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HOME > 遊戯王SS一覧 > 01:生き残った戦士

01:生き残った戦士 作:ほーがん

第1話「生き残った戦士」



凹凸の鉄の中、ユーガは歩いた。人の気配など全く感じられない。それどころか自分以外の生き物など居ないのではないか、そう思えるほど辺りは静まり返っている。

夜の静寂の中、自分の足音だけが聞こえる。旅の途中、この街ーーいや、街だったと言った方が適切かーーに寄った。
何か食料となるものや、生活に必要な品々を探し求めて。そして、あわよくば他の人間に会えるのではないかと、かすかな希望を持って。

「無駄足だったか。」

焦燥と落胆を覚える。どこの街も同じだ。破壊された後。

その時の事は断片的にしか覚えていない。それは幼かったからか、あるいはショックで脳が記憶を消してしまったのか。
ともかく、凄まじい何かに襲われた事は思い出せた。

それよりも記憶に新しいのは、”マサカー”と名乗った集団の存在。生き残った人々を次々に襲い、その命を奪っていった。

なんとか身を晦ませ逃げて来た。それでもきっと、奴らは追って来るに違いない。だから早く生き残りを探さないといけない、共に戦ってくれる者を。それなのに。

その時。目の前に見えた建物に、ユーガは足を止めた。この街の残骸の中でまだ形を保っている建造物があるとは。その外観から察するに、かつて大規模な商業施設だったのだろう。
もしかしたら、食料や水が残っているかもしれない。そして、それがあるならば生活している人間も。

ユーガは惹かれるように、その建物へ侵入した。


「・・・・」


床のタイルが足音を捉え、コツコツと響く。割れた窓ガラスに、荒らされた店舗の跡。どうやら、同じ考えの人間がすでにかっさらって行った後のようだった。人の気配は無く、そこにあるのは外と変わらない夜の闇。

淡い期待を裏切られた。そう思ったユーガは来た道を戻ろうと振り向いた。


しかし。その時。

「・・・!!」

気づいた時には、後ろから伸びた腕が首元にナイフを突きつけていた。静寂の中、ユーガは思わず息を止める。

「持っている食料と水、カードデッキを置いて行け。」

背後から響いた声。女の声だ。ユーガは両手を上げる。

「・・・持っていたら、ここには入らないと思うが。」

ユーガは言葉を紡いだ。女は言う。

「少なくとも、その腕に付いているデュエルディスクは置いて行けるだろう。」

ゆっくりと視線を自分の首元に落としたユーガ。よく見れば、そのナイフは刃がボロボロに欠け、錆び付き、とても何かを切断できそうに無い。ましてや人の首など、どう考えても不可能だ。

「わかった。だが、このままじゃデュエルディスクは外せない。一旦動いてもいいか。」

その要望に、女は声を強くして答える。

「いや、動くな。私が外す。」

女の気がデュエルディスクに向いた。”今だ”

その瞬間、ユーガは左手でナイフの刃を掴んだ。

「なっ・・・!!」

残る右手でナイフを握った女の手首に手刀を落とす。その衝撃で手から離れたそれを、ユーガは窓の外へ放り投げた。

「貴様!!」

すかさず、振り返ったユーガは後方に跳ぶと女と距離を取る。

「ここで生活しているのか?」

ユーガの問いに、女は声を荒げた。

「答える必要などない!!死にたくなければ、持ち物を置いて行け!!」

その言葉に、ユーガは皮肉混じりに返す。

「置いて行ったら、それはそれで死ぬ事になると思うが。」

何かに焦っているのだろうか。女は苛立ちを抑えきれないというように、デュエルディスクを展開した。

「くっ、力づくでも奪い取ってやる・・・!!!」

その様子にユーガは思う。

「(チャンスかもしれない。その技量によっては仲間にできるか・・・。)」

ユーガもそれに合わせてディスクを構えた。



『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』


先にユーガが動く。

「先攻は貰う。俺のターン。俺は手札から魔法カード《増援》を発動。デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える。」

マジックの効果により、デッキから1枚のカードが迫り出す。

「俺はこの効果により、《アライブナイト・ウェイス(☆4/光/戦士/1700・1300)》を手札に加え、召喚。」

白銀の甲冑に身を包んだ騎士が場に出現する。

「カードを2枚セットして、ターンエンドだ。」


女はデッキに手を伸ばし、勢い良くカードを引いた。

「私のターン、ドロー!!私は手札から《強化恐竜(ディノパワード)トキシック・ヴェロキ(☆4/闇/恐竜/1800・1400)》を召喚!」

毒の爪と牙を持った肉食獣が女の場で産声を上げる。

「《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体につき300のダメージを相手に与える!!」

肉食獣は毒液を飛ばし、ユーガにダメージを負わせた。

「・・・(LP4000→3700)」

掛かった毒液を無言で払うユーガ。女は変わらず荒い声のままで叫んだ。

「バトルだ!!《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》で《アライブナイト・ウェイス》を攻撃!!」

その命令に走り出す肉食獣。しかし、それと同時にユーガの場で伏せられていたカードが開く。

「永続罠発動、《ダミーナイト》。このカードは自分の戦士族モンスターが攻撃を受けた時、レベル1攻守0のモンスターとして守備表示で特殊召喚される。」

幻影のような騎士が肉食獣の前に立ち憚る。

「このターン、相手は《ダミーナイト》以外のモンスターに攻撃できず、《ダミーナイト》は戦闘で破壊されない。」

女は苦虫を噛み潰したような顔をする。怒りに震える手でカードをディスクに叩き付けた。

「私はカードを1枚セットしてターンエンド・・・!!」


ターンが回る。ユーガはデッキに手を伸ばした。

「俺のターン、ドロー。」

引いたカードを確認し、そのカードをディスクに置いた。

「俺は《ダミーナイト》をリリース。アドバンス召喚、《アライブナイト・ヴェルナンド(☆6/光/戦士/2400・1600)》。」

眩い光と共に、新たな騎士が光臨した。

「バトル、《アライブナイト・ヴェルナンド》で《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》に攻撃。」

その手に持ったエスパダ・ロペラを構え、騎士は飛び出した。

「嘗めるな!!!リバースカードオープン、罠カード《ジュラシック・アウェイク》!!このカードは発動ターンのみ、自分フィールドの恐竜族モンスター全ての攻撃力を3000にする!!(ATK1800→3000)これで返り討ちだ!!」

女の怒号と共に罠が発動する。覚醒した肉食獣は、咆哮上げその力を極限まで高める。

しかし、ユーガは落ち着き払った声で言う。

「無駄だ。カウンター罠《アンチエフェクト・アライブ》発動。このカードは自分フィールドに「アライブナイト」が居る場合、相手の発動した魔法・罠カードを無効にし破壊する。」

「なんだと!!」

ユーガの罠カードから発せられた閃光が、女のカードを砕く。覚醒の力を失った肉食獣の前に、騎士の剣がかざされる。その剣先は肉食獣の身体を貫いた。

「くっ・・・!!(LP4000→3400)」

畳み掛けるようにユーガは言い放つ。

「《アライブナイト・ヴェルナンド》の効果発動。このカードが相手モンスターを戦闘破壊した時、もう1度だけ続けて攻撃できる。行け、《アライブナイト・ヴェルナンド》。」

その言葉に女は焦る。

「(これでダメージを受ければ、その次の攻撃で・・・させるか!!!)」

手札のカードを取り出した女は叫んだ。

「私は手札から《強化恐竜アーマード・アンキロ(☆4/闇/恐竜/500・2100)》の効果を発動!!相手モンスターの直接攻撃を無効にし、このカードを守備表示で特殊召喚する!!」

女の場に鋼鉄の鎧を纏った恐竜が出現し、騎士の動きが止まる。

「(守備力2100・・・。ウェイスでは越えられないか。)俺はこれでターンエンド。」

荒い息を吐きつつ、女は言う。

「この瞬間、破壊された《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》の効果発動!このカードが破壊されたターンのエンドフェイズに、デッキから「強化恐竜」1体を特殊召喚する!私は《強化恐竜バーナー・イグアノドン(☆4/闇/恐竜/1600・1100)》を特殊召喚!!」

火炎放射器を背負った草食恐竜が、鼻を鳴らし出現する。そしてターンは回り、女はカードを引いた。

「私のターン・・・!!はぁっ・・・はぁっ・・・!奪ってやる・・・奪って・・・!!私は手札から《強化恐竜ホイール・メガロ(☆4/闇/恐竜/1100・1100)》を召喚・・・!!」

両足が巨大な車輪に改造された肉食恐竜が、咆哮と共に現れる。

「これで、私の場にレベル4のモンスターが3体揃った・・・!!」

女の言葉にユーガは察する。

「(なるほど。それがこいつの基本戦術というわけか。)」

そして、女は自分のモンスターを指差し叫んだ。

「私はレベル4の《強化恐竜アーマード・アンキロ》《強化恐竜バーナー・イグアノドン》《強化恐竜ホイール・メガロ》でオーバーレイ!!!」

夜の月光の下。眩い光に建物内が照らされる。その光の中へ3体の恐竜は飛び込んだ。


「恐怖の爪を携えし魔物よ!遥かなる太古より、その力を呼び覚ませ!!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!!《超強化恐竜(ハイパーディノパワード)ナイトメアエッジ・テリジノン(★4/闇/恐竜/エクシーズ/3000・1500)》!!!」


女の荒い吐息が闇の中で白く濁る。その殺意に満ちた鋭い眼光を見て、ユーガは確信する。

「(こいつなら・・・共に戦える。)」



次回第2話「デッド・オア・アライブ」
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ギガプラント
あっれ~ウェイスってどっかで聞いたことあるぞ~?(すっとぼけ)
初戦でATK3000!これぞ遊戯王ですねぇ。 (2016-01-26 19:11)
ター坊
恐竜使いの女性…やはりデジャヴ感がありますね。コイツなら戦えると確信するユーガと女性は分かり合えるのか? (2016-01-26 20:52)
ほーがん
コメントありがとうございます。
>ギガプラントさん
確かにどっかで聞いた事ありますね(すっとぼけ)
やはり、遊戯王の1話で対攻撃力3000は欠かせませんよね。

>ター坊さん
恐竜使いの女性、果たして名前まで同じなのか!?(ネタバレ)
戦いの結末は次回に持ち越しです! (2016-01-27 10:08)

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