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HOME > 遊戯王SS一覧 > 02:デッド・オア・アライブ

02:デッド・オア・アライブ 作:ほーがん

第2話「デッド・オア・アライブ」




「恐怖の爪を携えし魔物よ!遥かなる太古より、その力を呼び覚ませ!!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!!《超強化恐竜(ハイパーディノパワード)ナイトメアエッジ・テリジノン(★4/闇/恐竜/エクシーズ/3000・1500)》!!!

溢れる閃光の中から、両腕に鋭利な鉤爪を備えた恐獣が姿を現す。ユーガはそのモンスターを目を細くして見つめる。

「(攻撃力3000か・・・。)」

女は叫ぶ。

「これで・・・貴様も終わりだ・・!!私は《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》の効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、このカードはこのターン、相手フィールドのモンスターの数だけ攻撃回数を増やす!!」

鉤爪の恐獣は自身の周りを回る光の球を吸収し、その力を解放した。

「貴様のフィールドのモンスターは2体!!よって《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》は通常攻撃と合わせて、3回の攻撃が可能!!行けぇ!!『デッドリィ・ダイノエッジ』!!」

猛進する恐獣。その狙う先は《アライブナイト・ウェイス》だ。

「俺は《アライブナイト・ヴェルナンド》の効果発動。自分フィールドの他の「アライブナイト」が攻撃を受けた時、その攻撃対象を自身に変更する。」

ユーガの騎士達の立ち位置が入れ替わる。だが女は構わずに恐獣へと命令する。

「だからどうした!!貴様のモンスターの攻撃力は2400!私のモンスターの攻撃力は3000!!そのまま切り裂け!!」

白銀の騎士は仲間を守るように前に出ると、その鉤爪の一撃を受けた。

「・・・(LP3700→3100)」

目を閉じ静かにダメージを受けるユーガ。しかし、女の進撃はまだ止まらない。

「私にはあと2回の攻撃が残っている!!もう一度行け、《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》!!」

恐獣はその巨大な爪を振りかざす。だが、それと同時にユーガの墓地のカードが光った。

「俺は墓地の永続罠《ダミーナイト》の効果発動。自分フィールドのモンスターが戦士族1体のみの場合、このカードを除外することで、1度だけ相手の攻撃を無効にできる。」

その刹那《アライブナイト・ウェイス》の前に、再び幻影の騎士が現れ恐獣の爪を受け流す。

「悪あがきを・・・!!だが、私にはまだ1回の攻撃が残っているぞ!!今度こそ切り裂け、《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》!!」

まるで女と怒りを共有しているかのように、恐獣は咆哮を上げる。攻撃の瞬間、女は叫んだ。

「この時、オーバーレイ・ユニットとなっている《強化恐竜ホイール・メガロ》の効果発動!!このカードをエクシーズ素材としたモンスターがレベル4以下のモンスターとバトルする時、その相手モンスターの攻撃力を0にする!!」

「何。」

白銀の騎士はその力を失い、ユーガの場に膝を付いた。(ATK1700→0)

「『デッドリィ・ダイノエッジ』!!」

ついに振り下ろされる鉤爪。騎士の甲冑は砕け、その衝撃にユーガの身体は吹き飛ばされた。

「・・・(LP3100→100)」

床のタイルに叩き付けられ、仰向けになったユーガ。その視界に、朽ちた天井の隙間から月明かりが差し込む。

「どうした!!サレンダーするならば、命だけは取らないでやらんこともない!!」

女の言葉に、ユーガはゆっくりと立ち上がる。

「・・・で、終わりか。」

その呟きに女は困惑する。ユーガは言葉を続けた。

「ターンエンドかと聞いている。」

怪訝な顔で女は言う。

「残り100のライフポイントで何ができる!それだけじゃない!お前の場はがら空き、対して私の場には攻撃力3000のモンスター!どう考えても貴様に勝ち目は無い!!」

よほど自分のモンスターに自信があるのか。そう思ったユーガは小さく溜め息を付くと、口を開く。

「そういう事は、俺のターンが終わってから言ってもらおうか。」

気に入らない、といった顔で女はぶっきらぼうに言い放つ。

「けっ、減らず口を・・・。ターンエンドだ。」


ユーガは肩についた埃を軽く払うと、デッキに手を伸ばした。

「俺のターン、ドロー。」

引いたカードを確認するユーガ。そしてそれを見た瞬間、小さく笑う。

「来たか。・・・俺はチューナーモンスター《アライブナイト・エリー(☆3/光/戦士/チューナー/1000・1000)》を召喚。」

ユーガの場に短剣を持った幼い女騎士が現れる。

「チューナーだと・・・!だが、お前のフィールドに他のモンスターは居ない!!シンクロ召喚が狙いなら、それは不可能という話だ!!」

そんな女の言葉に、ユーガは透かさず言い返す。

「他のモンスターなら、”ここ”にいる・・・。」

ユーガの墓地が眩く光る。そう、これこそが《アライブナイト・エリー》の能力。

「《アライブナイト・エリー》の召喚に成功した時、墓地からレベル4以下の「アライブナイト」を特殊召喚できる。蘇れ、《アライブナイト・ウェイス》。」

少女の騎士は、短剣を投げると場に穴を開けた。そして、その穴から仲間の騎士がつり上げられ、復活する。

「一体何が来る・・・!!」

ユーガの場に揃った2体の騎士。そしてユーガは言い放った。


「俺はレベル4の《アライブナイト・ウェイス》にレベル3の《アライブナイト・エリー》をチューニング・・・!」


少女の騎士は3つの光の輪となり、仲間の身を包んで行く。


「眩き光の甲冑よ!鋼の闘志をその身に宿し、闇を断ち切る星となれ!!シンクロ召喚!!」


煌然たる光の中から、その戦士はついに現れる。


「輝け!!《アライブナイト・ジャックス・レイ(☆7/光/戦士/シンクロ/2500・2000)》!!」


光の刃携えし白銀の戦士。その輝きは宵闇を照らし、勝利への道を切り開く。

「なっ、なんだ、このモンスターは・・・!!」

その溢れる光に、女は思わず目を瞑る。

「これが、俺の信頼する切り札だ。」

再び目を見開いた女は、そのモンスターを見て言う。

「だが、攻撃力は2500!!私の《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》の3000には及ばない!!」

しかし。ユーガは不敵に答える。

「それは、どうかな。」

「何!?」

怪訝な顔をする女。ユーガは言った。

「《アライブナイト・ジャックス・レイ》の効果発動。自分のライフポイントが1000以下の場合、4000から今のライフポイントを引いた数値分、その攻撃力がアップする。」

その言葉に女はたじろぐ。

「なっ・・・!!」

ユーガはディスクに表示されている自分のライフポイントを見せつける。

「俺のライフポイントは100。よって4000−100で、《アライブナイト・ジャックス・レイ》の攻撃力は3900アップする・・・!!(ATK2500→6400)」

その手に握る剣に力を溜め、白銀の騎士はより一層輝きを増した。それを見た女は驚愕の表情を浮かべる。

「こ、攻撃力、6400だと!!!」

「お前が俺のライフを限界まで削ってくれたおかげだ。感謝する。」

ユーガの皮肉に、女は拳を振るわし睨む。

「バトルだ・・・!《アライブナイト・ジャックス・レイ》で《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》に攻撃・・・!!」

騎士はその光の剣を振りかざし、飛び出した。


「その輝きで明日への道を照らせ!!『閃爍のシャイニングスライサー』!!!」


眩き一撃は恐獣の爪を砕き、建物内を閃光で満たした。


「ううっ・・・あああっ!!!(LP3400→0)」



『勝者:ユーガ』


やがて光は収まり、女は膝を折って倒れた。ユーガは急いで近づく。

「おい、大丈・・・」

言いかけた所で、女がユーガの足を掴む。そしてかすかに絞り出した声で言った。

「・・・・った。」

聞き取れなかったユーガは訊ねる。

「なんだ。何が言いたい。」

その瞬間、女は顔を上げて叫ぶ。

「腹減った!!!」

二人以外誰も居ないこの空間で、女の魂の叫びは天井まで響いた。

「もう・・・5日間・・・何も・・・食べてない・・・死ぬ・・・。」

必死の訴えに、ユーガは溜め息を付いた。

「・・・とりあえず足を放せ。」

ユーガの言葉に女は唸るように言う。

「放したら・・・逃げるだろ・・・。」

その女の目を見たユーガは、脳裏に焼き付いた光景を思い出す。・・・飢餓という悪夢にうなされた幼き日々を。そして、しゃがみ込み女と目線を合わせ、言った。

「・・・逃げない、約束する。肩を貸すから、座れる場所まで移動するぞ。」

睨みつけてくる女。しかし、その手はゆっくりとユーガの足から離れた。

「・・・」

ユーガは女の上体を起こすと、肩を貸し、建物内のベンチまで運んだ。

バックパックを下し、その中身から保存食のパックを取り出す。ユーガはそれを女に渡した。

「・・・ちゃんと持ってるじゃないか。貴様嘘をついたな。」

女の言葉にユーガは言い返す。

「正直に言ったら、あの場で殺していただろう。」

その言葉に女はバツ悪そうに言う。

「も、貰ってもいいんだな。」

「そう言っている。早く受け取れ。」

ユーガの手に握られていたそれを、女は奪うように受け取ると、思い切り噛み付こうとした。しかし、その手をユーガが掴み止める。

「何をする、もうこれは返さんぞ。」

飢えた獣のような目の女に、ユーガは静かに忠告した。

「長い間食事をしていない人間が、いきなり大量に食べると死ぬぞ。まずは飲み物と一緒に少しずつかじって食べて行け。」

そういって、ユーガはお湯の入ったカップを手渡す。女はそのカップを受け取ると、言われた通りに食事を始めた。
意外と素直だな、と思ったユーガはバックパックの蓋を閉じると、女の横に座った。

「・・・改めて聞くが、お前はここで暮らしているのか。」

ユーガの問いに、女は口を開く。

「お前じゃない。私はリンカという。」

その訂正に応じて、ユーガも名乗る。

「・・・ユーガだ。」

その女、リンカは改めて問いに答える。

「私は1週間ほど前にここに来た。それまでは色々な街を転々として暮らしていた。最初ここを見つけた時、食料や水があるのでは無いかと期待を寄せたが、ほとんど荒らされた後だった。それでも、雨風を凌げるここは他よりマシだったがな。」

ユーガは呟く。

「なるほど、俺と似たようなものか。」

リンカは訊ねた。

「貴様・・・ユーガは一体何をしている。何しにここへ来た。」

ユーガは言う。

「俺は旅をしている。ここに寄ったのは、まぁリンカと同じような理由だ。」

「旅?」

疑問を浮かべたリンカに、ユーガは本題に入る事にした。

「俺はかつて村で暮らしていた。村と言っても、瓦礫の中で集団生活しているだけだったが。それでも、互いが互いを尊重し合い、色々なものを分け合って暮らしていた。だが・・・。」

おぞましい記憶。ユーガは目を瞑って話し始める。

「ある時、マサカーと名乗る集団が強襲を仕掛けて来た。そいつらは何か食料や物を奪うのではなく、ただ無差別に人を襲い続けた。その圧倒的な力の差に俺達は成す術もなく倒され、命を奪われた。」

リンカは食事の手を止めて、ユーガの話を聞き込んだ。

「大人も子どもも皆、マサカーの力の前に敗れた。そして、俺は一人生き残った・・・。」

「マサカーの目的は分からない。俺は村の最後の生き残りとして皆の敵討ちと同時に、奴らが一体何を企んでいるのか、どうして人々を襲うのか、それを突き止めなければならない。」

段々とユーガの表情が険しくなってゆく。

「だが、マサカーの力は強大だ。俺一人では到底勝てる相手ではない。だから俺は旅をする事にした。」

ユーガはリンカの方へ向いた。

「共に戦ってくれる仲間を探すために。」

保存食を食べ終えたリンカはユーガに言い放つ。

「それで、私に仲間になれと?ユーガ、貴様の復讐の片棒を担げという事か。しかも相手は謎のテロ集団と来た。」

「・・・無理強いはしない。だが、ようやくマサカーではない人間と会う事ができた。俺はこの出会いに何か意味があると感じている。」

リンカは立ち上がる。

「・・・一つ条件がある。」

その言葉にユーガは訊ねる。

「なんだ。」

真剣な眼差しでリンカは告げる。

「私を食事で困らせないと誓え。そうすれば力になってやらんこともない。」

思ったよりも現実的な条件にユーガは拍子抜けする。しかし、それはユーガにとって悪くない条件だった。村を出る時、ありったけの保存食は持って来ている。二人くらいなら数ヶ月は持つだろう。

「・・・わかった。約束しよう。」

「決まりだな。」

リンカは手を差し出す。少し困惑したが、ユーガはその手を握り返した。

「ありがとう、リンカ。」

感謝の言葉に、リンカは鼻を鳴らす。

「ふん、マサカーだか何だか知らないが、この私の恐竜が叩き潰してくれる!!行くぞ、ユーガ!!」

なぜか先陣を切るリンカの後をユーガは付いて歩く。こうして旅は新たなメンバーを迎え、月明かりの下に再開した。






ユーガとリンカの居た建物の屋上。出発した二人の様子を見つめる人物が居た。

「へぇ、あれが村の生き残りか。」

その人物は、手元の端末に表示された写真を見て確認する。

「”デッド・オア・アライブ”・・・。生死を問わず、ねぇ。んじゃまぁ、一丁稼ぎますか・・・!」



次回 第3話「賞金稼ぎ(バウンティハンター)・カケル」
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ター坊
状況を選ぶものの、一撃必殺の威力が上がったジャックス。逆境からの逆転は初戦らしく華々しい。
そして新しく仲間になったリンカとの旅はどうなるのか?相変わらず読み応えがあります。 (2016-01-27 13:32)
ギガプラント
やっぱりポンコツっぽい!でも可愛いから許す!
一話で仲間が増えるってのはなんかアニメっぽくていいですね。 (2016-01-27 19:38)
ほーがん
コメントありがとうございます。
>ター坊さん
書いてて気づいたんですけど、なんか某セルゲイに似てますね・・・。ダメージもピッタリに出来たので個人的にも満足してます。
お褒め頂きありがとうございます。まだまだ旅は続きますのでお楽しみに。
>ギガプラントさん
強キャラは仲間になるとポンコツになるジンクス。可愛く感じて頂けたなら幸いです。
アニメみたいな熱い展開は文章力の問題で難しいかもしれませんが、精一杯書きますので、よろしくお願いします。 (2016-01-28 16:11)

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