交流(共通)

一言掲示板 管理人連絡掲示板 遊戯王雑談掲示板 雑談掲示板

メインメニュー

クリエイトメニュー

その他

遊戯王ランキング

注目カードランクング


カード種類 最強カードランキング


種族 最強モンスターランキング


属性 最強モンスターランキング


レベル別最強モンスターランキング


デッキランキング

HOME > 遊戯王SS一覧 > 破壊剣の追憶

破壊剣の追憶 作:プレミメイカー

「……その竜の仔が、妹?何でそんなことわかるの?」

「声がするんだ、直接頭の中に。レイナさんには聞こえませんか?」

「ええ、残念ながら全く。その仔が妹だというなら奇跡ね。幼い子が変異した弱い竜は他の竜に真っ先に食べられちゃうから。しかも、意識が残っているなんて。」

「くうぅん」
リトルは悲しげな声色で彼女に語りかけようとする。
「どうしたの?」

「……父さんと母さんが、守ってくれていたって、2人はすぐには竜化しなかった
たみたいです。」
淡い期待に再び涙腺が緩む。
「じゃあ、両親はまだ生きているの?」

「……あぉーん、」
妹は、彼女の目の前で起こったことを話して(聞かせて?)くれた。


「ん、ふぁーあ、」
リトルがお昼寝から目覚めると、薄暗く人気の無い家の中とは対照的に、外からは里の人喧騒が聞こえ、時折、窓は強烈に閃き、轟音が家を包み揺るがす。
「え!?何、何が起こってるの?お父さん、お母さん、おにいちゃんは?」
外は危ないと感じてはいたが、年端も行か少女に、家の中で1人、原因も分からない異常な事象に耐えられるはずもなく、リトルは家族を探しに玄関から飛び出した。

すると。

眼前には1体の巨大な竜の頭。
竜は咆哮と共に、その白く鋭い牙を露にし、口腔はどこまでも深く暗く、獲物を引きずり込まんと構えている。

「……い、や」

希望を吹き飛ばされ、精神を切り裂かれ、絶望に呑まれたリトルがその場から逃げ出すなど出来るはずも無い。もはや彼女の身体は、その所有権を竜に奪われたも同然だった。

「リトルッ!」
聞き覚えのある勇ましい声が簒奪者を切り裂く。

「お、父さん……。」
安心したためか、強張っていた体の力が抜け、ふっとその場に崩れ落ちる。
それを母親が優しく受け止める。
「お母さん……。」

「……ぐ、こんなに竜化が進んで、リトルを頼むぞ。」
父は娘に静かに一瞥し、再び戦線へ向かおうとしたとき

ゴゴォォン……

背後の霊山から凄まじい衝撃音が響く。

「!!……バスター。」

なにか察したのかリトルの兄の名前を呟いた。
次の瞬間、母は先ほどの竜と似た姿に変容した。
しかし、その佇まいは清流のように涼しく穏やかで、微塵も恐怖を感じなかった。

「……バスターは、生きているのだな。」
父の問いかけに母は優しく頷き、霊山の山頂へ飛び立っていった。

「あの衝撃、バスターは何かと戦っているのか?
しかし、あそこには他にあいつぐらいしか……」
ゴガッ!大木のような尾による竜の急襲。
それを剣でいなしリトルを抱え竜の背後へと回り、一太刀で切り伏せ広場まで駆け抜けた。

「まさか、まだこんなに残っていたとは、いや、皆、竜化してしまったか。」
リトルを背にし、十数体もの竜の攻撃をしのぐ……にも限界があり、ついにその剣を手から弾かれてしまう。

「……これで、竜は全部か?ならば!」

父親は全身から煌々とオーラを放ち、竜たちを圧倒した。「破壊剣士に睨まれたドラゴン」とはこのことか。
そして、ほとんど竜化してしまった娘の頭に優しく掌を乗せる。
「母さんは必ずお兄ちゃんを連れて来てくれる。だから、それまで生き延びるんだぞ。」
「お父さん……。いや!」
父親は再び竜たちに向き直る。

「勇敢なる我らが破壊剣士たちよ!里長として最期までお前達と共に逝かん!身命を賭しこの災厄に終止符を打つ!!」

剣を持ったように構えると、全身を包んでいた膨大なオーラがその手へと剣状に収束され輝きを増していく。

「我は剣にて、剣は我なり。鍛えし肉体を柄に、磨きし魂を刃とせん。一意専心、邪竜必滅!抗う術なき無刃の秘剣……」

「破壊神剣 - 龍・覇・一・殲!!!!」

放たれた閃光は辺り一面を覆い、全てが白く染め上げられた空間の中で、
竜たちの力ない叫びだけがこだまする。



リトルの話しを聞き終えると、日はすっかり落ち、代わりに鋭利な三日月が、ちょうど破竜の霊山の上に輝いる。まるで、剣が夜の帳を突き、その裂け目から光が漏れ出しているようだ。
「……そんな、あの時俺を救ってくれた竜が母さんだったなんて、それを、目の前で……」
邪竜への憎しみと、無力な自分への怒りが渦巻き、どうにかなってしまいそうだった。

「だけど、まだ父親が生きている可能性はあるんじゃない?力を使い果たしただけで……
そしたら、結局、竜に、なる?……まさか、」

「もういいんだ、レイナさん。今更そんなこと問題にしたってしかたない。
俺は、進まなければならないんだ。父さんと母さんのためにも。そしてリトルのためにも。」

『……おにいちゃん。』
リトルは涙を堪えるように口元を震わせてこちらを見上げている。

『そのとおりだ、バスターよ。お前には邪竜との因縁を断つ使命がある。』
頭に直接語りかけてくるような声、それは力強い男の声。リトルのものではない。
が、なんの違和感もなく心に染み入ってくる。

「あれは……」
レイナの指差す方向に青白い発光体が浮かんでいた。それは徐々に光を弱め、細身の神秘的な龍が姿を現した。

「ギャラクシーサーペント?」

現在のイイネ数 107
作品イイネ
↑ 作品をイイネと思ったらクリックしよう(1話につき1日1回イイネできます)


名前
コメント

同シリーズ作品

イイネ タイトル 閲覧数 コメ数 投稿日 操作
82 破壊剣士の宿命 前編 637 0 2017-05-26 -
73 破壊剣士の宿命 後編 562 0 2017-05-26 -
78 破壊剣の揺籃 668 0 2017-05-27 -
106 竜角の狩猟者 978 0 2017-05-27 -
107 破壊剣の追憶 708 0 2017-05-30 -
82 テラ・フォーミング 707 0 2017-06-01 -
89 ミステイク? 775 0 2017-06-01 -
81 森の番人 577 0 2017-06-07 -
84 コンビネーションアタック! 564 0 2017-06-12 -
80 仙樹レギア 689 0 2017-06-14 -
82 竜の渓谷① 竜騎士ヴァジュランダ 840 0 2017-06-14 -
185 竜の渓谷②竜騎士トライデント 1370 0 2017-06-20 -

更新情報 - NEW -


Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
Amazonバナー 駿河屋バナー 楽天バナー Yahoo!ショッピングバナー