第3話 勝負はいつも裏表　作：イベリコ豚丼

「俺はリーガリアンの神子を召喚！」

リーガリアンの神子　☆３　ATK 1400

「リーガリアンの神子の召喚に成功した時、手札からリーガリアンの使徒を守備表示で特殊召喚する！」

リーガリアンの使徒　☆３　DEF 2000

「俺はリーガリアンの使徒の効果を発動！このモンスターが特殊召喚に成功した時、デッキから「王格」と名の付く魔法・罠カードを手札に加える！」

剛田のデッキは戦士族テーマの『リーガリアン』。
見た目通りパワータイプのデッキを使うらしい。

「手札に加えた王格の波動をリーガリアンの神子に装備！」

王格の波動　装備魔法

「王格の波動を装備したモンスターの攻撃力は800ポイントアップし、ディグニファイロードモンスターとしても扱う！」

リーガリアンの神子　ATK 2200
(装備 王格の波動)

「さらに！フィールド上にディグニファイロードと名の付くモンスターが存在する時、このモンスターを特殊召喚できる！行け！リーガリアンの懐刀！」

リーガリアンの懐刀　☆６　ATK 2200

「凄ぇ！いきなり３体のモンスターを並べちまった！」
「しかもその内２体は攻撃力2200！さすが剛田さん、痺れるぜ！」
「先攻は最初のターン攻撃出来ない。俺はこれでターンエンドだ！」

一応グループの頭をやっているだけあって、それなりに腕はあるようだ。
さぁ宗介、どう返す？

「………。」
………？
あいつさっきから一体何を考えてるんだ？

「どうした宗介、怖じけづいたか！？てめぇのターンだ！さっさとドローしやがれ！」
「…解ってるよ。僕のターン、ドロー！僕は賢妖精ザントナレッジを召喚！」

賢妖精ザントナレッジ　☆４　ATK 1800

「そして、手札から魔法カード賢妖精贈札を発動！」

賢妖精贈札　通常魔法

「手札の賢妖精グレムナレッジ、賢妖精ナレッジピクスをデッキの一番上に戻し、デッキから３枚ドローする！」

宗介の使うデッキ、『賢妖精』はドローに関する効果を軸としたテーマだ。だからこうしてドローすることで…

「この瞬間、フィールドのザントナレッジの効果を発動！自分がカードの効果でドローした時、エンドフェイズまでこのモンスターの攻撃力は500ポイントアップする！」

賢妖精ザントナレッジ　ATK 2300

「カードの効果によってドローされた事で、手札からグレムナレッジとナレッジピクスを特殊召喚！」

賢妖精グレムナレッジ　☆６　ATK 1700

賢妖精ナレッジピクス　☆２　ATK 600

「た、多田野の奴も３体のモンスターを並べやがった！」
「だ、だがパワーが違うぜ！たかだか攻撃力1700と600のモンスターじゃあ剛田さんの布陣を崩せねぇ！」
「自身の効果で特殊召喚されたグレムナレッジの効果を発動！フィールド上のカードを１枚選択し、破壊する！僕が選ぶのはリーガリアンの使徒！」
「ちっ…！」
「バトル！グレムナレッジでリーガリアンの神子を攻撃！」

賢妖精グレムナレッジ　ATK 1700　　　VS　　　リーガリアンの神子　ATK 2200

「馬鹿め！数比べもできねぇのか！？リーガリアンの神子の攻撃力は2200！てめぇの貧弱なモンスターじゃあ勝てねぇんだよ！」
「ナレッジピクスの効果発動！」
「何！？」
「フィールド上のこのモンスターを手札に戻すことで、賢妖精モンスター１体の攻撃力を600ポイントアップさせる！これでグレムナレッジの攻撃力は2300！リーガリアンの神子を上回った！」

賢妖精グレムナレッジ　ATK 2300　　　VS　　　リーガリアンの神子　ATK 2200

「くっ…！」
「続けて、ザントナレッジでリーガリアンの懐刀を攻撃！」

賢妖精ザントナレッジ　ATK 2300　　　VS　　　リーガリアンの懐刀　ATK 2200

「ぐっ…！」
「僕はカードを１枚伏せてターンエンド」

SOUSUKE LP 4000
―――ＶＳ―――
LP 3800 TAKEO

「よしっ！」
思った通りだ。
宗介はデュエルの腕は悪くない。だが経験の少なさからデッキの構築は上手くなかった。ちゃんと良いデッキを使えばこんな風にしっかり渡り合える。

「調子に乗るんじゃねぇぞ！俺のターン、ドロー！手札からリーガリアンの剣士を召喚！！」

リーガリアンの剣士　☆４　ATK 1900

「俺は魔法カード、王格の目覚めを発動！フィールド上のリーガリアンの剣士を、ディグニファイロードモンスターへと変更するぜ！」

王格の目覚め　通常魔法

「まだ終わらねぇ！魔法カード、王格の鼓舞を発動！フィールド上のリーガリアン、またはディグニファイロードモンスターを選択し、そのモンスターのレベルを１つ上げ、さらに攻撃力を500ポイントアップする！！」

王格の鼓舞　通常魔法

リーガリアンの剣士　ATK2400

「王格の鼓舞のさらなる効果！フィールド上にディグニファイロードがいる時、デッキからカードを１枚ドロー！！」
「「出た！剛田さんのマジックコンボだ！！」」
「俺はリーガリアンの剣士でザントナレッジに攻撃！」

リーガリアンの剣士　ATK 2400　　　VS　　　賢妖精ザントナレッジ　ATK 1800

「罠発動！賢妖精守護輪！」

賢妖精守護輪　通常罠

「相手が賢妖精モンスターを攻撃した時、その攻撃を無効にして破壊する！」
「てめぇの思い通りにさせるかよ！！速攻魔法、王格の献身発動！！」
「えっ！？」

王格の献身　速攻魔法

「フィールド上のディグニファイロードモンスターをリリースし、デッキから２枚ドローする！」
上手い。
これで宗介の罠は対象を失い不発になった。
「俺はカードを２枚伏せ、ターンエンド！！」
だがこれで剛田のフィールドはがら空きだ。
「僕のターン。僕はナレッジピクスを通常召喚！」

賢妖精ナレッジピクス　ATK 600

「カードを１枚伏せて、グレムナレッジでダイレクトアタック！」

賢妖精グレムナレッジ　ATK 1700

「ま、まずい！多田野のモンスターの攻撃力の合計は4100！」
「これが通ったら負けちまう！」
「永続罠、王格の再興を発動！」

王格の再興　永続罠

「墓地からリーガリアンモンスターを特殊召喚する！帰って来い、リーガリアンの剣士！」

リーガリアンの剣士　ATK 1900

「やった！リーガリアンの剣士の攻撃力は1900！多田野のモンスターじゃ越えられないぜ！」
「ならもう一度ナレッジピクスを手札に戻して効果発動！グレムナレッジの攻撃力を600ポイントアップする！」

賢妖精グレムナレッジ　ATK 2300　　　VS　　　リーガリアンの剣士　ATK 1900

「甘ぇ！いいか！？お前が出来る事は全部俺にもできることなんだよ！罠発動！！王格の閃き！！」

王格の閃き　通常罠

「リーガリアンモンスターへの攻撃を無効にし、破壊する！」
「そんな…！」
「さらに！攻撃対象となったリーガリアンの剣士をディグニファイロードへと変更！思い知ったか！所詮お前は俺の劣化版でしかねぇんだよ！」
「……僕はこれでターンエンド」
「俺のタァァァン！！」
剛田がドローしたカードを確認する。
「…おい宗介、これで解っただろ。お前じゃ俺に勝てない。諦めてさっさとサレンダーしな」
「……嫌だ。武雄君は知ってるでしょ、僕は絶対サレンダーはしない」
その言葉には、普段の宗介からは考えられない力強さが含まれていた。
「そうかよ。じゃあお前にしてはよく頑張ったが、もう終わりだ」
「………！」
「俺はチューナーモンスター、リーガリアンの占術士を召喚！！」
「「「！！！」」」

リーガリアンの占術士　☆２　　　チューナー　　　ATK 500

「剛田さんがチューナーモンスターを出したってことは…」
「まさか久しぶりにアレが見られるのか！？」

「レベル４、リーガリアンの剣士に、レベル２、リーガリアンの占術士をチューニング！」
２体のモンスターが１つとなって光の道を作り上げる。
「勝利を唄う兵士の咆哮、目覚めたるは栄光の王者！シンクロ召喚！唸れ、ディグニファイロード・グローリア！！」
『ウォォォ!!!』

ディグニファイロード・グローリア　☆６　　　ATK 2500

「出たーー！！剛田さんのシンクロ召喚！！」
「くーーっ！やっぱり何度見てもカッコイイぜ！！」
「どうだ宗介ェ！これが強さだ！てめぇじゃ一生かかっても敵わねぇ真の強者だ！！」

『ディグニファイロード・グローリア』
確かにその猛々しい姿は強者と呼ぶに相応しいだろう。
だが宗介は、
「…ふ、ふふふ、あははっ」
「何笑ってやがる！」
「あ、ごめん、そんなつもりはなかったんだ。…でも嬉しくって」
「嬉しいだと？」
「うん。だって何年ぶりだろうね、こうやって武雄君と全力でデュエルするの」
「！？」
「僕解ってたんだよ、いつからか武雄君が僕に本気を出さなくなったこと。僕に怪我をさせないように最小限の力で戦ってたこと。武雄君、見た目は厳ついけど本当は優しいから」
剛田の目を見据えて、宗介は言葉を続ける。
「でもそれじゃあ駄目なんだ。手加減してる武雄君に勝ったって何の意味も無いんだ。負けたっていい。僕は本気の武雄君と、本気のデュエルをしたかったんだよ」

だからあの時あんな事を言ったのだろう。
怒り狂わないと本気にならないから、本気でぶつかり合いたかったから。
勝ち負けよりも大切なものがあったから――。

「………黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ！！」
だが通じない。
どんな言葉も、届かなければ通じない。
「知ったような口利くんじゃねぇ！解ってただと！？てめぇは何も解っちゃいねぇ！俺の事も、今の戦況も！！」
そう言い放ち、剛田はデュエルディスクを構え直す。「バトルだ！ディグニファイロード・グローリアでザントナレッジを攻撃！」

ディグニファイロード・グローリア　ATK 2500　　　VS　　　賢妖精ザントナレッジ　ATK 1800

「手札の賢妖精ナレッジワーフと賢妖精ウィルナレッジを墓地へ送り、速攻魔法、賢妖精秘術を発動！」

賢妖精秘術　速攻魔法

「ディグニファイロード・グローリアをデッキへと戻し、カードを１枚ドローする！」
「効かねぇよ！ディグニファイロード・グローリアの効果発動！墓地のリーガリアンの懐刀を除外し、賢妖精秘術の効果を無効にして破壊する！！」
「うっ！」
「まだ終わらねぇぞ！ディグニファイロード・グローリアが効果を発動した時、除外したモンスターのレベルｘ300のダメージを相手に与える！！」
「何だって！？」
「リーガリアンの懐刀のレベルは６！よってお前には1800のダメージを受けて貰うぜ！！」
「……っ！！」

SOUSUKE LP 2200
―――ＶＳ―――
LP 3800 TAKEO

「でもカードの効果でドローしたことにより、ザントナレッジの攻撃力は500ポイントアップ！」

賢妖精ザントナレッジ　ATK 2300

「さぁ再勝負だ！ディグニファイロード・グローリアでザントナレッジに攻撃！」

ディグニファイロード・グローリア　ATK 2500　　　VS　　　賢妖精ザントナレッジ　ATK 2300

「痛っ…！」

SOUSUKE LP 2000
―――ＶＳ―――
LP 3800 TAKEO

「これで俺はターンエンド！！さぁ宗介！この最強の牙城、崩せるもんなら崩してみな！！」
「ははは…、やっぱり武雄君は凄いや…。じゃあ、次は僕が全力で答える番だね。」
そう言って宗介はデッキに指を添える。
「僕の、ターン！！！」
恐らくこのターンで勝負が決まるだろう。ディグニファイロード・グローリアをどうにか出来なければ、宗介は―――負ける。
「………！僕は賢妖精ナレッジフィードを召喚！」

賢妖精ナレッジフィード　☆３　ATK 1400

「ナレッジフィードの召喚に成功した時、デッキのアルフナレッジをデッキの一番上に置く！」
「デッキ操作…！」
「そして、さっき墓地に送ったナレッジワーフの効果を発動！このカードと、手札のナレッジピクスを除外することで、デッキからカードを１枚ドローする！！」
「だがナレッジフィードの効果により…」
「当然ドローするのは賢妖精アルフナレッジ！カードの効果でドローされたことにより、アルフナレッジを特殊召喚！！」

賢妖精アルフナレッジ　☆６　ATK 1200

「自身の効果での特殊召喚に成功したことで、アルフナレッジの効果発動！墓地の賢妖精モンスター１体を効果を無効にして特殊召喚する！蘇れ、グレムナレッジ！！」

賢妖精グレムナレッジ　ATK 1700

「同じレベルのモンスターが２体……まさか！！」

「僕はレベル６のアルフナレッジとグレムナレッジでオーバーレイネットワークを構築！！」
見せてやれ宗介、お前の１週間の努力を！
「聡明なる精霊よ！聖なる光へと昇華し、輝く一陣の風となれ！エクシーズ召喚！吹き抜けろ！賢妖精アルベナレッジ！！」

賢妖精アルベナレッジ　★６　ATK 2600　ORU ２

「多田野が…」
「エクシーズ召喚！？」
「ちぃっ！妙な自信の正体はこれだったか！」
「さらに！フィールド上のナレッジフィードをデッキの一番上に戻すことで、墓地からウィルナレッジを特殊召喚する！」

賢妖精ウィルナレッジ　☆８　ATK 2500

「攻撃力…2500！？」
「行け、アルベナレッジ！ディグニファイロード・グローリアに攻撃！！」

賢妖精アルベナレッジ　ATK 2600　　　VS　　　ディグニファイロード・グローリア　ATK 2500

「ぐぅっ！！」

SOUSUKE LP 2000
―――ＶＳ―――
LP 3700 TAKEO

「だがこの瞬間、ディグニファイロード・グローリアの効果が発動される！」
「まだ効果が…！」
「このモンスターが破壊され墓地へ送られた時、墓地からリーガリアンと名の付くモンスターを特殊召喚する！三度現れろ、リーガリアンの剣士！！」

リーガリアンの剣士　DEF 500

「たかだかエクシーズ召喚を覚えたぐらいで俺に勝てると思ったか！次のターンでそのモンスターも木っ端みじんにしてやるぜ！！」
「――いや、次のターンは来ないよ」
「何！？」
「アルベナレッジの効果発動！１ターンに１度、このモンスターのオーバーレイユニットを１つ取り除くことで、デッキからカードを１枚ドローする！僕がドローしたのは、さっきデッキに戻したナレッジフィード！」

賢妖精アルベナレッジ　ORU １

「だがそれがどうした！ドローじゃ俺は…」
「さらに！この効果でドローしたカードがモンスターカードだった時、相手フィールドのモンスター１体を手札に戻す！！」
「何だと！？」
「僕はリーガリアンの剣士を手札に戻す！」
「だが俺のライフは3700！ウィルナレッジの攻撃じゃあ……はっ！！」
「そう、カードの効果でドローされたことにより、ナレッジフィードは特殊召喚できる！！」

賢妖精ナレッジフィード　ATK 1400

「クソがァァァぁぁぁ！！！」
「賢妖精一斉攻撃！！」

SOUSUKE LP 2000
―――ＶＳ―――
LP 0 TAKEO

『WIN!　SOUSUKE TADANO』

ARビジョンが解除される。
「ご、剛田さんが負けた…！？」
「ありえねぇ…！」
「よぉし！よくやった宗介！頑張ったな！」
俺は宗介に走り寄った。
「はい！鶴岐さんのおかげです！」
「いやいや、お前の力だよ！もっと自信持て！」
「そうでしょうか！？でも嬉しいなぁ…！」
「お、おい多田野てめぇイカサマしやがったな！？そうじゃねぇと剛田さんがお前何かに負けるか！！」
「大方、その清掃員が何かしたんだろ！？」
取り巻き二人が宗介を詰問する。
宗介がイカサマしただと？
「おいお前ら…」
「やめろてめぇら！！」
「「剛田さん！」」
「みっともねぇことしてんな！」
「でも…」
「でもじゃねぇ！……宗介、約束だったからな。今週は俺達がお前のパシリだ」
そういえばそうだった。
あまりに白熱したデュエルに、そんなことはすっかり忘れていた。
「いやそれはいいよ」
「「「！！？」」」
「僕は武雄君と本気のデュエルが出来ただけで満足だし、それに人を使うっていうのは性に合わないしね」駄目だ、その対応は不味い！！
「ほっ……」
「多田野が良い奴で助かったぜ…」
取り巻きが安堵の表情を浮かべた瞬間、
「ふざけんじゃねぇぇぇ！！！」
剛田が吠えた。
「デュエルで負けておいてペナルティ無しだと！？同情してんじゃねぇ！てめぇに情け掛けられる程俺は落ちぶれちゃいないんだよ！！」
やっぱりだ。
勝った側が約束を反古にするのは優しさじゃない、敗者のプライドを踏みにじるだけの愚行だ。それだけはやっちゃいけない。
怒りに任せて、剛田は宗介に掴み掛かる。
「さぁ俺に命令しろ！買い出しだろうが靴みがきだろうが何だってやってやる！だからさっさと命令しろぉぉぉ！！」
「何やってんすか剛田さん！」
「剛田さん、落ち着いて下さい！」
取り巻きが必死に止めに入り、何とか宗介から引きはがす。
「放せ！こんなままで終われるか！命令だ、命令しろ！宗介ェェェ！！！」
放課後の校舎に、剛田の悲痛な叫び声が響き渡る―――。










「畜生…！畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生！！！」
宗介ごときが俺を見下しやがって！！俺には命令する価値も無いってのか！？
「舐めてんじゃねぇぞド畜生がぁぁぁ！！」
「―――どうやら相当気に入らない事があったみたいだね」
「！！？」
誰だ？
いったいいつから後ろにいた！？
「そんな風にフラストレーションを溜め込むのは良くないよ。適度に発散させないと」
振り返……る前に既にそいつは目の前に立っていた。真っ黒なフードを目深に被り、ニヤニヤした不快な笑みを浮かべている。
「何者だてめぇ…？」
「僕かい？そうだなぁ……。魔法使い、とでも名乗っておこうかな？」
魔法使いだと？
ふざけやがって。
「今俺は無茶苦茶イラついてんだ。くだらねぇことぬかしやがったらぶっ飛ばすぞ！」
「その怒りだよ。僕はその負の感情に惹かれて君に会いに来たんだよ」
何だ？コイツは何を言っている？
『気に入らないんだろう？むしゃくしゃするんだろう？なら復讐するんだ、君をそんな風にした奴に』
復、讐…。
『それでもまだ足りないなら、周りの全てを破壊すればいい。その為の力は僕が貸してあげよう』
そう言ってそいつはカードを差し出す。そのカードの色は、真っ黒だった。エクシーズモンスターよりもさらに黒く。まるで吸い込まれるかの様な―――漆黒。
「あ、あああ…」
『さぁ目覚めさせろ、君の中の闇を。そして世界を終焉に導くんだ―――』
「あ亜阿ア吾ア唖ァァァ！！！」


いつの間にかそいつはいなくなっていたが―――もうそんな事はどうでもいい。