第５話　闘いの始まり 遊陽VS奈良　作：提馬風

狒々木「さあ……時は、来たり！！」

テレビ画面に映った猿顔の老婆が、マイクを持って叫んだ。

狒々木「今日ついに、『プライドタワー・カップ』が開幕する！
　　　　ワシは今、この大会の戦場となる、プライドタワーの屋上から、全国に叫んでおる！」

狒々木「ここにいるのはまだ、ワシと撮影スタッフだけだ。
　　　　だが画面の向こうでは、予選を見事勝ち抜いた総勢8人の参加者が待っておる！
　　　　そして、彼等のデュエルを待つ観客もまた、画面の向こうに、無尽蔵にいることだろう！！」


遊陽「おぉ……」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

遊陽は、プライドタワーの中の宿泊室で、テレビ画面にかじりついていた。


狒々木「……さて、画面を切り替えよう。
　　　　今映したのは、この大会のトーナメント表である。
　　　　これから、この場で抽選を行い、対戦カードを決定する。もちろん、選手もまだ対戦相手を知らん」

狒々木「では、第1回戦、1人目！！」


遊陽「……」


狒々木「生野 遊陽！！」


遊陽「わ、私！？」

遊陽は誰もいない部屋で、一人叫んだ。


狒々木「対戦相手は……狩生 奈良！！」


遊陽「狩生 奈良って、もしかして……この間の奈良さん？」


狒々木「第2回戦、1人目！ エルヴィラ・リッター！！
　　　　対戦相手は、舩城 ヒロ！！」


遊陽「ヒロは2回戦か……、お互いに勝ったら、次はヒロが相手だね」


狒々木「3回戦……」

―――

奈良「わーいっ、初戦だーっ！」

神馬「そうだ、初戦だよ。君が勝ち抜いちゃうと、僕の方も困るからね。
　　　抽選とは言ったけれど、ここだけは調整させてもらった。
　　　大橋をノーダメで倒したあの天才に、さっさとやられてくれ」

大橋「ゔっ！？」

奈良「ひどいねぇ、もう。『YUHI』とは何度か戦ったことがあるって言ったでしょう？」


奈良「……言っておくけどあたし、彼女には勝ち越してるから」

宮猫「はあ！？」

猪上「ウソだろ！？」ﾌﾞｯ!!

神馬「猪上！ 奈良がいるんだから控えろ！」

猪上「ごめん」

奈良「あたしを舐めないでよ？ デュエルアーケード、あたしが何位だか知ってる？」

神馬「そういえば、聞いたことなかったな。何位なんだ？」


奈良「……42位よ。
　　　それじゃ、行ってきます」


――プライドタワー屋上、デュエルリング――

遊陽（相手はおそらく奈良さん……一体どんなデッキを使うんだろう？）

遊陽の向かいのエレベーターから、奈良が現れた。

奈良「一週間振りだね、遊陽ちゃん。心躍るデュエル、期待してるよ！」

遊陽「よ、よろしくお願いします！」ﾍﾟｺｯ

リングの横に立った狒々木が、2人の様子を確かめる。

狒々木「両者、準備は出来たな？ デュエルディスクを構えよ！」

ジャキン！


狒々木「プライドタワー・カップ、第１回戦！ デュエル開始ィィィ！！」

遊陽・奈良「デュエル！」

YUHI LP4000
NALA LP4000

遊陽「私の先行！
　　　モンスターを裏側守備表示で召喚し、カードを2枚セットして、ターンエンド！」

奈良「あれ、それだけ？」

遊陽「私のデッキの本業は、防御から動くことですから。
　　　どんなカードが待ち構えているかは、あなた自身で確かめてくたさい！」

奈良「なるほどね……でも、あたしのデュエルはその防御を打ち破るほど強力だよ！
　　　あたしのターン、ドロー！」ﾋﾞｼｯ

奈良「あたしは手札から『炎舞-天璣』を発動！ その処理により、デッキから『月光黒羊』を手札に加える！」

遊陽「『ムーンライト』デッキ……！」

奈良「あたしは手札からブラック・シープを捨て、効果発動！
　　　デッキから『置換融合』を手札に加える！」

奈良「さらに、手札から『月光白兎』を召喚し、その効果を発動！
　　　墓地からブラック・シープを守備表示で特殊召喚する！」

月光白兎「ハッ！」☆2 ATK800
月光黒羊「フンッ！」☆2 DEF600

奈良「炎舞-天璣の効果で、獣戦士族の攻撃力が100アップ！」

月光白兎 ATK900
月光黒羊 DEF600（ATK200）

奈良「ホワイト・ラビットの効果発動！ 遊陽ちゃんの伏せカード1枚を手札に戻す！」

『月光白兎』が槌を振り下ろすと、その衝撃でセットカードが遊陽の手札へ戻る。

奈良「あたしは手札から置換融合を発動し、月光黒羊と月光白兎を融合する！
　　　漆黒の闇に潜む獣よ、月光に映え躍動する兎よ！
　　　月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん！
　　　融合召喚！ 現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣！ 『月光舞猫姫』！！」

月光舞猫姫「ニャ〜ン♪」☆7 ATK2400→2500

奈良「さらに、あたしは手札から『月光香』を発動し、墓地のホワイト・ラビットを特殊召喚！」

月光白兎「ハッ！」☆2 DEF800（ATK800→900）

奈良「ホワイト・ラビットの効果により、もう1枚の伏せカードも手札に戻させてもらうよ！」

奈良「さらに、ホワイト・ラビットをリリースして、キャット・ダンサーの効果発動！
　　　このターン、遊陽ちゃんのモンスターは1回まで戦闘で破壊されず、
　　　キャット・ダンサーは全ての相手モンスターに2回攻撃できる！」

奈良「バトルフェイズ！ 月光舞猫姫でセットモンスターを攻撃！」

奈良「攻撃宣言時、キャット・ダンサーの効果により、100ダメージを与える！」

遊陽「きゃあっ！！」LP3900

遊陽「……でも、その攻撃が簡単に通るわけがありません！
　　　リバースモンスター、『エルフの蓑隠れ』！！」

エルフの蓑隠れ　レベル3　地
魔法使い族／リバース／効果
①：このカードがリバースした場合に発動できる。デッキからレベル２以下の植物族モンスター１体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。②：このカードの効果で装備カードを装備したこのカードは相手の効果の対象にならない。③：このカードの効果で装備カードを装備したこのカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の植物族モンスター１体を対象として発動する。そのカードを除外し、このカードを墓地から裏側守備表示で特殊召喚する。
攻撃力 0　守備力 800

片膝を着いて防御姿勢を取ったエルフが現れる。
『月光舞猫姫』の蹴りが襲いかかろうとしたその瞬間、『エルフの蓑隠れ』は木の葉に包まれた。

エルフの蓑隠れ「ふんっ！」DEF800

遊陽「私は、エルフの蓑隠れにダンディライオンを装備します！
　　　そして、私のモンスターは1ターンに1度だけ戦闘破壊されない！」

奈良「つまり、次に攻撃すると、エルフの蓑隠れは裏側守備表示になり、ダンディライオンは墓地へ送られる……
　　　なら、あたしはバトルフェイズを終了し、カードを1枚セットしてターンエンド！」

YUHI LP3900 手札4
NALA LP4000 手札2