第39話：運命を超えろ！　作：光芒

「エクスカリバー！？ あなたのデッキにも……」
「まあ、戦士族のデッキだからね。エクスカリバーの効果を発動。オーバーレイユニットを2つ取り除いて相手ターンの終了時までこのカードの攻撃力を倍にするよ」

H-C エクスカリバー ATK2000→4000

「メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行する。エクスカリバーでカミカゼを攻撃！“一刀両断・必殺神剣！”」

H-C エクスカリバー ATK4000 VS M・HERO カミカゼ ATK2700

「カミカゼは戦闘では破壊されないわ！！」
「だが超過した分のダメージは受けてもらうよ」

千夏 LP4000→2700

「っ……」
「しかしカミカゼは戦闘では破壊されず、またカミカゼがいる限り、僕はバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できない。そうだね？」
「ええ、そうよ。だからカミカゼを倒すにはカードの効果じゃなきゃいけないの。残念だったわね！」
「随分と得意気になっているけど、D-HEROは戦闘破壊耐性を持っているモンスターを除去できるモンスターが多々存在する。そのカードが来るまで耐えきれるかな？」
「耐えきる必要なんてないわ！ それまでに勝てばいいだけだもの！」
（……どこまでもポジティブだな。僕の占いは当たっていると思ったが……）
「僕はカードを1枚セットしてターンエンド」


命 LP5900　手札：2
デッキ：25　モンスター：1（H-C エクスカリバー）魔法・罠：3（幽獄の時計塔：時計カウンター1）墓地：11　除外：1
千夏 LP2700　手札：3
デッキ：29　モンスター:1（M・HERO カミカゼ）魔法・罠：2（リビングデッドの呼び声）墓地：8　除外：0


☆TURN06


「私のターン、ドローよ」
「スタンバイフェイズに時計塔の針はまた一つ時を刻むよ」

幽獄の時計塔 時計カウンター:1→2

「これで時計カウンターは2つ。時が満ちるまであと2つだ」
「それでもあと2ターン待たなきゃいけないし、第一時計塔はカウンターが全部乗った状態で破壊されないとドレッドガイを特殊召喚することは出来ないのよ」
「ご忠告ありがとう。でも時計塔の呪縛を相手に破壊してもらう気はさらさらないよ」

　そう言って不敵な笑みを見せる命。千夏はその顔を見て、命の手札に時計塔を破壊する手段があるのではないか、と推測する。最も時計塔のカウンターを4つ乗せるために必要なあのカードが無ければそれも意味をなさないのだが。

（もしあのセットカード2枚のうちあのカードがあったら……）
「私はカードを1枚セット。カミカゼを守備表示に変更してターンエンドよ」
「待った。エンドフェイズにセットカードを発動する。リバースカードオープン。罠カード“エターナル・ドレッド”だ」


※エターナル・ドレッド
通常罠
「幽獄の時計塔」に時計カウンターを2個乗せる。


「時計の針はさらに進む。そしてこれで時は満ちた」

幽獄の時計塔 時計カウンター:2→4

「やっぱりセットしていたのね……」
「これで時計塔の効果で僕はダメージを受けない。しかし、このカードの真髄はそこではない、なんてことは君も知っているよね？」


命 LP5900　手札：2
デッキ：25　モンスター：1（H-C エクスカリバー）魔法・罠：2（幽獄の時計塔：時計カウンター4）墓地：12　除外：1
千夏 LP2700　手札：3
デッキ：29　モンスター:1（M・HERO カミカゼ）魔法・罠：3（リビングデッドの呼び声）墓地：8　除外：0


☆TURN07

「僕のターン、ドロー。そして前のターンにダイヤモンドガイの効果で墓地に送った終わりの始まりの効果が適用される。さらに3枚ドロー……僕は速攻魔法サイクロンを発動」
「サイクロン……破壊するカードは……」
「当然、カウンターの4つ乗った幽獄の時計塔だね」

　サイクロンによって時計塔が崩れ落ちる。そのさなか、時計塔からは鉄仮面を被った筋骨隆々の男性をあしらったモンスターが飛び出し、命のフィールドに現れた。これこそが幽獄の時計塔に封じ込められたモンスターこと“D-HERO ドレッドガイ”である。


※D-HERO ドレッドガイ
効果モンスター
星8/闇属性/戦士族/攻？/守？
「幽獄の時計塔」の効果で特殊召喚した場合、自分フィールド上の「D-HERO」と名のついたモンスター以外の自分のモンスターを全て破壊する。
その後、自分の墓地から「D-HERO」と名のついたモンスターを2体まで特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚されたターン、自分フィールド上の「D-HERO」と名のついたモンスターは破壊されず、コントローラーへの戦闘ダメージは0になる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上のこのカードを除く「D-HERO」と名のついたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。


「時計塔が破壊されたことにより、デッキからドレッドガイが特殊召喚される。そしてドレッドガイが時計塔の効果で特殊召喚された場合、自分フィールドのD-HERO以外のモンスターは破壊される」

　ドレッドガイの力によってD-HEROではないエクスカリバーは破壊されてしまう。最も効果の切れたエクスカリバーの攻撃力は2000程度であり、フィールドに残しておく意味は薄かったのだが。

「その後、墓地からD-HERO2体を特殊召喚できる。特殊召喚するのは攻撃力3400のドグマガイと1400のダイヤモンドガイだ！」
「D-HERO最大攻撃力のドグマガイと厄介な効果を持ったダイヤモンドガイが戻ってきた……」
「そしてドレッドガイの攻撃力・守備力は自身以外のD-HEROの元々の攻撃力の合計となる。よってドレッドガイの攻守は……」

D-HERO ドレッドガイ ATK？/DEF？→ATK4800/DEF4800

「攻撃力4800！？」
「しかし戦闘では破壊されず、1体のモンスターでしか攻撃できなくなるカミカゼがいる限り君の負けはない。このモンスターたちの前に君がどれだけ持ちこたえられるのか、見させてもらうよ。おっと、ダイヤモンドガイの効果も忘れず使っておこう。デッキトップは……通常魔法の増援だね。次のターン、このカードの発動が確定したよ。僕はカードを2枚セットし、ターンエンドだ」


命 LP5900　手札：3
デッキ：19　モンスター：3（D-HERO ドレッドガイ、D-HERO ドグマガイ、D-HERO ダイヤモンドガイ）魔法・罠：3　墓地：14　除外：1
千夏 LP2700　手札：3
デッキ：29　モンスター:1（M・HERO カミカゼ）魔法・罠：3（リビングデッドの呼び声）墓地：8　除外：0


☆TURN08

「私のターン、ドロー！」

　千夏がデッキからカードをドローする。確かに脇に強力なD-HEROを従えたドレッドガイは強力無比と言える。現に千夏を守るカミカゼを処理されてしまえば一斉攻撃で千夏のライフは瞬く間に0になってしまう。
　しかし、そのドレッドガイにも弱点はある。そしてその弱点を突くカードを千夏は見事に引き当てたのだ。

「……？ いいカードを引けたのかな？」

　ドローしたカードを見て表情が明るくなる千夏に命は問いかける。

「ええ！ まず私は通常魔法、ハーピィの羽根箒を発動するわ！ これであなたのフィールドの魔法・罠は全て破壊される！」
「いいだろう、通すよ。しかし、すぐに発動しなかったのはなんでだい？」
「前のドローで引いていたけど、あなたの時計塔が気になってたしどっちにしてもエターナル・ドレッドを発動されてたわ。でも今は違う。私は……あなたのその3体のD-HEROを打ち倒す！」

　そう言って千夏は命を指さす。命は小さく「ほう」と声を出すに留まった。カード占いでは自分を過信しすぎるきらいが出ていたため、千夏は何処かで躓くはず。命はそう信じていた。
　しかし、今の千夏の目は逆境にあってなおギラギラと激しく輝いている。その姿にはとても彼女が躓いている姿を命は想像することが出来ずにいたのだ。

「私は今引いたE-エマージェンシーコールを発動するわ！ デッキからサーチするのは“E・HERO アナザー・ネオス”！ そしてこのカードを召喚！」


※E・HERO アナザー・ネオス
デュアル・効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1900/守1300
(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。
(2):フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードがモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「E・HERO ネオス」として扱う。


「……この局面でアナザー・ネオス？ いったい何を……」
「見てればわかるわ！ カミカゼを攻撃表示に変更してバトルフェイズ！ まずはアナザー・ネオスでダイヤモンドガイを攻撃！」

E・HERO アナザー・ネオス ATK1900 VS D-HERO ダイヤモンドガイ ATK1400

命 LP5900→5400

「ダイヤモンドガイを撃破！ これでドレッドガイの攻撃力は下がるわ！」

D-HERO ドレッドガイ ATK/DEF4800→3400

「確かにドレッドガイの攻撃力は下がる。しかしまだカミカゼよりも高い！」
「その通りよ。ねえ、なんで私がさっきアナザー・ネオスを手札に加えたと思う？ 戦闘でダイヤモンドガイを破壊するなら別に他のカードでも出来たけど……3年生で占い師のあなたならわかるはずよ？」
（……占い師は関係ないと思うけど）
「アナザー・ネオス……デュアル……まさかそのセットカードは！」
「正解よ、リバースカードオープン！ 速攻魔法“デュアルスパーク”！」


※デュアルスパーク
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するレベル4のデュアルモンスター1体をリリースし、フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。


「アナザー・ネオスをリリースし、ドグマガイを選択して発動！ ドグマガイを破壊するわ！ 行けぇー！ アナザー・ネオス！！」

　アナザー・ネオスの身体から発生した雷撃によってドグマガイが破壊される。これで命のフィールドにはドレッドガイ以外のD-HEROが存在しなくなってしまった。

「そしてデッキから1枚ドロー。ドレッドガイの攻撃力はこれで0よ！」

D-HERO ドレッドガイ ATK/DEF3400→0

「こんなことが……」
「カミカゼでドレッドガイを攻撃！“疾風怒濤”！！」

M・HERO カミカゼ ATK2700 VS D・HERO ドレッドガイ ATK0

命 LP5400→2700

「ぐっ……！！」
（まさか……！？）

　ドレッドガイを破壊され、ダイレクトアタックに等しいダメージを受けた命の身体が大きくのけ反る。今まではどこか余裕をもってこのデュエルに臨んでいた命であるが、彼の心には初めて動揺が生じていた。

「どう！ これでライフは互角よ！ そしてカミカゼが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキから1枚ドロー出来るわ！ 私はカードを1枚セットしてターンエンドよ！」
(まさか……彼女は指し示された運命を超えていくというのか……！？ いや、運命は変えられない。このデュエル……勝つのは僕だ！）


命 LP2700　手札：3
デッキ：19　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：17　除外：1
千夏 LP2700　手札：3
デッキ：25　モンスター:1（M・HERO カミカゼ）魔法・罠：3（リビングデッドの呼び声）墓地：11　除外：0