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HOME > 遊戯王SS一覧 > Scar / 1:復讐の男

Scar / 1:復讐の男 作:げっぱ

世界は……デュエルモンスターズと言うカードゲームに支配された!

発端は、とある犯罪組織の台頭だった。名を、『カオスクロス』。
カードゲームを用い、暴力的犯罪を繰り返す。聞けば、まるで意味が分からない。
そして、それを可能とした、最も不可解とされる手段があった。

『カオスクロス』は、デュエルモンスターズのカードを実体化させる術を生み出したのだ。
デュエルモンスターズとは、プレイヤーがモンスターを使役し、魔法や罠を駆使して戦うゲーム。
そのモンスターが実際に現れ、魔法や罠が実際にプレイヤーを襲う。
軍隊も、兵器も、強力な効果を与えられたカードを再現した『カオスクロス』の猛攻に敗れた。

一方的な暴虐によって、瞬く間に世界を恐怖に落とした。

それだけでは止まらなかった。カオスクロスは、何に意図があってか、その技術を世界中にばら撒いたのだ。
多くの人間が、デュエルモンスターズのモンスターを操り、他の人間を襲った。
同じ装置を持つ者同士が出会った時、実際にデュエルモンスターズによって勝敗を決した。
やがて、装置を持つ事が当然となり……またしても、世界は混沌に満ちた。

富、地位、権利……全てが決闘(デュエル)によって決まった。
全ての人間が、決闘によって得、決闘によって失う。
価値、愛する者、命……全てが決闘によって奪われた。

そんな、殺伐とした世界に抗う、傷だらけの戦士たちの戦い……。


荒廃した街並みに吹く、枯れた風。それが、傷の多い男の肌とデュエルディスクを撫でる。
以前はある程度に栄えた街だったのだろう。コンクリートのビルを主に、建物が並んでいたに違いない。
しかし今となっては、雨風に晒され、触れるだけで朽ちてしまいそうな残骸と化していた。

実際、男が近くを歩いただけで、傍の建物が、音も立てず風に流されて消えた。
男はそれを見やる事も無く、真っ直ぐに歩く。

そんな廃墟に何の用があるのだろう。男にはあった。
この場所で、デュエルが行われたのだ。そしてそのデュエルで、男にとって見覚えのあるカードが使われた。
男は、そのカードに因縁があった。どうしても晴らさなければならない、復讐があった。
故に、男の顔は険しい。

ある広場に着いた時、男は足を止めた。男の前には、倒れ伏した少女と、趣味の悪い黒い制服の男。
少女の方は知らない。制服は、世界の誰もが知っていた。彼の『カオスクロス』は末端の構成員に与えられるものだ。

構成員「ああン? ……何だテメエは」

男「お前は『カオスクロス』の構成員だな」

構成員の誰何に答えず、逆に男は問う。いや、確認ですらない。
最早それ以外の何物でもない相手に、そんな事は無意味だった。
常識的にも、男の、復讐心からしても。

そんな事は露ほども知らぬ、知る気さえない構成員は、響く舌打ちを鳴らす。

構成員「今、いい所なんだよ。邪魔するなら、叩き潰すぞ!」

そして、デュエルディスクをちらつかせる。

少女を見やれば、旧型ではあるがデュエルディスクを付けていた。
当然ながら装置を付けられたものだろう。それが無ければ、この世界では生きていけない。
だが弱者がそれを持ったところで、これと言った意味を齎さない。虐げられる側は、いつだってそのままだ。
それがこの世界。その世界を、このチンピラが属する組織が作り上げた。

男の瞳に執念が宿る。

男「やって見せろ」

構成員「なに?」

男「俺の目の前で、もう一度でも、やって見せろ」

男「やって見せろと言っている」

低く練られた声を吐くと共に、デュエルディスクを胸の前に構える。
音を立ててフィールドを構成する盤面を展開し、起動の光を放つ。同時に、近くの建物が崩れ去った。

構成員は顔を歪ませる。最初は驚き、次は屈辱、そして嘲笑。

構成員「テメエ、その意味が分かっているんだろうな……?」

構成員「俺に刃向かう事は『カオスクロス』に刃向かう事!」

構成員「殺してくださいってよ、言うのと同義!」

さぞや嬉しそうに、喚き散らす構成員に、男は熱く冷えた眼差しを送る。
宿すのは殺意。復讐。
末端だろうが、『カオスクロス』に属するものは許さない。揺るぎない信念。

男「御託ばかりずらずら並べるな……デュエルディスクを構えろ」

冷めた言葉が、風に乗る。

男「この世界では……デュエルで全てを決定する!」

世界の常識と、あり得ない反逆を同時に受けて、構成員は嗤う。
腹を抱え、頭を押さえ、汚らしい失笑をまき散らす。

構成員「何が……図に乗るなよ、カスが!」

そして男と同じように、胸の前にデュエルディスクを構えた。

構成員「組織に敵対すればどうなるかを、地獄の底で思い知れよ!」

男は答えない。代わりに、開始の声を張り上げる。


男&構成員「デュエル!」


その声を共に、両者はデュエルディスクにセットされているデッキからカードをドローする。
デュエルモンスターズのルール、最初の手札は5枚に従い、その枚数を引く。

互いのデュエルディスクに、ターンの順番が表示される。
先攻は、男。その表示も消え、続いてライフポイントの数値が表示された。

男「俺の先攻だ。俺はモンスターを召喚する……「SS-グリーフ」!」

ドローしたカードを一瞥し、男は1枚のカードをデュエルディスクのモンスターゾーンに置く。
デュエルディスクを通して実体化して現れるのは、全身が傷だらけの、マスクを着けた長身の戦士。
現れるや、戦士は体を猫背のようにして、その背丈は主人である男と同じ程となった。


SS(スカーソルジャー)-グリーフ 炎 ☆4 ATK/800 DEF/1500
戦士族/効果
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。自分フィールドの「SS」モンスターの数×1000ライフを回復する。
 ●ライフを1000払う。デッキから「SS」モンスター1体を選んで手札に加える。


構成員「ふん、弱小モンスターを攻撃表示で召喚か」

男「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、二つの効果から一つを選んで発動する」

男「俺はライフを1000払い、デッキから「SS」モンスター1体を選んで手札に加える効果を選ぶ」LP:8000→7000

構成員「チッ……サーチモンスターか。好きにしやがれ!」

男「俺が手札に加えるのは、レベル4の「SS-グラッジ」」

男「先攻1ターン目はドローできず、バトルフェイズを行えない……リバースカードを1枚セットし、ターンエンド」

男はデュエルディスクに1枚のカードを伏せる。
するとそれに合わせて、「SS-グリーフ」のようにカードの裏面のヴィジョンが現れた。
フィールドのカードの枚数は公開情報であるため、このように表示される。
それとは別に、こうしてリバースカードのヴィジョンまで現れる意図がある事は、誰もが知る事だった。

先攻:男 / 手札:4 / LP:7000
■…リバースカード
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 攻撃
□|■| . □ .|□|□
□|□|不幸|□|□

□|□|□|□|□
□|□|□|□|□
後攻:構成員 / 手札:5 / LP:8000


構成員「俺のターン、ドロー!」

男のターンが終了し、後攻である構成員にターンが移る。
意気込みと共にカードをドローし、確認して、にやりと笑う。

構成員「サーチをするのは結構だが、ライフを削り、弱小モンスターは攻撃表示のまま!」

構成員「素人が、よくも吠えたものだ! 本当のデュエルを見せてやるぜ!」

構成員「手札から、「怪人ゲルリアン」を召喚!」

構成員が召喚したのは、緑色のゲル状のモンスター。
辛うじて人に見える形態を取り、腕と思しきものを伸ばして構える。


怪人ゲルリアン 水 ☆4 ATK/1100 DEF/1600 
戦士族/効果
①:このカードが召喚に成功した時に発動する。デッキから「怪人ゲルリアン」を1体特殊召喚する。
②:1ターンに1度、自分の墓地の「怪人」モンスター2体をデッキに戻して発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。


構成員「召喚成功時に「怪人ゲルリアン」の効果発動! デッキからもう1体の「怪人ゲルリアン」を特殊召喚する!」

効果発動に合わせて、構成員はデッキから「怪人ゲルリアン」を1枚抜き、デュエルディスクに置く。

「怪人ゲルリアン」のヴィジョンが不気味に蠢いた。
幾度かの揺らめきの後、滑らかに、「ゲルリアン」は分裂を果たした。

構成員「これで同じレベルのモンスターが2体……となれば、一つ!」

男「エクシーズ……か」

構成員「見よ! 2体のモンスターでオーバーレイ!」

構成員は2枚の「ゲルリアン」のカードを一か所に重ねて置き、続いてデュエルディスクのエクストラデッキゾーンからカードを1枚取り出す。
そのカードを、重ねた「ゲルリアン」の上に更に重ねて置いた。

その様子は、ヴィジョンとなって表現されていた。
2体のゲルリアンは光の球体となり、その場で交差するような円を描いて回る。


構成員「鉄の獣! 「超怪人メタルビースト」!」


超怪人メタルビースト 闇 ランク4 ATK/2200 DEF/1000
獣戦士族/エクシーズ/効果
レベル4「怪人」モンスター×2
①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドにセットされているカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

叫びと共に、回り続ける光の中に、鉄を纏った歪な怪物が現れた。
召喚の際に放った低く響く絶叫が、周囲の建物を震わし、いくつかを崩壊させた。
また、光の球体は「超怪人メタルビースト」の周囲を漂う。
エクシーズモンスターの効果を発動させるエクシーズ素材となったのだ。

構成員「これで、そのカスをぶち殺してもいいんだが……その前に、「超怪人メタルビースト」のX素材を1つ取り除いて効果発動!」

構成員「相手フィールドのセットカード1枚を破壊する!」

宣言と同時にエクシーズ素材を1つ墓地へ送ると、ヴィジョンの光も1つ消える。

「メタルビースト」が雄叫びを上げた。
すると、纏った鉄の一部の表面が、まるで針のような突起となって、空気を吐くような音と共に射出される。
狙いは、男が伏せたリバースカード。その中央を貫いた。


セットカード→「SSS-反撃の時」破壊!


破壊されたカードのヴィジョンは、まるでガラスのように砕け散る。
その弾けた欠片が、男の肌を撫でた。そこに、明らかな裂傷を作った。時間をおいて、じわりと血が滲み、細く流れ出す。
これこそが、ヴィジョンが現れる理由。『カオスクロス』がばら撒いた技術は、どこまでも人を傷付けるための物だった。


男「…………」

構成員「リバースカードを警戒するのは基本、1枚の伏せで凌げると思うなよぉ? バトルフェイズだ!」

構成員「「メタルビースト」で「SS-グリーフ」を攻撃! デス・スクラッチ!」

構成員の攻撃宣言に、「メタルビースト」が動き出す。
粘り付く唾液を吐き散らし、強い四肢で地面を砕き、「グリーフ」に迫る。振り上げた鋭い爪が、「グリーフ」を裂いた。
そしてまた、先ほどのリバースカードのように、ヴィジョンが割れるように弾けた。


「SS-グリーフ」戦闘破壊!


まるで超過した戦闘ダメージがプレイヤーを襲うかのように、ヴィジョンが男に降りかかる。
男はとっさに横に飛ぶが、わずかな欠片が、男の足を掠めた。

男「ぐっ……」LP:7000→5600

痛みに呻くが、男は重心を崩さない。受け身を取って体勢を直し、構成員を見据える。
下品に笑いを響かせる構成員がその目に映った。

構成員「ハハハ、自分で削ったライフと合わせて大ダメージだ!」

構成員「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2! 俺はカードを2枚セットしてターンを終了!」


先攻:男 / 手札:4 / LP:5600
□|□|□|□|□
□|□|□|□|□

□|□|機獣|□|□
□|■| . □ .|■|□
機獣…超怪人メタルビースト ATK/2200 DEF/1000 攻撃
■…リバースカード
後攻:構成員 / 手札:3 / LP:8000


ターン終了の宣言を受けて、男は立ち上がり、手に付いた砂埃を払い落とす。
また、静かに、デッキからカードを引いた。

男「……俺のターン、ドロー」

ドローしたカードを一瞥し、手札に加える。
そのカードとは別のカードに手を伸ばして、デュエルディスクに置いた。

男「俺は手札から「SS-グラッジ」を召喚する」

先ほどの「グリーフ」と同じように、全身に傷を負い、仮面を付けた戦士。
その体には、右腕が無かった。それでも闘志は失わず、残る左腕で構える。


SS-グラッジ 炎 ☆4 ATK/1200 DEF/1100
戦士族/効果
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。墓地からレベル4「SS」モンスター1体を選んで特殊召喚する。このターン、自分はX召喚を行えない。
 ●ライフを1000払う。デッキから1枚ドローし、手札を1枚捨てる。


構成員「前のターンにサーチしたモンスターを召喚するか! だが、「メタルビースト」より攻撃力が劣るぜ!」

男「「SS-グラッジ」の効果を発動する。召喚・特殊召喚成功時に、二つの効果から一つを選んで発動する」

男「俺は手札を1枚捨て、墓地からレベル4の「SS」モンスター1体を特殊召喚する効果を選ぶ!」捨てたカード→SS-アヴェンジャー

男「特殊召喚するのは、「SS-グリーフ」! 攻撃表示!」


「SS-グリーフ」復活!


構成員「またそのモンスターを……そして特殊召喚に成功したと言う事は!」

男「特殊召喚に成功した「SS-グリーフ」の効果発動。再び、ライフを1000払いサーチする効果を選ぶ」

男「その効果にチェーンして、手札の「SS-ヴェンジェンス」の効果を発動!」

構成員「何! 手札から発動だと!」

男「自分が「SS」モンスターの効果で手札を捨てた場合、このカードを手札から特殊召喚する!」

男「「SS-ヴェンジェンス」を、攻撃表示!」

他のモンスターと同じく、そのカードをモンスターゾーンに配置する。
しかしそれまでのモンスターと出現のヴィジョンが異なり、突如として炎が舞い上がる。
その炎の中から、身を乗り出すように飛び出すのは、やはりして傷だらけの戦士。
ただ、マスクの半分は割れて欠け、そこから覗けるのは、ケロイド状の火傷の痕だった。
読み取れる背景をそのまま吐き出すような、絶叫が響いた。


SS-ヴェンジェンス 炎 ☆6 ATK/1800 DEF/1300
戦士族/効果
①:自分が「SS」モンスターの効果で手札を捨てた場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。相手フィールドの魔法・罠カードを2枚まで選んで破壊する。
 ●ライフを1000払う。デッキから2枚ドローし、手札から「SS」モンスター1体を捨てるか、手札を2枚捨てる。


構成員「条件付きの半上級モンスターか……!」

通常、レベル5以上のモンスターを場に出すには、レベルに応じた数のモンスターをリリースしてアドバンス召喚しなければならない。
その条件を踏み倒して場に出す事ができるモンスターは、多く存在する。
しかしそれを容易く満たし、モンスターを並べられた状況に、構成員も驚きの声を上げる。

男「そして「SS-グリーフ」の効果でライフを1000払い、デッキから「SS-ヴィンディクト」を手札に加える」LP:5600→4600

構成員「上手くモンスターを展開したが、それでも「メタルビースト」には及ばないな!」

構成員は厭らしい笑みを浮かべた。
効果の破壊を除き、モンスターを打ち倒すにはそれ以上の強さを持つモンスターを出さなければならない。
構成員の「メタルビースト」に対し、男が出したモンスターは、どれもがその条件に当て嵌まらない。
が、男は表情を崩さない。男の布石に狂いは無かった。

男「まだだ。召喚・特殊召喚に成功した「SS-ヴェンジェンス」の効果を発動!」

構成員「クッ! まさか……そいつも同じ効果を!」

男「その通りだ。召喚・特殊召喚成功時に、二つの効果から一つを選んで発動する」

男「俺は一つ目の効果……手札を1枚捨て、相手フィールドの魔法・罠カードを2枚まで選んで破壊する効果を選ぶ」捨てたカード→SSS-カウンター・ストライク

構成員「ググッ!」

男「お前のフィールドの魔法・罠カードは2枚……よって全てを破壊する!」

「SS-ヴェンジェンス」が、隠し持っていた二本のナイフを引き抜き、すかさず投擲。
狙いを外さず、構成員が伏せた2枚のリバースカードに突き刺さった。


「サイクロン」「聖なるバリア-ミラーフォース」破壊!


破壊と同時に両腕で体を守る構成員。運がいいのか、大きなヴィジョンがぶつかる事は無かった。
だが、細かい欠片は確実に構成員へ物理的なダメージを与えていた。

構成員「く、く……」

男「リバースカードを警戒するのは基本、だったか?」

構成員「て、てめえ……!」

男「そして「SS」モンスターの効果で手札から捨てられた「SSS-カウンター・ストライク」の効果も発動する」

男「デッキからカードを1枚ドローし、ライフを1000回復。……そのモンスターも邪魔だ、消えてもらう」LP:4600→5600

苦鳴を漏らす構成員を無視し、効果の処理を進める。
ドローしたカードを確認し、そんな事をおざなりに告げた。

構成員「なにィ!」

男「自分フィールドに「SS」モンスターが2体以上存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる」

男「「SS-ヴィンディクト」!」

再び、炎のヴィジョンが燃え上がる。そのヴィジョンから剣が現れ、振り回されて炎を散らす。
そして現れる、小柄な戦士。鎧を纏い、仮面を着けるが、そのいずれも、剣にさえも傷が付いていた。

SS‐ヴィンディクト 炎 ☆7 ATK/1500 DEF/1700
戦士族/特殊召喚/効果
このカードは通常召喚できない。このカードは「SS」カードの効果でのみ特殊召喚できる。「SS-ヴィンディクト」の①の効果は1ターンに1度しか発動できない。
①:自分フィールドに「SS」モンスターが2体以上存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:このカードが特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。自分フィールドの「SS」モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を選んで手札に戻す。
 ●ライフを1000払う。このカードを破壊し、自分の墓地から「SS‐ヴィンディクト」以外の「SS」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
③:フィールドから墓地へ送られたこのカードが墓地に存在する自分のスタンバイフェイズ開始時に1度だけ発動できる。手札を1枚捨て、ライフを1000払い、このカードを墓地から特殊召喚する。

構成員「今度は半最上級モンスターまで……!」

男「「SS-ヴィンディクト」が召喚・特殊召喚に成功した時、二つの効果から一つを選んで発動する!」

男「俺はライフを1000払い、このカードを破壊する」5600→4600

構成員「特殊召喚したモンスターを自ら破壊しただと!」

構成員が驚くのも構わず、「SS-ヴィンディクト」は再び炎に包まれる。
その肉体が朽ち果てる最後まで決して俯かず……。

男「そして墓地より、「SS-ヴィンディクト」以外の「SS」モンスター1体を選んで特殊召喚する!」

男「俺の墓地で眠る「SS」モンスターは1体のみ……起ち上がれ、傷だらけの復讐よ!」

男「「SS-アヴェンジャー」!」

やがて、一際強く燃え盛った炎から、傷だらけの腕が伸ばされる。
炎から這い出るように現れたそれは、最後に炎を身に纏い、吸収する。
煌々と輝く瞳は、復讐の色そのものでしかない。
それは、傷にまみれた戦士。晒された素肌にも、顔にも、夥しい数の傷跡を持ちながら、戦い続ける者。


SS-アヴェンジャー 炎 ☆8 ATK/1900 DEF/1900
戦士族/効果
このカードは「SS」カードの効果でのみ特殊召喚できる。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。相手フィールドのカード1枚を選んで破壊し、自分のライフを1000回復する。
 ●ライフを1000払う。デッキから1枚ドローする。そのカードが「SS」モンスターだった場合、そのカードを特殊召喚できる。
 ●手札を1枚捨て、ライフを1000払う。相手フィールドの表側表示モンスターの効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする。
 その後、このカードの攻撃力・守備力はフィールドのカードの数×300アップする。

構成員「さ、最上級モンスター召喚の布石……いつの間に墓地へ送りやがった!」

男「知る必要はない。このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、三つの効果から一つを選んで発動する!」

男「俺は手札を1枚捨て、お前のフィールドのカード1枚を破壊する。破壊するのは、「超怪人メタルビースト」!」捨てたカード→SS-グリーフ

構成員「なんだと! 効果による破壊じゃあ、攻撃力は関係ない……!」

男「破壊してやる……エナジーイーター!」

「SS-アヴェンジャー」の開いた左手に炎が宿る。
雄叫びと共にそれを投げ付ければ、その最中に炎は、まるで槍の形を取る。
炎の槍は「メタルビースト」の体を貫き、更には瞬く間に炎に包み込む。
断末魔さえ上げる猶予も与えず、鉄の怪人の体は高熱の中に消えた。


「超怪人メタルビースト」破壊!


構成員「あ、熱い! くそッ!」

男「そして俺はライフを1000回復する」LP:4600→5600

男「これでお前のフィールドは開いた。バトルフェイズ」

構成員は短く悲鳴を上げる。この世界で、このデュエルで、ダイレクトアタックを受けると言う事。
実体化したモンスターの凶悪な一撃を、脆い生身で受けなければならない事に他ならない。
それをやってきた構成員は、そのおぞましさを、視覚的に知っていた。

男「叩き込め、「SS-グラッジ」、「SS-グリーフ」「SS-ヴェンジェンス」!」

男は容赦しない。元より、するべき相手ですらない。
命令を受けた戦士たちは、その順に構成員へと迫る。
或いは殴り、或いは蹴り、一打一蹴が構成員の体を叩きのめす。

構成員「ぐっ、はあっ!」LP:8000→6800→6000→4200

男「その傷の復讐を果たせ! 「SS-アヴェンジャー」!」

最後に、「アヴェンジャー」は駆け抜ける。今、後ろに倒れようと言う構成員の身体を、そうなる前に殴り抜けた。

構成員「うっぐうう!」LP:4200→2300

実体化した攻撃の数々に、構成員の体は派手に吹き飛び、転がる。
本人にとって救いかどうかは不明だが、低い攻撃力のモンスターによる攻撃だったのは幸いだろう。
攻撃力と攻撃方法は、実体化した際の破壊力にも直結する。
この場合、決して無事ではないにせよ、命までは落とさなかったのだから。

暫くの時間を置き、構成員は咳き込みながら起き上がる。
震える足でどうにか立ち上がり、男を睨み付けた。
気にせず、構成員に意識が残っている事を確認して、男はフェイズの宣言を行う。

男「バトルフェイズを終了し、俺はこのままターンエンド」

先攻:男 / 手札:1 / LP:5600
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 攻撃
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/1900 DEF/1900 攻撃
恨…SS-グラッジ ATK/1200 DEF/1100 攻撃
執念…SS-ヴェンジェンス ATK/1800 DEF/1300 攻撃
□| . □. | . □. |□ | □
□|復讐|不幸|恨|執念

□|□|□|□|□
□|□|□|□|□
後攻:構成員 / 手札:3 / LP:2300


構成員「や、やりやがったなァ……俺のターン、ドロー!」

おぼつかない手付きでドローし、カードを確認する構成員。
曇った表情が、そのカードを見るなり、残忍さを取り戻した。

構成員「……良いカードを引いたぜ。速攻魔法発動、「怪人軍団の強襲」!」

怪人軍団の強襲 速攻魔法
①:相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時に発動できる。
 デッキからレベル4以下の「怪人」と名のついたモンスターを1体特殊召喚する。

構成員「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合!」

構成員「デッキからレベル4以下の「怪人」モンスター1体を特殊召喚する!」

構成員「俺はレベル4「怪人サターナーズ」を表側守備表示で特殊召喚!」

どこからか鳴り響く笛の音に呼ばれ、そしていずこかから太い羽音が聞こえる。
そして突如として迫ってきた謎の影が、あたりを見渡すスカーソルジャーたちの内、「ヴェンジェンス」の体を持ち去った。

何事か、辛うじて目で追うと、高々と上空に連れ去られた「ヴェンジェンス」の身体は『角』によって完全に貫かれていた。
痙攣を繰り返し、破壊のヴィジョンで消滅した。


「SS-ヴェンジェンス」破壊!


男「なにッ……!」

重量感のある落下の後、地鳴りを起こして周囲の建物を決壊させたのは、甲虫を彷彿とさせる風体のモンスター。
今しがた羽ばたいていたのだろう羽を甲殻の中にしまっている所を見ると、そのモンスターこそが、「ヴェンジェンス」を破壊したのだ。

構成員「ヒャハハ! 驚いたか!」

構成員「「怪人サターナーズ」が「怪人」カードの効果で特殊召喚に成功した時、相手モンスター1体を対象として効果発動!」

構成員「そのカードを破壊する!」

怪人サターナーズ 地 ☆4 ATK/1700 DEF/2000
戦士族/効果
①:このカードが「怪人」カードの効果によって特殊召喚に成功した時、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動する。
 そのカードを破壊する。

構成員「これで終わるかよ! 特殊召喚した「怪人サターナーズ」をリリースし、レベル6「怪人オク・トープス」をアドバンス召喚!」

役目を終えた「サターナーズ」は消滅し、代わりにフィールドに現れるのは、タコの上半身を持った怪物。
触手で槍を持ち、巧みに振り回す、タコだった。

怪人オク・トープス 水 ☆6 ATK/2300 DEF/1500
海竜族/効果
①:このカードが自分の手札・墓地に存在する時、自分フィールドの表側表示の「怪人」モンスター2体をリリースして発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
②:このカードをX素材とするXモンスターの攻撃力・守備力は500アップする。

構成員「そして、墓地の「怪人」モンスター2体を除外し、レベル6「怪人デル・ガルダ」を特殊召喚!」除外したモンスター→怪人ゲルリアン 超怪人メタルビースト

続いて構成員が召喚したモンスターは、現れる際に烈風のヴィジョンを巻き起こす。
舞い上がる砂埃に、男はたまらず目を瞑る。うっすらと目を開けた先に見えたのは、鳥人。
腕に鳥の翼を持ち、鳥の頭を持った、人型のモンスターだった。

怪人デル・ガルダ 風 ☆6 ATK/2100 DEF/1000
鳥獣族/効果
①:このカードが手札に存在する時、自分の墓地の「怪人」モンスター2体を除外して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:X素材となっているこのカードが墓地へ送られた場合、除外されている「怪人」モンスター1体を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

構成員「これで、同じレベルのモンスターが2体!」

フィールドに揃ったモンスターのレベルは6。呼び出されるモンスターのランクは必然的に6。

男「ランク6のエクシーズ……まさか」

使用したモンスターと、呼び出される候補のモンスター。
呟く男には、その候補に覚えがあった。
それこそ、因縁にして、復讐の相手。熱き殺意の奥底に恐怖を植え付けた、そのモンスター。

男は、自分の体が慄くのを感じた。

構成員「見せてやるぜ……レベル6「怪人オク・トープス」とレベル6「怪人デル・ガルダ」でオーバーレイ!」

構成員「凡百の有象無象より血と恐怖を吸い上げて、君臨せよ邪悪の象徴! 魅惑の君! エクシーズ召喚!」

ヴィジョンが起こすエフェクトは、黒い霧。周囲はたちまち、一メートル先さえも目視できない状態になる。
そして聞こえてくる、構成員の喜びと、それとは別の、冷たい高笑い。

構成員「ランク6! 「超怪人ヴラド」!」

轟音と共に風が吹き荒び、霧の全てを晴らす。
そこにいたのは、黒いマントを羽織った、貴族然とした紳士。
それが異物と明らかにわかるのは、細い三日月のように釣り上げ薄く開いた口、その隙間から見える鋭い牙。
そして、死者のような白い肌。周囲に羽ばたく、まるで従えているようなコウモリ。

超怪人ヴラド 闇 ランク6 ATK/2500 DEF/1000
悪魔族/エクシーズ/効果
レベル6「怪人」モンスター×2
①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。そのカードのコントロールを得る。この効果でコントロールを得たモンスターの効果は無効化され、攻撃力は1000ダウンする。

男(……違う。『やつ』じゃない)

そのモンスターに、見覚えは無かった。感じていた恐怖が無くなるのを感じた。

構成員「何腑抜けた面しやがる……安心してんじゃねえぜ!」

構成員「「怪人オク・トープス」がX素材となっている時、二つ目の効果が適用される!」

構成員「「オク・トープス」をX素材に持つXモンスターの攻撃力・守備力は500アップ!」

構成員「これで「超怪人ヴラド」の攻撃力は大台の3000だア!」

男「…………」

構成員「お、お? ビビッて声も出ないか? まだまだ、黙るには早いぜ!」

構成員「X素材を1つ取り除き、「SS‐アヴェンジャー」を対象に「超怪人ヴラド」の効果発動!」

構成員「その効果は、相手モンスター1体のコントロールを得る!」

男「コントロール奪取……!」

構成員「やれ、「超怪人ヴラド」! ブラッド・マインド・スチール!」

「超怪人ヴラド」の瞳が怪しく輝く。その視線の先には、「アヴェンジャー」。
直後、「アヴェンジャー」の体が硬直する。そして急に力が抜けたと思えば、その足を進めはじめた。
構成員のフィールド。「超怪人ヴラド」の眼下へと。

「SS-アヴェンジャー」コントロール転移!

男「「アヴェンジャー」!」

構成員「ただしこの効果でコントロールを得たモンスターの効果は無効になり、攻撃力は1000ダウンする」

男「クッ……」

相手の僕となった「アヴェンジャー」の瞳に生気と意志は無い。
あの、瞳に輝いた復讐の想いは、強者の権力によって失われていた。

構成員「ついでにX素材となっている「デル・ガルダ」が墓地へ送られた事で、その効果も発動!」

構成員「除外されている自分の「怪人」モンスター1体を対象とし、そのカードを手札に加える!」

構成員「「デル・ガルダ」のコストで除外した「怪人ゲルリアン」を手札に加えるぜ……!」

男「コストとしたモンスターを回収し、次のモンスターも補充するか……」

構成員「さて、バトルフェイズ! お前のカスみてえなメンツを叩き潰すにはこれで十分だ!」

構成員「「超怪人ヴラド」で「SS-グラッジ」を攻撃! ドラ・クライシス!」

「超怪人ヴラド」はマントを広げ、その体をコウモリの集団へと変化させる。
コウモリの集団は「グラッジ」に迫り、一瞬で元の「超怪人ヴラド」の姿に戻った。

驚く「グラッジ」の頭部を、それより巨大な手で鷲掴みにする「超怪人ヴラド」。
振り上げるように持ち上げて、そして男目掛けて「グラッジ」を放り投げた。
回避する暇も無く、男は「グラッジ」と激突した。

男「ぬ……ぐっ!」5600→3800

構成員「続いて、「SS-アヴェンジャー」で「SS-グリーフ」を攻撃!」

共に吹き飛んだ「グラッジ」が消滅すると同時に、更に「アヴェンジャー」の攻撃で破壊された「グリーフ」のヴィジョンが降りかかる。

男「くっ……!」3800→3700

「アヴェンジャー」の洗脳。「グラッジ」と「グリーフ」の破壊。
どちらも見届けた男は倒れたまま地面の土を抉るように拳を握る。

構成員「ハハハ! どうだどうだ、命が削られていくのは!」

構成員「お前のモンスターはライフや手札を削って効果を発動するみたいだからな……」

構成員「「スカーソルジャー」、傷だらけの戦士、そりゃそうだ! 自分から失っていくんだからなあ!」

構成員「効果の連打をすれば自らの首を絞める一方だ……その上出てくるのは攻撃力不足なカスばかり!」

構成員「お前の命もあと少し……カードを1枚セットし、俺はこれでターンエンド!」

先攻:男 / 手札:1 / LP:3700
□|□|□|□|□
□|□|□|□|□

□|□|ヴ|復讐|□
□|■| □| . □ . |□
ヴ…超怪人ヴラド ATK/3000(2500) DEF/1000 攻撃
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/900(1900) DEF/1900 攻撃
後攻:構成員 / 手札:1 / LP:2300


ターンの終了を聞き届けた男は、握った拳を解き、ゆったりと起ち上がる。
そして手に付いた土と砂埃を払い落とし、衣類についた汚れを払う。
その動作を終え、強い眼差しで構成員を睨み付け、デッキに手を掛ける。

男「……俺のターン、ドロー」

静かに、鋭く、カードを引く。

男「そうだ。こいつらは弱い。弱いから傷を負う。弱者だから更に傷付けられる」

引いたカードを手札に加え、一度深く息を吐く。

男「だがな……傷付けられるばかりで終わると思うな! 負った傷の復讐はこれからだと、思い知れ!」

構成員「何ィ!?」

高らかな宣言は、男にとって奮起の灯となった。
やがて燃え盛る、復讐の炎となる、小さなものであったとしても。
もはやそれしかできないのであれば、やり遂げる覚悟などとっくにできていた。

男「フィールドから墓地へ送られた「SS-ヴィンディクト」が墓地に存在するスタンバイフェイズ開始時に1度だけ、その効果を発動できる!」

男「手札を1枚捨て、ライフを1000払い、墓地の「SS-ヴィンディクト」自身を特殊召喚する!」LP:3700→2700 捨てた手札→SS-ヘイト

男「傷の復讐を思い出せ、「SS-ヴィンディクト」!」

巻き上がる炎から、再び傷だらけの剣が現れる。その剣が振るわれ、現れるのは「ヴィンディクト」。
緩慢な動作で、剣を肩に背負った。


「SS-ヴィンディクト」復活!


構成員「またそのモンスターをぉ……!」

男「特殊召喚に成功した「SS-ヴィンディクト」の効果発動! 再びライフを1000払い、自身を破壊する!」LP:2700→1700

男「そして墓地より「SS-ヴィンディクト」以外の「SS」1体を特殊召喚する! 来い、「SS-ヘイト」!」

炎のヴィジョンから次に現れたのは、杖を衝いた小柄な傷だらけの戦士。
右脚の無い戦士は、すぐさまその場に座り込む。しかしその姿に障害を持つ者の弱々しさは微塵も感じられない。
それはマスクの隙間から見える、強い憎しみを湛えた瞳があってこそだった。

SS-ヘイト 炎 ☆4 ATK/1000 DEF/1200
戦士族/効果
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に、以下の効果から1つを選んで発動する。この効果を発動するターンに、自分は「SS」カードの効果しか発動できない。
 ●手札を1枚捨て、相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する。
 ●ライフを1000払う。自分の墓地から「SS」モンスターを2体選んで手札に加える。
②:このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから1枚ドローする。

男「召喚・特殊召喚に成功した「SS-ヘイト」の効果を発動! 二つから一つを選び、適用する!」

男「俺はライフを1000払い、自分の墓地から「SS」モンスター2体を手札に加える効果を選ぶ!」LP:1700→700

構成員「何! くそ、これで再び手札コストが!」

男「俺が手札に加えるのは、「SS-ヴィンディクト」、「SS-グリーフ」!」

男「そして俺が「SS」モンスターの効果で手札を捨て、ライフを払ったターンにこのカードを発動できる」

男「通常魔法「SSS-ウェイク・アップ」!」

SSS-ウェイク・アップ 通常魔法
「SSS-ウェイク・アップ」は1ターンに1度しか発動できない。
①:自分が「SS」モンスターの効果で手札を捨て、ライフを払ったターンに発動できる。
 自分の墓地から「SS」モンスター1体を選んで特殊召喚し、ライフを1000回復し、デッキから1枚ドローする。

男「自分の墓地より「SS」モンスター1体を特殊召喚する!」

男「地獄の底から、もう一度、起ち上がれ! 「SS-ヴェンジェンス」!」

再び炎が起こり、「ヴェンジェンス」が姿を現す。
腹部には、先ほど貫かれた時の物であろう傷が増えていた。


「SS-ヴェンジェンス」復活!


男「そして同時にライフを1000回復し、カードを1枚ドローする」LP:700→1700

男「また、特殊召喚に成功した「SS-ヴェンジェンス」の効果を発動! 今度はもう一つの効果を発動する」

男「ライフを1000払い、デッキからカードを2枚ドロー!」1700→700

男「その後、手札を2枚捨てるか、「SS」モンスター1体を捨てる。俺は「SS-ヴィンディクト」を捨てる」

構成員「い、一気に手札を補強しやがった……!」

男「俺はまだ通常召喚を行っていない。「SS-グリーフ」を召喚! 召喚成功時に「SS-グリーフ」の効果を発動」

男「もう一つの効果、手札を1枚捨て、自分フィールドの「SS」モンスターの数×1000のライフを回復する」捨てたカード→SS-ネメシス

男「俺のフィールドには今召喚した「SS-グリーフ」を含め、3体の「SS」が存在する。よって3000のライフを回復」LP:700→3700

構成員「馬鹿な……あれだけ減ったライフも、手札も、全部取り戻しただと……」

構成員「だが、攻撃力3000には及ばない! 通常召喚もした今、お前に新たなるモンスターは展開できない!」

男「……バトルフェイズ。「SS-ヴェンジェンス」で「SS-アヴェンジャー」を攻撃!」

「ヴェンジェンス」の隠しナイフが、意志を失った「アヴェンジャー」の心臓を貫く。
力無く倒れる「アヴェンジャー」の表情には、ヴィジョンでありながら、無念が読み取れた。

構成員「そうだろうな、今のお前にはそれくらいしかできん!」LP:2300→1400

男は歯噛みする。だが、括った腹と決めた覚悟は、今更変えられはしない。

男「「SS-ヘイト」! 「超怪人ヴラド」に攻撃を仕掛けろ」

構成員「何だと! 遂にトチ狂ったか! 得たライフを尚も自ら失うつもりか!」

男「…………」

構成員「だったら、迎え撃て「超怪人ヴラド」! ドラ・クライシス!」

命令を受けた「ヘイト」は、欠けた物を何とせず、杖を巧みに使って「超怪人ヴラド」に接敵する。
そしてその勢いのまま、自分の体制が崩れるのも厭わず、渾身の力で杖による鋭い突きを繰り出す。
だが、それは、容易く躱された。
「超怪人ヴラド」は軽く重心を移動させて回避し、逆に、振り下ろした拳で「ヘイト」の体を地面に沈めた。


「SS-ヘイト」撃退!


男「……戦闘で破壊され墓地へ送られた「SS-ヘイト」の効果発動。デッキからカードを1枚ドローする」LP:3700→1700

男「更に、「SS」モンスターが戦闘・効果で破壊されたこの時、手札から速攻魔法「SSS-リベンジ・オブ・スカーズ」を発動!」

SSS-リベンジ・オブ・スカーズ 速攻魔法
①:自分フィールドの「SS」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。自分の墓地からそのカードを特殊召喚する。その後、デッキから1枚ドローする。

男「墓地のそのモンスターを特殊召喚する。戻れ、「SS-ヘイト」!」

地面に倒れ伏した「ヘイト」の指が、ピクリと動く。
その手が、確かに、一度手放した杖を掴む。


「SS-ヘイト」復活!


構成員「特殊召喚と言う事は、もう一度効果を発動できる!」

男「その後、カードを1枚ドロー。そして、特殊召喚に成功した「SS-ヘイト」の効果発動」

男「二つの内、もう一つの効果を選ぶ。手札を1枚捨て、相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊する」捨てたカード→戦士の生還

構成員「モンスター破壊だと! 得たライフを失ってまで……!」

男「もはや傷の上に傷を負う事など、大した事ではない。目的の為なら、いくらでも傷だらけになる!」

男「目標は「超怪人ヴラド」! 逃すな、叩き殺せ! 「SS-ヘイト」!」

掴んだ杖の先を、「超怪人ヴラド」の心臓へと向ける。
よく見ればその杖の持ち手の部分には、まるで銃の引き金を思わせるトリガーがあった。
恐らくは、不敵に笑った事だろう。「ヘイト」はそのトリガーを迷わずに引いた。

杖の先が爆ぜ、鉛の玉が飛び出す。突発的な事象にさしもの怪人も対応できず……。
その心臓は、たった一発の銃弾に撃ち抜かれ、その体は、復讐によって灰となって崩れ去った。


「超怪人ヴラド」破壊!


構成員「チィッ!」

男「蘇生した「SS-ヘイト」は、別のモンスターとして扱われる為、もう一度攻撃できる。そして、まだバトルフェイズだ!」

男「とどめだ! 「SS-ヘイト」「SS-グリーフ」でダイレクトアタック!」

「グリーフ」は駆け出し、構成員の傍にいた「ヘイト」は杖を持ち直して立ち上がる。
そして両者迫り、各々の一撃を以って復讐の一端を終わらせる…………はずだった。

にたりと。構成員は嗤って見せた。

構成員「ヘッ……させるかよぉ! 攻撃宣言時にリバースカードオープン! 通常罠「超怪人再生」!」

超怪人再生 通常罠
①:自分の墓地の「超怪人」Xモンスター1体を対象として発動する。そのカードを特殊召喚し、このカードを下に重ねてX素材とする。
②:X素材のこのカードを持っているモンスターが効果の対象になった時、このカードをX素材として取り除いて発動できる。その効果を無効にする。

構成員「自分の墓地の「超怪人」Xモンスター1体を特殊召喚する! 俺が選択するのは当然、「超怪人ヴラド」!」

「超怪人ヴラド」が崩れた灰が、突然巻き上がり壁のように戦士の前にはだかる。
その灰に「超怪人ヴラド」の顔が浮かび上がり、死者の肌は甦る。
ギラリと、「超怪人ヴラド」の目が光る。高笑いを以って、完全復活を遂げた。


「超怪人ヴラド」超再生!


構成員「更に、「超怪人再生」を、特殊召喚したモンスターのX素材とする!」

構成員「クッククク……ハーッハッハ! どうだ、渾身の逆転の一手が阻まれた気分は!」

構成員「言ったはずだぜ、リバースカードを警戒するのは基本だってな!」

構成員「さあ、どうする? もう一度特攻を仕掛けるか?」

男「……バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2。リバースカードを2枚伏せ、ターンエンド」


先攻:男 / 手札:0 / LP:1700
■…リバースカード
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500 攻撃
憎…SS-ヘイト ATK/1000 DEF/1200 攻撃
執念…SS-ヴェンジェンス ATK/1800 DEF/1300 攻撃
■| . □ .| □ |. □ .|■
□|執念|憎|不幸|□

□|□|ヴ|□|□
□|□| □ |□|□
ヴ…超怪人ヴラド ATK/2500 DEF/1000 攻撃
後攻:構成員 / 手札:1 / LP:1400


構成員「俺のターン、ドロー! さあ、ラストターンだぜえ! 手札から「怪人ゲルリアン」を召喚!」

構成員「このカードの効果は知っているよなア。召喚成功時にデッキから「怪人ゲルリアン」を特殊召喚する!」

構成員「召喚成功時に、「怪人ゲルリアン」効果発動!」

先ほどと同じく、「ゲルリアン」は不気味な流動を始め、分裂を行う。


「怪人ゲルリアン」封殺!


それを阻害したのは、「ゲルリアン」の核を刺し貫いた、「ヴェンジェンス」が投擲したナイフだった。

構成員「な……なんだぁ!?」

男「「怪人ゲルリアン」の効果発動にチェーンし、リバースカードを発動した」

男「カウンター罠、「SSS-悪を殲滅する力」」

SSS-悪を殲滅する力 カウンター罠
①:自分フィールドに「SS」モンスターが存在する場合に、以下の効果から1つを選んで発動できる。
 ●手札を1枚捨てる。相手の罠カードの発動を無効にして破壊する。
 ●ライフを1000払う。相手の魔法カードの発動を無効にして破壊する。
 ●自分フィールドの「SS」モンスター1体をリリースする。相手のモンスター効果の発動を無効にして破壊する。

男「三つの効果の内、モンスター効果を無効にする効果を選んで発動。「SS-ヴェンジェンス」をリリースし、その効果を無効にした」

構成員「クッ……都合のいいタイミングで引きやがって! だがな、お前の負けは変わらねえよ!」

構成員「通常魔法発動! 「怪人再生」! 自分の墓地の「怪人」1体を、攻撃力・守備力を500ダウンして特殊召喚する!」

怪人再生 通常魔法
①:自分の墓地の「怪人」モンスター1体を対象として発動できる。そのカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。

構成員「俺が特殊召喚するのは、レベル4「怪人サターナーズ」!」

その宣言に呼ばれ、地面が盛り上がり、抉れ、そこから「サターナーズ」が甦る。
中途半端な再生の結果か、甲殻がいくつか崩れ落ち、片腕は再生できないままでいる。
しかし、武器として持つ自慢の角だけはしっかりと形を保ち、それだけで、この不完全な物体が「サターナーズ」だと判別できた。


「怪人サターナーズ」再生!


構成員「そして、「怪人」カードの効果で特殊召喚に成功した「怪人サターナーズ」の効果を発動!」

構成員「「SS-ヘイト」を破壊する! やれ、「サターナーズ」! そのゴミを引き千切り殺せ!」

その角が生きているのであれば、当然利用だってできる。
「サターナーズ」は羽を素早く羽ばたかせ、突進。回避行動も儘為らない「ヘイト」を貫いた。


「SS-ヘイト」破壊!


男「クッ……!」

構成員「最後に、X素材を持って復活した「超怪人ヴラド」の効果を発動!」

構成員「X素材を1つ取り除き、「SS-グリーフ」のコントロールを得る! 絶望の、ブラッド・マインド・スチール!」

一方、完全な復活を果たした「超怪人ヴラド」は、再び魅惑の瞳を輝かせる。
意志を奪われ、「超怪人ヴラド」の虜となった「グリーフ」は、同じように構成員のフィールドへと移る。


「SS-グリーフ」コントロール転移!


構成員「攻撃力は1000ダウンし、効果も無効になるが……」

先攻:男 / 手札:0 / LP:1700
■…リバースカード
■|□|□|□|□
□|□|□|□|□

□|サ|ヴ|不幸|□
□| □ | □| . □. |□
サ…怪人サターナーズ ATK/1200(1700) DEF/1500(2000) 攻撃
ヴ…超怪人ヴラド ATK/2500 DEF/1000 攻撃
不幸…SS-グリーフ ATK/0(800) DEF/1500 攻撃
後攻:構成員 / 手札:0 / LP:1400

構成員「俺の場のモンスターの総攻撃力は3700。お前の場にモンスターは無く、そしてお前のライフは1700!」

プレイヤーのライフポイントが尽きた時、デュエルの勝敗が決する。
そしてこの状況は、男にとって決定的な窮地でしかなかった。
それこそ、「超怪人ヴラド」で攻撃するだけで終わる。その優位性に、構成員の口からは自然と笑いが零れ出た。

構成員「どうだ! ちょっとデュエルができるだけの屑が、粋がるからこうなるんだ!」

構成員「俺のような人間が多く属する組織、そのパワー! お前如きカスなんぞ、ギタギタに叩きのめして……!」

構成員「二度とデュエルできない、蛆虫にしてやるァ! バトルフェイズ!」

構成員「じわじわと……ガラ空きになったフィールドをぉ……「怪人サターナーズ」でダイレクトアタック!」

もったい付けるように、非情なる宣言。
命令を受けた「サターナーズ」は羽を展開し、即座に男に迫る。
デュエル中のモンスターの攻撃のヴィジョンから逃げる事はできず、可能な事と言えばせめて体の重要個所を守るくらい。

「サターナーズ」の拳を、男は交差した両腕で受け止める。同時に、後ろに飛び退く。
それで物理的なダメージを減らして尚、腕の骨が軋んだ。また、殺しきれなかった衝撃が、男を後ろに吹き飛ばす。

男「うぐっ!」LP:1700→500

地面を転がりながらも受け身を取って起き上がる。
だが、そうした頃には、既に目の前に「ヴラド」の姿があった。

構成員「とどめだア! 「超怪人ヴラド」でダイレクトアタック! ファイナル・ドラ・クライシス!」

「ヴラド」が掌を伸ばす。最後の一撃を加えようと言うその時、


男「――――リバースカード、オープン!」


男は、伏せていたリバースカードを発動した。
ヴィジョンが起き上がり、カードのデザインが表になる。

構成員「なにッ! ここでリバースカードだと!」

その効果処理を終えると同時に、「ヴラド」は男の頭を掴んだ。
高々と持ち上げられた男の体は、思いっきり振り下ろすように地面に叩き付けられる。

男「がはあっ……!」LP:500→7500→5000

衝撃で、肺の空気を全て絞り出すかのような掠れた悲鳴を上げる。
内臓を傷付けたのか、血を吐き出し、苦しみに悶える。
だが、「ヴラド」の攻撃でライフが尽き、敗北するはずだった男は……

未だ、デュエルを続行する権利を持っていた。

構成員「な、何だと……何が、何を発動した!」

男「ぐふッ……。通常罠「SSS-傷だらけのララバイ」……」

喘ぎ、咳き込みながら、どうにか起き上がり、発動したカードの名を宣言する。
脳に受けたダメージが大きく、まともに立ち上がれないほどに意識ははっきりとしない。
だが、片膝を衝きながら、男はデュエルを続行した。

SSS-傷だらけのララバイ 通常罠
①:自分の墓地の「SS」モンスターを任意の数だけ除外して発動できる。自分のライフを除外したモンスターの数×1000回復する。
 その後、除外したモンスター3体につきデッキから1枚ドローできる。

男「俺の墓地から「SS」モンスターを任意の数だけ除外して発動……除外したモンスターの数×1000のライフを回復する」

構成員「ライフを……回復!?」

男「俺の墓地に眠る「SS」は8体……その内、「SS-アヴェンジャー」を残し、全てを除外……!」

男「傷付き、手の届かぬ眠りについた戦士たちの志が、俺の魂を生かし続ける! 7000のライフを、回復!」

構成員「な、な、7000回復だと……ふざけるな! 俺の、俺の……!」

男「その後、除外したモンスター3体につき……カードを1枚ドローできる」

男「除外したモンスターは7体。よって、2枚をドロー!」

構成員「ばかな、馬鹿な、バカな……!」

男「もはや手札もない、お前の場に攻撃できるモンスターもいない……!」

構成員「グッ……だ、だが、お前の場は今度こそ何もない! ここから逆転の手を引けるかよ!」

構成員「メインフェイズ2に移行し、攻撃表示の「SS-グリーフ」を守備表示! 俺はこれでターンエンド!」

先攻:男 / 手札:2 / LP:5000
□|□|□|□|□
□|□|□|□|□

□|サ|ヴ|不幸|□
□| □ |□ | . □ .|□
サ…怪人サターナーズ ATK/1200(1700) DEF/1500(2000) 攻撃
ヴ…超怪人ヴラド ATK/2500 DEF/1000 攻撃
不幸…SS-グリーフ ATK/0(800) DEF/1500 守備
後攻:構成員 / 手札:0 / LP:1400

男「俺のターン、ドロー!」

男はドローしたカードを確認し、手札と見合わせ、目を瞑る。
暫く考える素振りをした後、長く呼吸。

次に目を見開いた時、男の行動は早かった。

男「手札から通常魔法「増援」を発動。デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える」


「増援」 通常魔法
①:デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。


男「三枚目の「SS-グリーフ」を手札に加え、そのまま召喚する!」

男「召喚に成功した「SS-グリーフ」の効果を発動!」

男「ライフを1000払い、デッキから「SS」モンスター1体、「SS-ヘイト」を手札に加える!」LP:5000→4000

男「そして「SS」モンスターの効果でライフを払った時、手札のこのモンスターを特殊召喚できる!」

男「現れろ、「SS-ネメシス」!」

ヴィジョンの炎から、何かが飛び出す。
地面に足を付けたのは、仮面を付けた傷だらけの戦士。その背には、炎でできた翼が生えていた。

SS-ネメシス 炎 ☆6 ATK/1900 DEF/1500
戦士族/効果
①:自分が「SS」モンスターの効果でLPを払った場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選んで発動する。
 ●手札を1枚捨てる。デッキから「SS」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
 ●LPを1000払う。このターン、このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。

構成員「ここにきて、また半上級……だ、だが、「超怪人ヴラド」の攻撃力には!」

男「召喚・特殊召喚に成功した「SS-ネメシス」の効果を発動! 二つの効果から一つを選ぶ!」

男「俺は手札を1枚捨て、デッキから「SS」1体を特殊召喚する効果を選ぶ!」捨てたカード→SS-ヘイト

男「俺が特殊召喚するのは、2体目の「SS-ヴィンディクト」!」

「ネメシス」の炎の右翼が激しく燃え盛る。
本人と同じくらいに大きくなった炎の中から、「ヴィンディクト」が飛び出した。

構成員「こ、これは……まさか!」

構成員は、何かを感じ取った。男が達した勝利へ至る道を、遅れながら辿り始めたのだ。
だが、手札も無く、リバースカードも無い構成員にできる妨害は無い。
流れるような効果の連打に、構成員の顔は見る見る間に絶望に染まる。

男「特殊召喚に成功した「SS-ヴィンディクト」の効果発動! ライフを1000払い、墓地より「SS」を特殊召喚する!」LP:4000→3000

「ヴィンディクト」は、三度目の自己犠牲を行う。
今までよりも強く、大きく、燃える炎の中で、復讐を宿した眼が光る。

男「もう一度、起ち上がれ! 屈辱を背負い、復讐を成し遂げろ! 「SS-アヴェンジャー」!」

炎が消え、同胞の無念を引き継ぎ屹立するのは、傷だらけの戦士。
倒れていった仲間に送る鎮魂歌さえ歌えないものになってしまっても……。
その仲間の仇を討つ為に立ち上がるくらいならできるのだと、姿だけでただ示す。


「SS-アヴェンジャー」復活!


男「「SS-アヴェンジャー」の三つの効果から、最後の効果を選んで発動する!」

構成員「さ、最後の効果……?」

男「手札を1枚捨て、ライフを1000払う」LP:3000→2000 捨てたカード→ブレイクスルー・スキル

男「相手フィールドの表側表示モンスター1体の効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする」

構成員「そんな……!」

男「「超怪人ヴラド」の効果を無効にし、力を奪う! ソウルスティール!」

「アヴェンジャー」の右腕に光が宿る。それは、例えるならば希望の光。
背負った無念を晴らす為、力強く、その腕を「ヴラド」に向けて伸ばす。
そして放たれる、軌道の線で腕と繋がれた光のエネルギー。それは「ヴラド」に命中。

「ヴラド」の表情が歪んだ。上手く力を入れられないかのように体は震え、膝を衝く。
逆に、線で繋がる「アヴェンジャー」は、活力を得るようだった。
傍目に見て分かる、復讐の戦士は邪悪の権化から力を奪い取っていた。


「超怪人ヴラド」無力化!


構成員「お、俺のモンスターが!」

男「その後、「SS-アヴェンジャー」の攻撃力・守備力は、フィールドのカードの数×300アップする」

先攻:男 / 手札:0 / LP:2000
不幸…SS-グリーフ ATK/800 DEF/1500
復讐…SS-アヴェンジャー ATK/1900 DEF/1900
義憤…SS-ネメシス ATK/1900 DEF/1500
□| . □ .| . □ . | .□ . |□
□|不幸|復讐|義憤|□

□|サ|ヴ|不幸|□
□| □ | □| □ |□
サ…怪人サターナーズ ATK/1200(1700) DEF/1500(2000) 攻撃
ヴ…超怪人ヴラド ATK/0(2500) DEF/0(1000) 攻撃
不幸…SS-グリーフ ATK/0(800) DEF/500(1500) 守備
後攻:構成員 / 手札:0 / LP:1400

男「フィールドのカードは6枚。よって攻守1800アップし、3700!」

構成員「嘘だ、嘘だ!」

首を振りながら構成員は後ずさる。そして、脇目も降らずにその場から逃げ出した。
例えどこまで逃げようとも、デュエルの最中ならばヴィジョンの攻撃から逃げられないと知りながら。

男「バトルフェイズ! 「SS-アヴェンジャー」で、「超怪人ヴラド」に攻撃!」

その後ろ姿を見て尚、男の戦意はまるで失せない。

何故なら、奴が『カオスクロス』の構成員と言うだけで、完膚なきまでに叩きのめすには十分な理由となるからだ。

その戦意を代わりに執行せんと、「アヴェンジャー」は攻撃対象である「ヴラド」に迫る。
地面を抉って駆ける最中、「アヴェンジャー」の両腕には炎が宿る。
傷だらけの戦士、復讐の戦士、その怒りの炎を束ねた全てを、一撃に籠めて。

遁走を試みる主に追従する「ヴラド」だが、振り向き、迎撃の体制を取る。

男「正統なる復讐者として、その傷の復讐を果たせ!」

「アヴェンジャー」の炎は先に地上と空中を走り、そんな「ヴラド」の全身を絡め取る。
もがき、苦しみ、隙が生まれた「ヴラド」のその体を、「アヴェンジャー」は咆哮を上げ、全力のヴィジョンで殴った。

衝撃。爆風。

戦闘破壊。構成員のデュエルディスクに表示されるライフの数値が0となれば、デュエルは終了する。
だが、それまではヴィジョンが残る。燃える「ヴラド」の身体は、打撃のインパクトによって弾かれ、勢いを得た。
表示が0になる前に。ヴィジョンが崩壊する前に。
「ヴラド」の体は構成員と激突し、それを巻き込んで地面に転がった。

構成員「ぎゃああアアアァァァ!」LP:1400→0


デュエルが終了し、デュエルディスクが作り上げたヴィジョンが消える。
薄れ行く同胞のヴィジョンが、男へと振り返り……。

ただそれだけの仕草をして、再び正面を向いて、消えた。

デュエルの緊張を乗り越えた男は、体を弛緩させる。
途端に、疲労と堪えていた痛みが襲ってきた。
口に溜まった血反吐を吐き捨てる。生きていると言う事は、内臓器官の損傷も大した事ではない。

暫くして、男は立ち上がり、まず構成員に近づいた。
完全に意識を失い倒れたそれのデュエルディスクのモンスターゾーンに手を伸ばす。
コントロールを奪われた「グリーフ」のカードを回収するためだ。そっと手に取り、デッキに戻す。

続いて、デッキスペースを探す。自分が使っているものと殆ど同型であるようで、すぐに見つかった。
男は、それを無言で抜き取る。エクストラデッキも同様に確認、他のカードも奪う。
墓地も同じように抜き取り、後は、ヴィジョンとの激突の際に散らばったカードを拾い集める。

この構成員が持つカードは全て。それを確認した男は、構成員のデュエルディスクを思い切り踏み付け、破壊した。


これで、こいつが持つ力を全て奪った。目が覚めた時、己が奪われる側になったのだと気付く。
その後、どうなろうと知った事ではない。自分の行いを、自分の身を以って思い知ればいいのだ。


目的を達した男は、構成員が目覚める前に遠くへ離れようと考える。
だがその前に、思い出し、デュエルを行った場所まで戻る。

その傍で、横たわる少女。浅いながら呼吸を繰り返すところを見ると、生きてはいるようだ。
この少女も放っておけば、また狙われるだろう。
男は眉根を顰め、暫く考えた後、痛む内臓のあたりを摩りながら少女に近寄る。

そっと抱きかかえ、連れてその場を去った。
少女の後始末は思い付かなかったが、軽過ぎるこの体を放ってはおけなかった。


これは、全てがデュエルによって決まる世界の話。

富、地位、権利……全てがデュエルによって決まる。
全ての人間が、デュエルによって得、デュエルによって失う。
価値、愛する者、命……全てがデュエルによって奪われた。

そんな、殺伐とした世界に抗う、傷だらけの戦士たちの戦い……。
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のりってぃ
とてもへビーなストーリーと臨場感が溢れる大胆な表現が見事にマッチしていて本当に面白かったです!始まったばかりですけどこれからの展開にすごく期待しています! (2015-11-23 01:06)
げっぱ
>>のりってぃさん
コメントありがとうございます!
既に何度も編集している穴だらけの推敲かつ不完全な作品ですが、見捨てずに長らくお付き合い頂けたならと思います。 (2015-11-23 17:24)

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