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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第10話 新生希望風

第10話 新生希望風 作:イベリコ豚丼

授業が終わり、いつも通り綾崎さんの家へと行こうとすると、校門で鶴岐さんと出会った。
「鶴岐さん。今からバイトですか?」
「よう宗介。そういうお前も今から通い妻か?」
「誰が通い妻ですか。学校帰りに友達の家でデュエルするのは別に普通のことでしょう」
「いやいや、男友達なら分かるが異性はおかしいだろ。このリア充め」
「へぇ、友達が3人しかいない人間をリア充と呼ぶんですか。それは初耳でした」
「………。」
その切り札を出されると言い返せない。
というか掛けてやれる言葉が見つからない。
「で、どうなんだデュエルの方は?お嬢様と闘って何か成長したのか?」
「相手の効果を読み上げられるくらいやりましたからね……。それはもう色々と。綾崎さんの攻め方から攻められて弱い所も大分分かってきましたよ」
「………お前エロいな」
「何でそうなるんですか!?」
そんな会話をしながら、慣れた足取りで綾崎家の正門に到着する。
「こんにちは。楓さんにお会いしに来たんですが」
「申し訳ありませんが、多田野様をお通しすることはできません」
「え……?」
門番が腕で進路を塞ぐ。
「あの、楓さんから連絡受けてないんですか…?今日もまた講義まで一緒にデュエルする予定のはずなんですけど……」
「その命令は一度降されました。が、その後旦那様によって取り消しとなりました」
旦那様って……綾崎さんのお父さんのことか?何でそんな人が約束の取り消しなんか……。
「もしこの決定にご不満がございますようでしたら、直接旦那様にご相談下さい。18時に屋敷を出発する予定ですから、間もなくいらっしゃるでしょう。我々には命令を覆す権利は与えられておりません」
「おいおい宗介。お前何やらかしたんだ?」
鶴岐さんが支給されているネームプレートを見せて屋敷に入ろうとする。しかし、
「お前もだ鶴岐。お前は昨日限りで解雇だとよ」
もう一人の門番に制止された。
「はぁ?」
「ほれ、労働分の給料だ。受け取ったらさっさと帰りな」
門番が封筒を投げた。
「ちょっ……おい!何で俺がクビなんだよ!俺何かしたか!?」
だが、門番達はこれ以上関わる気は無いというふうに黙り込んでいる。
「訳分かんねぇ……」
「いったいどうなってるんでしょうか……」


「あら、多田野様に鶴岐さんではございませんか。如何なさいましたか?」
どうしようもなく立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられた。
「あっ、東雲さん…!」
「と言っても、大体事情は分かりますが。屋敷に入るのを拒まれたのですね?」
「そうなんですよ。何が起こってるのか、僕等には全然分からなくて……。でも東雲さんが一緒なら安心です!これで僕等も中に……」
「残念ですが、多田野様のご期待にお答えすることはできません」
「え………?」
「今の私はお二人と同様に、屋敷に入ることを禁じられている身なのですよ」
言われてみれば、東雲さんの服装はいつものメイド服ではなく、パンツ姿の私服に謎のキャラクターが描かれたエコバッグ、というスタイルだ。
「実は昨晩、氷上様……いえ、氷上のヤローがここ最近の事を全部密告しやがりましてね。それにお怒りになった旦那様がお嬢様の外との関わりを完全に絶ってしまわれたのです。そして、それを止めようとした私も暇を出されてしまいました」
明らかに氷上さんへの敬意が失われているな……。
「だから俺らは入れないってことか……。くそっ!あの七三メガネ、逆らう気が起きないぐらいに叩き潰しとくべきだった!」
鶴岐さんも恐ろしいことを呟いている。
「じゃあ今から出て来るっていう綾崎さんのお父さんを説得すれば……!」
「無理でしょうね。あの旦那様が自分の出した命令を一日二日で撤回するとはとても思えません」
「そんな……」
友達が苦しんでるのに何も出来ないなんて……!!自分の無力さを認識させられていた、その時―――
「おい!どうした!?何があった!?」
『お、応援を……いや、救急車を呼んでくれ…!お嬢様が……、お嬢様が……!!』
「「「!!!」」」
それは、門番の装着した無線からの声だった。
「鶴岐さんっ!!」
「あぁ分かってる!」
「お二人共、こっちです!!」
東雲さんがバッグを投げ捨て、正門に走って行く。
「し、東雲先輩…!何を……」
「どきなさい貴方達!!」
「がっ!」
「ぐふっ!」
見事な掌低が二人の門番の顎にヒットし、そのまま崩れ落ちる。その間にモニターを操作した鶴岐さんが、門を開けた。
「さぁ早く!」
門の裏に止めてあった車に飛び乗り、アクセル全開で本館へと出発した。






「……はぁ、はぁ、はぁ…!」
もう何度行き来してきたか分からない廊下を全速力で駆け抜ける。突き当たりがいつもの勉強部屋だ。
「綾崎さんっ………!?」
扉の向こうに広がっていた状況に目を疑う。
「うぅぅ……」
「ぐ、ぐぉぉ…」
氷上さんと、もう一人大柄な男性が胸から血を流し、倒れている。
そして―――
『あ、多田野!今日も来てくれたんだ!』
「……っ!!」
嬉しそうにそう言う綾崎さんの手には、血の付いた一本の彫刻刀が握られていた。
「だ、旦那様!!」
「……おいお嬢様、それあんたがやったのか?」
『あぁ、これ?』
まるでゴミを見る様な目で二人を見て、言葉を続ける。
『そうよ。家がどうとかデュエルがどうとか五月蝿いのよ。私の人生はお前らのおもちゃじゃないっての』
「だから黙らせたってか……」
『最高だったわぁ、こいつらの訳が分からないって顔。全部が自分の思い通りになるとでも思ってたのかしら?だとしたら笑えるわよねぇ』
「………!!」
何だ……?
何かが違う……?
らしく無いというか…、まるで別の人間が混じっているような…。
『じゃあせっかく来てくれたんだし、デュエルでもしましょうか』
綾崎さんがデュエルディスクを構える。
「ちっ……!」
転がっている氷上さんのアタッシュケースに近付く鶴岐さん。恐らく中のデッキを取りに行ったのだろう。でも―――
「待って下さい鶴岐さん。ここは僕にやらせてください」
「………!宗介……」
こっちを振り返った鶴岐さんの目を見据える。
「………よし分かった。東雲さん、氷上の方をお願いします」
「い、いいんですか!?今のお嬢様は……!」
「大丈夫ですよ。ここは宗介に任せて、俺達は俺達の仕事をしましょう」
どうやらもう倒れている二人には興味が無いようで、二人の体を部屋から運び出す鶴岐さんと東雲さんに危害を加えることは無かった。



―――



「本当に良かったんですか?」
「何がですか?」
二人の体を車に運び、病院に向けて出発したところで東雲さんが問うてきた。
「多田野様のことです。先程、氷上のデュエルディスクを確認したのですが……。…お嬢様があの氷上に4000対0で圧勝していた記録が残っていました」
「………。」
「今までとは比べものにならない強さです。少なくとも氷上レベルのデュエリストでは、今のお嬢様とは勝負にすらなりません。私には多田野様にそれ程の実力があるとはとても……」
「強いとか弱いとか、そういう話じゃないんですよ」
「………?」
「あれは覚悟を決めた男の目だ。ああいう奴は必ず何かやってくれます」
「………そういうものですか」



―――



『へぇ、多田野が残るんだ。てっきりあの使用人が残るんだと思ってたわ』
「僕じゃ不満かい?」
『あら、そんなことはないわ。確かにあいつとは一度闘ってみたかったけど、一番デュエルしたかったのはあんたよ。だって、多田野とのデュエルはすっごく楽しいんだもん!』
「綾崎さん…!」
良かった、まだ完全に変わっちゃった訳じゃ……
『……とでも言うと思ったぁ?あっははは!!そんな訳無いに決まってるじゃん!デュエルが楽しいとか、口にするだけで寒気がするわ!』
「………っ!!」
『でも多田野と一番デュエルしたかったっていうのは本当よ?あんたは前の私に最後に勝ったデュエリストだからね。そいつをぶっ倒した時、やっと私は本当の自由になれるの!あんたは私の最後の関門ってわけ!!』
「……だったら、絶対負けられないね」
ここで僕が負ければ、綾崎さんは二度と前のようには戻れなくなる。あの笑顔も、二度と見れなくなってしまう。それだけは嫌だ!だから僕は………僕の命に変えてでもこのデュエルに勝つ!!

「デュエルディスク、セット!D-ゲイザー、セット!」

『ARビジョン、リンク完了』

「『デュエル!!』」

 SOUSUKE LP 4000
―――VS―――
 LP 4000   KAEDE


「僕はフィールド魔法賢妖精文書館を発動し、手札を1枚デッキの上へと戻す!」

賢妖精文書館 フィールド魔法

「これで僕は綾崎さんのエンドフェイズにカードを1枚ドローできる!続けて魔法カード発動!高等降霊術!」

高等降霊術 通常魔法

「ライフを1500ポイント支払うことで、手札からモンスターを1体特殊召喚する!行け、賢妖精ナレッジアード!」

 SOUSUKE LP 2500
―――VS―――
 LP 4000  KAEDE

賢妖精ナレッジアード ☆2 ATK 500

「ナレッジアードが手札からの特殊召喚に成功したことで、僕はデッキからカードを1枚ドロー!そして、カードの効果でドローされた賢妖精ナレッジマンダを特殊召喚!」

賢妖精ナレッジマンダ ☆6 ATK 2100

「ナレッジマンダが自身の効果での特殊召喚に成功したことで、デッキから賢妖精モンスター1体を手札に加える!僕が手札に加えるのは、賢妖精ナレッジビット!」
そして、僕にはまだ通常召喚が残っている!
「ナレッジアードをリリースして、手札に加えたナレッジビットをアドバンス召喚!」

賢妖精ナレッジビット ☆6 ATK 2300

『これでレベル6のモンスターが2体揃った…!』

「僕はレベル6のナレッジマンダとナレッジビットでオーバーレイ!木々の息吹をその身に纏い、月明かりの下で舞い踊れ!エクシーズ召喚!魅せろ、賢妖精ダイアナレッジ!!」

賢妖精ダイアナレッジ ★6 ATK 2700 ORU 2

「ダイアナレッジのオーバーレイユニットを1つ取り除き、効果発動!デッキから2枚ドローし、その後2枚のカードをデッキの一番上に戻す!」

賢妖精ダイアナレッジ ORU 1

「この瞬間、ダイアナレッジのもう一つの効果が発動される!このモンスターがフィールド上に存在し、僕が効果でドローした時、カード1枚につきライフを1000ポイント回復する!」

  SOUSUKE LP 3500
―――VS―――
  LP 4000 KAEDE

手札の1枚と、ドローした2枚のカードを確認する。
(モンスターはいないか……。だったら……!)
「もう一度オーバーレイユニットを使うことで、ライフをさらに1000ポイント回復!!」

賢妖精ダイアナレッジ ORU 0

 SOUSUKE LP 4500
―――VS―――
 LP 4000  KAEDE

『特殊召喚出来そうなモンスターはいないと見て、高等降霊術のコストを帳消しにしに行ったってところかしら?』
やっぱばれてるか……。
散々やったもんな……。
「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
でもそれはこっちも一緒だ。
『私のターン、ドロー!私は星海聖女ビリジンを召喚!』

星海聖女ビリジン ☆3 ATK 1000

『そしてビリジンの効果により、カードを1枚ドローし、手札の星海使獣カプリコンを捨てるわ!』
星海使獣は手札と墓地で発動する効果を持つモンスターだ。それを墓地に送ったということは……!
『まずはその目障りなフィールド魔法から消えてもらいましょうか!墓地のカプリコンを除外して、効果を発動!フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する!』
「………っ!」
『さぁまだまだこれからよ!魔法カード、融合発動!』
「!!」
もう手札に持っていたのか!

『私はフィールドの星海聖女ビリジンと手札の星海使獣アーリエ、そしてキャンセラで融合召喚!!』
3体のモンスターが渦の中に吸い込まれ、一つの光へと姿を変える。
『星守る乙女よ!星降る糸よ!星降る鋏よ!今一つとなりて新たなる力と姿を見せよ!!融合召喚!現れなさい!宙に咲く鉄血の薔薇!星海守護者アンドロメイデン!!』

星海守護者アンドロメイデン ☆7 ATK 2000

『融合素材となったアーリエとキャンセラの攻撃力分、アンドロメイデンの攻撃力がアップ!』

星海守護者アンドロメイデン ATK 3200

『そして、アーリエを除外することでカードを1枚ドローし、キャンセラを除外することで除外されている2体のモンスターを墓地に戻すことができる!』
これで次のターン、また2体の効果を発動できるようになってしまった。
『さらに、アンドロメイデンの効果発動!1ターンに1度、このモンスターより攻撃力の低い相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、相手にそのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!』
「そうはさせない!カウンター罠、賢妖精幻影!」
『!!』

賢妖精幻影 カウンター罠

「自分フィールド上に賢妖精モンスターが存在する状態で相手モンスターの効果が発動した時、その効果を『お互いにデッキから1枚ドローする』効果へと書き換える!!」
『くっ……!何もしなければ私の勝ちだったのに……』
「生憎、そう簡単にはいかないよ」
『まぁいいわ、効果で破壊出来なくても攻撃力はこっちの方が上なのは変わらない!アンドロメイデンでダイアナレッジを攻撃!』

星海守護者アンドロメイデン ATK 3200   VS   賢妖精ダイアナレッジ ATK 2700

「ぐっ……!」

 SOUSUKE LP 4000
―――VS―――
 LP 4000  KAEDE

『カードを1枚セットして、ターンエンドよ!』
「その時、賢妖精文書館の効果によりカードをドロー!」
賢妖精文書館が破壊されても、1度発動した効果を止めることはできない。
「僕のターン!自分フィールドにモンスターがいない時、このカードが発動できる!魔法カード、The・Sunrise!」

The・Sunrise 通常魔法

「デッキを上から順にめくり、一番初めに出た通常召喚可能な光属性モンスターを1体特殊召喚する!」
だが、僕のデッキに入っている光属性モンスターはたった2体。
一つはシルクナレッジ、そしてもう一つは……
「……来た!賢妖精ウィルナレッジ、特殊召喚!」

賢妖精ウィルナレッジ ☆8 ATK 2500

「さらに、賢妖精ナレッジフィードを攻撃表示で召喚し、その効果を発動!」

賢妖精ナレッジフィード ☆3 ATK 1400

「ナレッジフィードが召喚または特殊召喚に成功した時、デッキの賢妖精モンスターを一番上へと移動させることができる!」
デュエルディスクからデッキを取り外し、1枚のカードを選び取る。
『いったいどのカードを……』
「それはすぐに分かるよ。手札から魔法カード、光臨の竪琴発動!」

光臨の竪琴 通常魔法

「光臨の竪琴は、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで発動できるカード!デッキからカードをドローし、それが通常召喚可能なモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚する!!」
ナレッジフィードが光り輝く竪琴を奏で始めた。
「普段は運任せのこのカードだけど、今回はナレッジフィードの効果によりドローするカードは一つ!現れろ、賢妖精ナレッジボルト!!」

賢妖精ナレッジボルト ☆6 ATK 1500

「ナレッジボルトは、自身をリリースすることで墓地から2体の賢妖精を効果を無効にして特殊召喚できるモンスター!もう一度フィールドへ舞い戻れ!ナレッジマンダ、そしてナレッジビット!!」

賢妖精ナレッジマンダ ☆6 2100

賢妖精ナレッジビット ☆6 ATK 2300

『再びエクシーズ召喚の準備が整った……!来るわね、もう一体のモンスターエクシーズ!!』

「僕はレベル6のナレッジマンダとナレッジビットで、再度オーバーレイネットワークを構築!」
頼んだよ、僕のエースモンスター!
「聡明なる精霊よ!聖なる光へと昇華し、輝く一陣の風となれ!エクシーズ召喚!吹き抜けろ!賢妖精アルベナレッジ!!」

賢妖精アルベナレッジ ★6 ATK 2600 ORU 2

「アルベナレッジのオーバーレイユニットを1つ使い、デッキからカードを1枚ドロー!」
このドローは先程と違いなんの細工もしていない。思い通りに行くとは限らない。
『その様子だとモンスターカードじゃあ無かったみたいね!』
「けど、悪くないカードだったよ。今ドローした賢妖精魔杖をアルベナレッジに装備する!」

賢妖精魔杖 装備魔法

「これでアルベナレッジの攻撃力は800アップし、アンドロメイデンの攻撃力を上回った!」

賢妖精アルベナレッジ ATK 3400

『ちっ!つくづく運の良い奴だわ……!』
「バトルだ!アルベナレッジでアンドロメイデンを撃破!」

賢妖精アルベナレッジ ATK 3400   VS   星海守護者アンドロメイデン ATK 3200

『痛っ……!』

  SOUSUKE LP 4000
―――VS―――
  LP 3800 KAEDE

「さらに、ウィルナレッジでダイレクトアタック!!」
『うぐぅぅぅっ!!』

 SOUSUKE LP 4000
―――VS―――
 LP 1300   KAEDE

「はぁ……はぁ……」

僕の知る限り綾崎さんのデッキにはこの状況を打開できるカードは無い。これで大分追い詰めたはずだ。
『ふ…ふふ、うふふ、あはは!あっはっはっはっは!!』
「!!?」
笑った。
凄惨に―――笑った。
『やっぱあんた最高よ!あの氷上でも削れ無かった私のライフをここまで減らすなんて!あははは!あんたを最後の相手に選んで正解だったわ!』
やめろ……!
そんな顔で笑うな……!
それ以上綾崎さんの笑顔を汚すんじゃない!!
『じゃあクライマックスといきましょうか!私のターン!再度墓地のカプリコンとアーリエを除外して、賢妖精魔杖を破壊し、1枚ドローする!』
「うっ……!」
『………。』
ドローしたカードを見て、綾崎さんの顔が真剣になる。
『……多田野、先に言っておくわよ。無駄な足掻きはしないこと。そうすれば楽に倒してあげる』
「………!いやだね。僕は足掻く、足掻き続ける。ライフが尽きるその瞬間まで、絶対諦めない!!」
『あぁそう……!だったらもう容赦はしない!最高に惨たらしいやり方で死なせてやるわ!!私は手札から星海使獣レオールを捨てることで、星海聖女サジタリアを特殊召喚!』

星海聖女サジタリア ☆4 ATK 1800

『サジタリアの効果発動!このモンスターが特殊召喚に成功した時、デッキから星海使獣ピスケードを墓地に送る!』
「あのモンスターは確か……!」
『そして、ピスケードを墓地から除外することで、墓地からレベル4以下の星海モンスターを特殊召喚する!蘇れ、星海聖女ビリジン!!』

星海聖女ビリジン ☆3 ATK 1000

『ビリジンの効果により、私は1枚ドローし、星海使獣タウラスを墓地に送る!さらに、手札からラストフュージョニストを召喚!!』

ラストフュージョニスト ☆1 ATK 0

「!!!」
この感覚…、この絶望感…!
これはあの時と同じ…!!
『ラストフュージョニストの効果発動!ライフを1000ポイント払うことで、このモンスターを全ての融合モンスターの素材とすることができる!!』
「そんな馬鹿な!全ての融合モンスターだって!?」

 SOUSUKE LP 4000
―――VS―――
 LP 300  KAEDE

『あああぁぁぁっっっ!!』
ラストフュージョニストの体が綾崎さんに絡み付き、まるで生気を吸うかのようにライフを搾り取る。
『ひぃっははは!これで全てのパーツが揃ったわね!魔法カード発動!星海融合!!』

星海融合 通常魔法

『自分フィールド、または墓地から星海融合モンスターによって決められた素材を除外し、そのモンスターを融合召喚することが出来る!!』
「第二の融合魔法…!!」

『私はフィールドの星海聖女サジタリア、ラストフュージョニスト、加えて墓地の星海使獣レオールとタウラスを除外し、融合召喚!!』
4体のモンスターが黒い渦へと取り込まれ、どす黒い闇を形成する。
『暗き星々よ!死を呼ぶ悪魔と一つとなりて、邪悪なる姿を見せよ!!ラストフュージョン!!!現れなさい!天を穿つ大いなる弓!星海守護者ペガススレイヤ!!』
『セヤァァァ!!』

星海守護者ペガススレイヤ ☆8 ATK 2800

「見たことの無い融合モンスター!?」
『ペガススレイヤが融合召喚に成功した時、その効果が発動される!このモンスターの融合素材とした星海使獣の数まで、相手のカードを手札に戻す!!』

「なら先にアルベナレッジの効果を……」
『させるか!カウンター罠、星海輝光!』

星海輝光 カウンター罠

『自分フィールド上に星海融合モンスターが存在する時、相手のカードの発動を無効にして破壊する!』
「そんな!」
『これで手札に戻るのはウィルナレッジだけになっちゃったけど、どっちでもいいわ!ペガススレイヤのさらなる効果発動!相手の手札を1枚選び、そのカードを墓地に捨てる!ピンポイント・シューティング!!』
「ウィルナレッジが…!」
『これであんたの手札にもフィールドにもカードは0枚!まずはビリジンでダイレクトアタック!』
「あぐっ…!!」

SOUSUKE LP 3000
―――VS―――
LP 300   KAEDE

『続けて、ペガススレイヤでも攻撃!!』
「うわあああぁぁぁ!!」

SOUSUKE LP 200
―――VS―――
LP 300  KAEDE

『私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!どう多田野!?この圧倒的な力は!?』
「うっ……あぁ……」
『あはは!もう返事も出来ないぐらい虫の息みたいね!そんなあんたに良い事を教えてあげるわ。ラストフュージョニストにはもう一つ隠された効果があるの。このモンスターを素材として召喚された融合モンスターが私のフィールドに存在する限り、相手は魔法カードを発動出来ず、相手フィールドの魔法カードの効果は無効化されるという恐ろしい効果がね!!』
「魔法カードの………封印……」
『絶望した?死にたくなった?それも仕方ないわよねぇ!あんたのコンボはいつも魔法カードありきだったもの!私はこの魔法みたいな力のおかげで幸せになれたけど、あんたはその魔法のせいで敗北するのよ!!』
そこでまた、綾崎さんは凄惨に笑ったようだけど、もうそんな声は耳に入らない。
諦めたからじゃない。
今の僕はたった一つの事しか頭に無いからだ。
壁に手を付き、倒れそうな体を何とか支える。
「……幸せになるのに…魔法なんて必要無い……!どんな時でも……人を幸せにするのは人の力なんだ!誰かを想う人の力なんだ!だから僕は……僕の力だけで、大好きな君の笑顔を取り戻してみせる!!」
その言葉に、綾崎さんは眉をひそませる。
『うっざいのよ!あんたが好きかどうかなんて、そんなのどうでもいい!私は今の自由な私が好きなの!!それを認めないっていうんなら、あんたもあの糞親父と同じように殺してやる!!』

「………僕のターン。ドロォォォ!!!」
僕は信じる!
僕自身を!
今まで一緒に闘って来たカード達を!
彼女を救いたいというこの気持ちを!!
「自分フィールドにカードが存在せず、自分の手札がこのカードのみの場合、賢妖精ウンディナレッジは特殊召喚できる!!」

賢妖精ウンディナレッジ ☆4 ATK 1000

「そしてウンディナレッジがこの効果での特殊召喚に成功した時、1体の賢妖精モンスターをデッキからドロー扱いで手札に加える!!」
『ドロー扱いですって!?』
「僕がドローするのは賢妖精ナレッジダイン!そしてカードの効果によってドローされたことにより、手札からナレッジダインを特殊召喚!!」

賢妖精ナレッジダイン ☆1 ATK 100

「さらにウンディナレッジをデッキの一番上に戻すことで、さっき君が墓地に送ったウィルナレッジを特殊召喚する!!」

賢妖精ウィルナレッジ ☆8 ATK 2500

『はっ…!何をするかと思えば、レベルも違う攻撃力の低いモンスターを並べただけ?そんなんじゃペガススレイヤを倒すことなんてできないわよ!!』
「ウィルナレッジが特殊召喚されたことで、ナレッジダインの効果が発動される!!」
『!!?』
「ナレッジダインは賢妖精モンスターが特殊召喚された時、フィールド上の賢妖精モンスター1体を選択し、自身のレベルをそのモンスターと同じにすることができる!僕はナレッジダインのレベルをウィルナレッジと同じ8へと変更する!!」

賢妖精ナレッジダイン ☆8

『レベル8…!?賢妖精のモンスターエクシーズのランクは6のはずじゃ…!!』

「僕はレベル8のウィルナレッジとナレッジダインでオーバーレイネットワークを構築!」
これが…僕の次なる可能性だ!!
「眩き嵐が希望の謡へと変わる時、新たな英知が生まれ落つ!エクシーズ召喚!解き放て!賢妖精モルガナレッジ!!」

賢妖精モルガナレッジ ★8 ATK 3000 ORU 2

『新しいモンスターエクシーズ…!けど、どんな効果を持っていようと関係ないわ!リバースカード発動、星海彗撃!!』

星海彗撃 通常罠

『手札の星海使獣スコーピオを墓地へ送り、フィールド上のカードを2枚まで破壊する!!』
「甘いよ!モルガナレッジが自分フィールドから離れるカードの効果が発動した時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その効果を無効にできる!!」
『なっ……!!』

賢妖精モルガナレッジ ORU 1

「さらにオーバーレイユニットを取り除き、モルガナレッジのもう一つの効果を発動!」

賢妖精モルガナレッジ ORU 0

「このターンこのモンスターは、ターン中に自身の効果で特殊召喚された賢妖精モンスターの数まで攻撃できる!」
『何ですって!?』
「特殊召喚したのはウンディナレッジ、ナレッジダイン、ウィルナレッジの3体!よってモルガナレッジの攻撃回数は……」
『3回!!!』
「行け、モルガナレッジ!グローリアス・ストーム、3連打ァ!!」
『きゃあああぁぁぁ!!!』

SOUSUKE LP 200
―――VS―――
LP 0   KAEDE






―――






ドンッ

「はっ………!」
床で頭を打った衝撃で目を覚ます。
「私は……いったい…?」
まさか今までのは全部悪い夢だったのか?
確かに夢の中にいるような感覚だったけど…

カラン!

起こした体を支えていた手に何かが当たる。
「ひっ………!!」
手元にあったのは、赤黒くい血の付いた1本の彫刻刀だった。それを見て全てが現実だったのだと理解する。
多田野とデュエルしたのも。
不可思議なモンスターを使用したのも。
そして―――お父様を殺したのも。
「…いや……、……いや…!…いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやぁぁぁ!!!」
認めたくない!!
認められない!!
ルールに背いて、デュエルで負けて、その上お父様を殺しただなんて…!!
そんなの……、そんなの……!!!
「……もう、終わりじゃない…」
さっきの彫刻刀を拾い上げ、自分の首下に向ける。このまま振り下ろせば、この重圧からすぐに楽になれるだろう。
もうどうすることもできない。
消しようのない過去が生まれてしまった。
だったらもう、辞めてしまおう。
どうしようもないのなら、どうもしなければいいのだ。
そんなことを考えながら、両手で構えた彫刻刀を首に突き立て―――

「諦めちゃダメだ!!」

―――られなかった。
一人の少年が、私の握った彫刻刀を強く掴んでいた。
「た…多田野……、何で……?あ……!あんた、ち、血が……!!」
彼の手からは彫刻刀で切ったのであろう血がドロドロと流れ出している。
「……壁にぶつかった時、立ち止まったっていい。逃げたっていい。でも君が本気でそれを望むなら、いつかは絶対立ち向かわなくちゃいけないんだ!!何度も何度も跳ね返されて、その度に転んだとしても、もう一度立ち上がらなきゃいけないんだ!!そうすればいずれ、勝手に壁の方から壊れてくれるから…!」
まるで怪我などしていないかのように優しい顔で私の目を見据えて続ける。
「……それでも立ち上がれなくなった時は―――今度は僕が一緒に立ち向かう。壁が崩れるその時まで、ずっと傍にいる。だから、諦めちゃダメだ」
「………!!」
何でそこまで言えるのよ…!
私はあんたを殺そうとしたのよ!?
そんな奴には二度と近付かないのが普通でしょ!?
なのに、なのにそんな風に優しくされたら…私……私…!
「……う…う……うわぁぁぁん…!…ひっく…!うわぁぁぁん……!!」
泣いてしまった。
多田野の胸の中で、人目も憚らずに。
そんな私を、彼は怪我の無い右手で抱き留めてくれる。
「うわぁぁぁん……!!えぐっ…!…うわぁぁぁん……!!」
それが嬉しくて、また泣いた。
泣き続けた。
その間も多田野は、ずっと一緒にいてくれた―――。










―――










「今回はこれだけか…。思ったより集まらなかったな」
イースタン校の象徴である時計台の頂上で、返ってきたラストフュージョニストを見ながら呟く。
「―――おいおい、お前またそんなちまちまやってんのかよ」
「!?」
振り返ると、そこには見知った顔があった。
「『死霊使い』…。冷やかしにでも来たのかい?」
「つれねぇ事言うなよ『魔導士』。俺はお前を手伝いに来てやったんだぜ?」
「手伝いに…?」
この男が?
余りの似合わなさに、思わず苦笑する。
「君がそんなことを言うってことは、何か別に目的でもあるのかな?」
「ま、無いって言ったら嘘になるわな」
「………。何でもいいけど、やるからにはしっかり頼むよ」
「了解、リーダーさん」
そう言い残して彼は霧の様に消え去った。
「相変わらず食えない奴だ……」
本音を言うと、不安が無い訳ではない。
だが彼に任せておけば計画が速く進むのもまた事実だ。
(ひとまず様子を見るか……)
そう思い至り、同様に体を闇夜に紛らせる―――。
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ギガプラント
うわっホントに私のオリカだらけ!私は幸せ者ですわ…。
新規エクシーズのサンレンダァ格好良いです。
汎用カードも何が出てくるか非常にワクワクさせて頂きました!次回も楽しみにしております! (2016-03-22 09:29)
イベリコ豚丼
》ギガプラントさん
コメントありがとうございます!
既にメインキャラの内2人がギガプラントさんからお借りしているテーマですからね・・・。
それはもう登場回数もうなぎ上りですよ(笑) (2016-03-22 13:02)
ター坊
攻め方やどこを攻められたら弱いか分かる。うん、エロい。
そして王道展開で救った多田野君マジ王子。 (2016-03-22 14:28)
イベリコ豚丼
》ター坊さん
コメントありがとうございます!
いやいや、ター坊さんの描写のエロさには敵いませんよw
もう宗介が主人公でいいんじゃないだろうか(錯乱) (2016-03-22 18:11)

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