第１０話　来客は突然に(後編)　作：ｸﾄｩﾙﾌ大好きな人

　夕食が終わった後、心は鼻歌交じりに食器の後片付けをしていた。最初は宇宙が片付けをすると言っていたが心をそれを断りゆっくりしていて欲しいとお願いする。

「しかしだな・・・」と粘る宇宙の背中を押し、香蓮にそのままパス。香蓮は何事かと焦っていたが心から食器が片付くまで宇宙をお願いしますと頼まれ「わたくしのお任せあれ」と即答で返すのだった。



　が、いざ頼まれたのは良いものの。ソファーに座る二人の正面には大型テレビ、視線を横にやれば膨れっ面の宇宙とチラチラ視線を交互に動かす香蓮。正直何をすればいいか分からなかったりしてますｗ


「あ・・・っと、宇宙さん。わたくし少々お花を摘みに行きたいのですが」


「・・・それならそこを出て廊下の突き当たりを右だ」


　後ろの扉を指差しながらまだぶー垂れている宇宙を他所にそそくさと部屋を出た。とりあえず一旦落ち着いてから戻ろうとトイレに向かう香蓮は一瞬だが階段を登る奇妙な球体が視界の端に捕らえた。


　何かの見間違いではと思ったが、少し気になりトイレへは向かわず階段へと足を運ぶ。手すりに捕まりながらゆっくりと上を確認するとやはり先ほどの球体らしきものが浮かびながら奥へと飛んでいった。香蓮は２人に報告すべきか一瞬悩んだが好奇心には勝てずにそのまま階段を登っていった。



「たぶんこの部屋ですわね」


　部屋の入り口には「心の部屋」と書かれたプレートがぶら下がっており、微かに扉が開いている。香蓮はドアノブに手を掛けた・・・









「さって、これで片付けも終わりっと」

　流しっぱなしの水道と止め、エプロンを片付けながら心は冷蔵庫を漁る。明日は休みとは言え朝から三人分の食事を用意しなければならない。もし材料が無ければ買い足しにいけなければいけないがそれも無駄な心配だったようだ。


　視線を冷蔵庫からリビングに移した心の視界には一人しか居ない。


「ソラ姉、香蓮先輩は？」

「さっき花を摘みに行ったみたいだが・・・少々長いな」


　宇宙は時計を見ながら呟くもまぁそんなもんだろうかと言葉を飲み込む。


「そっか・・・。じゃ先にお風呂に入ってくるから香蓮先輩にも後で入るか聞いておいて」


　バスタオルとかはお風呂場に用意しておくからと心は着替えを取りに二階へ上がろうとした。するとタイミングを見計らったかのように上からはゼロがフワフワと漂いながら下りて来ている所だった。


（あぁ～、ゼロ～。早くどいてくれないと着替えが取りに行けないんだけど～）


　心の声が聞こえたかは定かではないが、ゼロはお風呂場の方へ飛んでいく。それを見ていた心は何かあるのかと思いついていくと脱衣所にはすでに心の着替えが用意されていた。


「あれ？僕着替えを持ってきた覚えはないんだけど」

「ｷｶﾞｴ・・・ﾓｯﾃｷ・・ﾀ・・・。ﾕｯｸﾘ・・・ﾊ・・ｲﾚ・・・」


　ゼロはまたフワフワとどこかえ飛んでいった。


（わざわざもって来てくれたんだ。・・・ん？ 今ゼロ喋ってなかった！？）


　服を脱ぎ始めていた心は慌てて廊下を確認するがすでにゼロの姿は無く、まあ喋ってもおかしくはないのかなと入浴しだす心だった。








　その頃リビングでは・・・


　中々帰ってこない香蓮を他所に、宇宙はスマホを取り出し心の母である愛にコールを掛けていた。しばらくなり続く音は切れ、愛の声が帰ってきた。


『あらあら宇宙ちゃん、どうしたの～？』

「愛さん、心の事で少しお話したい事が・・・」

『あらそうなの？なら少し待って貰えるかしら』

ﾅｲﾄｳ~! ﾁｮｯﾄ ﾃﾞﾝﾜｼﾃｸﾙｶﾗ~!
ﾁｮｯ! ｱｲｻﾝﾏﾀﾞｶｲｷﾞﾁｭｳﾃﾞS


　内藤と呼ばれる男性の声は途切れ、静かになる。


『ごめんなさいね～。それで話って～？ 』

「【例】の定期報告も兼ねているのですが・・・正直思わしくない状態かと・・・」

『・・・。わたしも薄々そうじゃないかと思ってたの～』

「っ！？ 愛さん、なんですぐに教えてくれなかったんですか！」


『【彼ら】の存在が私にも認識出来るレベルだから。そうじゃないかと思ったの。それに【彼ら】から警告を受けたわ』



　いつものおっとりした口調は消える。それだけ愛も真剣に考えているのだろう。


『心に危険が迫っているらしいの。しかも心の最愛の人にも。もしその危機で心がショックを受けたりしたらその時は・・・覚悟しておいた方がいいかもしれないわ』


「それはつまり、心が【力】と取り戻すと・・・」


『かもしれないわ』


「ならなぜそんなに落ち着いていられるんだ！ 心が危ないんだぞ！！」


宇宙をテーブルを叩き立ち上がる。


『・・・。貴女が言いたい事は分かるわ宇宙。でも原因は【力】を受け継がせてしまった私達にもあるわ、だからあの子には・・・』


「そんな話をしているのではない！ もし【力】が復活してしまえば心は・・・」


『そうね・・・。同じ【力】を持つものにしか止められない。そしてその【力】を持つのは宇宙、貴女しか居ないわ』


「今の私は【力】をほぼコントロールする事が出来る。だが、いくら力がコントロール出来たとしても対立してしまえば・・・」


『えぇ、負けた方が確実に死ぬわ』


「私に心を殺せというのか！？ 」


『もし迷えば、関係のない命までもが失われることになるわ』


　愛の口から語られる言葉は残酷で、宇宙を何も言い返せなくなってしまった。





　その頃香蓮は・・・

　いざ手を掛けたは良いもの勝手に入ってしまって良いものだろうか、いくら好きな相手とはいえまだお付き合いをしていない自分が勝手な事をする訳にはいかない。入りたい、けど我慢しなければ。そんな葛藤を１０分以上していたが流石に落ち着いたのか手を離し、ゆっくりと下りていく香蓮。


　半分も降りるとなにやら声が聞こえた。誰かが話しているようだが何を話しているのか分からない。そのままリビングの扉を開けよう手を掛けた時だった。




「私に心を殺せというのか！？ 」




　それは紛れも無い宇宙本人の声だった。心を殺す、もしそれが聞こえた言葉の通りならばとんでもない事を聞いてしまったことになる。



「遅くなってしまって申し訳ありませんわ」


　悩んでいても仕方ない。こうなったら直接聞くまでですわ


「・・・、香蓮か」


　その声に生気を感じられない。やはり先ほどの言葉が関係しているのだろう。



「宇宙さん、盗み聞きするつもりはありませんでしたのよ。でも聞いてしまいましたの、心を殺すと・・・」



　その言葉に顔が引きつる宇宙だったが、否定の言葉は帰ってこなかった。



「宇宙さん、詳しく聞かせて頂けませんこと？もし救う手立てがあるのならば九条家のありとあらゆる手を使って・・・「無理だ」



　宇宙はゆっくりと部屋を出ようと歩きだすが香蓮が道を塞ぐ。


「逃がしませんわ。ここを通りたければわたくしを倒してからになさい」


　宇宙は何も答えずにデュエルディスクを構える。


「「デュエル」」


宇宙 LP8000　VS　香蓮 LP8000

《１ターン目》

「私の先行だ。私はモンスターをセット、カードを１枚伏せてターンエンドだ」


宇宙 LP8000
手札３枚　フィールド　セット１枚　魔法罠 セット１枚

香蓮 LP8000
手札５枚　フィールドなし



《２ターン目》

「わたくしのターン、ドロー。わたくしは『アセト』をリリースなしで召喚、『アセト』をリリースし『ネフテ』を特殊召喚。リリースした『アセト』の効果で『メテオ』を特殊召喚。さらに『ネフテ』をリリースし『ネフテ』を特殊召喚、今度は『エメラルド』を特殊召喚。レベル６の『メテオ』と『エメラルド』でエクシーズ召喚！ ランク６『アトゥムス』。効果発動、『レダメ』を特殊召喚し効果発動！ 墓地の『アセト』を特殊召喚！ レベル５の『アセト』と『ネフテ』でエクシーズ召喚！ ランク５『プレアデス』。『プレアデス』の効果で『レダメ』を手札に。さらにランク６の『アトゥムス』でエクシーズチェンジ！ ランク７『ガイドラ』。『ガイドラ』を除外し『レダメ』を特殊召喚！効果で墓地の『アトゥムス』を特殊召喚。『アトゥムス』でエクシーズチェンジ！ 『ガイドラ』。そして『プレアデス』でエクシーズチェンジ！ 『トレミス』」



　香蓮の展開に顔色１つ変えない宇宙からは焦りは感じられない。


「バトルですわ！ 『ガイドラ』でセットモンスターに攻撃！ 」


迅雷の騎士 ガイアドラグーン ATK2600 vs セットモンスター DEF？？？


「私のモンスターは『フォッシル・ダイナ・パキケファロ』だ」

「っ！？ですが戦闘ダメージを受けて頂きますわ」


　宇宙 LP 8000 → 6700

「わたくしはこれでターンエンドですの」


宇宙 LP 6700
手札３枚　フィールド　なし　魔法罠 セット１枚

香蓮 LP8000
手札3枚　フィールドなし



《３ターン目》

「私のターン、ドロー。香蓮、１つ教えておこう。殺すとは言ったがそれはあくまで【最悪】の事態が発生した場合だ。でなければそのような事を私が望む訳が無い」


「その最悪の事態というのは・・・」


「ここから先が知りたければ私を倒す事だ。私は『コアキメイル・オーバードーズ』を召喚！ 手札より魔法カード『同胞の絆』を発動！ 2000LP払い『オーバードーズ』を選択、デッキより『ウォール』と『パキケファロ』を特殊召喚する。これで私はターンエンドだ。フィールドの『オーバードーズ』と『ウォール』の効果で私は手札の『サンドマン』を見せる。さぁ、香蓮。お前はどうやってこれを切り抜ける」

宇宙 LP6700→4700

宇宙 LP 4700
手札2枚　フィールド　『コアキメイル・オーバードーズ』『コアキメイル・ウォール』『フォッシル・ダイナ・パキケファロ』　魔法罠 セット１枚

香蓮 LP8000
手札3枚　フィールドなし