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第44話 アーチャーフェリスのお話⑤ 作:ハカラメ
注) ss初心者です! 二次設定その他もろもろにご注意ください。
うーん、やっぱり自分には会話文の方がやりやすいかも・・・ということで、過去編はここまでです。なんか、今までで一番文量書いたような・・・?
前回のあらすじ、初めてのバトル展開にも挑戦してみました。
~~~
「・・・」ピクッ
フェリス「・・・ん、うぅ・・ん? あ、あれ、ここは・・・どこ?」
フェリス「あたし、お頭達の後を隠れてついて行って・・・深い森の中に入って・・・そしたら霧が濃くなって、それで・・・」
そうだ、その後はお頭達を見失って、1人で歩いてたんだっけ。そして気が付いたらここに・・・。でも、ここは一体どこなの? 随分穏やかな雰囲気の森だけど・・・。
フェリス「もしかして、ここがライトロードの国・・・なの?」
ガサガサッ
フェリス「! だ、誰っ!?」
???「うおっ! な、なんだなんだ!?」
ビーストウォルフ「・・・ん? 見慣れない顔だな。村の者か?」
あたしの前に現れたのは、狼の顔をした獣人だった。やけにがたいのいい体からして、兵士なのは間違いなさそうだ。まずい・・・とりあえず脅して情報を得るか・・・
フェリス「おい、お前! ここはライトロードの国で間違いないな!?」
ウォルフ「そうだが・・・まさか、外の世界からやって来たのか?」
フェリス「そんな事はどうでもいい。財宝の場所を教えろ。さもないと、ここでお前は死ぬことになるぞ?」
あたしは、背に掛けていた弓矢を取り出し、獣人の方へと向けた。この矢には、デスガエルの粘液がたっぷりと塗ってある。これが刺されば、どんな奴だって一撃だ。
しかし、獣人の口から出た言葉は、あたしをひどく動揺させた。
ウォルフ「む? そんなものは、ここには無いぞ?」
フェリス「・・・えっ?」
ウォルフ「いやだから、財宝なんてここには無いと言ったんだ。逆に、こっちが欲しいくらいだよ」
フェリス「う、嘘をつくな! ここには金銀財宝があって、それを結界で守ってるって・・・!」
ウォルフ「結界を張ってあるのは・・・まぁ、そんな俗物的な理由ではないさ。話すと長くなるから、割愛させていただきたいのだが・・・」
フェリス「そ、そんな・・・」
ウォルフ「そもそも、私たちは今節約中でな。財政状況がよろしくないのだ。ケルビムも頭を悩ませていてなぁ・・・今だって、今日の夕食の足しにしようと、キノコ狩りをしようと森に入ったんだが・・・」
あたしは、あまりのショックに、獣人の話す事など、まったく耳に入っていなかった。財宝がない? それじゃあ、あたしはまた、あの生活に戻らなくちゃいけないのか・・・そんな、そんなの・・・
ウォルフ「しかし、参ったな。外の世界から入ってこられるはずがないんだがな・・・さて、どうしたものか・・・」
まずい。こいつにはあたしが外の世界から来たという事がバレている。それに、来た理由も・・・十中八九、生かしてはもらえないだろう。こうなったら・・・
ビュンッ!
ウォルフ「うおっ! な、何をする、いきなり!」サッ
ちっ、避けられたか。どうせ殺されるなら、ここでこいつを倒して、なんとかして逃げなければ・・・死んじゃったら、成り上がる事もできない!
あたしは、弓矢を抱えたまま、瞬時に木の上に飛び上がった。そして、木から木へ、枝から枝へ飛び移り、獣人をかく乱した。そして、狙いを定めると、
ビュンッ!
ウォルフ「む! まったく、こちらからはまだ何もしていないのだが・・・」サッ
ま、また避けられた!? そんな馬鹿な! あたしの弓矢のスキルは、故郷にいた時からずっと磨いてきたはずなのに・・・!
ビュンッ!
ウォルフ「くっ、またか」サッ
ビュンッ!
ウォルフ「おっと!」サッ
ビュンッ!
ウォルフ「よいしょっと!」サッ
な、なんかあいつ、ふざけてない・・・!?
~~~
数十分後。
ウォルフ「ふぅ・・・なんとか全部避けられたな。おーい、抵抗せずに降りてきなさーい!」
そ、そんな馬鹿な・・・! 矢を射る場所は、毎回変えてるし、射る瞬間もあいつは分からないはずなのに・・・なぜ避けられるの!?
・・・まぁいい。これであたしの「準備」は完成した。これならあいつを、間違いなく倒せる・・・
シュタッ
フェリス「こんなに射っても当たらないなんて・・・降参だ」
ウォルフ「む? やっと降りてきてくれたか。私は特に危害を加えようというわけでは・・・」
もちろん、降参する気なんてさらさら無い。獣人はすっかり気を許し、一歩二歩とあたしに近づいてくる。三歩、四歩、五歩・・・
今だっ!!!
ビュビュン、ビュビュン、ビュビュン!!!
ウォルフ「な、何!?」
グサグサッ
ウォルフ「グハッ! 何・・・だと・・・?」ドサッ
フェリス「・・・ふふふ、あははハハハ!!! やった、倒したぞ!」
そう、あたしはただ闇雲に木を飛び回っていたのではない。木の上に、たくさんの自動で打てる弓矢(術式)を仕掛けておいたのだ。そして、あたしが術式を発動すれば、あいつにたくさんの毒矢が突き刺さり、あいつは一撃で死・・・
フェリス「え・・・?」
ぐぐっ、と死んだはずの獣人の体が起き上がり・・・
ウォルフ「・・・ふんっ!」
と息を荒らげると、体に刺さっていた弓矢がすべてはじけ飛んだ。いや、違う。弓矢は一本も刺さっていなかった。すべて筋肉にはじかれて、そのどれもが折れ曲がっていた。体には、少しの傷もついていない...
ウォルフ「いやー、危なかった。修行を怠っていたら、今頃は串刺しだったな・・・」
フェリス「そ・・・んな・・・」
やばい、やばいやばいやばい。体からは自然と冷や汗が出る...
起き上がった獣人は、鋭い目でこちらを一瞥した。
ウォルフ「まったく、まだこちらからは何もしていないというのに・・・」
ウォルフ「攻撃したということは、明確な敵意があるということだな」
ウォルフ「攻撃したということは、自分も攻撃される覚悟がある、ということでいいのか?」
殺られる、と本能で察知した。頭で考えるよりも先に、足が出た。木を登り、枝を飛び移りながら、必死で奴から離れた。あんな化け物、戦って勝てる相手じゃない!
しかし、獣人の足も速かった。あっという間にあたしのいる木にまで追いつくと、「ふんっ!」という掛け声と共に、あたしのいる木を蹴りでへし折った。
素早くあたしは地面に降りたが、獣人はすでにあたしの方へ狙いを定めてこぶしを挙げた。
ドゴォォッ!!
ぎりぎりの所でかわしたそのこぶしは、あたしの足元の地面を揺らした。大きな地響きとともに、地面には深く亀裂が入る。
こ、こんなのムチャクチャだ! あんな攻撃が当たったら、一撃で殺られる!は、はやく、早く逃げなきゃ・・・
ドンッ、という衝撃が背中に響いた。ハッとして後ろを向くと、そこには大きな岩が鎮座していた。そうか、あたしは逃げてるつもりが、いつの間にか追い詰められていたのか・・・
獣人は、なおも鋭い眼光をこちらに向けている。あたしは、その時すべてを諦めた。
フェリス「ここ、までか・・・」
フェリス「殺・・・しなよ・・・」
どうせ、生きてたって、何もいいことなんてない。どうせ外の世界に帰ったって、またあの生活に逆戻りするだけだ。それなら、いっそ・・・
獣人は、握りしめたこぶしを、高く上げると、その手を、一気に振り下ろした・・・
ドゴオオォォォン!!!
その、振り下ろした手は、あたし・・・ではなく、後ろの岩に当たった。岩は、まるで爆弾のように四方八方に砕け散った。
フェリス「どう・・・して・・・?」
ウォルフ「どうしても何も、私は最初から、お前を殺そうとなど、思っていないぞ。私は、無益な殺生は嫌いな経ちでな」
フェリス「殺してくれれば、よかったのに・・・」
ウォルフ「私より若い者が、死にたい、か・・・人生に絶望するには、まだまだ早いぞ。今は苦しくても、いつかいい事がやってくるものだ」
フェリス「そんな事・・・ない」
ウォルフ「はっはっは! 決めつけるのはよくないぞ? そうだな、それじゃあ・・・」
「お前、ライトロードに入らないか?」
フェリス「・・・は?」
ウォルフ「いや、ここの結界をすり抜けられたという事は、お前にももしかしたらライトロードになる素質があるかもしれない。適正検査は少し先になるかもしれないが、上手くいけば、ここで正式に暮らせるようになるぞ」
フェリス「・・・わ、私が、ここで、暮らす・・・?」
ウォルフ「そうだ。わざわざ向こうに戻る必要なんてない。ここで、新しい夢を、希望を、幸せを見つければいいじゃないか。もし、幸せになれなかったら、その時はこの私を殺してくれてもかまわんぞ?」
フェリス「・・・ふふっ」
フェリス「あははハハハ! ハハハ・・・はぁはぁ・・・絶対殺せないよ。だってアンタ強いし・・・」
ウォルフ「なら、ここでたくさん修行すればいいだろう? 私のように、強くなれるぞ?」
フェリス「アハハっ!・・・」
ウォルフ「どうする? 決めるのは、お前次第だが・・・」
フェリス「・・・よ、よろしくお願いします・・・ニャ」
フェリス「!?!?」
ウォルフ「ん?」
し、しまった~! 安心したせいで、つい故郷の方言が出ちゃった・・・! みんなに馬鹿にされるから、ずっと隠してたのに・・・!
ウォルフ「今、ニャ、とか言わなかったか?」
フェリス「い、言ってないニャ・・・ハッ、また・・!」
ウォルフ「くふっ、はっはっはっはっ!!」
フェリス「わ、笑うニャアアアアァァァ!!!」
あたしは、獣人・・・ウォルフさんに背負われながら、神殿を目指して歩いていた。さっきの戦いで、すっかり腰が抜けてしまったのだ・・・無念。
フェリス「ねぇ、あたしにも、いい事って、起きるのかニャ?」
ウォルフ「もちろんさ。それが、お前の救いになるさ・・・」
ウォルフ「私が、かつてそうだったようにな・・・」ボソッ
フェリス「? 何か言ったニャ?」
ウォルフ「いや、何も」
フェリス「そう・・・か・・・ニャ・・・」
ウォルフさんの背中は、もっとごつごつしてるかと思ったけれど、案外毛並みがモフモフしてて、暖かかった。あたしは、戦いの疲れからか、それとも、ウォルフさんに安心感を感じたのか・・・ゆっくりと、意識が、遠のいて行って・・・
ウォルフ「・・・おや、眠ってしまったか・・・」
あたしは、ウォルフさんに背負われながら、ひと時の眠りについたのだった・・・
そして・・・
次に目が覚めた時、あたしは・・・あたしの世界は、たくさんの光に満ち溢れていたのだった・・・
第45話に続く
うーん、やっぱり自分には会話文の方がやりやすいかも・・・ということで、過去編はここまでです。なんか、今までで一番文量書いたような・・・?
前回のあらすじ、初めてのバトル展開にも挑戦してみました。
~~~
「・・・」ピクッ
フェリス「・・・ん、うぅ・・ん? あ、あれ、ここは・・・どこ?」
フェリス「あたし、お頭達の後を隠れてついて行って・・・深い森の中に入って・・・そしたら霧が濃くなって、それで・・・」
そうだ、その後はお頭達を見失って、1人で歩いてたんだっけ。そして気が付いたらここに・・・。でも、ここは一体どこなの? 随分穏やかな雰囲気の森だけど・・・。
フェリス「もしかして、ここがライトロードの国・・・なの?」
ガサガサッ
フェリス「! だ、誰っ!?」
???「うおっ! な、なんだなんだ!?」
ビーストウォルフ「・・・ん? 見慣れない顔だな。村の者か?」
あたしの前に現れたのは、狼の顔をした獣人だった。やけにがたいのいい体からして、兵士なのは間違いなさそうだ。まずい・・・とりあえず脅して情報を得るか・・・
フェリス「おい、お前! ここはライトロードの国で間違いないな!?」
ウォルフ「そうだが・・・まさか、外の世界からやって来たのか?」
フェリス「そんな事はどうでもいい。財宝の場所を教えろ。さもないと、ここでお前は死ぬことになるぞ?」
あたしは、背に掛けていた弓矢を取り出し、獣人の方へと向けた。この矢には、デスガエルの粘液がたっぷりと塗ってある。これが刺されば、どんな奴だって一撃だ。
しかし、獣人の口から出た言葉は、あたしをひどく動揺させた。
ウォルフ「む? そんなものは、ここには無いぞ?」
フェリス「・・・えっ?」
ウォルフ「いやだから、財宝なんてここには無いと言ったんだ。逆に、こっちが欲しいくらいだよ」
フェリス「う、嘘をつくな! ここには金銀財宝があって、それを結界で守ってるって・・・!」
ウォルフ「結界を張ってあるのは・・・まぁ、そんな俗物的な理由ではないさ。話すと長くなるから、割愛させていただきたいのだが・・・」
フェリス「そ、そんな・・・」
ウォルフ「そもそも、私たちは今節約中でな。財政状況がよろしくないのだ。ケルビムも頭を悩ませていてなぁ・・・今だって、今日の夕食の足しにしようと、キノコ狩りをしようと森に入ったんだが・・・」
あたしは、あまりのショックに、獣人の話す事など、まったく耳に入っていなかった。財宝がない? それじゃあ、あたしはまた、あの生活に戻らなくちゃいけないのか・・・そんな、そんなの・・・
ウォルフ「しかし、参ったな。外の世界から入ってこられるはずがないんだがな・・・さて、どうしたものか・・・」
まずい。こいつにはあたしが外の世界から来たという事がバレている。それに、来た理由も・・・十中八九、生かしてはもらえないだろう。こうなったら・・・
ビュンッ!
ウォルフ「うおっ! な、何をする、いきなり!」サッ
ちっ、避けられたか。どうせ殺されるなら、ここでこいつを倒して、なんとかして逃げなければ・・・死んじゃったら、成り上がる事もできない!
あたしは、弓矢を抱えたまま、瞬時に木の上に飛び上がった。そして、木から木へ、枝から枝へ飛び移り、獣人をかく乱した。そして、狙いを定めると、
ビュンッ!
ウォルフ「む! まったく、こちらからはまだ何もしていないのだが・・・」サッ
ま、また避けられた!? そんな馬鹿な! あたしの弓矢のスキルは、故郷にいた時からずっと磨いてきたはずなのに・・・!
ビュンッ!
ウォルフ「くっ、またか」サッ
ビュンッ!
ウォルフ「おっと!」サッ
ビュンッ!
ウォルフ「よいしょっと!」サッ
な、なんかあいつ、ふざけてない・・・!?
~~~
数十分後。
ウォルフ「ふぅ・・・なんとか全部避けられたな。おーい、抵抗せずに降りてきなさーい!」
そ、そんな馬鹿な・・・! 矢を射る場所は、毎回変えてるし、射る瞬間もあいつは分からないはずなのに・・・なぜ避けられるの!?
・・・まぁいい。これであたしの「準備」は完成した。これならあいつを、間違いなく倒せる・・・
シュタッ
フェリス「こんなに射っても当たらないなんて・・・降参だ」
ウォルフ「む? やっと降りてきてくれたか。私は特に危害を加えようというわけでは・・・」
もちろん、降参する気なんてさらさら無い。獣人はすっかり気を許し、一歩二歩とあたしに近づいてくる。三歩、四歩、五歩・・・
今だっ!!!
ビュビュン、ビュビュン、ビュビュン!!!
ウォルフ「な、何!?」
グサグサッ
ウォルフ「グハッ! 何・・・だと・・・?」ドサッ
フェリス「・・・ふふふ、あははハハハ!!! やった、倒したぞ!」
そう、あたしはただ闇雲に木を飛び回っていたのではない。木の上に、たくさんの自動で打てる弓矢(術式)を仕掛けておいたのだ。そして、あたしが術式を発動すれば、あいつにたくさんの毒矢が突き刺さり、あいつは一撃で死・・・
フェリス「え・・・?」
ぐぐっ、と死んだはずの獣人の体が起き上がり・・・
ウォルフ「・・・ふんっ!」
と息を荒らげると、体に刺さっていた弓矢がすべてはじけ飛んだ。いや、違う。弓矢は一本も刺さっていなかった。すべて筋肉にはじかれて、そのどれもが折れ曲がっていた。体には、少しの傷もついていない...
ウォルフ「いやー、危なかった。修行を怠っていたら、今頃は串刺しだったな・・・」
フェリス「そ・・・んな・・・」
やばい、やばいやばいやばい。体からは自然と冷や汗が出る...
起き上がった獣人は、鋭い目でこちらを一瞥した。
ウォルフ「まったく、まだこちらからは何もしていないというのに・・・」
ウォルフ「攻撃したということは、明確な敵意があるということだな」
ウォルフ「攻撃したということは、自分も攻撃される覚悟がある、ということでいいのか?」
殺られる、と本能で察知した。頭で考えるよりも先に、足が出た。木を登り、枝を飛び移りながら、必死で奴から離れた。あんな化け物、戦って勝てる相手じゃない!
しかし、獣人の足も速かった。あっという間にあたしのいる木にまで追いつくと、「ふんっ!」という掛け声と共に、あたしのいる木を蹴りでへし折った。
素早くあたしは地面に降りたが、獣人はすでにあたしの方へ狙いを定めてこぶしを挙げた。
ドゴォォッ!!
ぎりぎりの所でかわしたそのこぶしは、あたしの足元の地面を揺らした。大きな地響きとともに、地面には深く亀裂が入る。
こ、こんなのムチャクチャだ! あんな攻撃が当たったら、一撃で殺られる!は、はやく、早く逃げなきゃ・・・
ドンッ、という衝撃が背中に響いた。ハッとして後ろを向くと、そこには大きな岩が鎮座していた。そうか、あたしは逃げてるつもりが、いつの間にか追い詰められていたのか・・・
獣人は、なおも鋭い眼光をこちらに向けている。あたしは、その時すべてを諦めた。
フェリス「ここ、までか・・・」
フェリス「殺・・・しなよ・・・」
どうせ、生きてたって、何もいいことなんてない。どうせ外の世界に帰ったって、またあの生活に逆戻りするだけだ。それなら、いっそ・・・
獣人は、握りしめたこぶしを、高く上げると、その手を、一気に振り下ろした・・・
ドゴオオォォォン!!!
その、振り下ろした手は、あたし・・・ではなく、後ろの岩に当たった。岩は、まるで爆弾のように四方八方に砕け散った。
フェリス「どう・・・して・・・?」
ウォルフ「どうしても何も、私は最初から、お前を殺そうとなど、思っていないぞ。私は、無益な殺生は嫌いな経ちでな」
フェリス「殺してくれれば、よかったのに・・・」
ウォルフ「私より若い者が、死にたい、か・・・人生に絶望するには、まだまだ早いぞ。今は苦しくても、いつかいい事がやってくるものだ」
フェリス「そんな事・・・ない」
ウォルフ「はっはっは! 決めつけるのはよくないぞ? そうだな、それじゃあ・・・」
「お前、ライトロードに入らないか?」
フェリス「・・・は?」
ウォルフ「いや、ここの結界をすり抜けられたという事は、お前にももしかしたらライトロードになる素質があるかもしれない。適正検査は少し先になるかもしれないが、上手くいけば、ここで正式に暮らせるようになるぞ」
フェリス「・・・わ、私が、ここで、暮らす・・・?」
ウォルフ「そうだ。わざわざ向こうに戻る必要なんてない。ここで、新しい夢を、希望を、幸せを見つければいいじゃないか。もし、幸せになれなかったら、その時はこの私を殺してくれてもかまわんぞ?」
フェリス「・・・ふふっ」
フェリス「あははハハハ! ハハハ・・・はぁはぁ・・・絶対殺せないよ。だってアンタ強いし・・・」
ウォルフ「なら、ここでたくさん修行すればいいだろう? 私のように、強くなれるぞ?」
フェリス「アハハっ!・・・」
ウォルフ「どうする? 決めるのは、お前次第だが・・・」
フェリス「・・・よ、よろしくお願いします・・・ニャ」
フェリス「!?!?」
ウォルフ「ん?」
し、しまった~! 安心したせいで、つい故郷の方言が出ちゃった・・・! みんなに馬鹿にされるから、ずっと隠してたのに・・・!
ウォルフ「今、ニャ、とか言わなかったか?」
フェリス「い、言ってないニャ・・・ハッ、また・・!」
ウォルフ「くふっ、はっはっはっはっ!!」
フェリス「わ、笑うニャアアアアァァァ!!!」
あたしは、獣人・・・ウォルフさんに背負われながら、神殿を目指して歩いていた。さっきの戦いで、すっかり腰が抜けてしまったのだ・・・無念。
フェリス「ねぇ、あたしにも、いい事って、起きるのかニャ?」
ウォルフ「もちろんさ。それが、お前の救いになるさ・・・」
ウォルフ「私が、かつてそうだったようにな・・・」ボソッ
フェリス「? 何か言ったニャ?」
ウォルフ「いや、何も」
フェリス「そう・・・か・・・ニャ・・・」
ウォルフさんの背中は、もっとごつごつしてるかと思ったけれど、案外毛並みがモフモフしてて、暖かかった。あたしは、戦いの疲れからか、それとも、ウォルフさんに安心感を感じたのか・・・ゆっくりと、意識が、遠のいて行って・・・
ウォルフ「・・・おや、眠ってしまったか・・・」
あたしは、ウォルフさんに背負われながら、ひと時の眠りについたのだった・・・
そして・・・
次に目が覚めた時、あたしは・・・あたしの世界は、たくさんの光に満ち溢れていたのだった・・・
第45話に続く
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102 | 第46話 アーチャーフェリスのお話⑦ | 849 | 0 | 2015-10-10 | - | |
36 | 第47話 アーチャーフェリスのお話⑧ | 1011 | 2 | 2015-10-13 | - | |
53 | 閑話休題その7 解説と雑談 | 931 | 2 | 2015-10-14 | - | |
117 | 第48話 変態同盟ショート&ショート | 981 | 2 | 2015-10-16 | - | |
63 | 第49話 小さな来訪者のお話① | 894 | 2 | 2015-10-18 | - | |
86 | 第50話 小さな来訪者のお話② | 956 | 0 | 2015-10-19 | - | |
53 | 第51話 小さな来訪者のお話③ | 840 | 2 | 2015-10-20 | - | |
77 | 第52話 小さな来訪者のお話④ | 1103 | 2 | 2015-10-21 | - | |
55 | 第53話 メイのライトロード見学のお話① | 979 | 0 | 2015-10-24 | - | |
48 | 第54話 メイのライトロード見学のお話② | 941 | 2 | 2015-10-25 | - | |
85 | 第55話 メイのライトロード見学のお話③ | 965 | 0 | 2015-10-27 | - | |
58 | 第56話 メイのライトロード見学のお話④ | 930 | 4 | 2015-10-29 | - | |
93 | 第57話 ミネルバの梟は夕暮れに飛び立つ | 894 | 0 | 2015-10-31 | - | |
95 | 閑話休題その8 解説と雑談 | 896 | 2 | 2015-11-03 | - | |
68 | 第58話「 ライトロードあるある」のお話 | 1053 | 4 | 2015-11-05 | - | |
60 | 第59話 ウォルフの昔話のお話① | 773 | 0 | 2015-11-08 | - | |
66 | 第60話 ウォルフの昔話のお話② | 1007 | 2 | 2015-11-12 | - | |
102 | 第61話 ジェインの休日のお話 | 1018 | 2 | 2015-11-15 | - | |
112 | 第62話 ライト・バニッシュのお話 | 910 | 2 | 2015-11-21 | - | |
86 | 第63話 スピリットシャイアのお話 | 934 | 4 | 2015-11-24 | - | |
115 | 第64話 大天使クリスティアのお話 | 1224 | 2 | 2015-11-26 | - | |
111 | 第65話 ✖✖✖のお話 | 973 | 0 | 2015-12-01 | - | |
110 | 閑話休題その9 解説と雑談 | 797 | 2 | 2015-12-03 | - | |
127 | 第66話 裁きの龍のお話① | 980 | 2 | 2015-12-08 | - | |
82 | 第67話 裁きの龍のお話② | 916 | 2 | 2015-12-11 | - | |
70 | 第68話 裁きの龍のお話③ | 1000 | 4 | 2015-12-16 | - | |
49 | 第69話 裁きの龍のお話④ | 806 | 2 | 2015-12-18 | - | |
54 | 第70話 裁きの龍のお話⑤ | 840 | 2 | 2015-12-22 | - | |
57 | 第71話 裁きの龍のお話⑥ | 897 | 0 | 2015-12-24 | - | |
84 | 特別編 変態同盟SアンドSスペシャル! | 1005 | 4 | 2015-12-28 | - | |
84 | 第72話 とある勇者と龍のお話・序 | 855 | 2 | 2016-01-05 | - | |
65 | 第73話 とある勇者と龍のお話① | 911 | 2 | 2016-01-18 | - | |
92 | 第74話 とある勇者と龍のお話② | 862 | 2 | 2016-01-20 | - | |
126 | 第75話 とある勇者と龍のお話③ | 908 | 4 | 2016-01-26 | - | |
47 | 第76話 とある勇者と龍のお話④ | 1006 | 4 | 2016-02-02 | - | |
73 | 第77話 とある勇者と龍のお話⑤ | 850 | 4 | 2016-02-29 | - | |
101 | 第78話 とある勇者と龍のお話⑥ | 875 | 4 | 2016-03-02 | - | |
109 | 第79話 とある勇者と龍のお話・結 | 929 | 8 | 2016-03-07 | - | |
60 | 第80話 動き始めた世界のお話 | 802 | 4 | 2016-03-14 | - | |
71 | 閑話休題10 裁きの龍編の解説 | 772 | 2 | 2016-03-23 | - | |
93 | 第81話 終わりの始まり、闇の中にて | 826 | 6 | 2016-04-24 | - | |
119 | 第82話 新たな出会いのお話① | 860 | 4 | 2016-04-27 | - | |
52 | 第83話 新たな出会いのお話② | 716 | 2 | 2016-05-05 | - | |
112 | 第84話 新たな出会いのお話③ | 919 | 2 | 2016-05-08 | - | |
125 | 第85話 新たな出会いのお話④ | 946 | 4 | 2016-06-08 | - | |
64 | 番外編・日常編トリオの座談会 | 750 | 4 | 2016-07-02 | - | |
123 | コラボ企画 変態同盟inアマゾネスの里① | 908 | 4 | 2016-07-10 | - | |
99 | コラボ企画 変態同盟inアマゾネスの里② | 902 | 1 | 2016-08-14 | - | |
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今回は、いかにウォルフさんをカッコよく書けるかに挑戦しました。いや~、元々カッコいいのをさらにカッコよくするのは大変でしたね~、ホント(笑)
「人を好きになるのは3秒で決まる」と言いますし、フェリスちゃんが惚れたのも納得ですね。 (2015-10-07 21:57)