01, えす・えぬ・えす　作：くちなし

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ある日の朝、僕はある人物に声を掛けられていた。

「だから、入ってって言ってるじゃん」
「嫌だ」

話しかけているのは、女子クラス委員長。名前は佐々木と言い、第一印象が真面目、という位の「超真面目人間」
である。僕はこういうのはあまり好みではないんだが。

「なんで嫌なのよ」

佐々木は僕を見下ろす。その眼はまるで、獲物を狙う鷹の様。僕は顔を上げる。場所は教室、自席である。
何故揉めているのかというと、LineかVainだか知らないが、クラス全員の連絡をSNSでやり取りする、という事
らしい。それに僕を入れようと少々強引な勧誘をしてきているのだった。1週間も。
僕は読んでいる本から目を離すことなく、一言だけ言う。

「僕は、いい」
「は、、？」

顔を曇らせる佐々木。続けて言う。本を読みながら。

「僕、そう言うのいい。使わないのに、登録とか、ダウンロード面倒だし。興味もわかない。だから、いい」
「いや、登録してよ」
「何故？」
「クラスで連絡する時とかに使うから」
「そう、、」
「そういう事だから、登録よろしく、、」
「いや、やらないから」

本のページをめくりながら言う。佐々木の顔はしかめっ面になっている。

「え、、」
「僕には連絡は要らない。集まりなんて、誘われても行かないと思うし。行く気も起きないと思うから」
「なんでよ」
「そういうの、苦手だから」
「ニガテとか、そういう問題じゃないのよ。私らが除け者にしているみたいで嫌なのよ」
「それに、」
「なによ、、」
「携帯持って無い」
「、、、」

僕が携帯を持っていない、、その一言は、クラス中に響き、沈黙が漂う。

「気を悪くさせたのは悪い。でも、根本の機械が無いんだったら登録も何もできないじゃん」
「無いならないって言えば良いじゃないの！ややこしいわね！死んでしまいなさい！」

そう言って佐々木は教室から退場。「死んで」は辛辣すぎる。入学して1月足らずで言われてしまうのは。
ホントは持っている。しかし、「そういうもの」を入れたくはなかったのだ。実は、SNSをやっていた時期があった。


ｰｰｰ回想始

学校に行っていたある日のこと、親とメールのやり取りでの話になる。

「近日、どこか遊びに行かない？」

桜花からのメールである。忙しかったので、とりあえず、

「予定を見てから考える。ちょっと待ってて」

と返信をした。そして、学校が終わり、予定の確認も済ませたので、返信を送ろうとする。

「今週の木金なら空いてる」

これで、当初の返事、という目的は果たしたが、その数秒後、返信が来る。

「返信遅い、、ずっと待ってたんだから、、orz」

悪い事をした、、と僕は思った。でも、心の片隅に、こんな感情を持っていた。

【返信を送るのなんて、僕のタイミングで、僕が決める事なのに、、】

どちらにせよ、姉さんには悪い事をしたと思ったので、SNSで連絡を取るのはやめよう、そう思ったのだった。


ｰｰｰ回想終

「僕」は本に目線を戻す。クラスは沈黙から復活。少し五月蠅い位にまでなった。

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無音の教室に一人本を読んでいた。何故無音なのか。誰もいないからである。時計は12時半。ランチタイムだ。
友達の居ない僕は言わずもがな一緒に食べる人は居ない。外からワイワイ声が聞こえる中、本を閉じ、
食事をとろうとした時、頭にスコーンと、何かが当たった。

「なんだこりゃ」

折り鶴である。ピンク色の折り紙である。作ったのは女子だろう。折り鶴の羽根には、OPENと書かれていた。

ー放課後、話があります。だから、残っていてくださいー

綺麗な字でそう書かれていた。何故、僕に向かって投げたのか。廊下を見ると誰もいない。教室は3階だから、
外から投げて都合よく当たる筈がない。誰だ。誰なんだ。地味に「チクっ」とした痛みが来たぞ。折り鶴の嘴か。

「、、、」

無表情で、面倒だな、、思いつつ、しょうがないか、、と思い、素直に残る事にした。