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遊☆戯☆王V☆S(ファイブスター)/Episode58:本当の気持ち 作:カズ

~現在の状況~
SEIICHI→LP:7650 デッキ:30 手札:4 Mゾーン:2 M・Tゾーン:2 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


AYA→LP:5000 デッキ:25 手札:2 Mゾーン:5 M・Tゾーン:2 Fゾーン:1Pゾーン:2



*TURN04
 ライフアドバンテージは精一の方があるものの、モンスターを5体埋めている彩の方がボードアドバンテージを獲得している。ペンデュラム召喚を使えない精一は、ボードアドバンテージでは負けてもライフアドバンテージで負けたら一巻の終わりだ。


「僕のターン、ドロー!手札から永続魔法『超古代生物の琥珀』を発動!これで僕のフィールドのエンシェントモンスターは、相手モンスターの効果では破壊されなくなったよ」
「なら私はそれにチェーンして永続罠『時空のペンデュラムグラフ』を発動!対象にするのは私のペンデュラムゾーンの『紫毒の魔術師』と、精一くんの『超古代生物の琥珀』。それら対象カードを破壊する!」


 「やられる前にやる」彩のデュエルタクティクスは以前よりもパワーアップしており、守りを固めようとした精一の作戦を封じてきた。しかも彼女が破壊した『紫毒の魔術師』には、「自身が効果で破壊された場合に相手フィールドのカードを破壊する」効果を持っている。したがって精一の『エンシェント・ホエールビースト』が破壊されたが、精一も発動していた『エンシェント・レッドリスト』の効果でレベル5の『エンシェント・ピジョン』をデッキから加えた。しかし、ピジョンの守備力は0だったためライフゲインは出来なかった。


(よし……僕の狙い通りに上手くいった!『超古代生物の琥珀』はペンデュラムグラフを発動させるためのブラフ。これで四龍をフィールドから全て消せるはずだ!)
「僕は『エンシェント・カモノハシ』を召喚!そして手札から魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』を発動!これで僕はもう一度通常召喚を行えるようになったけど、まずはレベル2のカモノハシに、レベル3のアノマロカリスをチューニング!シンクロ召喚!!レベル5『エンシェント・トリロバイト』!!」


 約5億年前から3億年もの間、繁栄していたと言われている三葉虫によく似たモンスターが精一のフィールドから現れた。


「攻撃力500……何かあるでしょ?」
「ご名答。シンクロ素材として墓地へ送られた『エンシェント・カモノハシ』の効果発動!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』を墓地へ送り、僕は700ポイントのライフを回復する!」
「チイッ!それもモンスター効果を発動できないのね…!」


 スターヴ・ヴェノムの全体破壊効果が発動するのは自身が破壊された場合のみ。破壊せずに墓地へ送ればその効果も発動できない。そしてトリロバイトの効果を使い、既に発動している罠カード『時空のペンデュラムグラフ』を除外した。これもモンスター効果では止められないので、彩はクリアウィングの効果は使えない。さらに、トリロバイトの攻撃力は相手とのライフポイントの差だけ上がるため、5000と8350でその差は3350。よって3850になったわけだが、精一の「本気」はまだまだこの程度ではない。


「高橋さん、ここからが僕の本気だ!墓地の『エンシェント・ホエールビースト』の効果発動!自身を除外することで、フィールドに『エンシェント・カモノハシ』と『エンシェント・アノマロカリス』を呼び戻す!さらに『二重召喚』の効果は継続中のため、僕はもう一度通常召喚を行なう!レベル5の『エンシェント・エレファント』をリリース無しで召喚!」
「レベル5のモンスターをリリース無し……。確かそのモンスターは、レベル4に…っ!」


 精一が何をしようとしているのかようやく理解できたため、彩の顔が真っ青になった。レベル3、2、4のモンスターが1体ずつ、それらのレベルを合計すれば9。しかもチューナーがしっかりと盤面に残っている。


「僕はレベル4になった『エンシェント・エレファント』とレベル2の『エンシェント・カモノハシ』にレベル3の『エンシェント・アノマロカリス』をチューニング!!シンクロ召喚!!レベル9『氷結界の龍 トリシューラ』!!」


〇氷結界の龍 トリシューラ(Lv9 水)(制限カード)
ドラゴン族/シンクロ/効果
攻2700/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
①:このカードがS召喚に成功した時に発動できる。相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚まで選んで除外できる。


吹き荒ぶ吹雪とともに現れたのは、全身が凍てついた三本の首を持つドラゴンだった。過去に精一は一度だけこのカードを召喚したことがあったが、その時は相手に『神の宣告』を打たれて不発に終わった。だが、今はそのような妨害カードが1枚もない。


「まずは墓地へ送られたカモノハシの効果で、君のクリアウィングを墓地へ送る。そしてトリシューラの効果で、フィールドの『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』、墓地の『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』、そして手札からはこのカードを選んで除外させてもらうよ!」
「くっ…!『虹彩の魔術師』が除外された…!」


 トリシューラの効果は「フィールド・手札・墓地から1枚ずつ計3枚を、対象を取らずに除外する」もの。ズァークを召喚するために必要だった「禁忌の四龍」のうち2体を失った彩にとってはかなりの痛手だっただろう。加えて、精一のライフはカモノハシの効果で9050。彩が前のターンで与えたはずのダメージをあっという間にリカバリーしてきたのだ。一方、彼女は四龍の力で精一を我が物にしようとしたため、ここまで牙城を崩されるとは全く想定していなかった事態だった。


「バトル!『エンシェント・トリロバイト』で『星刻の魔術師』を攻撃!」
「まだまだ…私の力はこんなものじゃない!!」
「四龍は君の力じゃない!『氷結界の龍 トリシューラ』で『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を攻撃!!」
「ぐっ…!うわああぁーっ!!」
AYA→LP:2650



 精一は巧みなコンボで、5体埋まっていたはずのモンスターを返しのターンでガラ空きにしてみせた。そしてライフポイントが変化したことによって、精一の『エンシェント・トリロバイト』の攻撃力は6900へと跳ね上がった。もう今の精一を止められるデュエリストはこの場にはきっといないだろう。


(凄いデス、精一さん。彩先輩を圧倒してマス。これなら勝てるかもしれないデス!)
「精一さん!ファイトデス!」


 緊迫感のあまりに呼吸をするのも忘れていたエレンも、精一がようやく突破口を開いたおかげでいつもの元気が戻ってきた。しかし、当の精一は浮かない顔をしていた。


(このままデュエルを進めれば、きっと次の僕のターンで勝負が決まる。けど、本当にそれだけでいいのかな……。高橋さんを解放するには、根本的な何かを解決しないとダメな気がする。そういえば、ずっと高橋さんが言っている『あの言葉』って、どういう意味なんだろう)
「僕はこれでターンエンド!」
SEIICHI→LP:9050 デッキ:28 手札:2 Mゾーン:2 M・Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN05
 前のターンでは鮨詰め状態だった彩のフィールドが、精一の戦術によってあっという間に焼け野原になってしまった。ここから巻き返すのは普通ならばまず不可能だろう。そう、普通なら。


「…さない」
「ん?」
「許さない…許さないよ、精一くん!やっぱりあなたを私のものにする!!そして一生離さない!あなたがどれだけ嫌だと言っても!私のターン!!」


 彩に眠っていた「負の感情」が爆発したのか、彼女の周りから禍々しいオーラが滲み出ていた。彼女の背後には、ドラゴンを象った黒い影が見える。


「私はスケール5の『慧眼の魔術師』をペンデュラムゾーンに置き、ペンデュラム効果発動!このカードを破壊し、デッキからスケール2の『刻剣の魔術師』をペンデュラムゾーンに置く!そしてペンデュラムグラフの効果で、デッキから『白翼の魔術師』を手札に加える!!」
「…来るか!」
「三度揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!蘇れ!!『アストログラフ・マジシャン』『紫毒の魔術師』『慧眼の魔術師』!手札から『調弦の魔術師』!!」


 前のターンで全て消したはずの盤面をペンデュラム召喚によって元通りに復活させた。彩は調弦の効果を使いデッキから『虹彩の魔術師』を呼び出し、フィールドに5体のモンスターを揃えた。それだけならまだよい方なのだが、今から彼女が行おうとしているのは精一を倒す「最終手段」。


「私はレベル4の慧眼に、レベル4の調弦をチューニング!!剛毅の光を放つ勇者の剣。今ここに、閃光とともに目覚めよ!シンクロ召喚!!レベル8『覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)』!!」


 光の中から白い装束を纏った剣士が現れ、両手に携えた剣を振り回した。
 魔術師をシンクロ素材としたことで、彩は『覚醒の魔導剣士』の効果を使い、墓地の『死者蘇生』を回収してそのまま発動した。彼女が蘇らせたのは精一が前のターンで墓地へ送った『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』。


「『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の効果発動!相手フィールドのレベル5以上のモンスターの名前と効果を得る!スターヴ・ヴェノムがコピーした、『エンシェント・トリロバイト』の効果発動!精一くんの既に発動している永続罠『エンシェント・レッドリスト』を除外する!!」
「?!」


 スターヴ・ヴェノムを融合召喚したターンでは使わなかったが、ここで第2の効果を使った。しかし、ここで精一に疑問が1つ生じた。融合召喚したターンで使用していれば『エンシェント・ホエールビースト』の効果をコピーして、レベル8以下のモンスターをバウンス出来たはずなのに何故使わなかったのか。彩ならば、デュエル中に「うっかりミス」は基本的にはしないはずだが……?


「『アストログラフ・マジシャン』はこのカードと、手札・フィールド・墓地から『ペンデュラム・ドラゴン』『エクシーズ・ドラゴン』『シンクロ・ドラゴン』『フュージョン・ドラゴン』と名のついたカードを除外して効果を発動する!!」
「『禁忌の四龍』のうち2体は除外したはず……!しまった!!」


 そう。彩の手札・フィールド・墓地には「禁忌の四龍」の化身でもある『虹彩の魔術師』『黒牙の魔術師』『白翼の魔術師』『紫毒の魔術師』が揃っていた。そしてそれらはそれぞれ『ペンデュラム・ドラゴン』『エクシーズ・ドラゴン』『シンクロ・ドラゴン』『フュージョン・ドラゴン』としても扱えるルール効果を持っている。元々のドラゴンでなくともズァークは呼び出せてしまうのだ。


「さあ……今こそ、1つに!!」


 『アストログラフ・マジシャン』と共に4体の魔術師が空へと消えていき、それぞれの化身は四龍へと姿を変えて渦の中で混じり合い、本来のあるべき形へと転生した。











―――破壊と創生、原初と終焉、総てを束ねし至高の龍よ!我が望みを叶えたまえ!!―――






―――融合召喚!!出でよ!『覇王龍ズァーク』!!―――






 黒き雷雲をその巨大な両翼で吹き飛ばし、最強にして最凶の切り札が降臨した。



「『覇王龍ズァーク』が特殊召喚に成功したことで、精一くんのカードは全滅する!!」
「……」
「ズァーク、覚醒の魔導剣士、スターヴ・ヴェノムで攻撃すれば合計9300のダメージが入り、精一くんは敗れ去る!これでようやく私のものにできる……なのに、どうしてそんな余裕でいられるの?!」


 精一の残りライフは9050。このまま全ての攻撃を無抵抗で受ければこのターンでこのデュエルの幕は下りる。それにもかかわらず、彼は一切動揺した素振りを見せていない。


「言ったでしょ?全く負ける気がしないって。攻撃してきなよ」
「っ…!だったらお望み通り!私は『覇王龍ズァーク』で、精一くんにダイレクトアタック!!」
「この瞬間!墓地の『強固な絆(ハード・ボンド)』を除外して効果発動!このバトルで発生する戦闘ダメージを無効にし、その半分の数値分だけ僕のライフを回復する!」
SEIICHI→LP:11050



 彩がズァークを召喚したことによって確かに精一のカードは全滅した。しかしそれも精一の計算通りの展開で、墓地に『強固な絆』が落ちてくれたことによって彼は敗北を免れたのだ。どこまでが彼の計算なのか、それは彼にしか分からない。


「まだよ!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』と『覚醒の魔導剣士』でダイレクトアタック!!」
「くっ…!」
SEIICHI→LP:5750


 どうにかこのターンでの敗北は回避したが精一のカードは全滅し、残る手札も2枚。しかもそれらが『エンシェント・サーペント』と『眠る魂』だということも知られている。次のドロー次第では、精一が何も出来ずに敗北する可能性も十分に考えられるのだ。


「私はこれでターンエンド!!さあ……どうするの?このままだと負けちゃうよ?」
AYA→LP:2650 デッキ:22 手札:2 Mゾーン:3 M・Tゾーン:1 Fゾーン:1Pゾーン:2



*TURN06
 精一はまだ、このデュエルで自身が抱えた悩みの解決の糸口を見つけられずにいた。ただ勝つだけで彼女を取り戻せるなら、これ以上簡単な話はない。しかし、本当にそれだけでいいのか分からないのだ。それに彼女がもし自分を「本気で叩き潰そうとした」ならば、彼には納得がいっていない節がある。


(スターヴ・ヴェノムの効果をコピーするところは良かった。けど、何故『強固な絆』ではなく『エンシェント・レッドリスト』を除外したんだ?あそこで『強固な絆』を除外すれば墓地で発動する効果も封じられて、前のターンで僕を倒せたのに……)
「ねえ、高橋さん。本気出した?」
「…何?ズァークを出した私が、本気を出していないとか言わないでしょうね?」
「ごめん、言い方を変えるよ……。本気じゃないでしょ?」
「っ…!!」


 精一はこの違和感を「彩が本気を出していない」ことだと感づき指摘してみた。図星だったか定かではないが、彼女の顔が少し引きつった。一瞬だったとはいえその隙を見逃さなかった精一は、一気に言葉責めを仕掛けた。


「だからなのかな……いつもの『彩さん』だったら絶対に有り得ないミスをしていたんだよなぁ~。例えばあの時だけど…」
「黙れ!!私がミスなんてするわけない!とっとと私のものになりなさい!」
「そうそう。ずぅ~っと気になっていたんだけど、『私のものになる』って、どういう意味なのかな?ごめん、僕ちょっと分かんないや」


 いつの間にか彼女への呼び方を変えていたが、それは素なのか演技なのか。いつもの大人びた精一からは想像もつかないほどわざとらしい口調で彩に「ずっと気になっていた質問」をしてみたところ、途端に彼女の顔が真っ赤になり、口籠もってしまった。当然こんなデリカシーの欠片もない質問に答えられるわけがない。それでも精一は話の流れを変えようとしなかった。


「答えられないの?まさか意味もなく言った、口からの出任せじゃあないよね?彩さん?」
「そ、そんなことよりも!早くターンを進めなさいよ!」
「やれやれ、聞き分けが悪い人だなぁ。じゃあ遠慮なく、『覇王龍ズァーク』を倒させてもらうよ!僕のターン!」


 弟の命慈みたいに軽い態度を取っていた精一が今度は一変して彩を、そしてズァークを鋭く睨み付けた。覚醒の魔導剣士でもスターヴ・ヴェノムでもなくズァークを倒すとキッパリ言い切った精一は、覚悟を決めた。


(大体だけど理解できたよ、今の高橋さんの心情。まさか君が…)
「僕は手札から魔法カード『眠る魂(アスリープ・ソウル)』を発動!墓地の『エンシェント・レッドリスト』『デイトバック・トゥ・エンシェント』『エンシェント・カモノハシ』『エンシェント・トリロバイト』『エンシェント・エレファント』の5枚をデッキに戻すことでデッキから2枚ドローし、手札から『エンシェント・サーペント』を墓地へ送る!そして僕が魔法カードを発動したことで、墓地から『エンシェント・アノマロカリス』を特殊召喚する!」


 手札から墓地へ送られたサーペントの効果で『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の攻撃力が1000ポイントダウンし、精一は1000ポイントのライフを回復した。本当ならズァークの攻撃力を下げたいところだったが、ズァークには「相手の効果の対象にならない」効果を持っていたため出来なかった。しかし、ズァークの攻撃力が下がろうが彼には全く問題なかった。


「僕は手札から魔法カード『祖先との約束』を発動!手札を1枚捨て、デッキから『エンシェント・バタフライ』と『エンシェント・マウス』を手札に加える!」
「……そのカードは」
「行くよ!僕は『エンシェント・バタフライ』を召喚!そしてバタフライが存在することで、僕はもう一度通常召喚できる!『エンシェント・マウス』を召喚し、バタフライの効果で通常召喚したマウスのレベルを1つ上げる!」


 この2体のモンスターは、精一と彩が初めて対戦した時からずっと使用してきたモンスターであり、彼がエースモンスターである『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』をシンクロ召喚するためには絶対に欠かせないのだ。言うなれば、2人にとっての「想い出のカード」。


「僕はレベル4になった『エンシェント・マウス』にレベル3の『エンシェント・バタフライ』をチューニング!!」


 精一はこのデュエルに終止符を打つべく、最強の切り札を光とともに呼び出した。








―――遙かなる未来を守護する竜よ、妖艶なるその翼はためかせ、闇を光に変えよ!―――






―――シンクロ召喚!!降誕せよ!『封印竜エターナル・エンシェント』!!―――




 今まで温存していた精一の切り札の封印竜がついに降臨した。刹那、空を支配していた暗雲がちぎれ、初めて日の光を拝むことができた。しかし精一の本当の狙いはこれではない。
洗脳されたデュエリストを解放するための条件が「デュエルで倒す」ことの他に「想いを届かせる」ことでも満たされることを、遊弥から聞いた紅葉とのデュエルに基づいて解析した精一は、友として、ライバルとして誰よりも長い付き合いを持っている彩が相手ならばそれが出来ると踏んでこのターンまで進めてきた。その結果、あと一歩のところまで心に届かせることが出来た。



(似ている。私が『涅槃の超魔導剣士』をシンクロ召喚した、あの時と…)
「うっ…!ううっ……!」
「『エンシェント・マウス』が光属性シンクロモンスターのシンクロ素材として墓地へ送られたことで、僕は1000ポイントのライフを回復する!そしてエターナル・エンシェントの効果発動!お互いの魔法・罠カードを全て破壊し、僕は破壊した数×100ポイントのライフを回復する。その後、お互いのプレイヤーはこの効果で破壊されたカードと同じ種類のカードをフィールドにセットする!」


 この効果で破壊したカードは全部で3枚。マウスとの効果も合わせて1300ポイントのライフを回復し、精一のライフは8050になった。そしてエターナル・エンシェントの攻撃力は自身のライフポイントと同じ8050になる。これでズァークを倒せば彩を元に戻せるが、あくまでも精一は「ズァークを倒す前に彩の心を取り戻す」ことを念頭に置いていたため、もう少し彼女の心を揺さぶる「何か」を探っていた。過去に起こった状況を再現することよりも心を揺さぶるもの、それは「言葉」だ。


(遊弥くんが紅葉さんを取り戻したときは想いをぶつけて届かせた…。だったら僕も、僕なりの言葉で、高橋さんを取り戻す!)
「1つ、君に伝えたいことがあるんだけど、聞いてもらえるかな?」
「ううっ…!な、何?」
「……ありがとう。君が僕の一番で、いてくれて」
「っ…!ううっ...ううう...」


 精一の偽りのない感謝の言葉を聞き、彩から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。「言葉は魔法」と誰かが言ったように、言語を理解できる人間の心の一番奥深くに届くものは言葉なのだ。たとえ四龍やズァーク、そして呪縛竜に支配されていたとしても、人としての心が残っていれば、その言葉は必ず届く。


「バトル!エターナル・エンシェントで、『覇王龍ズァーク』を攻撃!!プライマル・シャイニング!!」
「……ありがとうは、私も同じだよ」
AYA→LP:0






 ズァークの呪縛から無事に解放された彩は、エターナル・エンシェントの放った優しく暖かな光に包まれながら、静かに倒れ伏した。同時に、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』は親元であるズァークから分裂し、どこか遠くへと飛び立ってしまった。


「高橋さん!」
「彩先輩!大丈夫デスカ?!」


 洗脳されてからどれくらい時間が経っていたのか分からないが、四龍とズァークの支配によって心身ともに相当負担がかかっていた彩は、精一に抱きかかえてもらうことで何とか起き上がれた。


「精一くん……助けてくれてありがとう。今まで言えなかったんだけどね、私、精一くんのこと、好きだったんだよ?」
「言わなくても分かるよ。このデュエルではっきりしたから」
「…助けてもらったお礼、してもいい?」
「え?う、うん…」


彩はそっと目を閉じ、精一と唇を重ねた。初めは驚いて目を見開いた彼も、静かにそれを受け入れた。1秒も満たない軽いものだったが、2人のファーストキスはその何倍も長く感じられた。エレンを差し置いて2人だけの甘々な空間が出来上がってしまったが、それを間近でまじまじと見てしまった彼女が一言、誰にも聞こえないように呟いた。



「ボク、完全にお邪魔虫デスネ」
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ター坊
あれ、めっちゃ主人公してる?
ヤンデレから解放したら甘い展開に。まぁヤンデレも言い換えれば超一途ってことですよね。
でもよく考えればこのズァーク戦は呪縛竜の前哨戦だったような気が…。精一の戦いはまだ続きそう? (2017-01-30 16:03)
光芒
アニメでは正攻法で倒せなかったために搦手を使い倒したズァークもこちらではしっかりと戦闘で撃破。しかし、愛が暴走すると都市一つ滅ぼしかねない事態になってしまうんですね(大嘘)
でも彩の深愛(?)は無事に報われた形となりましたね、恋が叶った時点で彼女にとっては幸せなことなのかもしれません。末永く爆発しろ、と言いたいところですが四龍は彩の元を離れて4つに飛んで行ってしまっていたりとまだまだ波乱が続きそうな気がします……

(2017-01-30 23:12)
カズ
ター坊さん
「あれ?このssの主人公って誰だっけ?」状態がたまに起こってしまいます。ですが、第3章の中には「登場するメインキャラクター全員に可能な限り焦点を当てる」ことを1つの目標に含めていますので、こればかりは避けられない事態だと覚悟してます(結果、3章以前ではメインキャラなのに本編に出番が全くなかった小5女子がいまして...)。
仰るとおり、ズァーク戦はエネルギー回収のために行なわれた前哨戦ですので、むしろ本番はこれからです。もう少しだけオーストラリア編は続きます。

光芒さん
アニメのズァークは「僕の考えた最強のカード」状態だったのでレイが使った「エン」シリーズを使わないと倒せませんでしたが、OCG版は単純に攻撃力が上回れば勝てるので簡単に倒せるようになりました(でも攻撃力4000)。
精一と彩は本編でめでたくゴールインしたカップル第1号になりましたが、まだまだ問題は山積み。四龍はどこへ行ったのか、後々明らかになります。 (2017-01-31 15:01)

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5 Episode58:本当の気持ち 203 3 2017-01-30 -
4 Episode59:真実への鍵 197 2 2017-02-08 -
4 IF01:バレンタインデー 247 6 2017-02-11 -
1 Episode60:エレンとアレックス 234 3 2017-02-16 -
30 ルール改訂と今後の進行について 340 2 2017-02-18 -
4 Episode61:想いの証 201 5 2017-02-21 -
3 Episode62:茨の道標 237 5 2017-02-27 -
5 Episode63:光と闇の花 187 3 2017-03-20 -
7 Episode64:渇望と葛藤 176 2 2017-03-23 -
5 Episode65:麗しき孤月 149 2 2017-03-29 -
44 Episode66:月夜のイリュージョン 223 2 2017-04-21 -
15 Episode67:常闇に消える月華 292 1 2017-05-05 -
10 Episode68:模索者たち 107 4 2017-07-22 -
12 Episode69:純黒の反逆者 119 0 2017-07-27 -
8 Episode70:紅と黒の禁呪 118 2 2017-08-07 -
7 Episode71:希望は往く 116 3 2017-08-17 -
9 Episode72:リリーの過去 103 2 2017-08-24 -
5 Episode73:異次元の亡霊 96 2 2017-09-13 -
4 Episode74:覚醒の鼓動 91 3 2017-09-22 -
5 Episode75:挑戦者の儀 96 0 2017-10-05 -
3 Episode76:神速の決闘 65 2 2017-11-14 -

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