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HOME > 遊戯王SS一覧 > 93話 傲慢の果て

93話 傲慢の果て 作:紅瑠璃

影の世界に二人…。突然性格が変わった伊月。突然押し倒された夢月。
地上には宮野空があたふたしていた。何せ、助けようと手を伸ばしたとこ、影の世界への入り口が閉ざされたからだ…まぁ自分が行ったところで助けることなんか出来ないのは知っていた。

~影の世界~

伊月が夢月を押さえ込み身動きがとれないようにしている。夢月は突然のこと、不意すぎて対処できない。伊月が夢月の耳元で囁く。

「俺の女になれよ」
「なっ!?何を馬鹿なことを!」

伊月の唇が近づいてくる…その時だった。黒い刃、黒い服、伊月とは対照的なもう一人の伊月、みんなして黒伊月と呼んでいる男が止めに入った。

「その女を離せよ…伊月」
「うるせぇよ。俺が居なくては存在できない分際で…。」

黒と白の伊月。伊月はzeroとして転生し「影を操る能力」を得ているがその影響で黒い伊月が生まれた。二人は元々一人…考えている事も同じなため戦闘では決着は決められない。

「女!俺がゲートを開く。その隙に行け!どうせ、刀は持ってないんだろ?」

黒伊月が地上に繋がるゲートを開いた。確かに今は刀を持ってない…。地上では宮野空がいた。宮野空は夢月に気がつくと安心したようだった。それにしても先程の伊月…あれには必ずあれが取りついている。同じようなものに取りつかれたことがある自分にはわかった。No.が取りついている。…空はまだ子供だから知らないだろう。

「わ、わたしっ!夢月さんといるっ!」
「うむ。その心、ありがたく受け取っておく。しかし、危ない。だから、帰ると良いだろう。」

さて、ここらかどうするべきか。伊月の能力…「影を操る能力」はすぐそこにある影から出入ができる上に影を踏むことで相手の動きも止めることができる非常に厄介な能力だ。まだ、大人数でいる方が良いと考えた夢月は朱音の家に走った。

~朱音の家~

家の中には三人。猫山蜜柑、藍野鈴菜、弧山朱音だ。それにまだ朱音は寝ている。寝る子は育つというが確かに育っている…主に…。

「主に胸部ね。」
「しかも柔らかいっ!にゃんてことだ!鈴菜も欲しいの?」
「こんなには要らないわ。いくら魅力の1つとはいえこんなには邪魔よ。歳取ると垂れるだけだし。」
「にゃるほど。」

何て会話をしているとこに夢月がベランダから入ってきた。もはや第2の玄関と化している。夢月の後ろには宮野空がいた。

「なっ!?あそこからここまで歩けば15分、私でも5分。同じ速度で走るなど…それにこのベランダまで来るとはっ!」
「えへへ。脚力だけはスゴいから」

脚力以外にも食欲もすごいけど。その自慢の脚力で夢月よりは少々遅いがここまで来て、マ〇オばりの壁キックでここまで来たそうだ。そして、先程までに何が起きたのかを話した。

「なるほど…伊月が暴走したと。」
「うむ。今は黒伊月が押さえてくれている。」

辺りの影に警戒する。伊月の事だからこの部屋の何処かからやって来るだろう。…ほら、来た。

「夢月…見つけたぁ!」

影から出てきた伊月が夢月をつかみ、引きずり込もうとする。そこに宮野空が手首を掴む。後から蜜柑と鈴菜が空の手を引っ張るが力で負けてしまい、夢月と空が影の世界に引きずり込まれた。

「いたた。腕がいたい。」
「伊月殿…中々強引だな。」
「俺の女にならないからいけないんだぜ?」

辺りは真っ暗、真っ黒。もう一人の黒い伊月の姿はない。

「あいつに助けをも止めるのか?無駄だなぁ。今ごろ深い傷を負って、倒れているだろうよ…何せ、6番目の力…傲慢の力を使ったからなぁ!」
「やめて!」

空が自慢の脚力を使い、飛び蹴りをする。しかし、片手で防がれてしまった。

「ちいせぇやつがっ!なにもできねぇんだよ!」
「うるさぇなぁ!」

宮野空の中のもう一人の人格…と言うよりは本体。十六夜空が現れ伊月を蹴り飛ばす。

「どうせあれだろ?デュエルという下らねぇ事をしないとこれ、解決しないんだろ?」
「まぁそう言うことだ。察しが良い。」

十六夜空はポケットの中に手を入れる。今日の持ってきた物…鍵と財布と携帯と1つのデッキ。No.101を手に取ると、デュエルディスクが現れる。伊月はNo.106だ。

「私からいかせてもらう。私はファーニマル・オウルを召喚し、デッキから融合を手札に加える。その融合を発動。ファーニマル・オウルとエッジインプ・チェーンで融合!デストーイ・チェーン・シープを守備表示で特殊召喚。墓地に送られたチェーンの効果でデッキから「デストーイ・ファクトリー」を手札に加え、カードは一枚伏せてエンド。」
「ドロー。俺は手札を2枚捨て、手札のバッド・ホールを手札から発動。チェーン・シープを除外する。バッドセブン・ルシファーを召喚し、手札からバッドセブン・レヴィアタンを特殊召喚する。2体でエクシーズ!全てを包み込む大いなる右手よ!数多なる願いや希望を握りつぶし、己以外の存在を認めさせるな!No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド!…攻撃。」
「トラップ発動!デストーイ・カスタム。墓地のエッジインプ・チェーンを特殊召喚する。」
「…エンドだ。」
「ドロー。トイポットを発動する。手札一枚を捨て、デッキトップをお互いに確認する。ファーニマルモンスター…私はファーニマル・ラビットを特殊召喚!…くっそ。やるしかないかっ!」

十六夜空は魔玩具融合を発動し、墓地のエッジインプ・シザーとファーニマル・オウルを除外して、デストーイ・シザー・タイガー を出し、効果を使うが、No.106の効果を使われタイガーの効果を使うことは出来なかった。さらに、デストーイ・ファクトリーを発動し、墓地の魔玩具融合を除外して、デストーイ・シザー・タイガー、エッジインプ・チェーン、ファーニマル・ラビットを墓地に送り、デストーイ・サーベル・タイガーを召喚し、シザー・タイガーを蘇生した。

「はぁ…。今の通っていたら大ダメージだったのによぉ~。」
「悪いねリアルNo.だから同じリアルNo.じゃないと攻撃できないから。エンドだよね…。ドロー。でも、2900と3400…突破は無理そうだな。」

だとしても破壊されるのは時間の問題だった。カードを2枚伏せて、エンドをした。

「ドロー。っ!?ふっーいくぜ!トイポットの効果、ファーニマル・ウィングを捨て、デッキトップをお互いに確認する。ファーニマル・ラビット。特殊召喚し、墓地のファーニマル・ウィングとファーニマル・ラビットを除外して、一枚ドロー。トイポットを破壊してもう一枚ドロー。トイポットの効果でデッキからファーニマル・ドッグを手札に加える。ファーニマル・ドッグを召喚し、デッキからファーニマル・シープを手札に加える。ファーニマル・シープを特殊召喚し、ファーニマル・ラビットを手札戻すことで墓地からエッジインプ・チェーンを特殊召喚!」

このままエクシーズをする。もちろんNo. 101を出す…しかし、相手は激竜層を使用し、デストーイ・サーベル・タイガーとNo.101以外破壊されてしまった。

「なんのつもりだ。…バトル!」
「やはり幼い。あどけなさが残るねぇ。速攻魔法、RUM-罪深き七皇を発動。こいつはこのターン、破壊されたNo.101~1071体を指定し、そいつを蘇らせ、ランクアップするのさ。…CNo.106!ありとあらゆる物を溶かし、掻き回す紅き剛腕よ!罪の意識をも、砕け!溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド!…特殊召喚だ。」

モンスターの数が変わったため、バトルを止め、エンドをした。伊月はカードを引くとエンドをした。攻撃をしたくてもデストーイ・サーベル・タイガーの攻撃力には敵わない…ましてやNo.101に攻撃して、効果を使われると強制的に効果を使ってしまうからだ。

「そう…強制的に効果を使う。そこが欠点だな。ドロー。私はトイポットを発動する!さぁ…使えよ。強制的になぁ!」
「くっそ。」

空はエンド。伊月のターンだ。ここまで来ると為す術がない。

「なにもないかっ!…なら、エンドしろ。」
「エンド…。」
「ドロー。エッジインプ・ソウを召喚し、手札からファーニマル・ウィングを捨て、2枚ドロー。一枚をデッキの下に置く。融合を発動。ファーニマル・ラビットとエッジインプ・ソウで融合召喚!デストーイ・ホイールソウ・ライオ!ラビットの効果で墓地のウィングを回収。トイポットの効果でウィングを捨て、デッキの上をお互いに確認する…ファーニマル・マウス!ファーニマルなので手札からファーニマル・オウルを特殊召喚。ホイールソウ・ライオの効果でお前のジャイアント・ハンド・レッドを破壊する…墓地のウィングの効果でウィングとシープを除外する」

この効果で引いたのはエッジインプ・シザー。トイポットを破壊してもう一枚引いたのはエッジインプ・ソウ。オウルの効果を発動する…ライフを500失うことで手札、フィールドから融合を行う。オウル、ホイールソウ・ライオ、エッジインプ・ソウで融合。もう一体のデストーイ・サーベル・タイガー。効果で墓地のホイールソウ・ライオが蘇生され、デストーイ・ファクトリーの効果で融合を除外して、ホイールソウ・ライオとエッジインプ・シザーとファーニマル・マウスで融合を行った。最後のデストーイ・サーベル・タイガーが現れ、墓地からデストーイ・シザー・タイガーを蘇生した。

「これで私のフィールドにはデストーイ・サーベル・タイガーが3体。デストーイ・シザー・タイガーが1体。No.101が1体。喰らえっ。バトルだ。」
「ぐ、ぐあっ!くそっ!俺は強いはず…。貴様がぁ!」

伊月から黒いモヤが出てきたかと思うと空に向かって走ってきた。構える空…だが、操られていた伊月が止めに入った。

「さて、操られている中色々と見せて貰ったが、君は弱い。弱いやつほどよく吠え、自らを強いと言い張る。さて、チェックメイトといこうか。」
「やめろ…俺はまだっ!」
「往生際が悪いモヤだ。とてもつまらなかったよ。」

伊月の武器が黒いモヤを切り裂いた。モヤは消えた。伊月は夢月のとこに駆け寄ると手を差し伸べた。 夢月は少々照れながらも一人で立ち上がった。

「あれ!な、何を…。」

空のもう一人の人格も戻り事態は終わりを向かえた。

~朱音の家~

「という訳でなんか迷惑かけたな。」
「うむ。心配ない。それよりもまだ弧山殿は寝ているのか。」
「あぁ。まぁね…シユ休みの日で予定がないときは15:00ぐらいまで寝てるし…。」
「前日で疲れがピークって言うの?そうにゃったときは晩御飯前まで寝てるよ!ミカも驚きだよ。」
「そうか、さて、俺はもう帰るわ。空なんかカードショップいかなきゃ何て言ってたしな。」
「この時期だと…融合のパックの体験デッキか。確かに空のデッキはファーニマル。補食という意味合いで補食植物も使うかもね…。」

鈴菜はレモンの絞り汁を飲みながらそう答えた。そして、伊月と夢月は帰宅した。

~帰り道~

すっかり夕日がきれいに輝いていた。途中の道までは一緒だから二人で帰っていた。すると夢月が声を出して来た。

「あ、あのっ!」
「ん?」
「黒い伊月殿は放置して良いのか?」
「あいつはあんなんじゃ何ともねぇよ…まぁ悪いことをしたから後で謝るけど…自分に謝るみたいでなんかくすぐったいというか…。」
「そ、そうか…。」

徐々に近づいてくる…伊月の方に近づいてくる。そして頬を赤らめながらこんなことを言ってきた。

「そ、その…今日は身が震えるな…。」

嘘つけ、そこまで寒くねぇよ。
夢月が何をしたいのか伊月にはわかっていた。伊月は転生する前は社会に出て、家族を持っていた。その事の経験からして何をしたいのか伊月にはすぐにわかった。ここはどんな反応を示すのか気になったから自分から出ることにした。

「身が震えるなら、こうやって温めれば良いのか?」
「なっ!?」

夢月に少し前に流行った壁ドンをしてみた。もちろんその状況に対応出来てない。唇を近づけてみる。頬が赤く、小刻みに息をしている。何気に可愛い。なんか本当に惚れてしまいそうだ。

「か、かなり焦らすな…。あまり、恥をかかせるな…」

まさかの本気だった…。それならば応えてやらないといけないものだ。そのまま二人は口づけを交わした。

~夢月の部屋~

あの一時から何時間たったことか…。いまだにあの感触が忘れられない。あの感情が忘れられない。思い出せば思い出すほど恥ずかしくなってくる。やはり私は未熟だ。それよりもあいつの言葉を思い出していた。それを思い出しては鼻で笑い笑みを浮かべる。

「十夜…お主はとことん傲慢なやつだ。」
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