第3話 鋼の暴君　作：いちごT

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---

前回までのあらすじ！

デュエルアカデミア編入生を乗せて進む船、アカデミアシップでオシリスレッドの「大場景介」と友人になった「遊飛」と「ちよ」はデュエルスペースで、編入生でありながらオベリスクブルーの「海里 優」のデュエルを目撃する！意気揚々とデュエルを挑む遊飛だったが…

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---


遊飛「ライガーを破壊されただけじゃなくダメージまで……凄え！」


海里「怖じ気づいたならサレンダーしてもいいよ？」


遊飛「誰がするか！ 俺はカードを1枚伏せてターンエンド！」



●伴 遊飛 LP3000 手札4
モンスター 0
魔法、罠 1

●海里 優 LP4000 手札1
モンスター2 『海皇の重装兵』『海皇の竜騎隊』
魔法、罠 0


海里「ボクのターン、ドロー。早くも決着かな？『海皇の突撃兵』召喚。」
・海皇の突撃兵 ☆3 攻1400守0


遊飛「この瞬間、手札から『機動獣-バイパー』を守備表示で特殊召喚！」
・機動獣-バイパー ☆3 攻1000守300


遊飛の場に蛇の機動獣、海里の場に槍を持った魚人があらわれる。


海里「ん？」


遊飛「『バイパー』は奇襲が得意な機動獣…相手がモンスターを召喚した時、手札から特殊召喚できる効果を持つ！」


遊飛「それだけじゃない、『バイパー』が場に出た時、相手モンスター1体の効果を無効にし攻撃も封じる。対象は『海皇の竜騎隊』だ！」


ちよ「うまい…！」

景介「うん、壁になると同時に相手モンスターを使い物にならなくする…いいカードだ。」


海里「うざったいなあ…とりあえず『突撃兵』は他の水、魚、海竜族がいるとき攻撃力が800上がるよ。」
・海皇の突撃兵 攻1400→攻2200


海里「バトル、『突撃兵』でその蛇に攻撃する。」


遊飛「リバースカードオープン！『ドレインシールド』！ 相手モンスターの攻撃は無効となりその攻撃力分ライフを回復する。」

遊飛LP3000→LP5200


海里「ちっ……『竜騎隊』を守備表示。ターン終了。」


遊飛「よし、俺のターン…ドロー！ 魔法カード『融合』を発動！ 手札の『機動獣-ウルフ』と機動獣1体、場の『バイパー』を融合。来い『機動獣-ライトニング・ファング』！」
・機動獣-ライトニング・ファング ☆6 攻2400守1200

しなやかな漆黒の体を持つヒョウのような機動獣が姿を見せる。



遊飛「バトル！ 『ライトニング・ファング』で『海皇の突撃兵』に攻撃！ 『ライトニングスラッシュ！！』」


『ライトニング・ファング』は目にも留まらぬスピードで駆け出し、槍を構える魚人をすれ違い様にクローで斬りつける。何が起きたか分からないといった表情の『突撃兵』だったが一瞬遅れてその顔は苦痛に歪み、消滅した。


海里「ち………」

海里LP4000→LP3800


遊飛「俺はこれでターンエンドだ。」



●伴 遊飛 LP5200 手札2
モンスター1 『ライトニング・ファング』
魔法、罠0

●海里 優 LP3800 手札1
モンスター2 『海皇の竜騎隊』『海皇の重装兵』
魔法、罠0


海里「ボクのターン、ドロー。魔法『流転の宝札』発動。カードを2枚ドローし、エンドフェイズに2枚捨てる…ドロー！」


海里「手札より『機海竜プレシオン』召喚！ 」
・機海竜プレシオン ☆5 攻2300守1800


海里「『機海竜プレシオン』は場に海竜族モンスターがいる時リリース無しで召喚できる…さらに効果発動！水属性モンスターの『海皇の竜騎隊』をリリースして表側表示のカードを破壊する！ 対象は『ライトニング・ファング』」


遊飛「くっ！ 『ライトニング・ファング』効果発動！ このモンスターが効果の対象となった時、次のスタンバイフェイズまで除外できる！」


『ライトニング・ファング』が鋼鉄の首長竜から放たれる水流をかわし、フィールドから消え去る。


ちよ「でもこれじゃ…」


海里「どっちにしろ君の場からモンスターはいなくなった…さらに『竜騎隊』が水属性モンスターの効果により墓地に送られた時、デッキから同名以外の海竜族モンスターを手札に加える。」


海里「ボクは『海皇子ネプトアビス』を手札に加え、『重装兵』の効果により2度目の召喚を行う。」
・海皇子ネプトアビス ☆1 攻800守0

鎧を身につけ鉾を持つ若者のモンスター。


海里「『ネプトアビス』の効果発動、デッキから海皇モンスターを墓地に送った後、デッキから海皇モンスターを手札に加える。」


海里「『海皇龍ポセイドラ』を墓地に送り『海皇の狙撃兵』を手札に加える。」



「これがオベリスクブルー……」
「上級モンスターを出したうえに手札の補充まで…」



海里「くくく…バトルといこうか。『プレシオン』と『ネプトアビス』でダイレクトアタック！」


水流弾と鉾が同時に遊飛を襲い、思わず腕で体をかばう。


遊飛「うあああっ！！」

遊飛LP5200→LP2100


海里「これがブルーとレッドの差さぁ！ ボクはカードを1枚伏せてエンドフェイズ、『流転の宝札』の効果で手札を2枚墓地に捨てる。」


遊飛「へへっ…大口叩くだけのことあるな。」


海里「君は口ほどにも無かったね。」


遊飛「そういうのは勝ってから言えって！」


海里「ふん、ボクはターン終了だ。」


遊飛「俺のターン、ドロー！ スタンバイフェイズに除外されていた『ライトニング・ファング』が俺の場に特殊召喚される。さらに効果発動！ 自身の効果で特殊召喚された時、相手のカードを1枚破壊する。」


遊飛「狙いは『機海竜プレシオン』だ！ 『パルスライフル』発射！」


場に舞い戻ってきた『ライトニング・ファング』。その背中のライフルの射撃を受けた機海竜は木っ端微塵となる。


海里「ちぃっ…！」


遊飛「そして俺は『ライトニング・ファング』をリリースして『機動獣-レックス』をアドバンス召喚！！」
・機動獣-レックス ☆8 攻2600守2200

全身に火器を装備した白く巨大な肉食恐竜型の機動獣が出現、大地を揺るがして怒号をあげる。


遊飛「『レックス』は八つ星モンスターだが機動獣1体をリリースすることでアドバンス召喚できる。バトルフェイズ！ 『レックス』で『海皇子ネプトアビス』に攻撃！ 『ハイパーキラーバイト！』」


巨大な腕で海皇子を捕らえるや否や口に運びグチャグチャに噛みちぎるその姿はまさに暴君と呼ぶに値するものだった。



景介「うっわあ……」

ちよ（ひええぇぇぇ………）



海里「ぐ……」

海里LP3800→LP2000


遊飛「そして『レックス』の効果、戦闘破壊したモンスターのレベル×200のダメージを与える！」

海里LP2000→LP1800


遊飛「カードを1枚伏せてターンエンド！ へっへっへ…これでも口ほどにもないか？」


海里「黙ってろ！ エンドフェイズに伏せカード発動！速攻魔法、『海皇の咆哮』。墓地のレベル3以下の海竜族モンスター3体を特殊召喚する！」


遊飛「なにっ！？」


ちよ「一気に3体も！？」

景介「まずいね…これだけ揃えば次のターン大型モンスターを出すのも容易い。」



海里「墓地より甦れ『海皇の狙撃兵』、『海皇の突撃兵』、『海皇子ネプトアビス』！！」


強烈な叫び声とともに3体のモンスターが出現する。



●伴 遊飛 LP2100 手札1
モンスター1 『機動獣-レックス』
魔法、罠1

●海里 優 LP1800 手札1
モンスター4 『海皇の重装兵』『海皇の狙撃兵』『海皇の突撃兵』『海皇子ネプトアビス』
魔法、罠 0


海里「ボクのターン、ドロー。フィールドの『ネプトアビス』の効果でデッキから『海皇の重装兵』を墓地に送り『海皇の突撃兵』を手札に加える。」


遊飛「また手札補充か…」


海里「それだけじゃない…水属性モンスターの効果で『重装兵』が墓地に送られた時、相手の表側表示のカードを破壊する。『機動獣-レックス』を破壊！」


グギャアアァァァ！！

水流に体を貫かれ、レックスは叫び声をあげ消滅してしまう。


遊飛「くっ…！ レックス！！」


海里「そしてフィールドの『ネプトアビス』『狙撃兵』『重装兵』をリリース！」


景介「3体をリリース！？」


海里「墓地より『海皇龍ポセイドラ』を特殊召喚する！！」
・海皇龍ポセイドラ ☆7 攻2800守1600

名を呼ばれた3体のモンスターが渦潮に包まれる。そして3つの渦が1つに交わり中から青い巨体に装飾を纏い、三叉の鉾と化した尾を持つ龍が姿をあらわした。


遊飛「うおお………」


海里「オシリスレッドにしてはもったほうだよ…でもこのターンで終わりだ！ 『ポセイドラ』がこの方法で特殊召喚した時、フィールドのすべての魔法、罠を手札に戻す！」


遊飛「くっ！ ならその召喚に対してリバースカードオープン！ 速攻魔法『戦友の爪痕』を発動！！」


遊飛「このカードは全フィールドで1番攻撃力の高いモンスターが相手フィールドに存在する時に発動出来る。」


遊飛「自分の墓地のレベル4以下のモンスターを除外することで相手フィールドに存在する全てのモンスター。そして発動ターンに召喚、特殊召喚された相手モンスターの攻撃力はターン終了時まで除外したモンスターの攻撃力分下がる！！」


遊飛「俺が除外するのはレベル4、『機動獣-ライガー』！ 攻撃力は1800だ。」


海里「…………」ｷﾞﾘｯ
・『海皇龍ポセイドラ 攻2800→攻1000
・海皇の突撃兵 攻2200→攻400


ちよ「ふう…なんとかなりましたね。」

景介「このターンは凌げても次のターンに相手の攻撃力は元に戻る…まだピンチには変わりないよ。」


海里「さらに『ネプトアビス』が水属性モンスターの効果で墓地に行った時、墓地の『海皇』モンスターを1体蘇らせる。『竜騎隊』特殊召喚！」


遊飛「だがそいつも『戦友の爪痕』の効果を受けてもらうぜ！」
・海皇の竜騎隊 攻1800→攻0


海里「手札から『海皇の突撃兵』を召喚。」
・海皇の突撃兵 攻2200→攻400


海里「バトルフェイズ…『ポセイドラ』と2体の『突撃兵』でダイレクトアタック！」


遊飛「うわあぁぁぁ！！」

遊飛LP2100→LP1100→LP700→LP300


海里「悪あがきしやがって…カードを1枚伏せてボクのターンは終了だ。」
・海皇龍ポセイドラ 攻1000→攻2800
・海皇の竜騎隊 攻0→攻1800
・海皇の突撃兵×2 攻400→攻2200



「あいつ、オシリスレッドにしちゃ粘ったんだけどな。」
「ああ、この状況じゃもうダメだな…」


景介「確かに…オベリスクブルー相手によくやったよ。」


遊飛のフィールドは焼け野原、ライフはわずか300、手札もたった1枚。海里もギャラリーも勝負は決したと思っていた。しかしそう思わない者が1人だけいた。


ちよ「まだ…」

景介「え？」

ちよ「まだ…伴くんは諦めてません…」


出会ったのはつい今朝のこと、しかし伴遊飛というデュエリストがこのくらいの逆境で諦めないことはあのデュエルを見てよく分かっていた。



遊飛「へへへ…」


海里「……何故笑ってるんだ？」


遊飛「え？そんなの楽しいからに決まってんじゃん。」


海里「楽しい？馬鹿言うなよ。こんな負けが確定してる状況で…」


遊飛「楽しいぜ！ このピンチ…どう切り抜けるかって考えるだけでワクワクしてくるからな！」


遊飛「それに負けが確定だって？ 俺にはまだライフも手札も残ってるんだぜ？ 油断してるとこのターンで逆転しちまうぞ。」


海里「ふん、本当にジョークだけは一人前だな！」


遊飛「見てろよ…俺のターン、ドロー！！」


遊飛「……海里！ 」


海里「…………何だい？」


遊飛「このターンで勝たせてもらうぜ！！」


海里「つまらないハッタリはよしなよ。」


遊飛「ハッタリなんかじゃない！ 俺は手札から魔法カード『屑鉄再生工場』発動！ 」


遊飛「墓地に存在する機械族モンスター1体を選択する！ 俺は『機動獣-レックス』を選択。」


遊飛「そして選択したモンスターと自分の手札、フィールド上のモンスターを除外して融合召喚を行う！」


遊飛「墓地の『レックス』と手札の『レックス』を融合！ 来い！『機動獣-ギガ・レックス』」
・機動獣-ギガ・レックス ☆10 攻3000守2600

より大きく。より硬く。より強く。顎も脚も腕も体も強化され、青のラインが加わった肉食恐竜型機動獣の姿がそこにあった。


遊飛「『ギガ・レックス』は戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるぜ！」


海里「攻撃力3000！？ でも今さら遅い！」


海里（ボクの伏せカードは『ポセイドン・ウェーブ』。攻撃を無効にしてボクの場の海竜、魚、水族1体につき800のダメージを与える…いくら攻撃力が高くても意味ないね。うひゃひゃひゃひゃ！！）


遊飛「行くぜ！ 『ギガ・レックス』で『海皇龍ポセイドラ』に攻撃！！」


海里「ひっかかったなバカめ！ 罠カード『ポセイドン・ウェーブ』。 攻撃を無効ににして…！？ 」


発動された罠カードから出た大波が攻撃を遮る……はずだった。しかし『ギガ・レックス』の胸部からエネルギーのシールドが発生、波を弾いて突進する。


海里「…な、なんで！？」


遊飛「『ギガ・レックス』は罠カードの効果を受けない！ 行け！『ギガクラッシャーバイト！！！』」

手と手を合わせて組み合う2体の大型モンスター。しかしすぐに『ギガ・レックス』が強靭な顎で喉元に噛みつき、海皇龍の叫び声がこだまする。そして力を失いその場に倒れ、爆散する。


海里「ぎゃうっ…！！」

海里LP1800→LP1600


遊飛「さらに『ギガ・レックス』は破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。『ギガクラッシャーテイル！』」

『ギガ・レックス』が海里めがけて太く硬い尾を振りぬく。


海里「ぎょえええェェェェ！！」

海里は迫り来る鉄塊の勢いで真後ろに仰け反りながら倒れてしまう。

海里 LP1600→LP0


遊飛「っしゃあ！！」



「………おお…」



「うおおおお！！！」
「オシリスレッドが勝った！！」


景介「本当に勝つなんて…」

ちよ「伴くん…やったね！」


遊飛「ああ！ 楽しかったぜ！」


遊飛「海里、いつまで倒れてんだ？」


遊飛は立ち上がることなくうわ言のように何かをぶつぶつ呟く海里に手を差し伸べる。


海里「…！？ う、うるさい！」


しかしその手は払いのけられる。


海里「なんだあれは！ あの場面で罠が効かないだって？ 卑怯だろ！」


遊飛「はあ？ いきなり何言って……」


海里「とにかくこんなデュエルは無効だ！ もう1回、もう1回ちゃんと…」
？？？「お待ちください。」


突然の狂乱にその場の誰もが困惑…正確にはドン引きしている中、1人の少女がスッと前に出る。朝、車の中から遊飛のデュエルを見ていた黒髪の少女だった。その少女の登場にギャラリーが少しざわつく。


「今出てきたのって…」
「いや、まさか…」
「おい、まさかってなんだよ…」


海里「君は……確か…」


景介「…………」


黒髪の少女「もう1度戦おうという意志は良いと思います。しかし…」


黒髪の少女「カードそのものに文句を言うのは筋違いではありませんか？」


黒髪の少女「デュエリストなら相手のカードではなく、自らの腕を省みるべきかと。」


海里「…………くそっ！」


少女の言葉と周りの目に晒され、いたたまれなくなった海里はデュエルコートから慌てて立ち去っていく。


黒髪の少女「あら？もう1度デュエルなさるのでは……ああ、行ってしまわれましたか…」


ちよ（かっ…かっこいい……それに…）


ちよ（綺麗な人……）


凛とした佇まいの黒髪の少女を見つめるちよ。同じ年齢の女性としてここまで違うものかと感動すら覚えた。そしてデュエルコートから遊飛が出てくる。


遊飛「なんだか分からないけどあんたの言う通りだ！サンキュー！」


黒髪の少女「いえ、私の方こそ邪魔をしてしまったようで。」


遊飛「んなことないって！ そうだ！ あんたも俺とデュエルしようぜ！！」


景介「おいおい、次は僕のはずだろ？」


景介が興奮する遊飛を苦笑しながら制止する。


遊飛「あ、そうか！ 」


黒髪の少女「素敵なご提案ですが残念です。先約がいらしたようですね。それに時間もあまりないようですからまたの機会といたしましょう。」


黒髪の少女「それでは失礼いたしました。」


黒髪の少女はにっこりと微笑みながらデュエルスペースを後にする。


遊飛「ん？ 時間がないってどういうことだ？」


遊飛が口を開いた瞬間、船内にアナウンスが響く。


『編入生諸君！ 間も無くアカデミア島に到着する。ただちに船を降りられる準備をするように！！』


遊飛「ええ！？」


ちよ「そういうことだったんだ…」


遊飛（ついに到着か…）


遊飛（待ってろよ！ デュエルアカデミア！！！）




続く

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---

次回予告

遊飛「やってきたぜデュエルアカデミア！！ でっかい校舎にでっかい島！ でも寮はボロいし変な先生はいるしで大変だ。 入学祝いのエキシビションデュエル？ 面白そう！ ……でもあいつは一体…」

遊飛「次回！ 『入学式、波乱のエキシビション！！』 ！ デュエルスタンバイ！」

--- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- ---