HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王 Hedgehog Flowers > 第9話 「帝王」の影

遊戯王 Hedgehog Flowers/第9話 「帝王」の影 作:白金 将

― ― ― ― ― ― ―
葵  8000
女  6000
― ― ― ― ― ― ―


 葵の場には何もなく、手札は3枚。相手側のフィールドには〈終焉の王デミス〉1体で、相手の手札は4枚だ。犬と猫のマークがついた作業着を着た女は、手札を見て奇怪な笑みを浮かべる。

「私は、墓地の昆虫族モンスター2体を除外し、手札から〈デビルドーザー〉を特殊召喚!」
「デビルドーザー……お前のデッキは【デミスドーザー】か!?」

 葵が気づいた時にはもう遅い。相手フィールドに大型の多足の昆虫が現れる。遊乃が猫を抱きかかえたまま丸くなってしまった。


― ― ― ― ― ― ―
デビルドーザー

効果モンスター
星8/地属性/昆虫族/攻2800/守2600
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の昆虫族モンスター2体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。
― ― ― ― ― ― ―


「更に手札から〈巨大化〉を発動! 〈デビルドーザー〉に装備し、攻撃力を倍の5600にする!」
「攻撃力の合計は8000……」
「バトルフェイズ! 〈デビルドーザー〉でダイレクトアタック!」

 巨大化した不気味な昆虫が葵に襲い掛かる。見た目のせいか、これには流石の葵も小さな悲鳴を上げてしまった。攻撃が終わった後には葵の目に涙が浮かんでいる。


― ― ― ― ― ― ―
葵  8000 → 2400
女  6000
― ― ― ― ― ― ―


「更に〈終焉の王デミス〉でダイレクトアタック! これで終わりなさい!」
「まだぁ……まだぁぁぁぁ!」

 デミスが杖をかざす。どす黒い光が葵目がけて一直線に飛び、周囲にソリッドビジョンの爆風が吹き荒れた。遊乃は呆然としてしまっていた。

「……葵ちゃん?」

 黒煙の中から返事はない。

「葵ちゃん!」
「これで……これで終わり……さあ、猫ちゃん、私たちと一緒に……」

 遊乃の顔から血の色が抜ける。抱えていた猫も震えだす。だが、女性は様子がおかしいことに気付いた。デュエルが終わるとソリッドビジョンは解除されるはずなのに、彼女の前のデミスとデビルドーザーは消えていないのだ。

「なにが起きたの……?」
「あーすっげぇ痛かったなぁ」

 煙が晴れると、そこには片膝をついた葵の姿があった。葵の前にはアイテールの幻のような物があった。

「何故!? 何故ライフが0にならない!?」
「墓地の〈帝王の烈旋〉を除外して墓地から〈真源の帝王〉を発動していたんだよ」


― ― ― ― ― ― ―
葵 2400
女 6000
― ― ― ― ― ― ―


― ― ― ― ― ― ―
真源の帝王

永続罠
「真源の帝王」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):1ターンに1度、自分の墓地の「帝王」魔法・罠カード2枚を対象として発動できる。そのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。
(2):このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の「帝王」魔法・罠カード1枚を除外して発動できる。このカードは通常モンスター(天使族・光・星5・攻1000/守2400)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する(罠カードとして扱わない)。
― ― ― ― ― ― ―


「さて、お前のターンはここで終わりか?」
「……2枚伏せてターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」

 葵は4枚の手札を見た後、きっと相手の女性の方を睨みつけた。女の周りに立っていた人らが半歩程後ずさるのが見えた。葵の目の色が明らかに変わっていたのだ。

「相手の魔法&罠ゾーンにカードが2枚以上あるため、私は手札から〈氷帝家臣エッシャー〉を特殊召喚する! さらに、手札から〈帝王の開岩〉を発動!」
「手札から特殊召喚ですって……」
「まだ終わりじゃない! 私はフィールド上の〈真源の帝王〉〈氷帝家臣エッシャー〉をリリース!」

 葵の場に現れた新たなモンスター。それは氷の気を操る誇り高き帝王。

「絶対の冷気司りし帝王よ、今ここに降臨し、道塞ぐ者全てを凍りつかせん! アドバンス召喚! 現れろ、レベル8、〈凍氷帝メビウス〉!」



― ― ― ― ― ― ―
氷帝家臣エッシャー

効果モンスター
星4/水属性/水族/攻 800/守1000
(1):相手の魔法&罠ゾーンにカードが2枚以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
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凍氷帝メビウス

効果モンスター
星8/水属性/水族/攻2800/守1000
このカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。このカードがアドバンス召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを3枚まで選択して破壊できる。このカードが水属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、その時の効果に以下の効果を加える。●この効果の発動に対して相手は選択されたカードを発動できない。
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帝王の開岩

永続魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。また、自分がアドバンス召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。「帝王の開岩」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
●アドバンス召喚したモンスターとカード名が異なる攻撃力2400/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。
●アドバンス召喚したモンスターとカード名が異なる攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。
― ― ― ― ― ― ―



「〈凍氷帝メビウス〉の効果を発動! 相手フィールド上の伏せ2枚を破壊する!」

 メビウスは両腕に冷気を溜め、それを一筋の光のように放出する。相手の伏せていたカードが氷漬けにされた後、粉々に砕け散ってしまった。葵の独壇場は続く。

「更に、〈帝王の開岩〉の効果発動! 私はデッキから2枚目の〈天帝アイテール〉を手札に加える! そして、墓地の〈冥帝従騎エイドス〉の効果発動! 墓地のエイドスを除外し、墓地から〈天帝従騎イデア〉を特殊召喚する! イデアの効果でデッキから2体目の〈冥帝従騎エイドス〉を特殊召喚!」
「この動き……まさか……」

 相手の女性たちが青ざめる。葵は意に介さぬ様子で続ける。遊乃は猫を抱えながら、葵の圧倒的なデュエルを陰から見守っていた。遊乃の頭にあるのは、葵がどう勝つかという事だけでなく、これに自分が対峙した時どう対応しようかと言う事もあった。

「特殊召喚されたエイドスの効果で、このターンはもう一度だけアドバンス召喚が可能! 私は〈天帝従騎イデア〉と〈冥帝従騎エイドス〉をリリースして手札から〈天帝アイテール〉をアドバンス召喚! アイテールの効果で〈汎神の帝王〉〈帝王の開岩〉を墓地へ送り、デッキから〈冥帝エレボス〉を特殊召喚!」

 4枚の手札と1枚のカードから動き、葵の場には最上級帝3体が並んだ。葵はそこで更に駄目押しをする。残りの手札は1枚だ。

「私は墓地から〈汎神の帝王〉を発動!」

 そう言って葵が選んだ3枚は〈帝王の深怨〉3枚だ。手札の攻撃力2400・守備力1000モンスター、または攻撃力2800・守備力1000モンスターを見せることでデッキから好きな「帝王」魔法・罠を引っ張ってくることが出来るサーチカードだ。
 相手に選択の余地などない。葵は手札に加えた〈帝王の深怨〉を発動し、手札の〈光帝クライス〉を見せた後、デッキから2枚目の〈真帝王領域〉を手札に加えた。

「手札から〈真帝王領域〉を発動し、バトルフェイズ! 私は〈凍氷帝メビウス〉で〈デビルドーザー〉に攻撃!」
「〈巨大化〉のデメリット効果で〈デビルドーザー〉の攻撃力は半分……そんな……」

 巨大化は相手ライフより自分のライフが低い時に攻撃力が2倍になるが、逆に自分が高ければ攻撃力が半減してしまう。更に。

「この時、〈真帝王領域〉の効果により、相手モンスターに攻撃するダメージ計算時、アドバンス召喚したモンスターの攻撃力は800アップする!」
「葵ちゃん、凄い……」

 〈デビルドーザー〉の現在の攻撃力は1400。対してメビウスは3600だ。



― ― ― ― ― ― ―
真帝王領域

フィールド魔法
(1):自分のエクストラデッキにカードが存在せず、自分フィールドにのみアドバンス召喚したモンスターが存在する場合、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。
(2):自分のアドバンス召喚したモンスターの攻撃力は、相手モンスターに攻撃するダメージ計算時のみ800アップする。
(3):1ターンに1度、自分メインフェイズにこの効果を発動できる。自分の手札の攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体を選び、そのモンスターのレベルをターン終了時まで2つ下げる。
― ― ― ― ― ― ―


― ― ― ― ― ― ―
葵  2400
女  6000 → 3800
― ― ― ― ― ― ―


「続けて〈天帝アイテール〉で〈終焉の王デミス〉を攻撃!」
「ぐっ……」


― ― ― ― ― ― ―
葵  2400
女  3800 → 2600
― ― ― ― ― ― ―


「お前は……お前はまさか……」
「帝王だ、帝王だ……」

 何やら口々に言い始める女たち。葵は軽く舌打ちをした。

「これで最後だ! 〈冥帝エレボス〉でダイレクトアタック!」
「ぎにゃああああぁぁぁぁ!」


― ― ― ― ― ― ―
葵  2400
女  2600 → 0
― ― ― ― ― ― ―



 勝負がついた後、女は血眼になった葵の事を睨んでくる。そして、何を思ったのか、デュエルで負けているにもかかわらず、葵に向かって殴りかかろうとしてきた。

「葵ちゃん!」
「デュエルで負けて殴りかかるか……本当に救いようがねぇな」

 葵は女の握りこぶしを上から握り返して止める。そして、少し力を入れると、逆に女の方が苦痛の声を上げ始めた。後ろから男たちが加勢しようとするが、葵が女の腹に蹴りを入れると、男たち二人は飛ばされた女に倒されて動けなくなる。

「……遊乃。覚えておけ。世の中にはどうしようもない奴がいる」
「葵ちゃん……」
「私はこういう奴らを何度も何度も相手にして戦ってきた」

 遊乃は葵の過去と言う物を知らなかった。先ほど葵の事を「帝王」と呼んだ彼らは今地面に伸びてしまっている。それを見つめる葵は少し沈んでいるようにも見えた。

「いつか話すよ。いつかな」

 葵の背負っている物が何なのかは分からなかったが、それが酷く重い物だと言う事は遊乃でも何となくわかった。言葉が出ない遊乃は抱えている猫の頭をそっと撫でる。
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光芒
やはり強化後の帝デッキは格が違いましたね。
それでいてデュエルのみならずリアルファイトにおいても男2人を含む3人を圧倒する葵の強さと来たら……相手の怪しい団体が口を揃えて「帝王」と呼びたくなるのも頷けます。(葵の場合は「帝王」というより「女帝」かもしれませんが)
そんな葵の過去には一体何があったのか……遊乃に対して告げるその様は何処か哀愁を感じます。


>「いつか話すよ、いつかな」

しかしこの手の台詞からは嫌な予感しかしない(ZEXAL感) (2016-02-19 01:27)
ハカラメ
俺の知ってる帝じゃない・・・(失神
凍氷帝は字レアにしてはとんでもない性能してますよね。バック3枚破壊の強さはXセイバー全盛期の頃のヒュンレイで嫌というほど味わったからなぁ...
これが字レアだなんて・・・あ、爆炎帝さんは座ってて、どうぞ。

遊乃「葵ちゃん、葵ちゃんは一体・・・!」
葵「いずれわかるさ。・・・いずれな」

ZEXAL...真ゲス...うっ頭がry (2016-02-19 09:02)
白金 将
<< 光芒 さん
葵さんはまたいろいろあった人ですのであんな感じになっております。
まだ物語も始まったばかりなのでのんびりとお待ちくださいな(`・ω・´)
ZEXAL……さあ、知らない子ですね(すっとぼけ (2016-02-19 18:48)
白金 将
<<ハカラメ さん
凍氷帝のチェーン不能効果は帝の中でも強力な効果を持っていますからな。
なんでや! 爆炎帝さんは先行で使える数少ない帝やないか!()

なんかZEXALでトラウマ抱えてる人がいるみたいですね
真ゲスの闇は深い……(´・ω・`) (2016-02-19 18:53)
陽炎獣love勢
デミスドーザーの時代の人からすると「 墓地からトラップだとぅ!?」って言いたくなりますわ(´・ω・`)そう言えば領域って攻撃力上昇の効果があったんですね。使ってない故に知らなかった (2016-02-21 18:39)
白金 将
<<陽炎獣love勢 さん
ワンキルいけたかと思ったら突然飛んできますからな(`・ω・´)
領域の攻撃力上昇効果は意外と忘れ去られやすいのです。
エクストラ封じの効果があまりにも強すぎてねぇ (2016-02-21 20:15)

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