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HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王 Hedgehog Flowers > 第45話 BREAK DOWN

遊戯王 Hedgehog Flowers/第45話 BREAK DOWN 作:白金 将


― ― ― ― ― ― -
葵  8000 手札3枚 エレボス攻
隊長 8000 手札5枚
リアルソリッドビジョンシステム使用
― ― ― ― ― ― ―


「私は手札から〈真帝王領域〉を発動、カードを1枚伏せてターンエンド」
「面倒くさいカードだ……だがそんな物は効かないねぇ! ドロー! 私は手札から〈歯車街〉を発動!」
「アンティーク・ギアか……」
「そして手札から〈古代の機械射出機〉を発動、対象は〈歯車街〉だ! 対象を破壊し、デッキから〈古代の機械飛竜〉を特殊召喚! そして破壊された〈歯車街〉の効果にチェーンして飛竜の効果を発動!」
「ならば――」

 葵が首をひねる。周囲にほんの少しだけ残っていた野次馬がそれで全員逃げた。

「私は伏せていた〈一回休み〉を発動しようか」
「何だと……」
「これでお前の飛竜の効果は無効。さて、どうする?」
「……俺は〈歯車街〉の効果でデッキから〈古代の歯車機械〉を守備表示で特殊召喚だ。そして俺は2体のモンスターをリリース!」

 飛竜と歯車機械が光になり、それが一つになると禍々しい光を帯びて形を変え始めた。錆び付いた歯車を回して翼を広げる雄々しき竜は、その秘めたる禁断の力の捌け口を求めて顕現する。

「機械仕掛けの下僕たちよ、今ここで交わりて新たな力示す道筋となれ! アドバンス召喚! 現れろ、レベル9〈古代の機械熱核竜〉!」

 リアルソリッドビジョンシステムは何も葵のモンスターだけに影響するものではない。使用者の対戦相手となるモンスターも実体を得るため、使いどころを間違えれば自身が害を被る可能性もあった。実体を手に入れた熱核竜が翼を広げると、それだけで周囲には強い風圧が伝わっていく。

「攻撃力3000……」
「俺はこのままバトルフェイズに入る。〈古代の機械熱核竜〉で〈冥帝エレボス〉に攻撃! この時お前はダメージステップ終了時までカードの効果を発動できない!」
「フン……」


― ― ― ― ― ― ― ―
葵  8000 → 7800
隊長 8000
リアルソリッドビジョンシステム使用

― ― ― ― ― ― ― ―
一回休み

永続罠
特殊召喚されたモンスターが自分フィールドに存在しない場合にこのカードを発動できる。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、特殊召喚されたモンスターは、そのターン終了時まで効果が無効化される。
(2):効果モンスターが攻撃表示で特殊召喚された場合にこの効果を発動する。そのモンスターを守備表示にする

― ― ― ― ― ― ― ―
古代の機械熱核竜

効果モンスター
星9/地属性/機械族/攻3000/守3000
(1):「アンティーク・ギア」モンスターをリリースしてアドバンス召喚したこのカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
(2):「ガジェット」モンスターをリリースしてアドバンス召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(3):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時までモンスターの効果・魔法・罠カードを発動できない。
(4):このカードが攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。フィールドの魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。
― ― ― ― ― ― ― ―


「熱核竜の効果発動、その〈一回休み〉を破壊する!」
「……まぁ足止めにはなったか」
「アンティーク・ギアをリリースしてアドバンス召喚した熱核竜はもう1度攻撃することが出来る。2回目の攻撃、お前にダイレクトアタックだ!」
「っ……」

熱核竜の口から放たれる光線が葵に向けて飛んでいく。普通の人なら何かしら反応をする所だったが、葵は微動だにせずその光線をすべて身体で受け止めた。現状、かなりの身体的ダメージが走るはずだった。


― ― ― ― ― ― ― ―
葵  7800 → 4800
隊長 8000
リアルソリッドビジョンシステム使用
― ― ― ― ― ― ― ―


「沈むのはお前の方だ……俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
「痛いなぁ、全く」

 熱核竜の攻撃を受けた後でも葵はその口調を崩さなかった。着ている服の一部が焼ける程の一撃だったが、まるで何事もなかったかのように葵はデッキに指を乗せる。

「私のターン、ドロー」
「さっきの一撃は何ともなかったってのかい……?」
「私は手札から〈汎神の帝王〉を発動。手札の〈真源の帝王〉を捨てて2ドローする」
「何が飛んでくるか……ん、無線?」
「余所見をしている暇はない。このターンで貴様の首は飛ぶ。私は墓地のエイドスの効果を発動! エイドスを除外し、墓地からイデアを守備表示で特殊召喚! そしてイデアの効果でデッキから2体目の〈冥帝家臣エイドス〉を守備表示で特殊召喚!」

 葵の場にあっという間に2体のモンスターが並んでしまう。それも、手札を1枚も消費することもなく。彼女の手札枚数は2枚。これに、隊長を葬り去る手立てがすべて入っているのだ。

「エイドスの効果で私はこのターン2回のアドバンス召喚の行使権を得た。次に墓地の〈汎神の帝王〉を除外して効果発動。3枚の中から選んでもらおうか」
「〈帝王の烈旋〉3枚……ったく、悪趣味な奴だ」
「選べ」
「じゃあ〈帝王の烈旋〉だ!」
〈聞こえていますかグリーン! 彼女は危険です! 今すぐにサレンダーして戻ってきなさい!〉

 デュエルの途中に、隊長の持っていた無線機から男の声が流れ出す。葵には聞き覚えがあった。以前遊乃と共に対峙したオレンジとブルー。その片方、ブルーの声だ。

「その声……貴様も奴らの一味か」
「サレンダーだって!? 冗談じゃない、デュエルから逃げろとでも言うんですかあなたは!?」
〈貴方のいる場所はソリッドの異常反応が観測されています。このままだとダイレクトアタックを食らって死ぬ危険性だってある。ここはいったん下がって――〉
「これは私のデュエルだぁぁぁぁ!」
「……まぁいい。死にたいならさっさと逝かせてやろう」

 冷酷なまでに落ち着いた葵の声で隊長、もといグリーンはデュエルに意識を戻す。警告を示す声が無線機から漏れるが、二人の耳には全く入っていなかった。

「私は手札から〈帝王の烈旋〉を発動。次に手札から〈帝王の開岩〉を発動、そして、〈真帝王領域〉の効果で手札の〈天帝アイテール〉のレベルを8から6に下げる! 続いて、貴様の〈古代の機械熱核竜〉をリリース!」
「俺のモンスターをアドバンス召喚のコストに……!」
「天上世界を支配する帝王よ、今ここに降臨し、反旗翻すものにその怒りを示さん! アドバンス召喚! レベル8、〈天帝アイテール〉!」

 葵の背後に降臨するは天を支配する帝王。その輝きは太陽の光をも彷彿とさせる。迎え撃っていた隊長の手の甲に汗が浮かんだ。

「開岩の効果発動、それにチェーンする形でアイテールの効果も発動する」
「くっ……」
「まずはアイテールの効果で、デッキから2枚目の〈真源の帝王〉〈帝王の開岩〉を墓地へ送り、デッキから〈光帝クライス〉を特殊召喚、そして開岩の効果でデッキから2枚目の〈冥帝エレボス〉を手札に加える。そしてここでクライスの効果を発動。貴様の伏せ1枚を破壊しようか」
「俺は……カードを1枚ドローする」
「まだ私はアドバンス召喚をすることが出来る――私は自分フィールド上のイデアとエイドスをリリース!」

 先程までやや晴れていた空が曇り始める。アイテールとクライスが場を開けると、そこに光となったイデアとエイドスが飛んで行って混ざり合った。そこから降臨するは死の世界を司りし力の帝王。

「常世を支配する帝王よ、今ここに降臨し、弱者を死の国へ引きずり落とさん! アドバンス召喚! レベル8、冥帝エレボス!」

 雷が落ちた。二度目の降臨は怒りを携えた物だった。自身の分身を一度破壊した罪はあまりに大きすぎる物だった。三体の実体を持った帝王を前に、グリーンの足が半歩だけ下がってしまう。

「エレボスの効果を発動。デッキから3枚目の〈真源の帝王〉〈帝王の開岩〉を墓地へ落とし、貴様の手札を1枚デッキに戻す……バトルだ」

 3体の帝王の攻撃力の合計は8000。グリーンのフィールドには何もない。

〈下がりなさい! 我々は貴方を失う訳にはいかない!〉
「畜生! 俺だって命は惜しいからよぉ!」
「消えろ……エレボスでダイレクトアタック!」

 冥界を統べる王の怒りの鉄槌が下されようとしたその時、突然グリーンの姿が消えた。先程までグリーンがいた所の地面はヒビが割れて凹んでおり、衝撃がどれ程の物だったかを物語っている。まともな人間が受ければそれだけで病院に搬送されるレベルだ。

「……ちっ、逃げられたか」


― ― ― ― ― ― ― ―
葵  4800
隊長 8000 → SURRENDER
リアルソリッドビジョンシステム使用
― ― ― ― ― ― ― ―


 葵がデュエルディスクの電源を落とすと、先程まで威圧感を放っていた帝王たちは消え、その場には葵だけが残った。ぐしゃぐしゃになったテント、根元から折れた開催反対派の旗、そして、見る影もなくボロボロになったコンクリートの地面。全て、葵のもたらした物だった。

「何だこれ……ああ、さっきのデュエルでこうなったのか」
「あれ、アンタは……?」

 そこに駆け寄ってきたのはフラワリングタウン政治部の桔梗だった。桔梗と葵は以前、動物保護協会への強襲の計画を聞いた際に一度顔を合わせていたためお互いのことは知っていた。

「あ、お前か」
「久しぶりー、って訳じゃない感じだね……何があったの? ここには大会反対派の人たちがいたんだけど」

 葵の目線が落ちる。だが、その口元は確かに、笑っていた。

「全部私がやった……けど、楽しくて仕方がなかったんだ。ぶっ壊すのが、本当に楽しかったんだ……」
「アンタ、何言ってるんだよ」
「何か大事なことを忘れてた気はするが、どうでもいい。物を壊すことが楽しくて、どうしようもないんだ……」

 葵がケラケラと笑いながらそう話すのを聞いた桔梗は茫然としてしまっていた。





「――葵さん、ごめんなさい。私たちが傍にいるべきだった」

 アルストロメリア本部、地下室。かつて翌檜が捕虜から情報を吐き出させるために用いていた部屋だった。その一室で葵はぼんやりと天井を見ながら座っていた。
 伽藍たちと話した結果、落ち着くまでしばらくはこの牢屋に入ることになった。これは葵本人の願いでもあった。あれからアルストロメリアに戻ってきた葵は自分の行ってきたことへ強い罪悪感を覚え、再び自分があの「どうしようもない楽しさ」を求めてしまうことを恐れたのである。

「何も、私から言えることはない」
「周辺のことに関しては私たちでちゃんとやっておくわ。不安なことがあったらいつでも言って頂戴?」
「感謝する」

 鉄格子越しに葵にそう言った伽藍はエレベーターに乗り、そのままアルストロメリアの団長室がある3階まで戻ってきた。そこではシロと翌檜が心配そうな表情をして伽藍を待っていた。

「葵さんは落ち着いたみたいね」
「一体葵さんに何があったんでしょう……」
「……遊乃の、こと」

 翌檜がぽつりとつぶやく。

「遊乃さん、そう言えばまだ帰って来てませんね」
「もしかしたら葵さんがああなってしまったのも遊乃ちゃんが関係して……」
「可能性は高い」

 伽藍は窓から外を見る。遊乃がいなくなってからまる一日が過ぎようとしていた。

「遊乃ちゃんには帰ってきてほしいわね。葵さんのためにも……」






 リナリア本部。暗い部屋に慌ただしく不規則な足音が聞こえてきた。

「こえええよ……なんだよあの化け物はよ……」
「グリーンですか。とりあえず貴方が無事でよかった……」
「おしっこちびっちまいそうだったんだよぉ! 私はそんなの聞いてなかったあああ!」

 戻ってきたグリーンの報告とも言えない報告を聞きながら、ブルーはデスクトップ上に示された葵の情報をまとめていく。その目がとある所で止まった。

「……これは?」

 その情報を見たブルーは端末からとある人物に電話を掛ける。それは、ブルーが最も嫌い、最も恐れるあの男だった。







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光芒
奇しくもストラクR出身カテゴリー同士のデュエルとなったわけですが、さすがに怒りに燃える葵の方が一枚も二枚の上でしたね。ただ自分がこれ以上暴走することで他者に必要以上に危害を加えてしまうということ、そして自分で自分の暴走を防ぐために地下牢へ入るなどだいぶ冷静な様子。しかし、改めて葵の中での遊乃の存在が大きくなりましたね。もはや彼女にとっては絶対に欠かせない存在となっているのがある意味で気がかりです。

さてしれっとフラワリングカップ開催反対派のデモ隊を率いていたのがリナリアということが明らかになったわけですが……さてブルーが「最も嫌い、最も恐れる」男とは果たして。
(2017-03-22 00:38)
白金 将
<<光芒 さん
その時の葵さんは誰も手が付けられない状態になっていましたからね。暴走の原因こそ現段階では分かっていませんが、謹慎を自ら受け入れた所にまだ彼女の冷静さが残っていることが伺えたと思います。
今まで仲間だった人がいなくなる、しかも自分のペアだった人がいなくなるショックは非常に大きいでしょう。遊乃がそれだけ葵にとって大切な人だ、ということでもありますが。

リナリア側のストーリーは書けていなかったのでちょくちょく補足して書ければいいなと思っています。彼らも彼らで重い運命を背負っていますからね。 (2017-03-22 03:48)

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