side京子：絆の力、結束の力（後編）　作：名無しのゴーレム

「融合召喚！ 奈落王 アザゼル！」


……な、何なのあのモンスター……ウリアとは桁違いの力を感じる。と言うか、あれはまるで……


「キヒヒ。アザゼルを前にして声も出せないみたいだね。これこそ神をも倒しうる悪魔、もうお前たちに勝ち目はないんだよ！」
「……何言ってるのやら。たかがモンスター1体で、よくそこまで強気になれるものね。」


風音さんも強気に振舞って見せているけれど、きっとこの威圧感を感じとっているはず。一体、どんな効果を持っているのか……


「アザゼルの効果発動！ 1ターンに1度、私の墓地の罠カード1枚をセットする！ 私は激流葬をセット！ アザゼルの攻撃力は私の場の伏せカードの枚数×1000ポイントアップする！」

奈落王 アザゼル 攻撃力0→2000

「私はこれでターンエンド！ さぁ、災厄の前に絶望しろ！」


風音＆京子 LP8000 モンスターゾーン 剣闘獣ヘラクレイノス、神竜騎士フェルグラント、魔轟神レイジオン 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
月詠＆心希 LP2500 モンスターゾーン 奈落王 アザゼル、トラップ・サポーター 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚


「私のターン、ドロー！ ……いくらあなたの場に罠があっても、発動させなければ問題ないわ！ バトル！ レイジオンでアザゼルを攻撃！」


アザゼルの攻撃力は2000。これで破壊できるはず、だけど……


「キヒヒッ！ 誰がアザゼルの効果が自分のターンにしか発動出来ないと言った！ アザゼルの効果発動！ 墓地のデモンズ・チェーンをセット！」
「なっ……しまった！？」


奈落王 アザゼル 攻撃力2000→3000

風音＆京子 LP8000→7300

「くうっ……まだよ！ ヘラクレイノスでアザゼルに攻撃！」


相討ち狙い……？ そうか、アザゼルを破壊しなければずっと罠が増え続ける。それを防ぐために……


「甘いんだよ！ アザゼルは伏せカード1枚を墓地に送って破壊を無効に出来る！」
「そんなぁ！？」

奈落王 アザゼル 攻撃力3000→2000

ヘラクレイノスだけが墓地に送られた。……毎ターン罠カードをセットし続け、自分の破壊は伏せカードを身代わりに……


「こんなの、どうやって倒せば……」
「倒すぅ？ 無理だよ！ アザゼルは神に匹敵するモンスター、倒したいなら神を持ってこい！」
「……ハッ、『神』？ 笑わせないで、そんなカード、私が倒してやるわよ。フェルグラントでアザゼルを攻撃！」
「伏せカードを墓地に送って、アザゼルの破壊を無効にする！」

月詠＆心希 LP2500→1700

奈落王 アザゼル 攻撃力2000→1000

「……フッ、これで詰みよ！ リバースカードオープン！ 永続罠、闇次元の解放！ 除外されているシルバを特殊召喚！」
「リバースカードオープン！ 通常罠、激流葬！ すべてのモンスターを破壊する！」


……あ！ これで伏せカードはなくなった。つまり……

奈落王 アザゼル 攻撃力1000→0


「掛かったわね！ もう盾にする伏せカードもない、あなたのカードによってアザゼルは破壊されるのよ！」


……すごい。無敵に見えたアザゼルを、こんなにすぐに攻略するなんて……


「……キヒヒ、キヒヒヒヒ！！ 馬鹿め、アザゼルは罠カードの効果を受けないんだよ！」
「……な、なんですって！？」


激流が場を蹂躙した、その後には……


「これでフィールドにはアザゼルのみ！ さあ、まだ何か出来るの？」
「……ッ、墓地のワイバースターを除外して、手札から暗黒竜 コラプサーペントを特殊召喚。これで、ターンエンド……」
「ほら、お前たちにアザゼルを倒すなんて不可能なんだよ！ このカードがある限り、私は……グホッ！？」
「！！ 心希！？」


突如、心希が吐血した。


「……え？」
「血、血が出てるよ！？ それ、大丈夫なの……」
「黙ってろ！ くっ、さすがに連続は身体が持たないか……」
「心希！ まさか、そのカードは……」
「……当たり前でしょ？ 神に並ぶ力、そんなものを何の代償もなく扱える訳がないでしょ……」
「……マスターは、それを知って心希にそのカードを渡したんですか！？」
「もちろん。」
「……心希、今すぐデュエルを止めてください！ これ以上は、心希の身体が……」
「うるさい！ ……止めるものか。私はマスターの命令を実行する、そのためなら命だって惜しくない！ ……私の身を案じるなら、早くこいつらを倒して私を休ませてよ。」
「ッ……分かりました。」





風音＆京子 LP7300 モンスターゾーン 暗黒竜 コラプサーペント（表側守備表示）
月詠＆心希 LP1700 モンスターゾーン 奈落王 アザゼル


「私のターン、ドロー。……カードを3枚セット。アザゼルの効果で墓地の激流葬をセット。」

奈落王 アザゼル 攻撃力0→4000

「そして手札から通常魔法、ブラック・ホール発動。伏せカード1枚を墓地に送り、アザゼルの破壊を無効にします。」
「そんなぁ！？」

奈落王 アザゼル 攻撃力4000→3000

「バトル。アザゼルでダイレクトアタック。」

風音＆京子 LP7300→4300

「くっ……」
「きゃぁ！？」
「私はこれでターンエンド。」


風音＆京子 LP4300
月詠＆心希 LP1700 モンスターゾーン 奈落王 アザゼル 魔法・罠ゾーン 伏せカード3枚


「……私のターン、ドロー！」


アザゼルを倒す方法を考えないと……伏せカードの破壊？ 私の手札にはそんなカードはない。ならアザゼルを直接除去？ でもアザゼルを破壊するのは……ん？


（待って、『破壊』？ 確かアザゼルの耐性は破壊されたときだけのはず。それなら……）


「……もう手詰まり？ ならさっさとサレンダーしなよ！」
「サレンダーなんてするもんか！ 私はカードを3枚セットしてターンエンド！」
「アザゼルの効果発動。墓地の強制脱出装置をセットします。」

奈落王 アザゼル 攻撃力3000→4000


風音＆京子 LP4300 魔法・罠ゾーン 伏せカード3枚
月詠＆心希 LP1700 モンスターゾーン 奈落王 アザゼル 魔法・罠ゾーン 伏せカード4枚


「私のターン、ドロー！ グッ……カードを1枚セット。」

奈落王 アザゼル 攻撃力4000→5000

攻撃力、5000……


「これで終わりだ！ 行け、アザゼル！ 愚かな反逆者を刈り取れ！」
「まだ終わらないよ！ リバースカードオープン！ 通常罠、和睦の使者！ このターン、私が受ける戦闘ダメージを0にする！」
「くっ……時間稼ぎのつもり？ けどそれも無駄、アザゼルを倒すなんて不可能なんだよ！」
「……本当に？」
「……何？」
「あなたはさっき、『アザゼルは伏せカード1枚を墓地に送って破壊を無効に出来る』って言ったよね。」
「そうだよ。それがどうしたの？」
「……それは後のお楽しみだよ。風音さん、任せたよ！」


風音＆京子 LP4300 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
月詠＆心希 LP1700 モンスターゾーン 奈落王 アザゼル 魔法・罠ゾーン 伏せカード5枚


「……私のターン、ドロー！ ……京子ちゃん、遠慮なく使わせてもらうわよ。」
「うん！ その代わり、必ず勝ってよ！」
「？ お前ら、何を……」
「今に分かるわよ！ リバースカードオープン！ 通常罠、トラップ・スタン！ このターン、すべての罠カードの効果を無効にする！」
「……何だと！？」
「さらにもう1枚、リバースカードオープン！ 通常魔法、死者蘇生！ 墓地のシルバを特殊召喚する！ そして手札から魔轟神クシャノを召喚！」
「……ハッ、そんなモンスターを並べたところで、アザゼルには……」
「いいえ、そのモンスターには今度こそ退場してもらうわよ。私はレベル5のシルバにレベル3のクシャノをチューニング！ シンクロ召喚！ 舞い降りろ、ダークエンド・ドラゴン！ ダークエンド・ドラゴンの効果発動！ このモンスターの攻撃力・守備力を500下げて、あなたのモンスター、アザゼルを墓地に送る！」
「なっ……『墓地に送る』だと！？」
「そうよ！ 再び奈落に帰りなさい！ お願い、ダークエンド！」

ダークエンド・ドラゴン 攻撃力2600→2100

ダークエンドの放ったブレスに包まれて、アザゼルは姿を消していく。


「……や、やめろぉ！！ マスターにもらった、アザゼルが……」
「バトルよ！ 行け、ダークエンド！」
「ぐっ、ぐわぁぁ！！」
「きゃあぁぁ！！」

月詠＆心希 LP1700→0




「……私たちの勝ちよ。」
「くっ、どうして……」
「そんなの決まってるじゃん。あなたは自分1人の力で勝とうとした。でもこれはタッグデュエル、2人で力を合わせないで勝てるわけがないよ。」
「そんな、こと……もう1度だ、次は、きっと……」


その言葉を言い切ることなく、心希は力尽きた。そこに、心希のパートナーだった少女が駆け寄る。


「心希！？ 大丈夫ですか！？」
「……血を吐いていて大丈夫なはずがないでしょ。その子を渡しなさい。私が近くの病院まで連れて行くわ。」
「……その必要はありません。」
「……？ そんなはずは……！？」


……えっ！？ 心希の身体が徐々に光となって消えていく。


「な、何が起きてるの……？」
「……彼女はアカデミアへ強制送還されます。重度の負傷をした場合にはそうなるようになっていますから。」
「……そう。あなたはどうするの？ 言っとくけど、ただで帰すとは思わないでよ。」
「分かっています。……降伏します。故に、捕虜としての扱いを求めます。」
「ほ、捕虜……？」


……えーと、どういう意味だっけ？


「……とりあえず、私たちと一緒に来なさい。話はそこでするわ。」
「……分かりました。」


……え？ どうなってるの？


「京子ちゃん、戻りましょうか。そこの男の子も連れて、ね。」
「……あ、郁哉！」


忘れてた！ 早く手当てしないと！


「うーん！ ……郁哉、重いよ！」
「……私も手伝います。」
「え！？ ……えーと、ありがとう。」


……何がどうしてこうなったの？