HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王 Hedgehog Flowers > 第41話 狂植物の叛乱

遊戯王 Hedgehog Flowers/第41話 狂植物の叛乱 作:白金 将


「デュエルディスクがない?」
「そうなの。この館のどっかに落としちゃったみたいで……」

 ぼんやりと点いた明かりの下、遊乃はソファに背を預けながらユーノの話を聞いていた。ユーノが館を出る条件として、彼女の落としてしまったデュエルディスクを見つける必要があるとのことだった。安全な所を探しては見たものの見つかってないらしく、まだ探していない所に行くにはそのディスクがないと心もとないと言う。

「奥の方ちょっとだけ覗いてみたんだけど、なんかでっかいモンスターみたいなのがうろうろしてて……」
「モンスター……? お化けとかじゃなくて?」
「見たことある気がするんだけど、うーん、名前がいまいち出てこない……」

 ユーノはしばらくソファの前をうろうろするが、遊乃の前に立つと、彼女の顔を覗きこみながら提案した。

「そうだねぇ、ディスクを取り返してくれたら私もあなたに力を貸そうかな?」
「力を貸す? ど、どういうこと……?」
「後でわかるから。ほら、お腹が空く前にしゅっぱーつ!」
「ええっ……」

 ディスクを装着しながら遊乃は部屋を出て、嫌々ながらに暗い廊下へと歩き出した。後ろからユーノが付いてきてはいるが、前から何が来るか分からないのが怖いため遊乃は何度も何度も振り返ってしまう。
 妙に植物が侵食している廊下の角で意味深に落ちている額縁や時計に怯えながら進んでいくと、何やら物音のような物が聞こえてきた。

「ひっ」
「来るよ……」
「だ、だから私を盾にしないで……!」
「私だって怖いんだからっ……!」

 そんなことをしていると、曲がり角を曲がった時、二人の先に何か大きな巨体が見える。洋館の地面から生え出ているのは一輪の花。その花の中央から人間の上半身のような物が伸びていた。桃色の扇を持ち、和装に身を包んだ黒髪の女性――まるで平安時代の貴族を思わせる彼女は、怯えながら様子を窺っている二人に気が付くと、ぎっと睨むような目つきで威圧してくる。

「あ、あれだよあれ! あれのせいでここ通れないの!」
「え、でもあれって……」

 遊乃は確かにその姿に見覚えがあった。
 それはかつて遊乃がどこかで見たカードに記されていた女性の姿。自分で使うことはなかった物の、非常に強力なカードの一枚として多くのデュエリストを苦しめてきたモンスター。

「我が名は〈桜姫タレイア〉……ここを通りたければ我を倒して見せよ!」

 彼女――タレイアがそう言い捨てた時、彼女の左腕をツタが包み、そこから桃色のデュエルディスクが現れる。遊乃は目の前の状況を飲み込めないまま、後ろでびくびくと震えているユーノに押されるような形で自分もディスクを展開した。

― ― ― ― ― ― ―
遊乃   8000
タレイア 8000
― ― ― ― ― ― ―





 遊乃が幽霊屋敷で四苦八苦している間、既に夜の闇が空を覆いつくしていた。団長室のドアが二回叩かれ、伽藍が返事をすると葵が部屋に入って来た。その表情は地に堕ちたように暗い。既に団長室にいた伽藍は神妙な顔で彼女を迎える。

「……帰って来たぞ」
「お疲れ様。その……今は、ゆっくり休んでね」
「そのつもりだ」

 葵はそれだけを言うと踵を返して団長室を出て行ってしまう。少し経つと、伽藍の足元に隠れていたシロが出てきた。葵がいないことを確認すると、シロは不思議そうな表情を浮かべながら伽藍に尋ねる。

「らん姉、なんで隠れろって言ったの?」
「シロちゃんにはまだ分からないかもしれないかしら」

 伽藍はシロをぎゅっと抱きしめると、彼の頭を撫でながらやや伏し目になって囁く。その声は普段の物とは違い震えていた。そのことにシロは違和感のような物を覚えるが、口には出さずに伽藍の話を聞き続ける。

「葵さんにとって遊乃ちゃんは大切な仲間なのよ」
「うん」
「私にとってシロちゃんは大切な仲間。葵さんに変な劣等感を感じさせちゃいけないでしょ」

 シロは伽藍の胸元でちょっとだけ動くが、彼女が簡単に話してくれないことを感じ取ったのかそのまま丸くなった。このようなことが今までなかった訳ではないが、ただ事ではないとシロは直感で悟った。

「シロちゃん……どこにも行っちゃ駄目よ」
「らん姉……」

 伽藍はシロを抱き続ける。普段よりもその腕が強張っていた。シロも伽藍の背中に腕を回し、しばらくの間彼女の体温を布越しに感じ取る。傍にいると落ち着く、というのもあるが、何よりも、彼女のためにだった。





― ― ― ― ― ― ―
遊乃   8000
タレイア 8000
― ― ― ― ― ― ―

 先行はタレイアの物になった。カード内のモンスターとの戦い、という想定外の事に遊乃は何とか落ち着こうとするが、やはり受け入れがたい事なのか頭の整理がいまいちついていない。

「先行は我だ。我は手札から〈桜姫の侍女ハナミズキ〉を守備表示で特殊召喚! このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない時、手札から特殊召喚することが出来る!」
「桜姫の侍女……!?」
「そして特殊召喚したハナミズキの効果発動! 我はデッキからハナミズキ以外の『桜姫の侍女』モンスターを1体特殊召喚することが出来る! 我は〈桜姫の侍女ツツジ〉を守備表示で特殊召喚!」

 予想外に予想外の事が続く。遊乃の記憶にそのようなカードはない。タレイアは他のマリーナ、チルビメ、ティタニアルの三体と合わせて「四季姫」と呼ばれる事こそあったが、それに「侍女」と呼ばれるカード群がいたことなど知る由もない。実際、このようなカードは遊乃の知る限り流通していないはずだった。
 新しいカードを刷る際には企業の許可が必要で、許可が出たカードが世に流通する際にはその情報が告知される。不意打ちを受けたような形だったが、受けた勝負は必ず勝つ、と遊乃は表情を変える。

「特殊召喚されたツツジの効果を発動。デッキからツツジ以外の『桜姫の侍女』モンスターを1体手札に加えることが出来る。我は2枚目の〈桜姫の侍女ハナミズキ〉を手札に加える。そしてカードを2枚伏せてエンドフェイズ!」

 エンドフェイズに入った瞬間、タレイアの前で片膝をついているハナミズキ、ツツジから種子のような物が遊乃へ飛んできた。軽い打ち身のような感覚に陥りながらも遊乃はそれに耐える。

「きゃっ……!」
「『桜姫の侍女』モンスターはエンドフェイズ、相手にそれぞれ500ダメージを与える効果を持つ。1000のダメージを受けてもらおう。我はこれでターンエンドだ」

 遊乃の前に立ちはだかる【桜姫】という新しい壁。何もかもが未知数な戦いに遊乃の身体は震えていたが、後ろでずっと様子を窺っていたユーノが彼女の隣に立つ。

「私もいるから。今はとにかくこのデュエルに勝って!」
「ユーノちゃん……うん、分かった!」

 自信を取り戻した遊乃だったが、タレイアの持つデッキ【桜姫】の真の恐ろしさを知るのはそう遠くはなかった。



― ― ― ― ― ― ― ―
遊乃   手札5枚 0伏せ 7000
タレイア 手札3枚 2伏せ 8000
― ― ― ― ― ― ― ―


― ― ― ― ― ― ― ―
桜姫の侍女ハナミズキ ※オリカ

効果モンスター
星1/水属性/植物族/攻   0/守   0
このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に特殊召喚出来る。
①このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキから「桜姫の侍女」モンスターを1体特殊召喚する。
②自分エンドフェイズに発動する。相手ライフに500ポイントダメージを与える。

― ― ― ― ― ― ― ―
桜姫の侍女ツツジ ※オリカ

効果モンスター
星4/水属性/植物族/攻1800/守1500
①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキから「桜姫」モンスターまたはレベル8植物族モンスター1体を手札に加える。
②自分エンドフェイズに発動する。相手ライフに500ポイントダメージを与える。

― ― ― ― ― ― ― ―




※オリカが出てるのにもちゃんと理由があります。まぁ後ほど……
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光芒
作中においてモンスターとデュエルをする、という展開自体はよく見ますがここで登場するのがまさかのタレイアとは。しかも自分の侍女をカードとして登場させてくるあたりかなり気合が入っている様子ですね。
しかし何故ここで他の四季姫を差し置いてタレイアが登場したのか、そして当のタレイアがどのようなデュエルを繰り広げるのか……気になることばかりです。
(2017-02-06 12:07)
白金 将
<<光芒 さん
今回のもりのようかんの件についての割と重大な役目をタレイアには担ってもらっています。他の四季姫については(禁則事項です
侍女に関してはタレイアの効果に合わせたものとなっています。勿論これだけではないのでお楽しみに。遊乃とユーノの二人はどうなるのか……? (2017-02-07 00:18)
tres(トレス)
少々ホラーチックな洋館で出会ったのは自分そっくりのユーノとモンスターであるタレイア。不可解の連続ですが遊乃は比較的冷静な感じですね。タレイアさんが目の前に現れたらたぶん圧倒されそうです(現れない) (2017-05-17 01:16)
白金 将
<<<tres(トレス) さん
遊乃はこの状況ではもう自分で考えることを半ばあきらめているような感じです。冷静、というよりは思考停止? それでも前に進もうという意志は強く残っているので、ユーノと共にこの先をどう進んでいくかお楽しみに。
四季姫って結構でかいんじゃないかと思いますね。姫自体がでかいんじゃなくてその周りの辺りが……? 目の前に出てきたらおそらく僕もびっくりしますね。ソリッドビジョン早くこないかなぁ(´・ω・`) (2017-05-17 04:56)

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