決闘〜姫王と女帝〜　作：名無しのゴーレム

女帝が俺を連れて出発してから、1時間後……俺たちは決闘が行われるという場所に到着していた。






「……なぁ、なんでこんなに早く来たんだ？」
「姉様に聞いてくれ。……どうするんだよ、この戦力じゃロクに戦えないぞ……？」



……確かに、見た所連れてきている兵の数はかなり少ない。これなら女帝さえ倒せばそのまま押し切れるかもしれない……



「ライト様ぁ〜、私たちはどうしますか？」
「そうだな、姉様の護衛……いや、捕虜の周辺警護も必要か。ヤノカは姉様のところに、アルフレッドはここで待機してくれ」
「分かりました！」
「了解しました！ 捕虜君はこのアルフレッド・ダーナーが責任を持って守り抜きましょう。HA……おっと、分かったから懐から何かを取り出そうとしないでくれヤノカ」



ーーちょくちょくアルフレッドに絡まれながら、時間が経ち……





「……来たぞ、王国軍だ！」



……！ 向こうから馬に乗った大軍が押し寄せる。あの中に姫様もいるのか……？



「……アルカ様！」
「アルフレッド、護衛ご苦労。捕虜を引き渡す準備をする、連れてきてくれ」
「はい、このアルフレッドにお任せを！ HAHAHA！」
「……ハハハ、いつ聞いてもお前の笑い声は気持ちいい！ よし、行くぞ！」



……やっぱり女帝は俺たちとは違うんだな……



「姉様！？ もう引き渡すのか！？」
「ああ、ユーノヴェルトを確認次第な。奴が来たならもう捕虜にしておく価値はない」
「いや、そうだけど……もうちょっと後にしないか？」
「？ そうする理由がないだろう。それに、後顧の憂いを無くしておけばよりデュエルに専念できるだろう？」
「……じゃあ、もうそれでいいよ……」
「……その、まあ……ドンマイ」
「やめてくれ、泣きたくなってくる……」














「……私はアルカ・グランベルゼだ！ ユーノヴェルト・ハートライン、私との決闘を受けるというのなら早々に我が前に姿を見せるがいい！」



……姫様、本当に来たのか……？



「……私が、ユーノヴェルト・ハートラインです。約束通り決闘を受けましょう。ですから、彼を……遊介を解放してください」
「いいだろう。……ほら、今からお前は自由の身だ」



俺を縛っていた縄が解かれる。これで、俺は姫様たちのところに戻れるが……



「姫様、女帝と戦っちゃ駄目だ！ いくら姫様でも、『あれ』には勝てない！」
「……遊介。例え敵がどれほど強大であろうとも、戦わなければならない時はあるんです。……私にとってのそれは、今なんです」
「なるほど、君主としての義務というわけか。あまり共感は出来ないが、その年からすれば立派なことじゃないか」
「国を治める者、その志に年齢など関係ありません。……あなたを倒して、私はこの戦争を終わらせます」
「……ほう。いいだろう、私が敗れたならば此度の侵攻は中止しよう！」
「それだけではありません。……あなたには、他国への侵攻そのものを止めてもらいます」
「なんだと？ ……そこまで言うのなら、貴様にも相応の対価を払ってもらうぞ」



相応の……対価？



「……いいでしょう。あなたは対価として、何を求めますか？」
「決まっている！ ……貴様のすべてだ！」
「すべて……とは？」
「貴様が治める国は帝国の一部に加える。さらに貴様自身も我が部下として大陸統一の礎となってもらうぞ」
「なっ……！ 無茶苦茶だ！ 姫様、そんな条件受けたら……」
「分かりました」
「姫様！？」
「……ハハハ！！ その心意気やよし！ かのアベルカインの如き戦いぶりを、私に見せてみろ！」
「私の国は私が守ります。……そして、いつの日かこの世界からあらゆる戦いを根絶します！」










「「デュエル！！」」



ユーノヴェルト LP8000 手札5枚
アルカ LP8000 手札5枚



「私のターン。手札から通常魔法、魔術王の秘蹟を発動。次の私のターンまで、私が受けるすべてのダメージは半分になり、さらにデッキから魔術王の秘蹟を手札に加えます。通常魔法、魔術王の副葬人形を発動。このカードをモンスターとして私の場に特殊召喚します。私はこれでターンエンド」



ユーノヴェルト LP8000 手札4枚 モンスターゾーン 魔術王の副葬人形（表側守備表示）
アルカ LP8000 手札5枚



「私のターン、ドロー！ 覇滅竜ランシャを召喚。バトル！ ランシャで魔術王の副葬人形を攻撃！」
「魔術王の副葬人形の効果発動。手札の魔法カード1枚を捨てることで、このターンの間このカードは戦闘・効果で破壊されません」
「……ランシャの効果発動！ 戦闘を行ったこのカードをリリースして、手札の覇滅竜1体をアドバンス召喚する！ 来い、覇滅竜ディストル！」



あ、あれは……！



「アドバンス召喚されたディストルは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。私のターンはこれで終わりだ！」



ユーノヴェルト LP8000 手札3枚 モンスターゾーン 魔術王の副葬人形（表側守備表示）
アルカ LP8000 手札4枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル



「私のターン、ドロー。魔術王の秘蹟発動。デッキから魔術王の秘蹟を手札に加えます。私はこれでターンエンド」
「貴様……私を馬鹿にしているのか！？」
「これが私のデュエルです。……さあ、次はあなたのターンですよ」



ユーノヴェルト LP8000 手札4枚 モンスターゾーン 魔術王の副葬人形（表側守備表示）
アルカ LP8000 手札4枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル



「私のターン、ドロー！ 墓地のランシャの効果発動！ このカードを除外して、手札の覇滅竜ナッシェを特殊召喚する！ ナッシェをリリースして覇滅竜グラタをアドバンス召喚！ グラタが存在する限り、私の覇滅竜は貫通効果を得る！」



……マズイ！ 姫の壁モンスターの守備力は800。いくらダメージが半減していても、全部通せば……



「バトル！ ディストルとグラタで副葬人形を攻撃！」


ユーノヴェルト LP8000→7000→5900


「っ……手札の魔法カード1枚を捨てて、副葬人形の破壊を無効にします！」
「……貴様、何を狙っている。そんなモンスターを壁にしたところで、私の攻撃は凌げないぞ！」
「…………」
「……フンッ、ターンを終了する！」



ユーノヴェルト LP5900 手札3枚 モンスターゾーン 魔術王の副葬人形（表側守備表示）
アルカ LP8000 手札3枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル、覇滅竜グラタ



「私のターン、ドロー。……魔術王の秘蹟発動。カードを1枚伏せて、ターンエンド」



ユーノヴェルト LP5900 手札2枚 モンスターゾーン 魔術王の副葬人形（表側守備表示） 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アルカ LP8000 手札3枚 モンスターゾーン 覇滅竜ディストル、覇滅竜グラタ



「……おい、いつまでそうしているつもりだ」
「…………」
「……いいだろう。このまま終わるというのならば、貴様の存在をこの大陸から抹殺してやろう！ 私に対しここまで闘志を見せなかったのは貴様が初めてだぞ、ユーノヴェルト……！！」
「…………」
「……！ 私のターン、ドロー！！ 墓地のナッシェの効果発動！ ディストルを墓地に送り、このカードを特殊召喚する！ さらにこのとき、手札を1枚捨てることでデッキから覇滅竜アニマを手札に加える。ナッシェをリリースして、覇滅竜アニマをアドバンス召喚！ アニマのアドバンス召喚に成功したとき、墓地のディストルを攻撃力を3000にして特殊召喚する！ ……さあ、蹂躙の開始だ！」



……！！ あのフィールド、間違いない。女帝は『あれ』を出すつもりだ……！！



「……貴様の父に対するせめてもの敬意だ、貴様は我が最強のモンスターで葬り去ろう！ 私はレベル8のディストル、グラタ、アニマの3体でオーバーレイ！ 万物を破壊する君臨者よ、抗う愚者に鉄槌を下せ！ エクシーズ召喚！ 天より舞い降りろ、覇滅竜王ネロ！」



……出てしまった。どんなモンスターをも粉砕する最強の暴竜。あの力の前では、誰もが瞬く間に押しつぶされてしまう……



「さあ、うち震えろ！ どうしようもない自然の暴威にひれ伏す民のように！」
「……いいえ、私は諦めません」
「……なんだと？」



姫様……？



「……諦めない。私は、あなたに勝つ！」
「ハッ……ハハハ、ハハハハ！！ なんだ貴様！ 先ほどまでとはまるで違う、勇敢な戦士の目になっているじゃないか！ なるほど、確かに貴様はアベルカインの娘だ！ なれば立ち向かってくるがいい！ 我が切り札の前に貴様がどこまで足掻くか、この目で見届けてやろう！」
「…………！」