62話 未来への希望　作：名無しのゴーレム

敦人 LP4000 手札5枚
強志 LP4000 手札5枚


「先攻はもらうよ。僕のターン。手札から通常魔法、魔獣の懐柔を発動。自分フィールドにモンスターが存在しない場合、デッキからレベル2以下の獣族効果モンスター3体を特殊召喚できる。来い、おジャマ・レッド、コアラッコ、キーマウス」



さっそく3体のモンスターを並べてきた。と、いうことは……



「手札から永続魔法、冥界の宝札を発動。これで僕は2体以上のモンスターをリリースしてアドバンス召喚したときカードを2枚ドロー出来る……僕は3体のモンスターをリリースする！ 現れろ、空を支配する真紅の神よ！ オシリスの天空竜！」
「！？ さっそく神を召喚するのかよ……！！」



空の雲を突き破るようにして現れた神のカード……オシリスの天空竜は、今までのどのモンスターをも上回る迫力を以って俺と対峙した。



「グ、ガァ……冥界の、宝札の効果発動！ カードを2枚、ドローするよ……オシリスの攻撃力・守備力は僕の手札の枚数×1000となる。よってオシリスの攻撃力は……4000！」


攻撃力、4000……！！



（だが、オベリスクの巨神兵の攻撃力も同じ4000。どうにもならないわけじゃない……）



「僕はこれでターンエンド……ウッ、グゥ……！？ 」


敦人 LP4000 手札4枚 モンスターゾーン オシリスの天空竜 魔法・罠ゾーン 冥界の宝札
強志 LP4000 手札5枚


「……続けるのか？」
「あたり、まえだろ……ッ、心配すんなよ。こんなデュエル、すぐに終わらせてやる……」
「そうかよ。……俺のターン、ドロー！ 手札から通常魔法、機密技術ーフュージョン発動。手札の機密兵器01 イグニスと機密兵器03 ストリグスを融合！ 反逆の機械たちよ、次元を超えし力を得て交われ！ 融合召喚！ 現れよ、機密兵器ζ フューズ！」
「この瞬間、オシリスの天空竜の効果発動！ 相手がモンスターを召喚・特殊召喚したとき、そのモンスターの攻撃力を2000ポイント下げる！ そしてそのモンスターの攻撃力が0になったとき、そのモンスターは破壊される！」
「っ！？」


機密兵器ζ フューズ 攻撃力2200→200


「なんとか、耐え切ったみたいだね……」
「……フューズの効果発動！ 墓地のイグニスを除外して、オシリスの攻撃力・守備力を1000下げる！」
「無駄だよ。神は1ターンに1度、モンスター効果・魔法・罠を受け付けない！」
「知ってるさ！ フューズのこの効果は1ターンに2度発動できる！ 墓地のストリグスを除外して、再びオシリスに対して効果発動！」

オシリスの天空竜 攻撃力・守備力4000→3000

「しかし、それでもオシリスは倒せない。しかもオシリスがいる限り君は神を呼ぶための生贄も用意できない……この状況、どうするつもりだい？」



……確かに、オシリスの制圧力の前にはモンスターを並べることは難しい。融合召喚はまだしも、シンクロ召喚とエクシーズ召喚は絶望的、か……



「……ターン、エンドだ」


敦人 LP4000 手札4枚 モンスターゾーン オシリスの天空竜 魔法・罠ゾーン 冥界の宝札
強志 LP4000 手札3枚 モンスターゾーン 機密兵器ζ フューズ（表側守備表示）


「僕のターン、ドロー……バトルだ。オシリスの天空竜でフューズを攻撃！」
「くぅっ、ガアァァァ！！」



オシリスが放った雷撃がフューズを貫いた。その衝撃は凄まじく、周囲の瓦礫を吹き飛ばしてしまった。



「っ……みんな、大丈夫か！！」
「問題ありません！ みなさんは私が守ります、だから……強志は、デュエルに集中してください！」
「涼花……任せたぞ！」



涼花たちの無事を確認してから、再び神谷の方を向く……その表情は、心底つまらなさそうなものだった。



「どうかしたか？ ……ハッ。ひょっとして、うらやましいとか？」
「違うよ……ただ理解できないと思っただけだ」
「涼花に任せたことを？ ……簡単なことだ。仲間に背中を預けられるから、余計なことを気にせずに闘えるんだよ。……そういうお前はどうなんだ？ あのままじゃ郁哉が傷ついていたかもしれないが、その時どうやって守るつもりだったんだ？」
「馬鹿に、するな……振るう力の方向性くらい、きちんと制御しているさ」
「……なるほど。だから余計に負荷がかかっているってわけか」



人に神は扱えない……その無理を押し通すために、神谷は身を削っているんだ。



「……続けるよ。カードを1枚セットしてターンエンド……」


敦人 LP4000 手札4枚 モンスターゾーン オシリスの天空竜 魔法・罠ゾーン 冥界の宝札 伏せカード1枚
強志 LP4000 手札3枚


……マズイ。オシリスの前ではモンスターの召喚はほぼ不可能、これじゃあ打つ手が……



「俺のターン、ドロー……！！」



このカードは……



『こ、これは……？』
『お守り代わりみたいなもんだ。おら、とっとと行け！』



（姉さん……姉さんから託されたこのカード、ありがたく使わせてもらうぜ……！）



「……俺はドローフェイズにこのカードを発動する。速攻魔法、未来への希望！ このカードは自分フィールドにモンスターが存在しないときのみ発動できる。種族を一つ宣言し、カードを1枚ドローする。そして……そのカードが宣言した種族のモンスターなら、特殊召喚できる！」
「！！ まさか、お前は……」
「ああ。俺が宣言する種族は……幻神獣族！！」
「……運試しのつもりかい？ 君のデッキの枚数がどれくらいかは知らないが、その中から神のカードを引き当てる確率なんて……」
「間違いなく低いだろうな。普通に考えれば不可能、奇跡でも起きなきゃ……ってレベルだろうよ」
「それを知って、なお賭けに出るのか……いいよ、やってみな」



……頼む。力を貸してくれ、姉さん……！！



「…………ドローッ！！」



俺が引いたカードは…………



「……幻神獣族、オベリスクの巨神兵だ」
「本当に、奇跡を起こしてくるなんてね……！」
「力を司る神よ、闇を打ち払い、我に勝利への道を示せ！ 来い、オベリスクの巨神兵！」



俺たちのフィールドに、2体の神が並び立つ。1体だけでも恐ろしい力を持つそれが2体、その衝撃は……



「……おいおい、ここって君の故郷じゃなかったっけ？ 自分の手で故郷を破壊する気分はどうだい？」
「……もちろん最悪だよ」
「そりゃあよかった」



その衝撃は大地に亀裂を作り、辺り一体の建物が跡形も残らずに破壊されていった。何も思わないわけがない。だが、ここでやめるなんて……



「……さて、それじゃあ君自身はどうなるかな？」
「？ 何を、言っ……ア、アアァァァア！！！」



突如全身に今まで経験したことのない痛みが走る。全身の血液が逆流し、ありとあらゆる骨にヒビが入っていくような……



「ウゥゥアァァ、ガガッ！！ ギィ、グガァァァ！！！」









（駄目だ無理だこんなの耐えられない死ぬ死んだほうがマシだ殺してくれ誰か助けて姉さん姉さんねえさ
































『…………、？』

『ん、やっと起きたか。遅えぞ強志、とっとと朝飯作ってくれよ』

『ぇ……ああ、悪い姉さん。すぐに用意するから……』




『ほい。あんまり手の込んだのは作れなかったけど、まあ勘弁してくれよ』

『おう、いっただっきまーす！ ……うん、美味い！ 本当、私の弟とは思えないぐらい料理上手いな！』

『それ、褒めてるんだよな……？』

『そうに決まってんだろ？ ……お前はすげぇよ。私に出来ないことが出来るんだから』

『…………それは、違う。姉さんに出来ないことが俺に出来るんじゃない、姉さんに出来ないことだから出来るようになろうとしたんだ』

『ふーん……そりゃまたどうして？』

『…………俺さ、小さい頃から悩んでたんだ。何でも出来る姉さんと違って、俺は平凡そのものだった。周りからも色々言われたし、それ以上に……正直言って、ずっと姉さんが疎ましかった。でもどうにもならないから……』

『それで、私に出来ないことをやろうとしたってわけだ』

『…………あれ？ 俺、なんでこんなこと言ってんだろ……姉さん、今のは忘れて……』

『忘れねえよ。……なあ強志、私が前に言ったこと覚えてるか？』

『え？』

『……私がいつも無茶出来んのも、お前が居たからなんだぜ？』

『……？ それ、どういう意味だよ……』

『自分で考えな。……後で答えを聞いてやる、だから……おら、とっとと戻りやがれ！！』


























「…………ぁ」
「……し、強志、強志ぃ！！」
「ぇ……すず、は？」
「！？ ……強志、よかったぁ……」
「こ、こは……！！ そうだ、俺は！！」



周囲を見渡す。……そこは間違いなく、さっきまで俺と神谷が闘っていた場所で……



「……まさか、意識を取り戻すとは思わなかったよ。ショック死も十分にあり得たのに……」
「……ふざ、っけんな……！ 誰が、こんなところで死ぬかよ……」
「強志、まだ動いては……」
「あんまり心配しなくていいんじゃない？ ……神の力の反動は実際に身体を傷つけることはない、ただ痛みを与えるだけだ。何度も使用する気がないなら、肉体的な負傷は考えなくていいよ」
「それは、ありがたいな……涼花。俺はもう大丈夫だ……だから、もう下がっていてくれ」
「で、でも……！」
「大丈夫だって言ってんだろ。……俺を、信じてくれよ」
「っ……分かりました。……強志、絶対に無事でいてくださいね……」



「……さて、続けるかい？」
「当然、だ……スタンバイフェイズに移行！ イグニス、ストリグスの効果発動！ この2体を特殊召喚する！」
「意味のないことを……オシリスの効果発動！ その2体……それとオベリスクの攻撃力を下げる！」



神の耐性は、同じ神には通用しない……だが！



「オベリスクの巨神兵の、効果発動！ イグニスとストリグスをリリースして、このターンの間オベリスクの攻撃力を∞として扱う！」


オベリスクの巨神兵 攻撃力4000→∞


「……サクリファイス・エスケープか」
「ただしこの効果を発動したターン、俺はお前に戦闘ダメージを与えられないがな。……バトルだ！ オベリスクの巨神兵で、オシリスの天空竜を攻撃！」
「っ……！！」



オベリスクの拳が、オシリスへと向かっていく。



「貫けぇぇぇ！！」
「…………いいや、そうはいかない！ リバースカードオープン！ 速攻魔法、神秘の中華なべ！ オシリスをリリースし、その攻撃力分僕のライフを回復する！」

敦人 LP4000→7000

オシリスが消滅したことにより、オベリスクの一撃は空を切った。



「チィッ……」
「オベリスクでは僕にダメージは与えられない。さらに特殊召喚された神はそのターンの終了時には墓地に送られる……これで、君の切り札も封じた」
「ハンッ、そういうお前だってオシリスを失った。……またまだ勝負は分からねえぜ？」
「おいおい、忘れたのかい？ 僕のデッキには最後の神のカード……ラーの翼神竜が眠っている。神のカードも無しに、どうやってラーに立ち向かうのか……見ものだね」
「……上等だ。お前が神を出す前に、このデュエルを終わらせてやる……！」