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遊☆戯☆王V☆S(ファイブスター)/Episode62:茨の道標 作:カズ

「んっ……うぅ~~っ!」


 8月3日の午前7時。スカンジナビア半島の西岸に位置するノルウェー王国の学生寮で、茨木花奈は日本に居るときと同じ時間に目を覚ました。窓から差し込んでくる日光が、一日の始まりを感じさせる。


「うららちゃ~ん、朝ですよ~!」
「んぁ…?花奈ちんもこまちんも起きるの早いねぇ~……ふわぁ~……」


 ポニーテールでメガネっ娘の小野寺小町と、ツーサイドアップでやや垂れ目の春野うららも同じルームで過ごしていた。そもそも何故、小学5年生の花奈と中学1年生の小町とうららがこうして学生寮で生活しているのか。話は少し遡り、彼女たちがノルウェーにワープした7月31日……。









 花奈達がワープした場所は、ノルウェーの首都にある「オスロ大学」の屋上だった。こちらでもロシア同様に異常気象が続いており、7月末であるにも関わらず気温はマイナス4℃と真冬並みだった。


「厚手の服とカイロを持ってきてよかったですわ……」


 花奈はカイロを小さな両手で擦りながら、「ハァ~ッ」と息を吐いた。毎日ニュースを欠かさず見ていたので、世界のどこで異常気象が起きているのかもリサーチ済みだった。一方、同行したうららは異常気象に見舞われていることを知らなかったのか、暖を取れるものを全く持ってきていなかった。「石橋を叩いて渡る」タイプの小町がたくさん防寒具を持っていたおかげで、どうにか寒さを凌げた。


「うぅ……こまちんのおかげで助かったよぉ~」
「うららはもう少し危機感持った方がいいと思いますけど……。これじゃあ、何のために希と凛に頼み込んで参加したのか」


 希が『SNo.0 ホープ・ゼアル』を手にしたデュエルの後(Episode48参照)、希は凛に「自分も凛と一緒に戦いたい」と志願したのだ。最初は「危険すぎる」と、凛も頑なに断っていたのだが、希の熱意と、小町、カレン、うらら、胡桃の後押しによって根負けして今に至る。


「だいじょーぶ!こんなこともあろうかと、私、むつかしい英語のお勉強はバーッチリしてきたから!ちょっと待っていて!」
「あっ、うらら!確かノルウェーは……」


 「英語は通じない」と言いかけた小町の制止を振り切り、うららはすぐ近くを通っていた女学生に話しかけた。しかし、うららは英語が壊滅的に苦手であるため、「どこか旅館知りませんか?」という場合、以下のようになってしまう。


「ソーリー!ドゥーユーノー『トラベル(旅)ハウス(館)』?」
「Hva er?(何?)」
「トラベルハウス、トラベルハウス!メニメニヒューマン、オンザベッド!」


 日曜午後8時の、世界の果てまで行きそうなバラエティ番組でとある芸人が実際にやっている光景そのままだったため、間近で見ていた花奈は開いた口がふさがらなかった。中学生にもなって知っているだけの単語を並べただけの英会話なのは流石にどうなのかと思った彼女は、小町に質問してみた。


「あ、あの……小町さん。あれは何ですの?うららさん、今にも『E.T.はホワァッツマン?』と言ってしまいそうなくらい酷いのですが…」
「あれがうららの精一杯の英語なんです。しかもうらら、ノルウェーじゃあ英語は通じないのを知らないで……。親友として恥ずかしい限りです」


 筆記なら全国レベルの成績を誇っている小町とは対照的に、うららはどの科目でも学校のテストで40点台、苦手な英語に至っては25点以下というあまりよろしくない成績なのだ。うらら自身も「これではダメだ」と思い、呪縛竜決戦の前日まで出来る限り英語を勉強したのだが、3歩歩くと忘れるような人間だったので特に意味は無かった。


「私もノルウェー語は話せなくて……どうしましょう」
「…少し話してみますわ。ノルウェー語なら多少は出来ますので」


 途方に暮れた小町と壊滅的な英語力のうららに助け船を出すべく、花奈はうららに一方的に話しかけられて半ばうんざりしている学生の所へ向かった。


「Jeg beklager. Det lille du sikker på at du vil?(すみません、少しよろしいでしょうか?)」
「Det er? Hva skjer?(ん?どうしたの?)」
「Faktisk, vi, jeg kom fra Japan, et sted i stand til å holde sannsynlige stedet, eller ville du vet?(実は私達、日本から来たのですが、どこか泊まれそうな場所はご存じでしょうか?)」
「Hmmm ... Oh! Jeg bodde på rommet mitt når det er bra?(う~ん……あ!よかったら私の寮に泊まっていく?)」
「Vil du ha? Vi har to personer etter min andre ...(よろしいのですか?私の他にあと2人いるのですが……)」
「All right! Hvis ca tre barn, det gjorde liksom. Det er Duelist tilsynelatende ...(大丈夫よ!子供3人くらいならどうにかなるわ。見たところデュエリストだけど…)」
「Detaljer kan bli diskutert senere.(詳しいことは後で説明しますわ)」
「Det ble funnet. Vel, kommer med. Veiledning i rommet(分かった。じゃあついてきて。部屋に案内するわ)」



 「多少」どころか地元民と何の不自由もなくスラスラと会話し、解決した後は小町にウィンクしてみせた。花奈は自ら進んで興味のある言語をひたすら暗記し、小学5年生にして英語、韓国語、フランス語、ノルウェー語の4カ国語をマスターしている。そんな彼女を見た小町とうららは、「本当に小学生なの?」と疑問に思ったという。









「Det kom. Her er rommet mitt. Inntil tilbake til Japan, er det bra å bruke fritt.(着いたわ。ここが私の部屋よ。日本に帰るまでの間、自由に使っていいから)」
「Tusen takk.(ありがとうございます)」



 5分ほど歩き、女学生のアンネが普段から一人暮らしをしている学生寮に到着した。部屋の中にはベッドはもちろん、テレビやノートパソコン、冷蔵庫や電子レンジ、バスルームや洗濯機など、基本的なラインナップは全て揃っていた。おまけに、ここで生活している友人を4~5人連れて勉強会が出来るくらいの広さだった。アンネの優しさに心から感謝した花奈は、今世界で起こっている事件を洗いざらい話した。
(※ここから全て日本語ですが、アンネと花奈の会話はノルウェー語です)



「そう……。じゃあ貴方達は、その悪者達から世界を守るため、そして敵の手に堕ちたルーナって人を助けるために遙々日本から来たのね?」
「ええ。ですが、私達3人だけではこれからの事態に想定できるかどうか……」


 まだ完全に小町とうららを信用しきれていないのか、珍しく花奈が弱気な一面を見せた。凛と同級生の親友とはいえ花奈にとっては完全初対面の、しかも一度敵の罠に堕ちているデュエリストとなると、今後の戦力として花奈には物足りない感じが嫌でもしてしまうのだ。


「まあ……。花奈さんの気持ちは分からなくもありませんが…」
「私達だって頑張るもん!」


 力不足だということは小町もうららも痛いほど分かっていた。しかしあの時助けてくれた希に絶対に恩返しすると誓った2人は、こうして呪縛竜決戦に身を投じている。生半可な気持ちでないことは彼女たちの態度を見れば明らかだが、相手は世界レベルのデュエリスト、清水ルーナだ。


「でしたら、私相手に勝つことができるか試してみます?」
「面白そうですね。花奈さんがどんなデッキを使うのかを知るには良い機会です」
「よぉーし!じゃあまずは私からでいい?こまちん?」
「は、はい。では私はその間にお風呂に入ってきます…」


 そこで、今後どこまで彼女たちが戦えるのかを見極めるために花奈は2人にデュエルを申し込んだ。ただ、モンスターを実体化できる今のデュエルディスクを使えばアンネに多大な迷惑をかけることになるので、テーブルを使用してのデュエルになった。



「「デュエル!!」」


HANA→LP:8000 手札:5 デッキ:45 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


URARA→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M・Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN01
 先攻は花奈から。彼女が使用する【フローラル】はデッキ・手札・フィールドからカードをより多く除外することで真価を発揮するテーマだ。それゆえ彼女のデッキ枚数は50枚と、多めにカードが入っている。


「私のターン!まずは手札から魔法カード『フローラル・ポレーン・フュージョン』を発動!デッキから『フローラル・マルグリット』『フローラル・ペルスネージュ』を除外し、融合召喚を行ないますわ!出でませ!『フローラル・ペタル・ナイト』!」


花弁の騎士、『フローラル・ペタル・ナイト』が融合召喚されたことで、花奈は融合素材として除外した『フローラル・ペルスネージュ』をデッキに戻して1枚ドローした。手札消費を一切行なわずに攻撃力2700の融合モンスターを呼び出したことに吃驚したうららは思わず「ほえ~」と声を上げた。問題なのは、ペタル・ナイトには『マクロコスモス』のように「墓地へ行かず除外する」効果を持っていることだ。花奈のデッキとは相性抜群だが、うららにとってはかなり厳しいといえる。


「まだ私のターンは終わっていませんわよ?続いて私は魔法カード『フローラル・セマンス』を発動し、デッキから『フローラル・バルザミヌ』を除外。そして永続魔法『フローラル・ネクタール』を発動し、手札から『フローラル・イリス』を通常召喚。そして『フローラル・マルグリット』は、私のフィールドにフローラルと名の付いたモンスターが存在する場合、除外されていても特殊召喚できますの!」


 巧みにデッキを操り次々とカードを除外する花奈だが、特殊召喚したマルグリットはレベル3のチューナーモンスターである。そして彼女は発動している永続魔法『フローラル・ネクタール』の効果を使い、イリスのレベルを2から4へと変更した。


「私はレベル4となった『フローラル・イリス』にレベル3の『フローラル・マルグリット』をチューニング!漆黒の茨が冷たき炎を薙ぎ払い、光の道を切り開く!シンクロ召喚!出でませ!『ブラック・ローズ・パラディン』!!」


 続いて行なったのは得意のシンクロ召喚。レベル7には彼女のエースモンスター『封印竜フレア・ローズ』も存在するが、花奈は敢えてこちらを呼び出した。「封印竜を使わないというハンデでも勝てないようでは戦えない」という彼女なりの挑戦状だ。


「『ブラック・ローズ・パラディン』がシンクロ召喚に成功したことで、私は除外されている『フローラル・ポレーン・フュージョン』と『フローラル・バルザミヌ』を手札に加えます。これでターンエンドですわ」
HANA→LP:8000 手札:4 デッキ:42 Mゾーン:2 M・Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN02
 融合とシンクロの2つの召喚法を1ターン中に成功させ、尚且つ手札もわずか2枚しか減っていない。しかも花奈のフィールドには擬似的な『マクロコスモス』が2枚ある。


「私のターン、ドロー!じゃあまずは『トレード・イン』を発動して~、手札から『ギミック・パペット-ネクロ・ドール』を捨てて2枚ドロー!うぅ…墓地にカードが行かないなんてキツいなぁ」


 うららは【ギミック・パペット】を使用するが、花奈の2体のモンスターによって殆どの行動が制限されてしまっている。エクシーズ召喚を得意とするこのデッキは、墓地にカードが送られないと機能しないカードが大半なので、うららにとってかなりの痛手だが、どうにかこのターンで破壊しなければ次のターン以降に支障が出る。


「じゃあ…まずは『ギミック・パペット-ギア・チェンジャー』を召喚!そして『ギミック・パペット-マグネ・ドール』は、私のフィールドにギミック・パペットと名の付いたモンスターのみが存在する場合、手札から特殊召喚できるんだ!そして、ギア・チェンジャーの効果で、レベルをマグネ・ドールと同じ8にするよ!」
「レベル8のモンスターが2体……」
「私は、レベル8のギア・チェンジャーとマグネ・ドールでオーバーレイ!運命の糸を操る人形が、闇の舞台の幕を開ける!エクシーズ召喚!!ランク8『No.15 ギミック・パペット-ジャイアントキラー』!!」



〇トレード・イン(通常魔法)
①:手札からレベル8モンスター1体を捨てて発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。


〇ギミック・パペット-ネクロ・ドール(Lv8 闇)
機械族/効果
攻0/守0
このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体をゲームから除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。「ギミック・パペット-ネクロ・ドール」の効果は1ターンに1度しか使用できない。また、このカードをエクシーズ召喚の素材とする場合、「ギミック・パペット」と名のついたモンスターのエクシーズ召喚にしか使用できない。


〇ギミック・パペット-ギア・チェンジャー(Lv1 地)
機械族/効果
攻100/守100
このカードはデッキから特殊召喚できない。1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上の「ギミック・パペット」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる。


〇ギミック・パペット-マグネ・ドール(Lv8 闇)
機械族/効果
攻1000/守1000
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に存在するモンスターが「ギミック・パペット」と名のついたモンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。


〇No.15 ギミック・パペット-ジャイアントキラー(ランク8 闇)
機械族/エクシーズ/効果
攻1500/守2500
レベル8モンスター×2
自分のメインフェイズ1でこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊する。破壊したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、さらにそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果は1ターンに2度まで使用できる。




 うららはこの現状をどうにか打破するべく、最適なモンスターを呼び出した。攻撃力が低いため守備表示だが、ジャイアントキラーはオーバーレイユニットを取り除くことで相手モンスターを破壊できるのだ。しかもこの効果は1ターンに2度まで使用できるので花奈のモンスターを一掃できる。


「それじゃあ、ジャイアントキラーの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、花奈ちんのペタル・ナイトを破壊!もう1回使って、今度はブラック・ローズ・パラディンも破壊!」
「……ガラ空きにされましたか。ですが、私にダメージは入りませんでしたね」
「でも、守備力2500のモンスターがいるからだいじょーぶ!カードを1枚伏せてターンエンド!」
URARA→LP:8000 手札:3 デッキ:32 Mゾーン:1 M・Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN03
「では……ファイナルターン。ドロー!魔法カード『フローラル・ポレーン・フュージョン』を発動し、デッキから『フローラル・ノワイエ』と『フローラル・プリュネ』を除外し、再び融合召喚を行ないますわ!出でませ!『フローラル・フィグ・プリンセス』!!フィグ・プリンセスは1ターンに1度、除外されたフローラルと名の付くモンスターを特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力分のライフを回復できますの。ノワイエを特殊召喚し、1400ポイントのライフを回復。続いて特殊召喚したノワイエの効果発動!自身を破壊し、デッキから『フローラル・コクリコ』と『フローラル・オルタンシア』を手札に加えますわ」
HANA→LP:9400


 3ターン目にして、早くも花奈はファイナルターン宣言をした。彼女にとってうららは今まで対戦してきた相手の中でも特に手応えがなかったと判断したのか、フィグ・プリンセスを融合召喚した後、軽く溜息をついた。


「続いて『フローラル・オルタンシア』を召喚し、効果発動!私のフィールドのフローラルカードの数まで選び、相手カードを破壊します!ジャイアントキラーと伏せカードを破壊しますわ」
「うぅ……何も出来ない……」
「続いて除外されている『フローラル・マルグリット』を自身の効果で呼び戻しますわ。そして、レベル3のオルタンシア1体でアナザー・ディメンションゲートを解放!ビヨンド召喚!!出でませ!『フローラル・エラーブル・ドリアード』!!」


 融合、シンクロに続いて今度はビヨンド召喚までも決めてみせた。これでもまだまだ全力ではないが、このターンで勝負を決めるには当然の過程なのだ。


「私の除外されたカードが合計5枚以上のため、フィグ・プリンセスの効果発動!手札から『フローラル・コクリコ』と『フローラル・バルザミヌ』を除外し、私のフィールドにフローラルトークンを可能な限り特殊召喚しますわ!そして私は永続魔法『フローラル・ネクタール』の効果を使い、マルグリットのレベルを3から5に変更いたします!レベル2のフローラルトークン2体にレベル5となったマルグリットをチューニング!シンクロ召喚!出でませ!『フローラル・スリジエ・マダム』!!」


 呆然としながら花奈の動きを眺めていたうららは、小学生ながらにしてこの決戦に全てを懸けていることを再認識し、そして自分自身の「甘さ」も思い知らされた。


「スリジエ・マダムがシンクロ召喚に成功したことで、シンクロ素材とした全てのモンスターの攻撃力分のライフを回復しますわ。これで私のライフは11100になり、スリジエ・マダムが存在する限り、エラーブル・ドリアードとフィグ・プリンセスの攻撃力は800ポイントアップし、フィグ・プリンセスの攻撃力はフィールドのフローラルカード1枚につき200ポイントアップします。これで3体の攻撃力はそれぞれ3800、3200、2000。合計するといくつになるか、分かりますわよね?」
「え?!え~っと、3800と3200を足したら6000?になって……それに2000を足したら8000になって終わりじゃん!」
「……計算は間違っていますが、どのみちワンターンキルですわ。バトルフェイズ!3体のモンスターでダイレクトアタックですわ!!」
「ひえぇ~~~!!」
URARA→LP:0









 花奈とうららのデュエルにかかった時間は5分足らずという、花奈の今までのデュエルの最速記録を更新した。おまけに1ポイントも花奈のライフを削りきれなかったというマイナスポイントも生じてしまい、彼女の中でうららの評価をより一層下げる要因となってしまった。


「正直言わせてもらいますが、凛さんよりも手応えがありませんでしたわ。これでは戦えるかどうか……」
「確かにりんりんには1度も勝ったことがないけど、まさかここまでズタボロなんてぇ…」


 年下相手にデュエルで完敗しただけでなくはっきりと本音を言われてしまい、既にうららのメンタルポイントは0だった。確かに彼女は希達6人の中でもデュエルの腕はイマイチだが、デュエルを楽しむ気持ちは誰よりも強いと自負している。しかし、この戦いは「楽しむ気持ち」だけでは生き残れない。それこそ、今できる自分の全力以上のことをしなければ奴らには絶対に勝てないのだ。


「私は今のデュエル、できることを全力でやったまでです。ただ、私は全力≠本気だと思っていますわ」
「……つまり、どういうこと?」
「…それは自分で考えてください。私が言うのも失礼ですが、うららさんも小町さんも、この戦いで自分がどうするべきなのかを今一度見つめ直すべきかと」


 30分後、風呂上がりの小町も花奈のことを少しでも理解しようとするべくデュエルをしたが、またしても花奈の圧勝だった。連戦だからと言うのもあって疲れたのか、花奈はうららと一緒に風呂に入ることにした。







「え~っとぉ……」
「……」


 先ほどの一件もあってか、湯船に浸かっている花奈とうららの間には気まずい空気が漂っていた。花奈はたとえ誰が相手でも自分の思っていることを正直に言うタイプだが、それが原因で偶に対人関係に亀裂を生じさせてしまうことがある。今回もうららのことを傷つけてしまったのではないかと内心怯えていたが、彼女の場合は違った。


「ねえ花奈ちん。ずっと思っていたんだけどぉ……どうして笑ってくれないの?」
「…はい?!」


 花奈は思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、うららの言ったことは実に的を射ていた。滅多に笑わない花奈だが、その裏には「呪縛竜決戦という自分の命を懸けた戦いで笑っている余裕なんてない」という決意がある。しかし、それがかえって彼女の心を呪縛していることに花奈自身は気付いていなかった。


「花奈ちんがどれだけ凄いかってことは分かっているつもりだけどぉ~、花奈ちんが笑ってくれないと、こっちも悲しくなるよ?それじゃあルーナさんを本当の意味で助けられないんじゃないかなぁ~って、思うんだけど」
「…どういう意味ですの?」
「そ・れ・は♪自分で考えてくださいな♪ニヒヒ~」
「ひゃんっ!どこを触っているのですか?!///」


 どんな形でもいいから笑っている花奈を見たい。そう思ったうららが取った行動はボディタッチ、しかも彼女の未発達な胸と秘部を触ることだった。他人に触られたことがなかった花奈は甘い声で喘ぎながらも、隙だらけのうららに同じ事をやり返した。


「んも~!花奈ちんのエッチー!」
「先に仕掛けたのはそちらですわよ?凛さんにもその胸、少しは分けてあげたらいかがです?!」
「やーなこった!りんりんはペッタンコのままでいいんだよ~だ!」


 この場に凛がいれば三つ巴になっていただろう女の争いはしばらく続き、花奈にはその間に自然と笑顔が生まれていた。彼女たちは風呂から出た頃にはすっかり茹で蛸のようにのぼせており、その様子を心配した小町もうららに襲われ、ベッドの上で第二幕が始まったという……。
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ター坊
花奈ちゃんは相変わらず歳不相応な活躍をしてくれますね。何で4カ国も喋れるんだ(それでカズさん自身何でノルウェー語を打てるのか?)。
それとスパルタ(?)も相変わらずでうららをボコボコにしましたな。楽しむ気持ちだけでは生き残れないとは厳しいですが 、これも花奈ちゃんの愛かな? (2017-02-27 14:30)
カズ
ター坊さん
ノルウェー語に関しては翻訳サイトを利用しただけです。決して私がノルウェー語を話せるわけではありません。
花奈は他人に厳しい分、自分にはもっと厳しいタイプなのでうららとは真逆の性格だといえます。それも不器用な花奈ならではの優しさ(愛)ですが、そんな彼女がうらら・小町と過ごしてどう成長していくか、お楽しみに。 (2017-02-27 22:40)
から揚げ
花奈ちゃんは本当に強いですね!

手札消費を抑えながら融合・シンクロ・ビヨンドモンスターを大量展開し、封印竜を召喚せずに勝利を収めるとはお見事です!

これだけ高い技量を持っている花奈ちゃんでさえ、気負ってしまう辺り、呪縛竜の力がどれだけ強大なのかが如実に表れていますね。

一方のうららちゃんも、ジャイアントキラーの効果で花奈ちゃんのモンスターを全滅させる善戦を見せてくれましたが、全体除外が諸に刺さってしまった結果になりましたね・・・うららちゃん頑張れ!

うららちゃんが精神面で花奈ちゃんを支え、花奈ちゃんもうららちゃんを頭脳面で支えていて、とても息の合った素晴らしいコンビだと思います!

そして再び要望を聞いて頂いて、ありがとうございます!パイタッチだけでなく、お風呂シーンまで書いて頂いて感無量です!やはり女の子同士のスキンシップは良いですね!

後、何度も要望して驚かせてしまいまして、本当に申し訳ありませんでした。 (2017-02-27 23:16)
tres(トレス)
初めまして。ふと読み流してましたらデンマーク語らしき文章(あれ良く見るとちょっと違う、スウェーデン語も混ざってる?ノルウェー語かなと思ったらノルウェー語でした)が唐突に現れ、思わずコメントを残してしまいました(すみません、言語マニアなもので…お話の方は後日最初から読ませて頂きます)

これからも更新頑張って下さいね、応援してます。 (2017-02-27 23:30)
カズ
から揚げさん
花奈は封印竜使いとの対戦では紅葉以外に負けたことがないほどの実力者ですが、自分の命を懸けて呪縛竜とルーナに挑むわけですから気負うのは当然です。うららと小町はまだ花奈よりも未熟な部分がありますが、それは花奈も同じ事。この3人が今後どう関係を築き、成長していくかお楽しみに。

tresさん
初コメントありがとうございます。ター坊さんの時にも言いましたが、翻訳サイトを利用してノルウェー語を入力しただけであって、決して自力ではありません。
最初らへんは今みたいにパソコンからではなく携帯で、しかも行間隔が空いていないので読みにくいかもしれません...。
「可憐なる博徒 レイリ」の方にも近いうちにコメントしていきます。 (2017-02-28 13:04)

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4 Episode52:極寒の夏 192 2 2017-01-01 -
31 Episode53:闇の邂逅 213 2 2017-01-07 -
3 Episode54:呪縛竜復活 180 0 2017-01-11 -
5 Episode55:届かぬ声で... 181 2 2017-01-15 -
2 Episode56:禁忌の目覚め 207 5 2017-01-19 -
3 Episode57:共鳴する四龍 211 4 2017-01-25 -
5 Episode58:本当の気持ち 204 3 2017-01-30 -
4 Episode59:真実への鍵 198 2 2017-02-08 -
4 IF01:バレンタインデー 247 6 2017-02-11 -
1 Episode60:エレンとアレックス 235 3 2017-02-16 -
30 ルール改訂と今後の進行について 340 2 2017-02-18 -
4 Episode61:想いの証 202 5 2017-02-21 -
3 Episode62:茨の道標 237 5 2017-02-27 -
5 Episode63:光と闇の花 187 3 2017-03-20 -
7 Episode64:渇望と葛藤 177 2 2017-03-23 -
5 Episode65:麗しき孤月 150 2 2017-03-29 -
44 Episode66:月夜のイリュージョン 223 2 2017-04-21 -
15 Episode67:常闇に消える月華 293 1 2017-05-05 -
10 Episode68:模索者たち 107 4 2017-07-22 -
12 Episode69:純黒の反逆者 119 0 2017-07-27 -
8 Episode70:紅と黒の禁呪 118 2 2017-08-07 -
7 Episode71:希望は往く 116 3 2017-08-17 -
9 Episode72:リリーの過去 103 2 2017-08-24 -
5 Episode73:異次元の亡霊 96 2 2017-09-13 -
4 Episode74:覚醒の鼓動 91 3 2017-09-22 -
5 Episode75:挑戦者の儀 96 0 2017-10-05 -
4 Episode76:神速の決闘 66 2 2017-11-14 -

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