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12:新たなる出発 作:ほーがん

第12話「新たなる出発」



朝。カケルとリンカは唐突に聞こえた喧騒に目を覚ました。

「なんだ・・・?」

目を擦りながら、リンカが身体を起こす。同じように起き上がったカケルは周りを見渡すと、家主の姿が見えない事に気付いた。

「キジマの奴、外か?やたらデカい声が聞こえたけど・・・」

その時、二人の下にマーナが駆け寄った。

「みんな、ナオト兄ちゃんが大変なの!」

必死な顔でマーナは訴えてくる。その時、外からまたしても大声が響いた。


「てめぇ、俺達に楯突くってのか!?あぁん!?」

「いいから、そこをどけってんだよ!!」


カケルはマーナに言う。

「俺が行く。マーナはここに居るんだ。」

直ぐさま立ち上がり、扉へと走ろうとしたカケルにリンカが声を掛ける。

「待て、私も行こう。」

リンカも後を追い掛け、二人は扉の外に出た。

「おい、キジマ!大丈夫か!?」

飛び出して来たカケル達を見たキジマは、笑って答える。

「おう、二人ともおはよう。なーに、アポ無しでご訪問頂いた盗賊のお二方に、ちょっと俺のモットーを伝えてただけだ。」

キジマの前には、背の高い男と対照的に背の低い男の二人組が、苛ついた表情で立っていた。

「モットーだとォ!?んな事より、ここの家にある物を寄越しな!!食料も、水もだ!!」

「なぁ、兄貴!見ろよ!女も居るぜ!!」

背の低い方の男は出て来たリンカを指差し、卑しい笑みを浮かべる。

「おおう、いいもん持ってんじゃねーか!!こいつぁ、楽しみが増えそうだな!!」

男達の視線に、リンカは蔑みの目を向けた。

「私は慰み者になどなるつもりは無い!!」

思わずディスクを構えそうになったリンカに、キジマは手を翳しストップを掛けた。

「まぁ、待ってくれ。ったく、俺みたいに家を持ってる奴はこういう事があるから面倒だよなぁ・・・。」

キジマは一歩前に出る。そして、自身の左腕に填めているディスクを展開した。

「いい機会だ。嬢さんに俺の実力を見て貰おうじゃねぇか。」

「・・・私は嬢さんでは無く、リンカだ。」

その訂正に、キジマは笑う。

「そうか、そうだったな。よし、リンカ。新しい仲間が役に立つのかどうか、その目で確かめてくれ。」

盗賊の男達はゲラゲラと嘲笑する。

「おいおい!兄貴に勝てるとでも思ってんのか?今まで何人の家持ちを潰して来たと思ってる!!?」

「ふん!馬鹿な男だぜ!!この俺様に潰されるだけだってのによ!!」

キジマは鋭く言い放つ。

「いいから構えろ。負けたら、家でも何でもくれてやるから。」

「ふはは!!野郎、その言葉・・・後悔すんなよ!!」

背の高い方の男はディスクを構え、キジマと対峙した。リンカはカケルに訊ねる。

「カケル、キジマは強いのか?」

それを聞き、カケルは少し考えてから答えた。

「そうだな・・・キレたら、すごい、かな。」

カケルの言葉に疑問を浮かべながらも、リンカはキジマの背中を見つめた。そして、両者は叫ぶ。



『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』



先に動いたのは盗賊の男だった。

「先攻は俺のもんだ!!魔法カード《古のルール》を発動!!手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚するぜ!!」

男の場に魔法カードが表示される。

「来い!!《牛鬼(☆6/闇/悪魔/2150・1950)》!!」

突然、男の場に壷が出現する。その中より、牛の頭を持った悪魔が煙のように浮かび上がった。

「へぇ、わざわざステータスの低い通常モンスターを特殊召喚ってことは、何かあるな?」

キジマの言葉に男は笑う。

「ふん、さっそく見せてやろう!この俺の切り札をな!俺は、たった今召喚した《牛鬼》をリリースし、このモンスターを召喚する!!」

牛の悪魔は壷の中へと戻り、怪しく輝き始める。

「さぁ来い!!手札より、《大牛鬼(☆8/闇/悪魔/2600・2100)》を特殊召喚だぁ!!!」

光と共に壷が砕けると、牛の悪魔は蜘蛛の下半身を持った新たな姿で男の前に現れた。

「出たぜ!!兄貴のエースモンスターだ!!」

そのモンスターを見たキジマは、興味深そうに口を開く。

「なるほど、そいつを呼ぶ為の《牛鬼》だった訳か。」

「そう!!《大牛鬼》は自分フィールドの《牛鬼》をリリースして手札から特殊召喚できる!!てめぇにこいつが倒せるかぁ!!?」

牛の悪魔は鼻を鳴らし、キジマを見下ろす。男はさらに手札のカードを取り出した。

「まだだぜ!!永続魔法、《魔族結界ーデモンズ・バリアー》を発動!!このカードが存在する限り、自分フィールドの特殊召喚された悪魔族モンスターは相手の効果、及び戦闘では破壊されない!!」

男の場を邪悪な結界が包み込む。

「そして、カードを1枚セットしてターンエンドだ!!」

残る最後の手札を伏せた男は、ほくそ笑んだ。

「(ふっふっふ・・・今俺が伏せたカードは《聖なるバリア ーミラー・フォースー》!!例え、《大牛鬼》を超える攻撃力を持ったモンスターでダメージを狙おうとも、こいつでおじゃんだぜ!!こっちの守りは完璧なんだよ!!)」


男の視線を見たキジマは、その思惑を察して思う。

「(よほど自分の布陣に自信があるっぽいな。果たして、どう切り崩して行くか。)俺のターン!ドロー!」

引いたカードを確認し、キジマは笑う。

「・・・なるほど。じゃあ、このターンで決めますかね!!」

それを聞いた男は嘲る。

「てめぇ、馬鹿か!?この俺様の場を見て、良くそんな事が言えたもんだな!!」

なだめるようにキジマは言う。

「まぁまぁ、盗賊さんよ。いいから見てなって!俺は手札からチューナーモンスター《D=M(ディプライブ=マンティス)ー追葬のウルミ(☆2/地/昆虫/チューナー/800・800)》を召喚!!」

キジマの場に、鋭い鎌を備えた女型のカマキリモンスターが出現する。

「さらに!自分フィールドに昆虫族・地属性モンスターが存在する場合、《D=Mー連斬のスレイヴ(☆4/地/昆虫/1700・1700)》は手札から特殊召喚できる!」

新たなカマキリ型モンスターが素早く両腕を振りながら、仲間の隣に並んだ。

「行くぜ!!俺はレベル4の《D=Mー連斬のスレイヴ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」

羽を広げ飛び上がったカマキリ型モンスターを、光の輪となった仲間が包む。


「勇猛なる捕食者よ!孤高の剣を手に、地上の覇者となれ!!シンクロ召喚!!切り裂け、レベル6《D=Mーリポスト・ダガー(☆6/地/昆虫/シンクロ/2300・2300)》!!」


溢れ出した光を突き抜け、孤高の捕食者はその剣を輝かせた。

「シンクロ召喚・・・まるで、ユーガだな。」

リンカがぽつりと呟く。

「へっ、勢いよくシンクロ召喚して来ても、その攻撃力じゃ俺の《大牛鬼》は超えられねぇ!!」

男の言葉に、キジマは、チッチッと指を振る。

「まだまだ、こんなんじゃ終わらねぇぜ。こっからが本番だ!」

そして、キジマは新たなカードを取り出した。

「攻撃力の一番高いモンスターが相手フィールドに存在する場合、《D=Mー放胆のパタ(☆1/地/昆虫/300・300)》は手札から特殊召喚できる!」

人間と昆虫の中間といった容姿の少女が、元気よくフィールドに飛び出す。

「そして、墓地の《D=Mー追葬のウルミ》の効果発動!自分フィールドにチューナー以外の「D=M」が存在する場合、1000ライフ払う事でこのモンスターは手札・墓地から特殊召喚できる!!(LP4000→3000)」

墓地より復活した女型のカマキリは再び、キジマの元に足を付けた。

「この効果で特殊召喚した《D=Mー追葬のウルミ》は場を離れる時、除外される。俺は《D=Mー放胆のパタ》の効果を発動!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体を選択し、そのモンスターのレベル分、自身のレベルを上げる事ができる!俺はレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》を選択!これにより、《D=Mー放胆のパタ》のレベルは2つ上がる!(☆1→☆3)」

そして、キジマは得意げに叫んだ。

「もう一回だ!レベル3となった《D=Mー放胆のパタ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」

再び、光の輪がキジマの眼前に輝く。


「迅速なる捕食者よ!刹那の刃を振るい、怒濤の連撃を繰り出せ!!シンクロ召喚!!裁ち斬れ、レベル5《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ(☆5/地/昆虫/シンクロ/チューナー/2100・2100)》!!」


右腕の刃と左腕の鉤爪を振るい、新たな捕食者が姿を現した。

「れ、連続シンクロだと!!調子に乗りやがって!!」

男はキジマの連続展開を見て、苛立ちを覚える。キジマはお構いなしに言葉を続けた。

「この瞬間、シンクロ素材となった《D=Mー放胆のパタ》の効果発動!このカードを素材にシンクロ召喚したモンスターの攻撃力は、500アップする!!(ATK2100→2600)」

背の低い方の男は焦るように言う。

「こ、これで兄貴のモンスターと攻撃力が並んじまった!!相打ちされちまうぜ!?」

男は、後ろを振り向き声を荒げる。

「おい、よく見ろ弟よ!俺の場には戦闘破壊を防ぐ《魔族結界ーデモンズ・バリアー》が発動している!!相打ちなら不可能って話だ!!次のターンこっちから攻撃して、消し去ってやるまでよ!!」

「あっ、そ、そっか!!さすが兄貴だぜ!!」

そのやりとりを見ていたキジマは呆れたように呟く。

「・・・だから、このターンで終わらせるっての。俺は速攻魔法《ハンターズ・リミテッドリバイブ》を発動!!」

不敵に笑い、キジマは言い放った。

「いいか、よく聞け盗賊ども!!先に言っておくぞ!!この魔法カードはライフを半分払って発動するカードだ!そして、このカードを発動したターンのエンドフェイズ、自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを自分は受ける事になる!!」

その言葉に男達は声を上げる。

「はいぃい!!?な、なんだそれ!!・・・兄貴、どういうこと!?」

「馬鹿か、弟よ!!奴のライフは3000!半分になったら、1500!!そして、奴のフィールドで最も攻撃力の高いモンスターは2600!!つまり、2600のダメージを受けてジ・エンドって訳だ!!血迷ったなぁ、家持ち野郎!!」

笑う男達。キジマは思わず溜め息を付く。

「はぁ、よくそんなんで生き残ったな・・・。終わらせるって聞こえなかったのか?《ハンターズ・リミテッドリバイブ》の効果発動だ!(LP3000→1500)」

魔法が表示されると同時に、キジマの墓地が光る。

「このカードは自分の墓地、及び除外されているカードの中から、チューナーとそれ以外の「D=M」を1体ずつ特殊召喚する!!戻って来い、《D=Mー連斬のスレイヴ》《D=Mー追葬のウルミ》!!」

2体の昆虫はそれぞれ、墓地と次元の狭間より帰還した。

「その後、自分フィールドの「D=M」を素材にシンクロ召喚を行う!!俺はレベル6の《D=Mーリポスト・ダガー》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!!」

孤高の捕食者はその羽を羽ばたかせ、一気に飛び上がった。そして、それを追いかけるように光の輪となった仲間が囲む。


「豪壮なる捕食者よ!その鮮麗たる霜剣を振りかざし、抗う全てを喰らい尽くせ!!!シンクロ召喚!!!」


閃光を突き破り、捕食者は誕生の雄叫びを上げる。


「君臨せよ!!レベル8、《D=Mーギガテクス・バルムンク(☆8/地/昆虫/シンクロ/3000・3000)》!!!」


伝説の魔剣の名を持つ捕食者は、無数の脚で大地を踏み砕き、その体躯を誇示した。

「こ、攻撃力3000!!」

流石の男も、その姿に身震いする。

「俺は《D=Mーギガテクス・バルムンク》の効果を発動!!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体をリリースする事で、墓地の昆虫族モンスターを特殊召喚できる!!俺は、《D=Mー連斬のスレイヴ》をリリース!!」

強大なる捕食者は、連斬の刃を持つ仲間を掴み上げると、叫喚と共に粉々に握り潰した。

「そして、墓地より蘇れ!!《D=Mーリポスト・ダガー》!!!」

両腕の剣を振るい、孤高の捕食者は復活を遂げる。男は焦りを見せつつも叫んだ。

「へっ、そんなにモンスターを並べた所で、俺の《大牛鬼》は《魔族結界ーデモンズ・バリアー》の効果により破壊されない!!(それに、伏せた罠カードだってあるしな!!)どうやっても、このターンでの決着は不可能だ!!」

「それはどうかな!!魔法カード《シンクロ・E・ドレイン》を発動!!」

さらにカードを発動したキジマ。

「このカードは自分フィールドの同じ種族・属性のシンクロモンスター2体を対象として発動できる!!ターン終了時まで片方の効果を無効にし、その後、もう片方のモンスターに無効化した効果を与える!!俺は《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》の効果を無効にし、代わりにその効果を《D=Mーギガテクス・バルムンク》に与える!!そして、このカードの発動後、効果を与えられたモンスター以外のモンスターは攻撃できない!!」

不敵な笑みで、キジマは言った。

「《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》は1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。よって、その効果を得た《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、2回の攻撃が可能となったぜ!!さらに、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果も発動だ!!1ターンに1度、相手モンスター1体を守備表示にできる!!」

その言葉を受け、孤高の捕食者は腕の剣を飛ばした。その切先は牛の悪魔に突き刺さり、地に膝を付かせた。

「わざわざ守備表示にするだと!?一体なんだ!?何を考えている!!?」

困惑する男をキジマは指差す。

「さぁ待たせたな!!フィニッシュの時間だ!!俺の家と、食い物と、仲間を奪おうとした罪!!思う存分悔いてもらうぞ!!!」

その姿を見たカケルが言葉を漏らした。

「あー・・・ありゃキレてんな、キジマ。」

「そ、そうなのか?」

リンカの疑問にカケルは無言で頷いた。

「バトルだ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》で《大牛鬼》を攻撃!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》は守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が超えた分だけ貫通ダメージを与える!!」

捕食者は怒号と共に走り出した。男はキジマの狙いをようやく理解し、声を荒げる。

「ちっ、そう言う事か!!だが、甘ぇぜ!!俺はリバースカード・・・」

しかし。キジマはそれを遮り叫ぶ。

「無駄だ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》が相手モンスターと戦闘を行う時、そのバトルが終わるまで、相手はカードの効果を発動できない!!」

「なんだと!!?」

そして、捕食者はその腕の巨大な刃を振りかざした。


「『マキシマム・オーバーロード』!!!」


叩き潰すような捕食者の一撃が、牛の悪魔を襲う。結界の力により破壊は免れるも、衝撃の余波が男に降り注いだ。

「ぐぅううう!!!(LP4000→1000)」

なんとか耐えきり、男は安堵する。しかし、直後に自身のライフポイントを見て怪訝な顔をした。

「な、何故だ!?何故、こんなにライフポイントが減っている!?《大牛鬼》の守備力は2100、だったら900のダメージじゃねぇのか!?」

男は自分フィールドのモンスターのステータスを見て、困惑した。

「守備力、0だとぉ!!?何故だ!!てめぇ、一体何をした!?」

キジマは笑って答える。

「攻撃の瞬間、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果が発動していたのさ。《D=Mーリポスト・ダガー》は、自分フィールドの「D=M」が相手の守備表示モンスターと戦闘を行う場合、相手の守備力を0にする・・・!!」

「な、なんだそれは!!」

ニヤリ顔でキジマは言葉を付け足した。

「おっと、忘れんなよ?《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、もう1回攻撃できるんだぜ?」

「あ!!」

捕食者はもう一方の腕を振りかざした。牛の悪魔は冷や汗を垂らし、それを見上げる。

「チェックメイトだ。もう二度と来んなよ、盗賊共が。」


耳を劈く咆哮を上げ、捕食者は刃を振り下ろした。


「ば、馬鹿なぁぁぁあああぁぁ!!!(LP1000→0)」



衝撃と爆風に男達は吹き飛ばされた。


『勝者:キジマ・ナオト』



「あ、兄貴!!大丈夫か!!」

背の低い男は、倒れ込んだ男に駆け寄る。

「くっ、弟よ!こいつは相当ヤバい奴だ!!逃げるぞ!!」

直ぐさま立ち上がった男は、相方を連れ一目散に逃げ出した。

その後ろ姿を見ながらキジマは溜め息を付く。

「ったく、こんな世の中で盗賊なんかやりやがって。もっと、助け合って生きろっての。」

リンカは一歩前に出るとキジマに声を掛けた。

「キジマ、お前の実力見せて貰った。どうやら、心強い仲間ができたようだな。」

「そうかい?いやぁ、こう可愛い娘に褒められると中々嬉しいもんだな。」

その時、家の扉が開き、マーナが頬を膨らませて出て来た。

「ナオト兄ちゃん!!」

キジマは笑って言う。

「はっはっは!冗談だよ、冗談!そう怒んなって!」

笑い声の中、カケルが思いついたように口を開く。

「あっ!そうだ、さっきの奴らになんか聞とけばよかった!もしかしたら、マサカー関連の情報を持ってたかも・・・!」

それを聞いたキジマはハッとして、ジェットバイクの方へと走った。

「カケル、ナイス!ちょっくら追いかけて来るわ!!」

エンジンを入れ、ジェットバイクは急発進した。吐き出された黒い煙が辺りの空中を汚す。

「けほっ、けほっ。ひどいな・・・。」

リンカのぼやきに、マーナが呆れたように言う。

「全く、ナオト兄ちゃん、あのポンコツ捨ててって言っても、全然聞かないんだよ!『まだまだ乗れる!!』って!」

「ぽ、ポンコツって・・・マーナちゃん辛辣・・・。」

カケルは思わず苦笑いをした。



数分後、キジマは相変わらず黒い煙を吐くジェットバイクに乗ったまま、こちらへと戻って来た。

「で、どうだった?」

詰め寄るカケルにキジマは笑う。

「いやぁ、なんか良さそうな情報持ってたぜ、奴ら。」

「本当か!?それはなんだ!」

逸るカケルとリンカに、キジマは告げる。

「奴ら曰く、『ペンデュラム召喚らしき戦法を使うデュエリストを、「赤の教会」で見た』だってよ。」

「赤の教会?どこだ、それ。」

疑問を浮かべたカケルに、キジマは一枚の紙切れを差し出した。

「これを奴らに書いて貰った。単純な地図っつーか、まぁほとんど方角だけだな。ここから西南のずっと奥って書いてあるぜ。」

「ならば、早速!」

そのままの身で歩き出そうとしたリンカの肩を、キジマが掴んで止める。

「まぁ、待てって。これから旅に出るって事だろ。色々、準備しなくちゃな。」

「マーナも行く!」

飛び付いてきたマーナを、キジマは優しく撫でた。

「もちろんだ。マーナを一人置いて行く訳ないだろ?いざという時は、俺達が守ってやる。」

「私だって、もう戦えるもん!」

二人から太陽へと視線を移したカケルは、その輝きに目を細め、一人呟いた。

「・・・新たな出発か。待ってろよ、ユーガ。必ず、助けるから。」





次回 第13話「邪悪な賢者」
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ター坊
キジマさん、やりますな。
オリカ投稿のD=Mを実際に回すとこんな感じになるのか。
さて、次回はとんでもないボスキャラの予感が。 (2016-02-24 10:38)
ほーがん
ター坊さんコメントありがとうございます。
D=Mはどこかで使わせたいなーと思っていたので、いい機会でした。戦闘特化だけあってワンキル率高めかもしれませんね。
次回は、教会、そして祭壇とあって、ようやくあの人物が顔を出す・・・かもしれません。
(2016-02-24 14:28)

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