66話 終焉を齎す者　作：名無しのゴーレム

––––何もない空間を、ただ前に進み続ける。幸い視界がきくことから、二人を見失ったりはしないが……



「……なあ、いつになったらあいつのところに着くんだ？ ってか、本当にここにいるんだよな？」
「分からない。けど、今更引き返す訳にもいかないだろうが」
「まあ、そりゃそうだが……ん？ 何か聞こえないか？」
「え？ …………」



……そう言われてみれば、確かに遠くの方から音が聞こえる。



「あそこに、霧生が……？」
「とにかく行ってみようぜ。何の手がかりもないんだ、このまま彷徨うよりかはずっとマシだろう」
「……そうだな。じゃあ……」









『その必要はないぞォ？』






––––それは一瞬のことだった。急に身体のバランスが取れなくなったと思ったら、その次の瞬間には……



「……ハハハ、ハハハハ！！ よもや、ここまで追ってくる愚か者が居ようとはなァ！！ いやはや、これは本当に驚かされたぞォ！？」
「お前は……！！」
「霧生、奈緒！！」
「テメェ、いつの間にここに来やがった！？」
「ハハハ、それは違うぞォ？ 私がお前たちのところに出向いたのではない、お前たちを私の前に連れてきたのだよォ！！ この場所は既に私の支配下にある、もう逃がさないからなァ！！」
「ハッ、それはこっちの台詞だっての。今度は絶対逃がさねえぜ！」
「……お前はここで終わりだ。俺たちを、多くの人間を弄んだ罰を、今この場で受けることになるんだ！！」
「罰ゥ？ 神は裁きを降すものだ、断じてその逆はあり得ないィ！！」
「勝手にほざいてろ。今すぐそこから引き摺り落としてやるよ、霧生 奈緒！！」
「いいだろう、私もただ見ているだけで暇だったんだ。貴様らを叩き潰し、次元の藻屑と変えてやろう！！」






「「「「デュエル！！」」」」






奈緒 LP4000
恭治 LP4000
郁哉 LP4000
強志 LP4000



「私のターン！ フィールド魔法、黙示録の地―メギドの丘を発動！ さらに永続魔法、黙示録の象徴―獣の数字を発動！ このカードが存在する限り、メギドの丘はいかなる効果によっても場を離れないィ！」



……つまり、あのフィールド魔法はそこまでして守りたいカードということか。一体どんな効果が……？



「黙示録の悪魔―第一の獣を召喚！ 第一の獣の効果発動！ デッキから黙示録の悪魔―第二の獣を手札に加える。このカードは私のフィールドに第一の獣が存在するとき特殊召喚できる。来い、黙示録の悪魔―第二の獣！ 第二の獣の効果発動！ デッキから黙示録の悪魔―バビロンを手札に加える。このカードも黙示録モンスターが存在するとき特殊召喚できる。来い、黙示録の悪魔―バビロン！」
「くっ……」



一気にモンスターが展開されていく。嫌な予感がする……



「カードを1枚セット。これでターンエンドだ」


奈緒 LP4000 モンスターゾーン 黙示録の悪魔―第一の獣、黙示録の悪魔―第二の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―バビロン（表側守備表示） フィールド魔法 黙示録の地―メギドの丘 魔法・罠ゾーン 黙示録の象徴―獣の数字 伏せカード1枚
恭治 LP4000
郁哉 LP4000
強志 LP4000


ステータスの低いモンスターを大量に並べ、そのままターンエンドだと……？



「よし、なら次は俺の番だ！ 俺のターン、ドロー！」
「この瞬間、バビロンの効果発動。相手はドローフェイズにカードを2枚ドローできる。その代わりに私のライフは2000回復するがなァ！」


奈緒 LP4000→6000


ライフを得るために、俺たちの手札を増やすだと……？ 駄目だ、あいつの戦術が読めない。



「っ……それくらいのライフ、すぐに焼き尽くしてやるぜ！ M・G クールを召喚！ そして速攻魔法、マッハ・ショット発動！ デッキの一番上のカードを墓地に送り、そのカードがモンスターカードだった場合そのレベル×100ポイントのダメージを与える！ デッキの一番上のカードは……よし！ モンスターカード、M・G シュンだ！ こいつのレベルは2、よって200ポイントのダメージを食らえ！」


奈緒 LP6000→5800


「……どうした、この程度かァ？」
「まだまだぁ！ 速攻魔法が発動したことによりクールの効果発動！ 自身のレベルを1つ上げ、相手に500ダメージを与える！」


M・G クール レベル3→4

奈緒 LP5800→5300


「さらに速攻魔法、マッハ・サイクル発動！ 墓地のシュンの効果発動！ 速攻魔法が発動したとき、墓地のこのカードを特殊召喚する！ レベル4のクールにレベル2のシュンをチューニング！ シンクロ召喚！ 疾く馳せ参じよ、M・G イダテン！ イダテンの効果発動！ 墓地のマッハ・サイクルを手札に加えるぜ。俺のフィールドにM・Gしか存在しないことにより、手札からM・G ソニックを特殊召喚！ レベル6のイダテンにレベル1のソニックをチューニング！ シンクロ召喚！ 疾く馳せ参じよ、M・G ヘルメス！」



連続シンクロ召喚……恭治の奴、飛ばしすぎじゃないか？



「ヘルメスの効果発動！ 墓地のソニックを特殊召喚！ レベル7のヘルメスにレベル1のソニックをチューニング！ シンクロ召喚！ 疾く馳せ参じよ、M・G アキレス！」
「……1ターンで3度のシンクロ召喚か。しかしそんなモンスターでは私は倒せないぞォ？」
「そんなのやってみなけりゃ分かんねえだろうが！ バトルだ！ アキレスで第一の獣を攻撃！」



第一の獣の攻撃力は0。これが通れば大ダメージだが……



「リバースカードオープン！ 速攻魔法、黙示録の編纂！ 第一の獣を守備表示に変更して、カードを1枚ドローする！」
「っ、ならその壁を減らしてやる！ 行け、アキレス！」



アキレスの一撃は第一の獣を粉砕した、が……



「なっ……！？」
「……メギドの丘の効果発動。私の黙示録モンスターが破壊されたとき、そのモンスターを特殊召喚する。どうした、私は無傷だぞォ？」
「お前のモンスターは全部ゾンビってことかよ……なら、アキレスの効果発動！ 相手がモンスターを召喚・特殊召喚したとき、そのモンスターのレベル×200のダメージを与える！」
「第一の獣のレベルは3。つまり、600のダメージか……」


奈緒 LP5300→4700


「……カードを2枚セットしてターン終了だ。この瞬間、マッハ・サイクルの効果発動！ このターン俺がシンクロ召喚したM・Gの数だけドローして、そのレベルの合計×100ダメージを与える！ 3枚ドロー、そして2100ポイントのダメージだぁ！！」


奈緒 LP4700→2700


奈緒 LP2700 モンスターゾーン 黙示録の悪魔―第一の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―第二の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―バビロン（表側守備表示） フィールド魔法 黙示録の地―メギドの丘 魔法・罠ゾーン 黙示録の象徴―獣の数字
恭治 LP4000 モンスターゾーン M・G アキレス 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
郁哉 LP4000
強志 LP4000


「……次は俺だ。俺のターン、ドロー」
「バビロンの効果発動だ」


奈緒 LP2700→4700


「……永続魔法、英雄の集う地を発動。そしてこのカードはリリースなしで召喚出来る。古の騎士 アイアースを召喚。アイアースは召喚成功時、守備表示になる。通常魔法、英雄の道標を発動。このターン、俺は通常召喚に加えて古の騎士をアドバンス召喚出来る。さらに墓地の英雄の道標を除外し、古の騎士をアドバンス召喚する際にリリースするモンスターを1体減らす。アイアースをリリースして、古の騎士 トリスタンをアドバンス召喚！」
「フッ、まだそのデッキを使っていたのか。私が与えた、『古の騎士』を！」
「……このデッキにどんな経緯があろうと関係ない。俺はこれでお前を討つ、それだけだ……英雄の集う地の効果発動！ 古の騎士をアドバンス召喚したとき、デッキから英雄と名のつく魔法・罠カード1枚を手札に加える。バトル！ トリスタンでバビロンを攻撃！」



トリスタンがバビロンを破壊する。しかし、その瞬間にバビロンが復活した……



「無駄だァ！ メギドの丘がある限り、貴様らの攻撃は私には届かないィ！」
「それはどうかな。……忘れていないか？ お前の相手は俺だけじゃない……」
「そうだ！ アキレスの効果発動！ お前がモンスターを特殊召喚したことにより、そのモンスターのレベル×200ポイントのダメージを与える！」
「チィッ……バビロンのレベルは6、つまり1200のダメージか……」


奈緒 LP4700→3500


「……カードを1枚セットして、ターンエンドだ。このときトリスタンの効果発動。手札を1枚捨てることで、デッキから古の騎士・英雄カードを合計2枚手札に加える」


奈緒 LP3500 モンスターゾーン 黙示録の悪魔―第一の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―第二の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―バビロン（表側守備表示） フィールド魔法 黙示録の地―メギドの丘 魔法・罠ゾーン 黙示録の象徴―獣の数字
恭治 LP4000 モンスターゾーン M・G アキレス 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
郁哉 LP4000 モンスターゾーン 古の騎士 トリスタン 魔法・罠ゾーン 英雄の集う地 伏せカード1枚
強志 LP4000


「……俺のターン、ドロー！」
「再びバビロンの効果発動だァ！」


奈緒 LP3500→5500


「っ……」



このままでは埒が明かない。霧生のモンスターを無限に復活させるメギドの丘、あれをどうにかしないと……



「リバースカードオープン。通常罠、血塗られた英雄譚。俺のフィールドにレベル6以上の古の騎士が存在するとき、相手フィールドのカード1枚を破壊する。俺が破壊するのは……黙示録の象徴―獣の数字だ！」
「ッ！？ き、さまァ……！！」
「先生、後はお願いします！」



……これで、メギドの丘の除去が可能となった。



「……ああ、任せとけ！ 機密兵器06 ブリンガーを召喚！ ブリンガーの効果発動！ このカードを除外して、デッキから機密兵器09 ドミントを手札に加える。除外されているブリンガーを墓地に送って、手札のドミントを特殊召喚！ ドミントの効果発動！ カードを1枚ドローする。通常魔法、アイアンコール発動！ 墓地のブリンガーを特殊召喚する。レベル4のブリンガーとドミントでオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚！ 現れろ、機密兵器Σ ビッグジェット！ ビッグジェットの効果発動！ このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除いて、カードを1枚ドローする。その後手札を1枚捨てて、そのカードが機密兵器モンスターだった場合その攻撃力分のダメージを与える。俺が捨てるのは攻撃力800のストリグス、よって800のダメージだ！」


奈緒 LP5500→4700


「グッ……だがこんなもので、私のライフは……」
「まだだ！ RUM―シークレット・フォース発動！ ビッグジェットをランクアップする！ ランクアップ・エクシーズチェンジ！ 現れろ、暴虐に抗う反逆者の牙よ！ 機密兵器Ω カタストロフ！ カタストロフの効果発動！ このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除いて、墓地の機密兵器を除外する。そしてその枚数、相手フィールドのカードを除外する！ 墓地のストリグス、ドミントを除外して、メギドの丘とバビロンを除外する！」
「ッ！？ 墓地の獣の数字を除外し、その効果を発動！ このターン私の黙示録モンスターは相手の効果を受けず、戦闘では破壊されない！」
「だが、メギドの丘は消え去る！ やれ、カタストロフ！」



カタストロフから放たれたビームは、俺たちを取り巻いていた荒々しい炎を次元の彼方へと消し去った。



「…………」
「このターン、俺はこれ以上お前にダメージを与えられない。だが次の俺たちのターンで、お前は……」
「…………ハ」
「…………何がおかしい」
「……ハ、ハハ。ハハハ、アハハハハ！！ 何を勝ち誇っているゥ？ ああ、確かにメギドの丘はもうない。それがどうした？ 分からないのか？ お前たちはもう、絶対の破滅から逃げられないんだよォ！！」
「！？」



……まさかこいつ、まだ何かを隠しているのか……！？



「強志、あんなのただのハッタリだ！」
「先生、気にしちゃ駄目だ！」
「……そうだな。カードを2枚セットして、ターンエンド……」


奈緒 LP4700 モンスターゾーン 黙示録の悪魔―第一の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―第二の獣（表側守備表示）、黙示録の悪魔―バビロン（表側守備表示）
恭治 LP4000 モンスターゾーン M・G アキレス 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
郁哉 LP4000 モンスターゾーン 古の騎士 トリスタン 魔法・罠ゾーン 英雄の集う地
強志 LP4000 モンスターゾーン 機密兵器Ω カタストロフ 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚


「……私のターン、ドロー。黙示録の予言者―ヨハネを召喚。手札から通常魔法、禁断融合―解かれる封印を発動」
「禁断、融合……！？」
「ライフを半分支払い、自分フィールドのモンスターをすべてリリースする」


奈緒 LP4700→2350


「……私は、これでターンエンドだ」
「はぁ……？ 何だよそれ、どういうことだ……ぁ！？」



霧生はターンを終了した。本来ならそのまま恭治のターンに移り、その攻撃がガラ空きの霧生に叩き込まれる……はずだった。それなのに……



「な、なんで……なんでお前のフィールドに、モンスターが！？」
「……ハハハァ、これが解かれる封印の効果だ！ これからすべてのプレイヤーがターンを終了すると同時に、私のエクストラデッキに存在する黙示録融合モンスター1体を特殊召喚する！ まずはこいつ、黙示録の四騎士―ホワイトライダーの降臨だ！」



霧生の場に出現した、白い馬を駆る騎士。こいつが、あいつの切り札なのか……？



「さあ、かかってくるがいい。そして思い知れ。人が神に敵うことなどないということをなァ！！」