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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第28話:まだ終わりじゃない!!

第28話:まだ終わりじゃない!! 作:ドクダミ2号

翔「……ここは?」
見たことがない景色だった。辺り一面には花が生え、空は雲ひとつない晴天。さっきまで周りには純白と赤黒い血、そして無機質な天井があったはずだが……。
ゆったりと体を起こし、辺りを見渡す。
何だか見てて気持ちが悪くなる。ここまで綺麗な景色なのに、他の生き物が一切いないのだから。……単純に自分が汚れすぎただけかもしれないが。


?「よもやお前までここに来るとはな」

翔「!? だ、誰だ!?」
いきなり聞こえた声に思わず声を荒げる。
……確かに聞こえたはず。だが、その声の主の姿はそこには無かった。

?「何で……、ここに来たの」
また声がする。今度は女性の声だろう。さっきの声より高い声だった。


?「……どうして?どうして、命を無駄にするの」
また、別の声が聞こえた。今度は少女のような声だった。

?「人の命はたった1つしかない。それを1番分かっているのは……あなたでしょ?」
さっきの少女の声がまたも語りかけてくる。聞いてて、懐かしくなるような気持ちになる。……聞き覚えがあるからな。
翔「気取った話し方はやめろ、六花。」

六花「………やっぱり、ばれちゃうんだね」
翔「残りの2人は………父さんと母さん……かな?」
大輔「ふぅ、やっぱ演技は下手だな」
奈緒「あら、分かるものなのね」
翔「……話を聞こうか。」




ナナリア「翔!?翔!!しっかりしろ!目を……開けろ!!」
ナナリアは必死になって叫んでいる。しかし、相変わらず返事はない。まだ、息はある、生きている。しかし反応がない。
清水「はぁ、威勢は良かったが結局はこんなものか。」
ナナリア「く!貴様!!」
涙を流し、訴えるナナリア。しかし、相手が相手だった。無情にも清水はカードを取り出し、それを具現化させた。………叩けば相手を粉砕出来そうな大剣だった。
ナナリア「何を……するつもりだ?」
清水「決まっている。デュエルは俺の勝ちだ。だからーーー」
ナナリア「殺す……つもりか!?や、止めろ!だったら!!……く!」
清水「だったら……何だ?」
そこから先の言葉を言おうとしたが、言葉を詰まらせるナナリア。……助けるためとは言え、本人も嫌な事をしようとしていたのだろう。……しかし、ナナリアは口を開けた。
ナナリア「私を……もう1度仲間にしろ!それでいいのなら!」
清水「何?」



少し離れた所に、木製であろうテーブルと椅子があった。このメルヘンチックな世界に似合ってる……いや、似合ってない?……どっちだか分からんが、とにかくそれが置いてあった。
翔「……それで?何の為に出てきたんだ?」
大輔「決まってる。お前を戻す為だ」
戻す……?どこに戻すつもりだ?
奈緒「……ここがどこだかは………分かってるわよね?」
………ここが?そんなの考えてなかったな。と言うより、何故だか考えるのがめんどくさい。
翔「……まぁ、皆いるんだ。決まってるだろう。」
六花「そう……お兄ちゃんはそれで良いの?」
翔「何がだ?」
六花「私たちね、ずっと……ずーっと………お兄ちゃんの事見守ってたんだよ?」
そうか、それは嬉しいな。………素直に喜んでる場合じゃない。
六花「今までの事、全部知ってるよ?お母さん達がこっちに来ちゃった後の事も。どうやってナナリアさんと一緒になったかも………そして……その、ナナリアさんと……その、してた事」
ぅわお、殆ど全部じゃねぇか。……ふざけてる場合でもなかったな。
翔「……そんな事はどうでも良い。どうして戻す必要がある?」
六花「!?」
大輔「翔……?」
翔「俺が戻った所で、やれる事なんか1つもない!……このまま、楽になりたい。全てから……解放されたい」
奈緒「……あなたはそれで良いかも知れないけど、ナナリアさんはどうするのかしら?」
翔「……え?」
奈緒「見せてあげる……いま、ナナリアさんに何が起きてるか」
翔「何を……ぐ!?」
頭の中に何かが入ってくる感覚に襲われる。痛い……痛い!
……その中で一瞬、何かが映ったような気がした。精神を集中させて確認すると、そこにはナナリアと清水、そして……俺が映っていた。



清水「ほう、そんなにその男が大事か。」
ナナリア「あぁ!大事だ!だから……こうして頼んでいるんだ!」
清水「……それを俺に決めろと?まぁ、幹部だからそれぐらいの権限はあるだろうが………。」
ナナリア「頼む……!翔を……助けてくれ!!」
清水「……しょうがない。良いだろう。だが、今度は逃がさんぞ。」
ナナリア「……承知の上だ!」
……おい、待て。何だよ……これ?



奈緒「分からないの?今の現世の様子よ」
大輔「あのナナリアっていう娘は、お前を守る為にあの組織に戻ろうとしてるんだ。それなのにお前と来たら……なぁにが解放されたいだ!ふざけんな!」
六花「お兄ちゃん。分かってるんでしょ?本当は……戻って護りたいって。護ってあげたいって……思ってる事。」
家族に言い寄られるなんて思ってもいなかった。ましてや…皆……もう………!
翔「……そうだな。そうだよなぁ……」
六花「私ね、お兄ちゃんには長生きして欲しいの。それならお兄ちゃんだっていつか幸せな人生を掴めるし、私達だって幸せになれる」
大輔「お前は何となくで諦めてたんだろ?諦めるならもっとちゃんとした理由を持て!てか諦めんな!」
翔「………あぁ。もう……大丈夫だ!俺は……戦える!……父さん、母さん、六花……ありがとう。俺……行くよ、それに……渡さなきゃいけない物もあるしな。」
六花「ふふ、喜んで受け取ってもらえると良いね!」
大輔「ったく!最近のガキはませてんなぁ〜。まぁいい。行け!」
翔「あぁ!」





病室にてナナリアと清水の声が響く。つい先程まで声を上げていた青年の声は無い。
清水「ふっじゃあ行こうか。お別れの挨拶はしなくて良いのか?」
ナナリア「……しないさ。したところで……何がある?」
清水は空間を切り裂き、空中に輪を作った。ナナリアはこれを何度も見てきた。そして……くぐってしまったが最後……戻る事はできない。
ナナリア「……翔。さよなら。」
しないと言った別れの挨拶をしたその時……誰も想像してない事が起こった。


翔「待て……よ、行かせるか……!ナナリア……戻って来い!」


清水「何!?意識を取り戻しただと!?」
ナナリア「……!?翔!」
さっきまで死んだかの様に動かなかった青年が、目を覚ましたのだ。しかも………
清水「お前……足が………!」
翔「あぁ?……はは!痛くねぇ!痛くねぇな!!これなら動かせる!!」
しばらくは動かないとまで言われた足が、何と床の上にあったのだ。おまけによく動くらしい。
ナナリア「翔!でも……!」
翔「でもじゃねぇ!!おら、受け取れ!」
そう言うと、翔は何かをナナリアに投げつけた。ナナリアはそれを受け取る。何か箱の様な物だった。
ナナリア「これは……?」
翔「俺の……気持ちさ!……おい、清水!分かってんだろうな!俺のナナリアを連れてこうだなんて……良い気になるなよ!!」
清水「く……!」
流石に驚いたのか、苦虫を噛み殺した様な顔を見せる清水。しかし………
清水「……ククク!はーっはっはっは!!!」
何と清水はあろう事か急に大声で笑い始めた。
翔「……!何が可笑しい!」
清水「気に入った!気に入ったぞ!遊亜翔!!貴様とはまたどこかでやりあいたいものだ!今回は見逃してやる!!次は……お互いもっと力を出し合って戦おう!さらば!」
そう言い残し、清水は切り裂いた空間の中に消えていった。
翔「……ち!逃したか………!」
ナナリア「翔……!翔!良かった……!殺されてしまうところだったんだぞ!」
目に涙を浮かべ、抱きついてくるナナリア。こういう時が1番、生きてる実感がする。
翔「悪りぃ悪りぃ。そんな事より、さっき渡したあれ。開いた?」
ナナリア「ふぇ?あ、あぁ!……何を渡すかと思えば……あの土壇場で渡すか!?普通!?」
翔「ははは……で?答えは?」
ナナリア「………イエスで!」
そう言うとナナリアは、渡された「それ」を身につけた。
翔「……!ぃよっしゃー!!うぉぉぉ!!断られたらどうしようかと………!」
ナナリア「び、びっくりさせるな!!って、おい!お前の携帯……鳴ってるぞ?」
翔「あ?……ツァン?……もしもし?………!?何だって!?分かった!……え?こっちに!?分かった。備えとこう。」
ナナリア「何だって……?」
翔「……こっちにあのくそったれUが来るらしい。さっきまでアカデミアで大暴れしてたらしい。……。」
ナナリア「な……く、あいつ………!」
翔「大丈夫さ!パパッと言いくるめて、お帰りにーーー」

U「なれば……良いな。」

翔・ナナリア「……!U!」
遂に現れた、黒幕と思われる男。U。この男の所為で、大勢の人が悲しみ、犠牲になり、何より翔の人生を大きく変えられた。
翔「……アカデミアで大暴れしたらしいな!」
U「あぁ。それがどうした?」
翔「何故やった!あいつらは……関係ねぇだろうが!!」
U「関係ない……か。まぁ側から見ればそうかもしれんな。」
翔「舐めてんのか……!」
怒りを露わにする翔。それもそのはず。翔は家族みんなをUに奪われた挙句、友人達までに被害を及ぼしているのだ。怒りを感じないわけがない。
翔「何がしたいんだ!!お前は!」
U「………。貴様の胸にでも聞いてみろ。」
訳のわからない回答をするU。それが更に翔の怒りを煽る。
翔「ふざけ………!クソがああ!!!」
怒りの頂点に達した翔は、Uに殴りかかる。しかしUはそれをいつしか遊星達にやった様に、翔を弾き返した。
翔「ぐは……!」
ナナリア「翔ーー!」
U「返り討ちか……。つまらんな。お前はそんなにつまらん奴だったか。」
翔「クソ……タレが!」
U「なんとでも言え。…タレがまぁ、部下の約束を俺が破るわけにはいかない。生かしてはやるさ。次……俺たちがまたお前の前に現れた時……その時は、遠慮なく殺してやる。じゃあな。」
それを言い残し、Uは消えた。何とも呆気なく戦いは終わった。結果的に撃退こそ出来たが、こちらの被害も計り知れなかった。
翔「……クソ、何がまた会った時だ………!2度と俺たちの前に姿をあらわすんじゃねぇ……!」
それだけ言うと、翔はばたりとその場に倒れ意識を失った。
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