DRAW:１３ 二人を繋ぐ未来からの死者　作：人喰い

ーーー貴方も１人？

ーーーはい。

ーーーそう。お揃いね。

ーーーあなたはだれですか？

ーーー私は…『闇口 千愛(やみぐち ちあ)』って名前の時もあったわね。そういう貴方は？

ーーー私は……私の名前は………ーーー






遊戯王 Ph.X DRAW:１３
《二人を繋ぐ未来からの死者》






ー黒髭中学・B棟２階〜３階踊り場ー

火群「このデュエルで俺が勝ったら、和泉から出ていってもらうぜ！」

ニクス「火群…！」

Dチア『……リン♫ 身の程知らずね……』

スッ。

和泉に憑依したダークフェアリーチアガールが左腕を上げると、周囲の塵がデータ化したような物質が宙を渦巻き始め、それらが、高く上げられた和泉の左腕に集まり、デュエルディスクらしき形状に組み上げられる。

Dチア『……リン♫』

火群「………へぇ、カッコいいじゃん」

ニクス「そんなこと言ってる場合か！
火群、我々もやるぞ！」

火群「え……っ？ よし、こうか…！？」

俺の左隣に立つニクスが右腕を上げたのを見て俺は、上げられた右腕と合わさるように左腕を上げる。


ニクス「デュエルディスク、セット！」

火群「イン！」


ゴォオオォオ！

叫ぶと、俺とニクスの上げられた腕を激しい炎が渦巻き始め、俺の左腕に真紅の輝きを放つデュエルディスクを生成していく。

火群「うおぉおおお……！」

腕が、燃えるように熱い。
いや、実際燃えているのだが。

火群「…つい一緒になって叫んじゃったけど、やっぱカッコいいな……こういうの」

俺は熱さに耐えながらも思った事を口に出す。

ニクス「馬鹿者め。そういうことは口に出さんでもいい」


Dチア『…リン♫ それじゃあ、始めましょうか……！ 闇のゲームを…っ！！』


闇の、ゲームだと……？


「「『デュエルスタンバイ！！』」」

火群【LP 4000】手札:５枚
Dチア【LP 4000】手札:５枚


「「『デュエル！！』」」


火群「先攻後攻はコイントスで決めさせてもらうぜ…！」

Dチア『リン♫ 面白い、いいだろう。表が市瀬火群、裏が私の先攻だな』

ニクス「こんなこともあろうかとデュエルディスクにコイントス機能を用意しておいた。上層部カバーの青いボタンを押せばコインが勢いよく発射される」

火群「……これだな。いくぜ…！」

俺はデュエルディスクを装着した左腕を天井に向け構え、発射ボタンを押した。


火群「コイン…シュート！」


ヒュンっ！
カッ！

ニクスの言った通り、デュエルディスクの上層部カバーの青いボタンを押すと、デッキホルダーの少し上にある、ガチャポンのコイン投入口のようなコイン１枚分の隙間からコインが勢いよく飛び出し、若干脆くなった天井に斜めに浅くめり込む。
そして音を立て落下する。

チャリーン！


コイン《表》


火群「コインは表！ 俺の先攻、ドロー！」

◉TURN:１◉

火群【手札:６枚】

火群「俺は、ダンディライオンを守備表示で召喚！」

ダンディライオン「がる…！」
『ダンディライオン』[守 300]

火群「カードを１枚伏せ、ターンエンドだ」

市瀬火群【LP 4000】
場:『ダンディライオン』[守 300]
伏せ:１枚/手札:４枚

◉TURN:２◉

Dチア『リン♫ まずは様子見といったところか……精霊会も舐められたものだな…。私のターン…
、ドロー！』

チアガールが言うと、デッキの１番上のカードがディスクからゆっくりと引き出され、宙にとどまり、ディスクを装備した左腕でそのカードを手に取る。

Dチア【手札:６枚】

火群「精霊会……前回の終わりでも言ってたけど、一体それって何なんだよ！？」

ニクス「……『精霊会』…。『精霊王』に認められた精霊デュエリストの精鋭たちの総称だ」

火群「精霊の王様に認められたデュエリスト……！」

Dチア『リン♫ 貴方のような一般人が勝てる相手ではない……ってことよ』

火群「そんなこと、やってみなきゃわかんねぇだろうが…！」

Dチア『…わかるさ。だってこれは……闇のゲーム…』

火群「闇の、ゲーム…（そういえば……さっきも言ってたな）」

Dチア『全ての闇は、私に味方する……！』

気がつくと、辺りには黒い影が立ち込んでいた。
少しでも気を抜けば、闇に吸い込まれてしまうだろう空間で、俺はデュエルをしているんだ。
闇のゲーム。
今思い出した。確か前に聞いたことがあった。

受けたダメージが、そのまま精神的苦痛となってプレイヤーを襲う禁断のデュエルがあると。
それが、闇のゲームだと。

何やら悪寒がする。背筋が凍るのを肌で感じる。
怖がっているのか？
恐れているのか？
怯えているのか？
何に対して？
闇のゲームにか？
ダーク・フェアリー・チア・ガールにか？
和泉を傷つけた過去にか？
それとも自分の、心の闇にか？


Dチア『ーーそして市瀬火群。貴方の心の闇までもが、私の糧となり力となる…！』


火群「心の……闇、だと…？」


Dチア『貴方は、桜庭和泉の事を……心のどこかで羨ましいと思っていたはずよ。妬ましく、とも言うのかな』

火群「なに…？」


Dチア『…言い方を変えましょうか。

ーーーねぇ火群くん。

コミュニケーション能力があって、誰とでも仲良くできる私を羨ましく思ってたでしょう？』


ダーク・フェアリー・チア・ガールは、言う。
和泉の顔で、和泉の口で？和泉の声で、和泉の調子で。

火群「や…めろ……！」

Dチア『それで、誰とでも同じように接する私を見て、自分も他の人間と同じだと思った君は、心のどこかに暗き闇を抱えていた。私にとって、特別な存在でありたかった君はね』

そうだ。
こいつの言うとおりだ。
俺は和泉にとって、特別な存在でありたかったんだ。
誰よりも、和泉に近しい人でいたかったんだ。


Dチア『そして貴方のその心の闇ーーー言わば心の弱さが、貴方の中の不死鳥の炎を覚醒させ、和泉に襲いかかった。そうして貴方は、数ある並行未来から、この場にいる私たち全員をこの現代に繋ぎとめたのよ』

ダーク・フェアリー・チア・ガールは、声の調子を元に戻し、言う。

火群「………！」

Dチア『……私とニクスは、今から約６００年前に人間として死に、デュエルモンスターズの精霊となり、今から近い未来の《エクシーズ次元》から、時を超えてこの時代にやってきたのよ』

火群「……ニクスや、お前が…未来のカードって事か…！？ ……ってことは、俺が今使っている炎王のカードも、本来ならこの時代、この並行世界には存在しない……カードたちなのか…？」

ニクス「…そういう事になるな」

火群（だけど、このデッキは…、父さんが俺にくれたデッキだ…、一体父さんはどこでこのデッキを手に入れたんだよ…！）


火群「エクシーズ次元ってのは…？」

ニクス「…数十年後の並行未来、新たな召喚方法《エクシーズ召喚》が栄えた時代だ」

火群「エクシーズ召喚だと…？」

Dチア『……それは今から身を持って教えてあげる…！ デュエル続行！』

火群「来るなら来いよ…！（何がエクシーズ召喚だ…怖くねぇ！ 怖くねぇ！）」

Dチア『私は、永続魔法《神の居城 ヴァルハラ》を発動する！』

チアガールが発動を宣言すると、左手に持った手札が宙に浮き、デュエルディスクの魔法・罠ゾーンに差し込まれる。
《神の居城 ヴァルハラ》。
あれは、１ターンに１度、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札の天使族モンスター１体を特殊召喚できるカード…。

Dチア『ヴァルハラの効果により、手札の《リトル・フェアリー》を特殊召喚！』

『リトル・フェアリー』[攻 800]

Dチア『そして、私の場にモンスターが特殊召喚された事により、手札から速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動！』

火群「地獄の暴走召喚……！」

Dチア『この効果で、特殊召喚した攻撃力１５００以下のモンスターと同名のカードを、手札・墓地・デッキから可能な限り攻撃表示で特殊召喚する！』

俺自身も、フィールド上のモンスターと同名カードを可能な限り特殊召喚する事が可能だが、ダンディライオンは制限カード……２体目以上が出てくる事はあり得ない。あいつ、そこまで考えて……！

Dチア『更に、《フェアリー・アーチャー》を通常召喚！』

《フェアリー・アーチャー》[攻 1400]

Dチア『フェアリー・アーチャーの効果発動！ 自分フィールド上の光属性モンスター１体につき４００ポイントのダメージを受けてもらう！〝フェアリー・ガトリング〟！』

ニクス「場の光属性モンスターは合計４体……１６００ダメージか…！」

ヒュンっ！
ガスガスガスッ！！

火群「ぐぁああぁあっっ！！ あ…ぁああ…ぁ……！！！」[LP 4000→2400]

想像以上の痛みが俺を襲う。
本物の弓矢で撃たれたような痛みに、俺は思わず膝をつく。
痛い。痛い。痛い。
これが闇のゲーム…。
完全に甘くみてた。

火群「……っ！ …はぁ……ぐっ…！

何とか意識を保ち、ガクガクに震える足で、ゆっくりと立ち上がる。
そしてそんな状態の俺に、追撃の言葉がかかる。

Dチア『リン♫ これで終わりだと思わないことねーーーレベル３のリトル・フェアリー２体を〝オーバーレイ〟！！』


火群「オーバー……レ…イ……？（これが、エクシーズ召喚ってやつか…？）」


力を、掛け合わせる召喚か。


ニクス「マズい…火群……！」


Dチア『リン♫ その美しき舞は、この世の全てを惑わし魅了する。パーティーの始まりよ！ エクシーズ召喚…！ ランク３「フェアリー・ダンサー」！』

チアガールが宣言すると、２体のリトル・フェアリーのカードが重なり、見たことのない、枠の黒いモンスターカードが現れ、重ねた２枚のカードの上に重ねられる。
そこから二輪の光の輪をくぐり出てきたのは、耳の尖った妖艶な踊り子だった。

『フェアリー・ダンサー』[攻 1800]

『フェアリー・ダンサー』★３/光属性/天使族/攻 1800/守 2500
「フェアリー」と名のついたレベル３モンスターx２
１ターンに１度、このカードのエクシーズ素材を１つ取り除いて発動できる。
このカードの表示形式によって以下の効果を適用する。
●攻撃表示:このカードはこのターン、相手プレイヤーに直接攻撃することができる。
●守備表示:自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスターの数まで、自分の墓地の天使族モンスターを手札に加える。


火群「レベルじゃなくて……ランク、だと…？」

とことん意味がわからねぇ…。
それに１ターンがとてつもなく長い。これが、《エクシーズ次元》のデュエルだってのか…。


Dチア『フェアリー・ダンサーのオーバーレイユニットを１つ取り除き効果を発動！ このターンフェアリー・ダンサーは相手プレイヤーへ直接攻撃することができる！ ーーバトルよ！ リトル・フェアリーでダンディライオンを攻撃！』

『リトル・フェアリー』[攻 800]
『ダンディライオン』[守 300]

バリィィン！

火群「ダンディライオンが墓地に送られた時、場に綿毛トークン２体を残してゆく」

『綿毛トークン』[守 ０]x２

Dチア『もう一体のリトル・フェアリーでトークンを一体撃破！」

バリィィン！

Dチア『そして効果により直接攻撃が可能となったフェアリー・ダンサーでダイレクトアタック！〝ダンシング・キリング〟！！』

『フェアリー・ダンサー』[攻 1800]
火群【LP 2400】

ニクス「……火群っっ！！」

火群「…くっ！」

ひゅん！

ズシャァアァアッ！！


火群「……ぐ…っ…が……ぁあぁぁあぁああッッッッ！！！」【LP 2400→600】


Dチア『リン♫ 私のターンはこれで終了だけど、まだデュエル続ける気、ある？』

火群「……ったり、めぇだ………！」

かすれた声で、俺は答える。

火群「俺の、ターン……！」

そして最後の力を振り絞り、震える指先で、カードを引いた。

火群「……ドロォーッ！！」

ゴォォオオッッ！！



和泉……絶対に、今度こそーーー




火群「………和泉。ごめんな」




俺は最後にそう言い、糸の切れた操り人形のように、その場に倒れ込んだ。



ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ーTo Be Continuedー〜ー〜ー〜ー〜



《次回予告》

ニクス「ーーー火群。お前はよく頑張った。お前は和泉の為によく戦った。お前はもう頑張らなくていい。これ以上傷つかなくていい。
だからーーー


次回、『遊戯王 Ph.X 』
DRAW:１４ 二人を繋ぐ炎王神獣



だから火群ーーーあとは私に、任せておけ」



☆３／１７(日)更新予定☆




〜おまけ〜

☆《今日の最強カード》☆

*ﾟ▽ﾟ)/☆《フェアリー・アーチャー》☆ヽ(´o｀；

*ﾟ▽ﾟ)「自分フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスター１体につき、４００ポイントのダメージをあたえるよ！ 光属性を大量展開して大ダメージだ！」

(´o｀；「だが、フェアリー・アーチャーの効果は１ターンに１度しか使えないから、複数体のフェアリー・アーチャーを並べても、効果を発動できるのは、そのうちの１体だけなんだぜ」