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遊☆戯☆王V☆S(ファイブスター)/Episode65:麗しき孤月 作:カズ

 そして、時はさらに経過して8月5日の18時。ユーリとの一戦で己の未熟さを痛感した花奈は、来たる清水ルーナとの対決に向けて研究を重ねていた。


「まず、ルーナさんの使用するデッキは【幻想奇術師(ファンタジーマジシャン)】……。エクシーズ素材としたモンスターを復活させるという、今までのエクシーズでは出来なかった動きが可能になっていますわね。そして、このデッキの切り札は『魅惑の幻想奇術師(ファシネイテッド・ファンタジーマジシャン)ミスティック・ルーナ』」


 花奈はルーナが21歳の時に出場した世界大会やそれ以前の情報を可能な限りネットを利用して調べた。ミスティック・ルーナは「使用するデュエリストと名前が同じカード」という点ではかなり珍しいモンスターだが、その効果は非常に強力だ。



〇魅惑の幻想奇術師ミスティック・ルーナ(ランク8 闇)
魔法使い族/エクシーズ/ペンデュラム/効果
攻2800/守2000
【Pスケール:青1/赤1】
「魅惑の幻想奇術師ミスティック・ルーナ」の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:相手の魔法・罠・モンスターの効果が発動した場合に発動できる。その発動を無効にし除外する。②:自分の「幻想奇術師」PモンスターがX素材として墓地へ送られた場合に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
【モンスター効果】
魔法使い族レベル8モンスター×3
レベル8がP召喚可能な場合にエクストラデッキの表側表示のこのカードはP召喚できる。このカードはX召喚及びP召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。「幻想奇術師」Xモンスターは1ターンに2枚しかエクストラデッキから特殊召喚できない。①:このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分の手札・フィールド・墓地の「幻想奇術師」X・Pモンスターを任意の数だけ選び、このカードの下に重ねてX素材とする。②:このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールドの「幻想奇術師」Xモンスターが持っているX素材の数×100アップする。③:このカード以外の「幻想奇術師」XモンスターがX素材を取り除いた場合に発動できる。自分の墓地の「幻想奇術師」Pモンスター1体を選んで手札に加えるか、自分のPゾーンに置く。④:このカードが戦闘を行なうダメージステップ計算時、このカードのX素材を3つ取り除いて発動できる。自分の墓地の「幻想奇術師」モンスターを3体まで選んで特殊召喚する。この効果で特殊召喚したカードはターン終了時、このカードのX素材とする。自分フィールドにモンスターが5体存在する場合、相手フィールドのモンスターを2体選んでこのカードのX素材とする。⑤:モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。




エクシーズペンデュラムモンスターであるミスティック・ルーナの総テキスト数は739文字であり、『涅槃の超魔導剣士』の397文字を軽く上回っている。文字量が多いだけでなく、ミスティック・ルーナが持っている5つのモンスター効果、まず1つ目は、「幻想奇術師」と名の付いたエクシーズモンスターとペンデュラムモンスターを可能な限り自分のオーバーレイユニットにするもの。墓地にカードを送らせない効果を持ったモンスターがいる【フローラル】なら対策は出来そうだが、②の効果で攻撃力を底上げされれば力負けする恐れがある。そして、このカードの目玉効果でもある④は、自分フィールドにモンスターを3体も展開し、自分のモンスターゾーンが全て埋まっていれば、対象を取らずに相手モンスター2体を自身のオーバーレイユニットとして奪取されてしまう。この効果を発動するためにはミスティック・ルーナも3つのX素材を取り除かなければならないが、①の効果で容易に条件を満たしてしまう。しかも、呼び出した3体はルーナのX素材となるため、次のターンでも発動できるのだ。



「ミスティック・ルーナの④の効果を発動させないためには、モンスターを2体以上出させないことが絶対条件ですが……ペンデュラムの展開力では不可能でしょう。いずれにせよ、ミスティック・ルーナと呪縛竜を想定したデュエルをしなければなりませんわね…はぁ……」


 花奈が1人で頭を抱えている後ろのテーブルでは、小町とうららが「花奈のために強くなろう」と互いにデュエルの猛特訓を始めていた。お互いに1ターンずつ終了し、次はうららのターンだ。


*TURN03
「じゃあ、魔法カード『ジャンク・パペット』を発動!墓地から『No.15 ギミック・パペット-ジャイアントキラー』を特殊召喚!さらに墓地の『ギミック・パペット-ネクロ・ドール』の効果発動!墓地の『ギミック・パペット-ボム・エッグ』を除外してこのカードを特殊召喚!」


 うららのフィールドには効果で特殊召喚した『ギミック・パペット-ナイト・ジョーカー』が残っており、そのモンスターのレベルは8。これでランク8のエクシーズモンスターを呼び出す用意は整った。


「行くよ、こまちん!私はレベル8のナイト・ジョーカーとネクロ・ドールでオーバーレイ!天をも操りし運命の糸よ、その叡智を結集させて悪魔を復活させよ!エクシーズ召喚!!『No.40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス』!!」



〇ギミック・パペット-ボム・エッグ(Lv4 地)
機械族/効果
攻1600/守1200
自分のメインフェイズ時に手札から「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体を捨て、以下の効果から1つを選択して発動できる。「ギミック・パペット-ボム・エッグ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。●相手ライフに800ポイントダメージを与える。●このカードのレベルはエンドフェイズ時まで8になる。


〇ギミック・パペット-ナイト・ジョーカー(Lv8 闇)
機械族/効果
攻800/守1600
自分フィールド上の「ギミック・パペット」と名のついたモンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、そのモンスターをゲームから除外して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。「ギミック・パペット-ナイト・ジョーカー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


〇No.40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス(ランク8 闇)
機械族/エクシーズ/効果
攻3000/守2000
レベル8モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターにストリングカウンターを1つ置く。次の相手のエンドフェイズ時、ストリングカウンターが乗っているモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。


〇ジャンク・パペット(通常魔法)
自分の墓地の「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。「ジャンク・パペット」は1ターンに1枚しか発動できない。



「ヘブンズ・ストリングスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、このカード以外の、全てのモンスターにストリングカウンターを置くよ!」


 現在、フィールドにはうららのジャイアントキラー、小町にはペンデュラム召喚と『機械複製術』のコンボで呼びだした『ブンボーグ004』が3体と『ブンボーグ007』が1体いる。次の相手ターン終了時にはその全てが破壊され、小町に2500ポイントのダメージが襲いかかるという計算だ。とはいえこれは相手依存の効果であるため、小町がエクシーズやシンクロでストリングカウンターが乗ったモンスターの数を減らせばその分ダメージ量は抑えられる。しかし、これは「相手ターンで破壊された場合」の話だ。


「私は魔法カード『RUM-アージェント・カオス・フォース』を発動!ランク8のヘブンズ・ストリングス1体で、オーバーレイネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!『CNo.40 ギミック・パペット-デビルズ・ストリングス』!!」


〇RUM-アージェント・カオス・フォース(通常魔法)
自分フィールド上のランク5以上のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターよりランクが1つ高い「CNo.」または「CX」と名のついたモンスター1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。また、このカードが墓地に存在し、自分フィールド上にランク5以上のエクシーズモンスターが特殊召喚された時、墓地のこのカードを手札に加える事ができる。「RUM-アージェント・カオス・フォース」のこの効果はデュエル中に1度しか使用できない。


〇CNo.40 ギミック・パペット-デビルズ・ストリングス(ランク9 闇)
機械族/エクシーズ/効果
攻3300/守2000
レベル9モンスター×3
このカードが特殊召喚に成功した時、フィールド上のストリングカウンターが乗っているモンスターを全て破壊し、自分はデッキからカードを1枚ドローする。その後、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手ライフに与える。また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターにストリングカウンターを1つ置く。



「デビルズ・ストリングスが特殊召喚に成功したことで、ストリングカウンターが乗っている全てのモンスターを破壊するよ!」
「……まだ3ターン目なのに、手札を全て使い切って攻撃に転じるなんて。うらら、こんなに大胆なデュエルも出来たんだ」
「こうでもしないと、A.W.Ⅱで足手まといになっちゃうからね。じゃあ1枚ドローして、こまちんに1500ポイントのダメージを与えるよ!」
KOMACHI→LP:6500


 うららはデビルズ・ストリングスでダイレクトアタックを決めて、小町のライフを大きく削り取った。この時、普段は何も考えていないうららが「A.W.Ⅱ」について考察し始めた。


「ねえ、結局A.W.Ⅱの『A』って何なのかなぁ?ひょっとしたら『アージェント』の略なのかも……」
「確かに。まだそうとは断定できませんが、オーストラリアに行った霧野精一さんが使う【エンシェント】もAncientです。それに、希が使っている『RUM-アストラル・フォース』の『アストラル』もAstralですから、候補に挙がりますね…」


 ユーリが漏らした情報が本当に正しければ、7枚のカードを利用した大規模な戦争が起こる。それこそ、呪縛竜決戦とは比べものにならないくらいの規模かもしれない。だからこそ、こうして特訓をして少しでも腕を上げることで奴らの陰謀を食い止めなければならないのだ。


「話が逸れちゃったけど、私はこれでターンエンドね!」
URARA→LP:5300 手札:1 デッキ:32 Mゾーン:1 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN04
 小町のモンスターはデビルズ・ストリングスによって全て破壊されてしまったが、その中にペンデュラムモンスターではない『ブンボーグ004』がいたことによって、小町を助けることになってしまった。


「私のターン、ドロー!セッティング済みの『ブンボーグ005』と『ブンボーグ006』のペンデュラムスケールを使い、エクストラデッキから『ブンボーグ007』『ブンボーグ005』をペンデュラム召喚!特殊召喚した005の効果で、ペンデュラムゾーンの005を破壊し、ペンデュラムゾーンで破壊された効果発動!墓地から『ブンボーグ004』を特殊召喚します!」


〇ブンボーグ001(Lv1 地)
機械族/チューナー/効果
攻500/守500
①:このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールドの機械族モンスターの数×500アップする。②:このカードが墓地に存在し、フィールドに機械族モンスターが2体以上同時に特殊召喚された場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。


〇ブンボーグ003(Lv3 地)
機械族/効果
攻500/守500
①:このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから「ブンボーグ003」以外の「ブンボーグ」モンスター1体を特殊召喚する。②:1ターンに1度、自分フィールドの「ブンボーグ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、自分フィールドの「ブンボーグ」カードの数×500アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。


〇ブンボーグ004(Lv4 地)
機械族/効果
攻500/守500
①:このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。デッキから「ブンボーグ004」以外の「ブンボーグ」モンスター1体を墓地へ送り、このカードの攻撃力・守備力はそのダメージ計算時のみ、墓地へ送ったそのモンスターのレベル×500アップする。この効果の発動後、ターン終了時まで相手が受ける戦闘ダメージは0になる。②:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。自分の手札・墓地からレベルの異なる「ブンボーグ」モンスター2体を選んで守備表示で特殊召喚する。


〇ブンボーグ005(Lv5 地)
機械族/ペンデュラム/効果
攻500/守500
【Pスケール:青10/赤10】
①:自分は「ブンボーグ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「ブンボーグ005」の③のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。②:このカードの攻撃力は、自分のエクストラデッキの表側表示の「ブンボーグ」モンスターの数×500アップする。③:このカードがPゾーンで破壊された場合、自分の墓地の「ブンボーグ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。


〇ブンボーグ006(Lv6 地)
機械族/ペンデュラム/効果
攻500/守500
【Pスケール:青1/赤1】
①:自分は「ブンボーグ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「ブンボーグ006」の③のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。②:このカードの攻撃力は、自分のエクストラデッキの表側表示の「ブンボーグ」モンスターの数×500アップする。③:このカードがPゾーンで破壊された場合、自分の墓地の「ブンボーグ」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


〇ブンボーグ007(Lv7 地)
機械族/ペンデュラム/効果
攻500/守500
【Pスケール:青10/赤10】
①:自分は「ブンボーグ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
①:このカードの攻撃力は、自分の墓地の「ブンボーグ」カードの数×500アップする。②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の「ブンボーグ」モンスターを攻撃対象にできない。③:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。


〇ブンボーグ・ベース(フィールド魔法)
①:フィールドの「ブンボーグ」モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。②:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札の「ブンボーグ」カードを任意の数だけ相手に見せ、デッキに戻してシャッフルする。その後、自分はデッキに戻した数だけデッキからドローする。③:「ブンボーグ・ベース」以外の自分のフィールド・墓地の「ブンボーグ」カード9種類を1枚ずつ除外して発動できる。相手の手札・フィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す。



小町の使う【ブンボーグ】は、そのカテゴリに該当する全てのモンスターの元々の攻撃力と守備力が500しかないものの、モンスター効果を組み合わせるよことで凄まじい力を発揮する。さらに、発動中のフィールド魔法『ブンボーグ・ベース』のおかげで攻守ともにパワーアップを遂げている。


「次に『ブンボーグ003』を通常召喚し、効果発動!デッキから『ブンボーグ001』を特殊召喚!」
「ひえぇ……もう5体埋まっちゃったよぉ」


 ブンボーグモンスターの攻撃力は、レベルが低い順に並べても3500(001)、1000(003)、1000(004)、1500(005)、2000(007)だ。伏せカードもない今のうららの盤面では確実に勝負が決まってしまうが、そんな状況でも小町は一切の妥協を許さなかった。


「『ブンボーグ004』を対象に、『ブンボーグ003』のモンスター効果発動!004の攻撃力を、自分フィールドのブンボーグと名の付いたカードの数×500ポイントアップさせます!合計6枚、つまり3000ポイントアップです!」
「攻撃力、4000?!」
「バトルフェイズ!攻撃力4000になった『ブンボーグ004』で、『CNo.40 ギミック・パペット-デビルズ・ストリングス』を攻撃!そして004の効果発動!デッキから『ブンボーグ009』を墓地へ送り、このカードの攻撃力をさらに4500ポイントアップさせます!」


 攻撃力が8500に到達したが、たとえ破壊してもうららのライフポイントはギリギリ100ポイント残ってしまう。『ブンボーグ004』の効果を使用した後、ターン終了時までうららが受ける全てのダメージは0になってしまうため、この効果の発動は一見すると無意味に思われる。しかし、元より小町はこのバトルで勝負を決めるつもりだった。その答えは、残り2枚の手札の中にあった。


「速攻魔法『リミッター解除』を発動!全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にします!つまり、004の攻撃力は17000になり、うららはこのバトルで終わりです!」
「ひええ~~!!」
URARA→LP:0



 本来ならバトルフェイズに移行する前に『リミッター解除』を発動すれば、『ブンボーグ004』の効果を使わずともうららのライフを全て削り取ることは出来たのだが、「一度でいいから攻撃力15000超えを実践してみたかった」という小町のお茶目っぷりの表れだった。


「どうして勝てないんだろう……。こまちん、【ギミック・パペット】に何かオススメカードとかある?」
「うーん……『マーシャリング・フィールド』を入れているからアージェント・カオス・フォースを入れるのも分かりますけど、希も使っているヌメロン・フォースはどうでしょうか?あれを使えば、フィールドの全てのカード効果が無効になりますから、デビルズ・ストリングスをより活かせると思いますよ。あとは『No.84 ペイン・ゲイナー』と『No.77 ザ・セブン・シンズ』の連続エクシーズ召喚のコンボも良いですね」


 うららは『ギミック・パペット』と名の付いたエクシーズモンスターを呼び出すことばかりに固執していたこともあり、汎用性の高いカードの存在が見えていなかった。しかし、こうして小町からのアドバイスを受けることで自分のデッキのことがどんどん分かってくるようになるのが、うららにとってとても喜ばしかった。
 勉強嫌いな人、この場合はうららが当てはまるのだが、その人達がテストで「20点から100点にする」のは難しいが「20点から50点」にするのは簡単だ。なぜなら、抜けている基礎を補えばいいだけだからだ。どんなことに於いても「基本」というものは非常に大切であり、「基本」をしっかりと完成させたその先に「応用」がある。デュエルも同じで、今のうららのデッキには「基本」が少し足りなかっただけで、その穴を埋めつつ「応用」を利かせれば忽ち強化されるのだ。


「あとは『キラー・トマト』も入れてみたらどうでしょう?ギミック・パペットって、レベルは高いけどステータスが低いモンスターが多いですし」
「なるほど……流石こまちん!頼りになるぅ~!」


 2人で盛り上がっている中、花奈は未だにミスティック・ルーナの対策法が浮かび上がってこなかった。それどころか、今のルーナとデュエルしても勝算が全くないのだ。


(やはり、私とルーナさんでは……実力が違いすぎますわ)
「ルーナさんに手解きを受けてから、私は成長していたのでしょうか…?」






 あれは3年前、花奈が小学2年生になってから数ヶ月が経過したときの話だ。特別講師として、当時のジュニアランク2位だった清水ルーナが五ツ星学園にやってきたのだ。まだ19歳だったルーナだが、花奈にとっては理想の「才色兼備」な人物だった。


(あぁ……テレビでしか見られなかったルーナさんが、私の目の前に…!)
「あ、あの!」
「ん?お嬢ちゃん、どうしたの?」
「あ、えっと……その……」


 あの時、考えるより先にルーナに声をかけてしまったため、どう会話を続けたらいいのか分からなかった。それでも、ルーナは花奈がデッキを小さな右手で握りしめているのを見て察してくれたのだろう。


「お嬢ちゃん、お名前は?」
「は、花奈です!茨木花奈ですわ!」
「花奈ちゃん、授業が終わったら、私とデュエルする?」
「はい!よろこんで!」

 日本トップクラスのデュエリストと対戦できることは、花奈にとって言葉では言い表せないほどの喜びだった。しかし、ルーナも何の考えもなしにデュエルを提案したわけではない。



「バトル!『魅惑の幻想奇術師ミスティック・ルーナ』で『フローラル・プープリエ・ブルーバード』を攻撃!そして効果発動!オーバーレイユニットを3つ使い、墓地から幻想奇術師と名の付いたモンスターを3体特殊召喚!私のフィールドにモンスターが5体揃ったことで、花奈ちゃんの『ブラック・ローズ・ドラゴン』と『フローラル・プープリエ・ブルーバード』をミスティック・ルーナのオーバーレイユニットにするよ!」
「ああ……私のモンスターが、全て…!」
「ごめんね、花奈ちゃん。これも真剣勝負だから。フィールドにモンスターがいなくなったので、ミスティック・ルーナの攻撃はダイレクトアタックに変わる!魅惑のドラマティック・イリュージョン!」
「きゃああぁーーっ!!」
HANA→LP:0



 ルーナの華やかなデュエルに、対戦相手の花奈だけでなく観客も魅了されていた。彼女のデュエルは正に「エンターテインメント」であり、全ての女性デュエリストの目標でもあった。まだ幼かった花奈もその日を境に、いつかルーナを超える存在でありたいと強く思うようになった。


「ルーナさん!またいつか……」
「うん。また、デュエルしようね」


 天使のような微笑みを最後にプレゼントしたルーナは、強くなった花奈と再戦できる日が来ることを約束した。ルーナとの約束を果たすべく、花奈は最強になることを目指して努力に努力を重ね続けた。その結果、昨年行なわれた初等部での対抗デュエルで花奈は4年生ながら見事優勝し、自分が望んだ強さをようやく手にしたのだ。
 しかし、2年前にルーナと交わした約束が叶う日は永遠に来なくなった。彼女は旅行先だった冬のノルウェーで遭難してしまい、凍死状態で発見された。





(ルーナさんを失ったあの日以来、思えば私は、『強さ』だけを追い求めていたような気がしますわ…)
「うららさんの言ったことが少し分かったような気がしますが、今の私ではルーナさんを『笑顔』に出来るかどうか……」


 うららと一緒にお風呂に入ったとき、彼女は「花奈が笑わないと相手も笑顔になれない」と言っていた。あの時は勝つことに拘りすぎたのでよく分からなかったが、「勝つためだけに」造られたアンドロイドのユーリと対戦することでその意味を理解できた。しかし、そのことに気付くタイミングがもう少し早ければ、自分自身を必要以上にストイックに追いやることは無かっただろう。


「……少し、外の空気でも吸ってきましょうか。煮詰めすぎも良くないですわね」


 小町とうららにも伝えようとしたのだが、2人は声をかけても届かないほどデッキ改良に没頭していたため、花奈は黙って外出した。







「はぁ~っ……やはり夜は冷えますわね」


 三日月が映える夜道をフラフラと散歩していた花奈だったが、唐突に腹の虫が鳴ってしまった。思い返してみれば、昼食をかなり軽めに済ましていたのとルーナの対策を研究しすぎていたせいで空腹も忘れていたのだろう。そろそろ帰ろうとしたその時、「彼女」を見つけた。


「ル、ルーナ……さん…」
「見つけたよ、茨木花奈ちゃん♪」


 噴水をバックにして、茶色と銀色のオッドアイが美しく輝いているデュエリストの清水ルーナが現われた。花奈が長いこと目標にし続けてきた人物が、まさかこのような形で相対することになろうとは、初めてルーナと出会った日の花奈では思いもよらなかっただろう。


「……ここで、貴方との約束を果たすときが来たようですわね」
「まだ覚えていたんだ……。だったら話は早いわね。だけど、3年前と同じように、負けるのは貴方よ」


 ルーナはツカツカと花奈に歩み寄りながらデュエルディスクを展開する。その佇まいに気圧されながらも、「ルーナを笑顔にする」という決意を胸に闘志を燃やした。いよいよ、花奈とルーナの運命を決める究極の戦いが始まろうとしていた……!







「「デュエル!!」」


HANA→LP:8000 手札:5 デッキ:45 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


LUNA→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0
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光芒

まさかここで因縁のルーナに再会してしまうとは。自分でも力不足と理解していながらも果敢にデュエルに臨む花奈ですが、かつて完敗を喫したルーナ相手に何処まで自分の成長を見せつけることができるのか……
しかしミスティック・ルーナのテキスト数ですが、涅槃の倍近くあるんですね。比較対象を出していただいたのでその異様さがよく伝わってきます。でもリアルのカードだとルーペでも使わないと文字見えないんじゃないんでしょうかそれって;

そしてうららと小町のデュエルですが【ブンボーグ】ってこんな強かったんですね。あまり馴染みのないカードなのでカード同士がシナジーするとここまでの強さを発揮するのには素直に驚かされました。この二人もお互いに助言しあうことで徐々に強くなっている、というのは感じさせられます。
(2017-03-30 11:23)
カズ
光芒さん
ミスティック・ルーナのモンスター効果をオリカメーカーで入力してみたところ文字サイズを「小」にしても完全にはみ出してしまうほど長かったので、OCGで実装されたらとんでもないことになるでしょうね...。文字サイズ「極小」が出ればきっと埋まるはず(殴
さて、次回はルーナの【幻想奇術師】と花奈の【フローラル】のデュエルになります。いつものように2~3話に渡って続きますが、長い目で見てくださると助かります。
作中でうららは今のところ全敗ですが、小町のアドバイスを機にA.W.Ⅱ編でどこまで活躍できるのかも注目していてください。 (2017-03-30 16:32)

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5 Episode39:並び立つ盟友 385 2 2016-04-22 -
8 Episode40:精一と彩 452 2 2016-05-30 -
5 Episode41:漆黒の鎮魂歌 373 4 2016-06-22 -
5 Episode42:涅槃の境地へ 372 2 2016-07-02 -
4 Episode43:トワノキズナ 332 3 2016-07-23 -
2 Episode44:銀河と宇宙 350 3 2016-08-09 -
5 Episode45:銀河眼vs宇宙眼 333 0 2016-08-20 -
2 Episode46:絶望の凱旋 265 0 2016-08-24 -
4 Episode47:刻まれた記憶の欠片 259 1 2016-09-06 -
10 Episode48:希望の行方 245 0 2016-09-13 -
4 Episode49:悪夢の決戦前夜 252 0 2016-10-03 -
5 Episode50:創世の星屑竜 245 0 2016-10-25 -
0 Episode51:託された未来 256 0 2016-10-30 -
1 番外編03:遊弥と花奈の... 256 2 2016-11-02 -
3 未投稿オリカ紹介① 280 0 2016-11-09 -
2 未投稿オリカ紹介② 225 0 2016-11-26 -
2 未投稿オリカ紹介③ 267 0 2016-12-08 -
3 未投稿オリカ紹介④ 261 0 2016-12-20 -
6 未投稿オリカ紹介⑤ 215 0 2016-12-30 -
4 Episode52:極寒の夏 192 2 2017-01-01 -
31 Episode53:闇の邂逅 213 2 2017-01-07 -
3 Episode54:呪縛竜復活 180 0 2017-01-11 -
5 Episode55:届かぬ声で... 181 2 2017-01-15 -
2 Episode56:禁忌の目覚め 206 5 2017-01-19 -
3 Episode57:共鳴する四龍 210 4 2017-01-25 -
5 Episode58:本当の気持ち 204 3 2017-01-30 -
4 Episode59:真実への鍵 197 2 2017-02-08 -
4 IF01:バレンタインデー 247 6 2017-02-11 -
1 Episode60:エレンとアレックス 235 3 2017-02-16 -
30 ルール改訂と今後の進行について 340 2 2017-02-18 -
4 Episode61:想いの証 201 5 2017-02-21 -
3 Episode62:茨の道標 237 5 2017-02-27 -
5 Episode63:光と闇の花 187 3 2017-03-20 -
7 Episode64:渇望と葛藤 177 2 2017-03-23 -
5 Episode65:麗しき孤月 149 2 2017-03-29 -
44 Episode66:月夜のイリュージョン 223 2 2017-04-21 -
15 Episode67:常闇に消える月華 292 1 2017-05-05 -
10 Episode68:模索者たち 107 4 2017-07-22 -
12 Episode69:純黒の反逆者 119 0 2017-07-27 -
8 Episode70:紅と黒の禁呪 118 2 2017-08-07 -
7 Episode71:希望は往く 116 3 2017-08-17 -
9 Episode72:リリーの過去 103 2 2017-08-24 -
5 Episode73:異次元の亡霊 96 2 2017-09-13 -
4 Episode74:覚醒の鼓動 91 3 2017-09-22 -
5 Episode75:挑戦者の儀 96 0 2017-10-05 -
3 Episode76:神速の決闘 65 2 2017-11-14 -

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