しい少女。
死神のような恐ろしさと少女の可憐さが合わさり、とても妖艶に見える。


シャロック「それでは融合素材として墓地へ送られた《シャドール・ファルコン》の効果にチェーンし、《シャドール・ビ－スト》の効果を発動させてもらう。」

チェーン1《シャドール・ビ－スト》
チェーン2《シャドール・ファルコン》

シャロック「 《シャドール・ファルコン》は効果で墓地へ送られた場合に自身を裏側守備表示にして特殊召喚できる。来い、《シャドール・ファルコン》！」


シャロックが指示を出すと、墓地から紫色の小鳥が飛び出した。フィールドに出されたのが嬉しいのか、羽を精一杯広げて「ピィ！」と鳴いたが、裏側守備表示になってしまう事に気付くとしょぼくれた顔になってしまった。　


シャロック「済まないね。本当はチュ－ナ－として扱いたいんだけど今は壁となってくれ。

そしてチェーン1の《シャドール・ビースト》の効果でドローさせてもらう。」スッ


シャロックはあまり嬉しそうな顔をしていなかった。そんなにいいカードが引けなかったのだろうか。　


シャロック「それではバトルフェイズへと移行する。僕は《終末の騎士》で攻撃。行け！」


シャロックが攻撃命令を下した。暗いオーラを纏った騎士が伏せモンスターに斬りかかる。


ハリー「ふん。伏せカードには警戒せんのか。まあ良いわ。その攻撃は通そう！」


終末の騎士「セイヤァァァ！！」
ズバッ！！！


終末の騎士はその剣で伏せモンスターを一刀両断した。


ハリー「かかったな！
私は攻撃されたモンスター《イモータル・ワーム》の効果を発動！」





《イモータル・ワーム》
オリカ
レベル2　攻1000/守1100
地属性/岩石族/リバース/効果
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがリバースした場合に発動できる。相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。その後、以下の効果から1つ選択して発動できる。
・デッキから岩石族・リバースモンスターまたは守備力1800以上の岩石族モンスターを裏側守備表示で特殊召喚する。
・デッキまたは墓地から《ギガロック・ドラゴン》を手札に加える。





イモータル・ワームは、死に際に爆裂し、気味の悪い色をした体液を終末の騎士にかけた。すると、終末の騎士は風船のように膨れ上がり、破裂してしまった。


ハリー「私はその効果でデッキから《モアイ爆撃砲》を裏側守備表示で特殊召喚する！」


シャロック「中々にグロテスクな演出だな。しかしその程度か。
ならば僕は《エルシャドール・ミドラーシュ》でセットモンスターに攻撃。

【偶像破戒（イコノクラスム）】！！！」


少女は主人（マスター）からの命令を受け、手にしている杖にエネルギーを貯め始めた。
そして少女はセットモンスターに対し、杖から紫色の光線を放った。その禍々しい一撃は、セットモンスターを容赦なく貫く。


ドウゥゥゥン！！！


ハリー「くッッ！ （なんて強力な一撃だ！ダメージこそ受けておらんから今は大丈夫だがもしも受けてなら、致命傷ではすまんかもな・・・！） 」


ハリー「私は攻撃された《モアイ爆撃砲》の効果を発動！」





《モアイ爆撃砲》
オリカ
レベル4　攻1600/守2100
地属性/岩石族/リバース/効果
①このカードがリバースした場合に発動する。フィールドの表側攻撃表示のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与える。　





ハリー「回りくどいをしたが。そのモンスターは恐らく貴様のエースモンスター。破壊されないと思ったら大間違いだぞ！
消し飛べぇ！！」


モアイのような砲台が口から砲弾を発射する。《エルシャドール・ミドラーシュ》は砲撃に巻き込まれたが・・・


ハリー「馬鹿な！こいつ、耐性を持っているな！！」


《エルシャドール・ミドラーシュ》は無傷で立っていた。しかも心なしか退屈そうな顔をしている。


シャロック「フフッ。無駄な事。」





《エルシャドール・ミドラーシュ》
レベル5　攻2200/守800
闇属性/魔法使い族/融合/効果
「シャドール」モンスター+闇属性モンスター
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
①このカードは相手の効果では「破壊されない」。
②このカードがモンスターゾーンに存在する限り、その間はお互いに1ターンに1度しかモンスターを特殊召喚できない。
③このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。





シャロック「ウィンダ、さっきの砲撃で体とか欠けてない？大丈夫？」


ウィンダ「問題ありません。この身に変えても決闘には勝利いたします。いつも私の身を案じていただきありがとうございます。」


ウィンダこと《エルシャドール・ミドラーシュ》は精霊である。それは決闘中でも同じだ。ソリッドヴィジョンのモンスターの攻撃で微弱とはいえダメージを受けるし、ましてやその体は木材のようなもので構築されているので、攻撃によっては体に傷がついたり、体が欠けてしまうのだ。このような事があるので、シャロックは決闘中でもウィンダの事を気に掛けている。


シャロック「君の事を心配するのは当たり前でしょ？だってウィンダは僕にとってお姉ちゃんみたいな存在なんだから。精霊使いの名にかけて、相棒の君は全力で守り抜いて見せるよ。」


シャロックはウィンダに近づき、本当に傷がないか確かめていた。


ウィンダ「あ、あなたに守られる必要はありません！さっさと決闘を進行してください、、、！
（お、お姉ちゃん！？ああマスター最高過ぎです。もっとお姉ちゃんとお呼びください。） 」


シャロック「はいはい。バトルフェイズを終えてメインフェイズ2に移行。僕はカードを2枚伏せて、ターンエンド。」


ハリー「待てぃ小僧！私は貴様のターン終了時に速攻魔法《サイクロン》を発動！私から見て右の伏せカードを破壊する！」


シャロック「まあ良いか。
破壊されたカード《影依の輪廻 （シャドーループ） 》の効果を発動。効果で墓地へ送られた場合にデッキから「シャドール」カード1枚を手札に加える。僕が手札に加えるのは魔法カード《影依の誅殺剣 （シャドールパー・ダ） 》だ。」





《影依の輪廻 （シャドーループ） 》
オリカ
カウンター罠
このカード名の③④の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。
①？？？
②？？？
③？？？
④このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから
「シャドール」カード1枚を手札に加える。


まるで破壊されることが最初から分かっているかのように淡々とサーチするシャロック。ハリーは敵ながらあっぱれと言わんばかりに関心していた。





ハリー 　LP4000
手札2枚
墓地3枚　除外0枚
場0枚
魔・罠1枚

シャロック　LP4000
手札1枚
墓地5枚　除外0枚
場《エルシャドール・ミドラーシュ》
《シャドール・ファルコン （セット状態） 》
魔法・罠1枚





2ターン目

ハリー「やれやれ、気のせいが長く感じたわい。それでは私のターン！！」シュパッ


ハリー「しかし厄介なモンスターを相手取る事になったな。私は手札から魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動！コストでデッキの上からカードを10枚除外し、デッキからカードを2枚ドローする！！」


シャロック「なかなかのギャンブルカードだね。手札が増える分には使えるけども、除外のコストが「シャドール」には重いかな。だけどウィンダを早く出すにはデッキ圧縮と手札増強を兼ねたこのカードは欲しいかも・・・」


ハリー「敵の前で考え事とはどういうことかな？こっちに集中せい。
私はモンスターを1枚伏せ、さらにフィールド魔法《岩投げエリア》を発動！これでターン終了だ！」


ハリーの後ろに巨大な投石機が出現した。恐らく20mあるだろうか。
ソリッドヴィジョンとはいえかなりの大きさを誇っている。


シャロック「 《岩投げエリア》 か。随分と守りを固めるんだね。精々足掻くといいさ。」


ハリー「ふん。守りに転じねば勝負には勝てんよ。まあまだ年若い貴様にはは理解できんのだろうがな。
貴様のような青二才には到底分からんだろうな。」


シャロック「つくづく爺臭い発言だ。年季や経験だけが勝負を分けると思っているのかこの耄碌が。生憎僕は若造呼ばわりされるのが嫌いでね。」


ハリー「そうかい若造。すぐ熱くなるのは若者の悪い癖だ。私のように経験を積み人生を長く生きていればすぐには熱くならんわい。」


シャロック「言わせておけば・・・！これからは少し熱くならせてもらうよ。」


ハリー「ほう、やってみなさい若造よ。」


あえて挑発するハリー。


シャロック「ッ！　覚悟しろよ。
僕の、タァーン！！」シュパァッ


シャロックは頭にきているのか、ドローをする手にかなり力が入っていた。


シャロック「メインフェイズ1に僕はセットされた《シャドール・ファルコン》を反転召喚！そして効果を発動！墓地の《シャドール・ビースト》を裏側守備表示で特殊召喚する！」


反転召喚された《シャドール・ファルコン》は、どこかかわいらしいモーションで墓地へ紫色の糸を投げ込み、《シャドール・ビースト》を裏側守備表示でフィールドに呼び出した。


シャロック「メインフェイズ1を終えてバトルフェイズ！
地獄で後悔しろ！泣いて後悔してももう遅いんだからな！僕は《エルシャドール・ミドラーシュ》でセットモンスターを攻撃！

偶像破戒（イコノクラスム）！！！」


シャロックの怒りに呼応したのか、先ほどより威力の高そうな光線が飛び出し、セットモンスターを貫通した。


ハリー「かかったな若造が！私は攻撃されたモンスター《デザートモス》の効果を発動！貴様のフィールドの《エルシャドール・ミドラーシュ》を墓地へ送り、レベル×200のダメージを与える。さらにフィールド魔法《岩投げエリア》の効果を発動！デッキから《守護神エクゾード》を墓地へ送り、戦闘破壊を無効にする！」





《デザートモス》
オリカ
レベル4　攻1500/守1800
地属性/岩石族/リバース/効果
①このカードがリバースした場合に発動できる。相手モンスター1体を選んで墓地へ送り、墓地へ送ったモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。　





シャロック「な！？しくじった・・・！
ウィンダは破壊なら耐えられるけど、墓地送りは耐えられない！」


驚くシャロックとウィンダに、《デザートモス》から飛び散った黄色のドロドロした体液がかかる。


シャロック「うぅッ！」
LP4000→3000


ウィンダ「ああ、マスター…。ごめんなさ…い」ジュウゥ


ウィンダはシャロックの目の前でドロドロに溶かされてしまった。
この瞬間シャロックは後悔した。つい怒りのあまり相手を警戒するとこを忘れていたのだ。自分のエースモンスターが墓地へ送られてしまい、怒りにも悲しみにも取れる表情をしていた。


シャロック「何がごめんなさいだよウィンダ。ごめんなさいは僕の台詞だよ。苦しい思いをさせてごめんね。
でもこの決闘は、この決闘だけは必ず勝って見せるから。墓地へ送られたウィンダの効果で２枚目の《影依融合》を手札に加える。

メインフェイズ２へと移行。
僕は何もせずターンを終了する。」



ハリー 　LP4000
手札1枚
墓地5枚　除外0枚
場《モアイ爆撃砲》
魔・罠1枚
フィールド魔法《岩投げエリア》

シャロック　LP3000
手札3枚
墓地5枚　除外0枚
場《シャドール・ビースト（セット状態）》
《シャドール・ファルコン 》
魔法・罠1枚





ハリー「攻撃すらしないとはふざけおって。私のターン、ドロー！」


ハリー「見せてやるぞ若造！私は墓地の《モアイ爆撃砲》と《イモータル・ワーム》、《守護神エクゾード》をゲームから除外し、手札から《ギガロック・ドラゴン》を特殊召喚する！」


ゴゴコｺﾞｺﾞｺﾞ

地響きが起こしながら地面を破り、現れたるは体中が巨大な岩石に覆われた巨竜。
翼を広げると、大きな咆哮を上げた。

グルアァァァ！！！




《ギガロック・ドラゴン》
オリカ
レベル9　攻？/守？
地属性/岩石族/特殊召喚/効果
このカードは通常召喚できない。墓地の岩石族を任意の枚数除外する事でのみで特殊召喚できる。
①このカードの攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外しか岩石族モンスターのレベルの合計×400ポイントアップする。
②このカードが表側攻撃表示で存在する限り、攻撃可能な相手モンスターはこのカードに攻撃しなくてはならない。相手モンスターと戦闘を行わなかった場合、エンドフェイズに相手は1000ポイントのライフを失う。





シャロック「除外したモンスターのレベルの合計・・・。つまり！」


ハリー「相当焦っておるな若造よ。少し頭が切れるのが仇となったな！
攻撃力と守備力は6400ポイント上昇する！！」


《ギガロック・ドラゴン》
攻撃力？→6400
守備力？→6400

ハリー「さらに罠カード《古石岩の降臨》を発動！除外されている《モアイ爆撃砲》を特殊召喚！」





《古石岩の降臨》
オリカ
永続罠
①除外されている自分の岩石族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、このカードがフィールドから離れた場合にそのモンスターは破壊される。





高攻撃力のモンスターを並べられ、絶体絶命のシャロック。しかし、


ハリー「ここはあえて攻撃せん。次の貴様のターンで、貴様の本当の実力を見せてもらうぞ。
バトルフェイズを行わない事でこのままエンドフェイズ。《ギガロック・ドラゴン》の効果で貴様に1000のダメージを与える。」


シャロックの元に無数の飛礫が飛び、体を傷つけた。


シャロック「うぐぅッッっ！」
LP3000→2000


シャロックは少しずつ追い詰められている。下手をしたら次のターンで敗北する。いいや、敗北する確率の方が高いだろう。しかし置いて詰められてなお、シャロックは楽しそうであった。


シャロック「ハアッハア、ハァ・・・。ここまで追いつめられるのはこれが初めてかもな。なんだか馬鹿にされた気分にもなっているよ。でも僕はウィンダと約束さしたんだ、「この決闘だけは必ず勝って見せる」ってね。」


シャロック「だから宣言させてもらう。
僕はこのターンであなたのライフを0にして見せよう！」


ハリー「大きく出たな若造、いいやシャロックよ！しかし今まで精霊使い相手なら女子供でも容赦なく屠ってきた。この私に攻撃を躊躇させた事を無駄にするなよ！」


シャロック「言われなくても、分かっているさ。


僕のッッッ、タァァァン！！！」


シャロックのドローの調子が今までのものとは違い鬼気迫るものとなっていた。シャロックはドローしたカードも見ずに高らかに宣言した。


シャロック「さぁ、心せよ。
あなたの眼前に、再び死神が現れるだろう。そして其の時、この決闘は終焉を迎える。
さあ、ラストターンだ！」


運命を分けるラストターン。シャロックは何かに取り憑かれたかのようにハリーを指さし、宣言した。
シャロックの逆転劇が始まる・・・。





















その頃、ピリカも絶体絶命の危機に瀕していた。相棒のラムは瀕死で、目の前の男「ボス」は、鋭いナイフを向けながらじりじりと迫って来ている。


ボス「ほぉらお嬢ちゃん、ジッとしてれば何もしないぜぇ～！」


ピリカ「うそつき！おじさんの顔に「おそってやる」ってかいてあるもん！！」


最後まで諦めず、抵抗してくるピリカに、ボスは限界だった。


ボス「テメエ、調子に乗んじゃねぇ！！」ガバッ


臨界点を超えたボスは、ナイフをピリカに突きつけながら、飛びかかった。


ラム「キュウウゥ！？キュウ！（何してんだピリカ！？挑発に乗せんな！） 」


無慈悲にも突き立てられるナイフ。ラムは諦めていたが、なんとピリカは楽々と避け続けてる。


ボス「クソッ、クソ！当たらねぇ！どういう反射神経してんテメエ！」


ピリカ「よっ、はいっ！そこっ！

もともと体をうごかすのはとくいだし、こういう目にはなんかいかあってるから、もうなれちゃったの！」


ラム「キュウ～。キュウゥ！（いやぁ、危ない危ない。ピリカのやつ反射神経はかなりあるからな、力押しの脳筋戦法なら軽々と避けられる！）」


ピリカは大人顔負けの動体視力でナイフの軌道を見て、素早く回避しているのだ。
しかし体力の問題がある。体力なら大人のボスの方が上だ。ピリカの動きが少しずつ鈍くなってきた。


ボス「どうしたぁ！さっきまでのスピードはどこ行った！このまま刺し殺してやる！！」


ピリカ「わたしが考えなしにむやみによけてるだけだとおもったら大まちがいだよ！」


そういうとピリカは、大きくバックステップをとり、ボスとの間合いを広げた。すると足元に落ちていた自分の杖を拾い、ボスに向けた。


ピリカ「いまだ！
【しずかなる風よ、いまこそあらぶりてわれをすくいたまえ！】 」


ボスが躍起になって掴みかかってくるが、ピリカが杖を構え呪文を詠唱すると、微弱だが竜巻が発生し、ボスの右腕を切り裂いた。

ズバッ！


ボス「うぐあああッッッ！！クソ痛ぇぇ！
血が、血が止まらねえじゃねぇか！クソガキが、もう容赦しねぇ！必ず犯し殺してやるからな・・・！！！」ガクッ


ボスは腕の痛みのショックで気絶してしまった。


ピリカ「どれだけこわいことばをならべたって、もうこわくないもん！
わたしは、最後までたたかう！」


ピリカの目つきはもう怯えた少女のものではなくなった。決意を固め、敵に立ち向かう勇敢な戦士の目つきだった。ラムは内心はらはらしながらも、短期間での大きな成長に感動していた。


ラム「キュウ・・・。（まさかピリカがここまで強くなるとはな。
おそらくサムソンが死んで、何かが吹っ切れたんだろうな・・・。）」


ラム「キュウ！（今のうちに逃げるぜピリカ！あの死んじまったオッサンの仇を討ちたいのはわかるが、今は自分の身を大切にしろ！） 」


ピリカ「で、でも・・・」


ピリカは本当はここでサムソンの敵討ちをしたかった。しかし、今は逃げなくてはならない。


ピリカ「そうだね、いまはわたしとラムのいのちが大切だもんね！
さあ、つかまってて！」


ピリカは弱っているラムを抱えると、全速力でアジトを出た。
それと同時に、ラムは深く安堵していた。ピリカが無事だった事もあれば、このまま自分が止めなければピリカはボスを殺していただろうと思うと、ラムは恐ろしくてたまらなかった。


ラム「 （あいつには人殺しなんてさせたくねぇ。いつまでも純粋な子でいて欲しいからな・・・。） 」


ボス「うぐっ、ゼェッゼェ…！
クソッ、体が言うことを聞かねぇ。

おいテメエら、オレが捕まえた精霊のガキが村から逃げようとしている！見つけ次第処刑しろよ！」


ボスはおぼつかない手つきで無線機を取り、村の外で待ち伏せしている部下に連絡をした。


ボス「ああ、目が霞んできやがる。あのガキ、絶対に許さねえからな……。」バタッ


ボスは床に倒れ込み、そのまま動かなくなった。



その頃ピリカ達は、連絡を受け向かってきたボスの刺客達を追い払うのに苦戦していた。


ピリカ「もう、きりがない・・・！このままじゃ、わたし……」


ラム「キュウ！キュウウァァァ！！！
（無理すんな、おれも加勢する！
大いなる風よ、荒ぶり舞いあがれ！！！） 」ドヒュゥゥゥ


男たち「うわあああ！！！」


ラムが翼に力を込めると、ピリカの風とは比にならない大きさの突風を巻き起こし、近づいてくる男達を吹き飛ばした。その一撃は、竜巻にも匹敵する程だ。
しかしその反面エネルギー消費が大変激しく、ラムは攻撃を終えると気絶してしまった。


ピリカ「ラム！しっかりして！」


ピリカはラムを抱え必死に声をかけるが、もう限界だった。足は震え、呼吸をするのが精一杯だ。
ついにピリカは、倒れ込んでしまった。


ピリカ「もう、だめかも・・・。ラム、たすけてあげられなくてごめんね……。」バタッ


男「手間かけさせやがって！覚悟しろよ・・・


っ！？なんだあの化け物は、

ぎゃあああ！！！」


ピリカが全てを諦めた時、奇跡が起きた。男がピリカの首を絞めて殺そうとした瞬間、突如黄色の龍のような化け物が現れ、男達を喰い始めた。

「逃げろぉぉ！喰われるぞ！！」
「うわあ、殺される！」
「お、おれの……腕がァァァ！！」


バリバリッ
　グチャグチャグチャッ


ピリカ「な、何なの・・・？
こわいよぉ・・・。」


結果としてピリカとラムは無事で済んだが、今ここで何が起きているかが全く理解できない。
ただ本能的に理解した事は
「このままでは自分たちもころされる」
それだけだった。

果たしてピリカの運命は・・・





次回予告





「あ、あなたはだれ？」





「！　まさかそんな馬鹿な事が・・・！」





「忘れたのか耄碌爺。もう終わったのさ。」





「あ、あの・・・わたしをつれて行ってください！」





「そうか・・・。分かった。」





次回「風民と異徒の物語」
4話・《邂逅》



あとがき

こんにちは、パニーです！まずお詫びから行かせてもらいます。


投稿のペースが遅くなってしまい大変申し訳ありませんm(_ _)m
忙しいとはいえ、のんびりし過ぎてしまいました。「1ヶ月に１話が目標だったのに余裕で1ヶ月過ぎてるじゃねえか！いい加減にしろ！」と言われても仕方ありません。
これからはもう少し投稿ペースを早めるつもりです。

それと、このSSでは度々オリカが登場するのでそれも紹介していこうと思います。それではまずは主人公のシャロックのカードから行きます！



《影依の輪廻 （シャドーループ） 》
カウンター罠
このカード名の③④の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。
①？？？
②？？？
③？？？
④このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから
「シャドール」カード1枚を手札に加える。

あれれ、効果が全然出てないなw

なんて思いますよね・・・。申し訳ないのですが、隠された3つの効果は後々登場します。ただ言えることがあるのなら、自分でも馬鹿だと思うくらい強いカードになってしまいました。私と同じでシャドールを使っている方なら分かってくださると思うのですが、「シャドール」カードをサーチするカードは今までの出ていないのです・・・。

このカードがOCG化していたら、《終末の騎士》と適当な「シャドール」モンスターが手札にあるだけで、我らがヒロイン《エルシャドール・ミドラーシュ》がフィールドに降臨します！OCG化はよ（乞食並感）

後はまだテキストが不明な魔法カード《影依の誅殺剣 （シャドールパー・ダ） 》がありますが、次回で活躍するかもしれませんよ(^-^)



続いてハリーのオリカです！



《イモータル・ワーム》
レベル2　攻1000/守1100
地属性/岩石族/リバース/効果
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがリバースした場合に発動できる。相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。その後、以下の効果から1つ選択して発動できる。
・デッキから岩石族・リバースモンスターまたは守備力1800以上の岩石族モンスターを裏側守備表示で特殊召喚する。
・デッキまたは墓地から《ギガロック・ドラゴン》を手札に加える。

《モアイ爆撃砲》
レベル4　攻1600/守2100
地属性/岩石族/リバース/効果
①このカードがリバースした場合に発動する。フィールドの表側攻撃表示のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与える。　

《デザートモス》
レベル4　攻1500/守1800
地属性/岩石族/リバース/効果
①このカードがリバースした場合に発動できる。相手モンスター1体を選んで墓地へ送り、墓地へ送ったモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。

《ギガロック・ドラゴン》
レベル9　攻？/守？
地属性/岩石族/特殊召喚/効果
このカードは通常召喚できない。墓地の岩石族を任意の枚数除外する事でのみで特殊召喚できる。
①このカードの攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外しか岩石族モンスターのレベルの合計×4000ポイントアップする。
②このカードが表側攻撃表示で存在する限り、攻撃可能な相手モンスターはこのカードに攻撃しなくてはならない。相手モンスターと戦闘を行わなかった場合、エンドフェイズに相手は1000ポイントのライフを失う。

《古石岩の降臨》
永続罠
①除外されている自分の岩石族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、このカードがフィールドから離れた場合にそのモンスターは破壊される。

実は、これらのカードは「ストラクチャーデッキ－守護神の砦－」に収録されていたカードを私なりにリメイクした物です（古石岩の降臨のリメイク前のカードは、収録されていませんでした・・・。）。

頑固で人を見下し、自分の実力に絶対的な自信がありつつも、堅実に守りを固め攻めていくプレイスタイルのハリーに相応しいデッキを探していたら、このストラクを見つけたので、少しリメイクして出しました。反省点があるとしたら、下級モンスターの大半が原型をとどめていない事ですかね・・・。


更新ペースは遅いですが、決してモチベーションが下がった訳ではありませんので、ご心配なく！　ちなみに今7～8話の構想を練っております。
キャラ紹介は、十分にキャラが登場した頃にしようと思います。
それでは、またお会いしましょう！