第５１話　三日目　敗者の涙と勝者の思い出　作：白金　将

～夜　医療テント～
賢者「ＺＺＺ……」
賢者「……ん」

賢者「試合、終わっちゃったかしら」ﾑｸｯ
剣士「ああ。ちょっと前にな」
賢者「！？」

剣士「なあに観客が倒れてるんだよ」
賢者「心配したじゃない……ばか！　ばかばか！」ﾎﾟｶｽｶﾎﾟｶｽｶ
剣士「いて、いてぇ！　いてぇって！」
賢者「あっ」
賢者「ご、ごめんなさい、突然こんなこと」

剣士「……謝るのはこっちの方だ」
剣士「確かに無理しちまったからよぉ……左肩、ちょっと動かすと痛みが走る」
剣士「エアトスに急いで巻いてもらったから明日明後日には良くなってるだろうけどな」
賢者「良かった……」

賢者「……その様子だと、負けちゃったみたいね」
剣士「まあ、な。女戦士はやっぱり強かったよ」
剣士「……ちくしょぉ」
剣士「……」ｸﾞｽｯ
賢者「よしよし」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

賢者「頑張ったわね。あなたは本当によく戦ったわ……」ｷﾞｭ
剣士「うう……うわああああぁぁぁぁ！」ﾌﾞﾜｯ





～夜　水浴び場～
女戦士「……」ｻﾞﾊﾟｰｯ
女戦士「何だかあっという間に終わっちゃったね」
射手「長い戦いだったんだし……」ｻﾞﾊﾟｰｯ
射手「身体よりも頭の方を使ったんだし」

女戦士「……次、決勝？」
射手「運が良かったら次が最後なんだし」
射手「他に２組が勝ちあがってるから、どちらかとの対戦があるかもしれないんだし」
女戦士「どっちにしろ頑張らなきゃ！」

射手「……女戦士さん、聞きたいことがあるんだし」
女戦士「なあに？」

射手「私、女戦士さんの笑顔に結構助けられてるんだし」
射手「……こう言ったらおかしいけど、なんで、いつも笑顔でいられるんだし？」
女戦士「むー」

女戦士「……」
女戦士「少し昔のお話、するね」



―　―　―　―　―　―　―
～過去　連合軍本部～

無敗将軍 フリード「今日は新入りを紹介する」
フリード「来てもいいぞ」

女戦士「……こんにちは」ｽｯ

ｶﾜｲｺﾁｬﾝﾔｯﾀｰ　ｵﾝﾅﾉｺﾀﾞｰ　ﾌﾄﾓﾓﾌﾄﾓﾓｰ
女戦士「……」ﾄﾞﾖｰﾝ
フリード「こらお前たち。彼女だって立派な戦士だ」

ｽｲﾏｾﾝﾃﾞｼﾀｰ　ｺﾞﾒﾝﾅｻｲｰ
？？？「……ほう、こりゃあ楽しみだ」
フリード「なんだ、早速彼女と一試合したいのか？　グレファー」

ダイ・グレファー「そりゃぁもう。相手がどれくらい強いか俺だって知りたいですよ」
女戦士「？？？」
フリード「グレファー君は将来に期待の持てる戦士だ。どうだい？」
女戦士「はい……やってみます」

女戦士（なんか不安だなぁ……この先やって行けるのかなぁ……）



～過去　連合軍本部前～
グレファー「凄いな……やっぱり新人とやるだけあって見物人も多いか」
グレファー（……ま、大方はアイツがかわいいから来たんだろうけどな）

女戦士「ううっ……」
女戦士（視線……男の人たちの嫌な視線がいっぱい……）ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
グレファー「……」

グレファー「今日はやめておくか？　顔、青いぞ？」
女戦士「えっ……？」
グレファー「皆、今日はやめだ。ほら帰った帰った」

ﾁｸｼｮｰ　ｶﾜｲｶｯﾀﾅｰ　ｸﾞﾚﾌｧｰﾉﾔﾂﾒ

グレファー「……気に入ってる酒場が近くにある。そこだったら落ち着けるぜ」
女戦士「ありがとう……ございます」

女戦士（この人……他の人たちと何か違う）



～過去　酒場～
グレファー「飲みなよ。お前さんはこの店は初めてだから金は出してやる」
女戦士「すいません」
グレファー「謝らなくていい。別にお前を引っ掛けたいわけじゃないからよ」

グレファー「……緊張、してるな」
女戦士「えっ……？」
グレファー「慣れない環境でやっていけるか不安なんだろ？」

女戦士「……はい」
グレファー「だったら笑えばいい。笑っていりゃいいことがいっぱいやって来る」
女戦士「笑う……」

グレファー「お前が笑えば、周りも笑顔になる。最初はそこから始めたらどうだ？」
女戦士「……でも、やっぱり、戦士として期待されては……」
グレファー「うるせぇうるせぇ。見た目だけで決める奴はろくな奴じゃない」

女戦士「グレファーさん」
グレファー「何だ？」
女戦士「……私に、そんなことが出来るでしょうか」
女戦士「初めて会った時からかわいい子扱いされた私が……後から強い戦士になるなんて」

女戦士「私がいくら頑張っても、所詮、私は一人の女の子でしかないのかなって」
グレファー「……そうか」
グレファー「だったら今すぐ軍を抜けた方が良い。話は俺から通してやるよ」
女戦士「えっ？」

グレファー「さっきから聞いてたら、どうもお前さんは発想が後ろ向きなんだよ」
グレファー「不安が多いのもわかる。ただ、それだといつまで経っても何も変わらん」
女戦士「……」

女戦士「ありがとうございます」ﾆｺｯ
女戦士「少しだけ……頑張ってみることにします」
グレファー「よし、その意気だ。何かあったら手伝ってやるから言ってくれよな」
―　―　―　―　―　―　―



～夜　水浴び場～
女戦士「最初は内気だったんだけど、彼にいろいろ励ましてもらったんだ」
女戦士「それで思ったの。他の人を励ましてあげられるような人になりたい、って」
射手「女戦士さん……」

女戦士「みんなの笑ってる顔を見るとやっぱり楽しいからね」
女戦士「射手ちゃんももっと笑いなさーい」ｷﾞｭｩ
射手「わああぁぁ」///
射手「お、女戦士さん、は、はだかでぎゅっとするの……」
女戦士「？？？」

女戦士「あ、もしかして照れくさいんだ」ﾂﾝﾂﾝ
射手「そ、そんなこと、ないんだし」ｶｧ//
女戦士「よーし、今日は射手ちゃんをかわいがっちゃうからねー！」
射手「うわぁぁぁぁ」///



～夜　死闘場前の屋台～
調理師「おつかれ」
調理師「審判組は明日に備えて早く寝たから、ゆっくりしていくといい」
訓練生「ありがとうございます」

訓練生「お姉ちゃん、来なかったです」
訓練生「私の試合はもう終わっちゃった……」
訓練生「」ｸﾞｽﾝ

訓練生「おねえちゃああああん！」ﾌﾞﾜｯ
調理師「……ま、飲めや」ｺﾄｯ
調理師（こいつの姉さん、今はどこにいるのか……何もなきゃいいんだけどな）



～夜　女王の間～
女王「楽しかったトーナメントも終わりが近いわね……」
女王「いつもの日常に戻るのは少し寂しいわ」
女王「特に……」

エアトス「ＺＺＺ……」
エアトス「じょおうさまぁ……」

女王「彼女との別れは本当に惜しいわね……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
女王「こちらの方も本当に可愛いのだけれど」

聖戦士「ＺＺＺ……」
聖戦士「女王……」

女王「……」
女王「少し剣の素振りでも練習しておこうかしら」



女王「……」ﾌﾞｩﾝｯ
女王「……」
女王「どうも動きが鈍いわね……やっぱり座ってばかりで身体が動かないからかしら」
女王「もう少し練習が必要ね」

エアトス「ＺＺＺ……」
聖戦士「ＺＺＺ……」

女王「……こんな所、２人には見せられないわね」
女王「今のうちに……」ﾌﾞﾝｯ　ﾌﾞﾝｯ