00. トモダチのはなし　作：くちなし

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今年、僕はアカデミアに入学する事となった。個人的には入らなくても良かったのだが、
何故か姉が入学を進めてきたので、自分の将来を何も考えていなかった僕は入学する事にした。

「早く行くわよ」
「分かった」

僕はアカデミアの入学式に姉と一緒に行く事にした。

そして僕の義姉、桜花は美人とスタイルの良さで評判であり、優秀である。学問を取れば学年5位に入り、
楽器を取れば美しい音色を奏でる。ただ、スポーツに関しては苦手なようで、時々弱音を吐くこともある。
僕はそんな義姉を持っていて、尊敬していた、、、はずだった。

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入学式を終え、桜花がやって来る。

「これでもう、アカデミアの一員だね」
「うん、、」
「制服も似合ってる、かっこいいわよ」
「ありがと」
「何そんな堅くなってるのよ。もっとシャキッとしなさいよっ！」

そう言って僕の背中を叩く。ちょっぴり痛くて、手で背中を抑える。
キーンコーン、、鐘だ。すると桜花は、

「ほら、新しい教室行ってきなよ。私も教室行くから」

そう言って、僕を置いて先に戻っていった。

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僕の学年はどうやらF組まであるらしく、クラスは1年B組。
教室は既に何人もの人が居て、少し騒がしかった。席は窓際の列、後ろから3つ目。「宜しく」、「お早う」、、と、
いう言葉が耳に入ったが、僕は情を抱く事無く、静かに席で本を読んでいた。

「はい、席についてー」

先生らしき人が入ってきた。その後、クラスメイトの確認から自己紹介、学校紹介等で時間を費やし、その日は
それだけで解散となった。

帰りも外で桜花が手を振って待っていてくれた。
アカデミアに寮があるらしいが、家がそこまで遠くなかったので、僕達は家から登校する事に決めていた。

「クラス、どうだった？」
「まあまあ」
「そう。今日は自己紹介とかだけだったんでしょ？」
「うん」

僕の自己紹介、、特にこれと言って言う物も無かったので、名前と、軽い挨拶で済ませておいた。

「デュエルディスク、青にしたんだ」
「まあね」

そうそう、デュエルディスクが配布されたのだ。あの榊遊矢が使っていたモデルのコンパクト型ディスク。
更に開発が進み、Dホイールにも対応していて、スタンディング、ライディングの両様式だ。色は青にした。

帰り道を歩く途中、桜花が何かに気付く。

「走って」
「え、、？」
「いいから、早く！」

走りだす桜花。僕は桜花に手を引っ張られる。何やら声がする。追いかけているようだ。

「砂原さん、何してるんですか？」
「砂原さん、隣にいるその子は誰ですか？」
「砂原さん、僕とデュエルしてください！」
「砂原さん、待ってください！」

少し走り、路地に入ると、桜花はデッキケースから1枚のカードを取り出す。

「顔隠して」

言われた通りに目を瞑り、通学カバンで顔を隠す。

『魔法カード、緊急テレポート、発動』

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「もう目開けて良いわよ」

目を開けると、家の玄関に立っていた。
桜花は、人気がありすぎてなのか、ストーカー紛いの被害にあう事が多くあった。なので、家がばれない様に
家を早く出るか、「緊急テレポート」のカードを使ってワープする様にしていた。

姉さんは姉さんで苦労しているのは聞いていたのでこれ位なんも驚かない。
むしろ、ストーカー的集団から逃げる姉さんの方が大変だろう。だから、2人の中で、こんな約束をしていた。

ーーー

・友達を家に入れるのはNG
・私が親戚である事は口外しない事
・外ではなるべく他人のようにふるまう事

ーーー

ただ、これからが過ごす高校Lifeが一味違うものになるとは自分自身、思ってもいなかった。

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翌日。
桜花が先にワープで登校し、僕も歩いて登校する。
その日の朝のHRで先生がこう言っていた

「クラス内でレクリエーション活動を行う。その中で、少しでもクラスに馴染めたら良いと思う」

休み時間には既にグループみたいなものが出来ていて、ワイワイ話していた。
僕は、中学時代、こんなことを考えていた。

ーーー回想①

⋯⋯トモダチとは何か。友達と呼べる人がいない自分が思う友達の意味はなんだろう、、
「この相手ならば殺されてもいいと思える間柄の人間、友人」、、そう思っている。

トモダチの定義についての話になる。
同級生のAが「友達って何かな、？」と口にした。数人で机に群がり、僕自身も居た。
何故周りから避けられていた自分がこの中に居たか、、授業だったからである。文化祭の話し合いの時だった。
「ねえ、トモダチってなんだと思う？」Aが再び聞く。それから隣に居たBに「どう思う？」と話を振る。
話を振られたBはあたりさわりのない返答をする。者の貸し借りや、おしゃべり、遊んだり、、云々、、。
他のメンバーにも聞く。自分も自分なりの定義についても考えていた。
ーこの相手ならば殺されてもいいと思える人間、そう思える間柄の人間、友人ー
そうしよう、と考えた。しかし、聞かれても答えるつもりは無かった。頭が変だ、と思われるのが嫌だったから。
しかし、自分が回答する事は無かった。そう、自分には話を振って貰えなかったのだ。
僕は、、嫌われていたのだった。

ーーー回想①終

「トモダチ、、か、、」
思わず本を読むのを止め、静かに呟いてしまう。
僕にはトモダチより先に、「話し相手」を欲しているような気がする。本当に思っているかは分からないけれど。