side月詠：不死の大英雄VS蘇る太陽神　作：名無しのゴーレム

「「デュエル！！」」


神宮寺 郁哉が敦人とデュエルを始めてしまった。2枚の神のカードを持つ敦人に、神宮寺 郁哉は一体どうやって立ち向かうのか……


郁哉 LP4000 手札5枚
敦人 LP4000 手札5枚


「俺のターン！ 手札から永続魔法、英雄の信奉者発動！ 手札の古の騎士 ナラシンハ、古の騎士 ヘクトール、古の騎士 ヘラクレスを見せて、3体の信奉者トークンを特殊召喚する！」


一気に3体のモンスターを……それでも攻撃力は0、ここからどう繋げるのだろうか。


「……行くぞ！ 俺は3体の信奉者トークンをリリースする！ 無敵の力を誇る不死の英雄よ！ 並み居る敵を薙ぎ倒し、絶対の勝利を掴め！ 来い、古の騎士 ヘラクレス！」


神宮寺 郁哉の場に巨大な戦士が現れる。……その衝撃、それはまさに神のそれであった。


「こいつは正真正銘、俺の最大の切り札だ。たとえ神のカードだって、そう簡単には……」



「……『古の騎士』、だって？」


……？ 敦人が神宮寺 郁哉のカードに反応する。一体何が……？


「……まさか、お前…」
「……？ なんだよ。」
「いや、そんなはずは、だって……」
「何言ってんだ。さっさと続ける……」
「…………ハハハハ！！」


突然、敦人が笑い声を上げる。あんな敦人、今まで見たことがない……


「アハハハハ、ハハハハ！！……ハ、この世界は狂ってる！ これが神様が決めた運命だって言うのか！ 馬鹿げてやがる！」
「……おい、だからお前はさっきから…」
「……確か、『神宮寺 郁哉』だったか。郁哉、まさかこんなことになるなんて思わなかったさ！ まったく、ふざけたこともあったもんだ！」


……駄目だ、敦人の言っていることが分からない。何故敦人はここまでの動揺を？


「テメェ！ 何訳分かんねぇこと言ってんだ！」
「……やっぱり、分からないか。それでいい、お前は何も知らないままでいいんだよ。……さあ、ターンを続けなよ。」
「…………これでターンエンド。」


郁哉 LP4000 手札3枚 モンスターゾーン 古の騎士 ヘラクレス 魔法・罠ゾーン 英雄の信奉者
敦人 LP4000 手札5枚


「僕のターン、ドロー！ ……モンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンド。」


郁哉 LP4000 手札3枚 モンスターゾーン 古の騎士 ヘラクレス 魔法・罠ゾーン 英雄の信奉者
敦人 LP4000 手札3枚 モンスターゾーン 伏せモンスター1枚 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚


「どうした、身を守るのが精一杯か。」
「さっさとしなよ。安心しな、負けてやるつもりはないからさ。」
「……俺のターン、ドロー！ 英雄の信奉者の効果発動！さっきの2枚を見せて、信奉者トークン2体を特殊召喚！ 2枚のトークンをリリースして、古の騎士 ヘクトールをアドバンス召喚！」


これで神宮寺 郁哉の場には最上級モンスターが2体。総攻撃を受ければ敦人の大ダメージは避けられないけれど……


「バトルだ！ ヘクトールで伏せモンスターを攻撃！」


ヘクトールの一撃が敦人の伏せモンスターを破壊する。


「……破壊されたおジャマ・ブルーの効果発動。デッキからおジャマ・カントリー、おジャマジックを手札に加える。」
「……手札を増やしたところで、この攻撃を防げなければ意味は無い！ 行け、ヘラクレス！」
「リバースカードオープン！ 永続罠、エンジェル・リフト！ 墓地のおジャマ・ブルーを攻撃表示で特殊召喚する！」


攻撃力0のおジャマ・ブルーを、攻撃表示で……？


「…………」
「さあ、攻撃してきなよ。攻撃力3800のヘラクレスなら僕のライフのほとんどを削れる。代わりに僕の手札が増えるけれどね。」


……手札を与える代わりに大ダメージを与えるか、攻撃を止めておジャマ・ブルーを場に残すか……神宮寺 郁哉はどうする？


「……お前に神を出す猶予を与えるつもりはない！ 行け、ヘラクレス！」
「……なるほどね。やっぱり僕の思う通りに動いてくれる。リバースカードオープン！ 通常罠、レインボー・ライフ！」
「なっ……しまった！？」


ヘラクレスが再びおジャマ・ブルーを破壊した。しかし、そのダメージは……


「レインボー・ライフの効果で、このターン僕が受けるダメージは無効になり、その分だけライフを回復する！ ……おっと、発動には手札1枚が必要だったね。僕はおジャマジックを捨てるよ。」

敦人 LP4000→7800

「さらに破壊されたおジャマ・ブルーの効果でデッキからおジャマ・デルタハリケーンとおジャマ・レッドを手札に加える。そして今捨てたおジャマジックの効果でデッキからおジャマ・ブラック、イエロー、グリーンを手札に加える。」


恐ろしい勢いで敦人の手札が増えていく。しかもライフすら神宮寺 郁哉より圧倒的に高い。いくら最上級モンスターを従えていても、これでは……


「ッ……ターン、エンド。」


郁哉 LP4000 手札3枚 モンスターゾーン 古の騎士 ヘラクレス、古の騎士 ヘクトール 魔法・罠ゾーン 英雄の信奉者
敦人 LP7800 手札9枚


「僕のターン、ドロー！ 手札からフィールド魔法、おジャマ・カントリー発動！ そしておジャマ・レッドを召喚！ おジャマ・レッドの効果発動！ 手札のおジャマ3体を特殊召喚する！」


一気に4体のモンスター……神のモンスターを召喚するには3体のモンスターが必要。このターンには現れることはないけれど、これは厳しい状態に思える。


「……攻撃力0のモンスターをいくら並べたところで、俺のモンスターは突破出来ないぞ。」
「それはどうかな？ 手札から通常魔法、おジャマ・デルタハリケーン発動！ 僕の場におジャマ・ブラック、イエロー、グリーンがいるとき、相手フィールド上のカードをすべて破壊する！」
「何だとっ！？」


3体のおジャマが巻き起こした竜巻が、神宮寺 郁哉のモンスターたちを破壊してしまった。


「く、うぅ……英雄の信奉者が破壊されたことにより、デッキから古の騎士 ロビンを手札に加える。」
「僕の場におジャマが存在する限り、おジャマ・カントリーの効果ですべてのモンスターの攻撃力と守備力は入れ替わる。よっておジャマたちの攻撃力は1000！」


敦人のおジャマは4体……これじゃあ！？


「バトル！ おジャマ4体でダイレクトアタック！」


これが通れば……


「させるか！ 手札の英雄の武器持ちの効果発動！ このカードを捨てて、相手モンスター1体のダイレクトアタックを無効にする！ くううっ……」

郁哉 LP4000→1000

「……しぶといなぁ。僕はこれでターンエンド。」
「この瞬間、ヘラクレスの効果発動！ 墓地からこのモンスターを特殊召喚する！」


地を突き破り、再びヘラクレスがフィールドに現れる。

古の騎士 ヘラクレス 攻撃力3800→3500

「……相変わらず、厄介なモンスターだ。」


……『相変わらず』？敦人は、以前に神宮寺 郁哉とデュエルしたことが？


郁哉 LP1000 手札2枚 モンスターゾーン 古の騎士 ヘラクレス
敦人 LP7800 手札4枚 モンスターゾーン おジャマ・レッド、おジャマ・ブラック、おジャマ・イエロー、おジャマ・グリーン 魔法・罠ゾーン おジャマ・カントリー 伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー！ ……行くぞ。ヘラクレスの効果発動！ フィールド上のすべてのカードを破壊する！」
「……ふぅん。」


ヘラクレスがフィールド上を駆け回り、すべてのカードを破壊していく。そして最後にはヘラクレス自身も消えてしまった。


「これで神を呼ぶための生贄はなくなった。」
「……残念。けどまあいいさ。」
「さあ来い、古の騎士 ロビン！ リリース無しで召喚したロビンの攻撃力は1600になる。バトルだ！ ロビンでダイレクトアタック！」

敦人 LP7800→6200

「……やるね。」
「ターンエンドだ。そしてヘラクレスは蘇る。」


郁哉 LP1000 手札2枚 モンスターゾーン 古の騎士 ヘラクレス、古の騎士 ロビン
敦人 LP6200 手札4枚


「僕のターン、ドロー！ ……仕方ないか。郁哉、お前にも神を見せてやるよ。」
「なにっ！？ まさか、もう……」
「カードを1枚セット。そして通常魔法、手札抹殺発動！ お互い手札を捨てて、その枚数分ドローする。」


手札交換……いや、敦人の狙いは、まさか……


「そしてリバースカードオープン！ 通常魔法、死者蘇生！ これで僕は、ラーの翼神竜を蘇生する！」
「くっ……ロビンの効果発動！ このモンスターをリリースして、死者蘇生の発動を無効にする！」


なんとかラーの翼神竜の降臨は防いだ。これなら……


「……甘い！ 通常魔法、魔法石の採掘発動！手札を2枚捨てて、墓地の死者蘇生を手札に加える！ 死者蘇生発動！ さあ蘇れ、ラーの翼神竜！」


ついに神のカードが……


「……だが、これでお前の手札は0。ラーの翼神竜の効果でヘラクレスを焼き尽くしたところで、それでお前の攻め手は完全に尽きる。そうなれば俺の勝ち……」
「いつ、ラーの効果が一つだけだなんて言った？ ラーの翼神竜の効果発動！ このモンスターの蘇生に成功したとき、僕のライフを1になるまで支払うことで、ラーの攻撃力を支払った分だけ上昇させる！」


そんな……敦人のライフは6200。つまり……


「さあラーよ、僕のライフを力に変えろ！」

敦人 LP6200→1

ラーの翼神竜 攻撃力0→6199

「攻撃力、6199……」
「これで終わりだ！ 行け、ラーの翼神竜！」


ラーの翼神竜がヘラクレスに突っ込み、そのまま……


「ぐうっ、うわぁぁぁ！！」

郁哉 LP1000→0





「……く、くそっ……」
「……これで、僕の勝ちだね。」


やはり、神の力に勝つことは出来ないのか……


「ま、待て……お前は、俺の何を知っているんだ……」
「ん？ ……そんなの、言うわけないだろ？ ……でも、ヒントくらいはやるよ。」


敦人が倒れている神宮寺 郁哉の元に向かう。


「……これがヒントだ。意味は自分で考えな。」
「……こ、これは……？」
「さて、これでやることも終わりかな。……月詠。」
「……何ですか。」
「こいつ、郁哉のことを頼む。出来ればこんな戦いからは外れてほしいけど、そうはいかないだろうから。だから……」
「……その前に、答えてください。……あなたちにどんな関係があるんですか？」


やはり、それは聞いておかないといけないだろう。


「……悪い、それは答えられない。じゃあね、月詠。」
「ま、待って敦人！」


私の制止も聞かず、敦人は姿を消した。恐らくはエクシーズ次元に向かったのだろう。




今この場にいるのは、私、神宮寺 郁哉、そして心希。しかし2人とも気絶して、一向に意識を取り戻す気配がない。


「一体、どうしたら……」



「……ふむ。月詠、これはどういう状況だ。」


！？ この声は、まさか……


「マ、マスター……？ どうしてここに？」
「先に私の質問に答えろ。心希が倒れ、お前だけが立っている。この状況はどのようにして起きた？」
「そ、それは……」


……すべて、話すしかないか。




「……と、言うことが。」
「……なるほど。つまり、こいつは……」


マスターは神宮寺 郁哉に興味を持ったようだ。何やら考え事をしているようだけれど……


「……使えるな。よし、ならば……」



「おい、何やってんだ性悪腹黒女。」
「……ん、ああ、お前か。思ったより早かったな。」


……え？ 突如、マスターの背後から1人の女性が現れ……あれは！？


「……そ、そんな……マスター、一体どうして、『この人』が……？」
「彼女とは一時的な協力関係にある。……それで、回収は出来たんだな。」


『回収』……？


「ああ。一緒にいた奴らは近くに寝かせておいた。きっとこの次元のお巡りさんが保護してくれんだろ。……んしょっ、と。」


女性はおぶっていた何かを地面に降ろした。


「……！！ 日向！？」
「？ なんだ、知り合いか？」


そんな…せっかく、私と神宮寺 郁哉で彼女の脱走を手助けしてきたのに……


「まさか、お前たちがここまで実験体の回収に手間取るとは思わなかった。それに、神のカードの力が強まるのも感じた。……このままでは敦人がすべての神のカードを揃えるのも時間の問題だろう。だから私たちが来たのだ。」
「ハッ、自分の部下に神のカードを奪われてちゃ世話ねぇなぁ、融合次元の守護者さん？」
「……そうだな。だからお前を連れてきたんだ。私たちはこのままエクシーズ次元に向かう。お前たちは……」


「……う、マス、ター？」


……どうやら、心希が目を覚ましたようだ。マスターを見つけた彼女は立ち上がろうとしているが……


「心希！？ 駄目です、まだ動ける状態じゃ……」
「目覚めたか。……ちょうどいい。お前たちにこの場の後始末を任せる。……出来るな？」
「……は、ハイ！」
「……分かりました。それでマスター、日向をどうするつもり……」
「さて。行くぞ、矢次 杏。……守護者として、すべての次元を守るために。」
「……これでもかってくらい気が進まねぇが、仕方ねぇ。手伝ってやるよ、霧生 那緒（きりゅう なお）。」


2人、そして日向が光に包まれていく。


「ま、待ってください！ 一体、何が起きて……」


……私の声に応えることなく、3人はこの場から姿を消してしまった。


「そんな……私は、これからどうしたら……」
「……マスターの命令を聞いてなかったの？ 私たちはこの場の後始末を任されたんだよ。…まずは、そいつを片付けないとね。」


心希が少しふらつきながらも、神宮寺 郁哉のところへと歩いていく。


「心希…？ 何を……」
「決まってるじゃん。こいつを始末する。これを、使ってね。」


心希が構えているのはデュエルディスク。……カード化するつもりなのだろうか。


「心希、止めてください！ 彼は、敦人が……」
「……敦人が、何？ こいつ、あの裏切り者と知り合いなの？ なら、ますます早く片付けておかないと…」


……心希は、私の話を聞くつもりはないようだ。けれど私は、敦人に彼を守ってほしいと言われた。だから、私は……





「……よし、見つけたぁぁ！！」


！？ 突然、爆音と共に一台のバイクがこちらに走ってきた。


「なっ！？ 何者だ！？」


バイクは私たちと神宮寺 郁哉の間に割り込むようして止まった。そこから女性、そして私たちとそう変わらないくらいの少女が降りてきた。


「郁哉！！ 大丈夫！！」
「……京子ちゃん、そっちは後にして。……あなたたち、何者？」
「……ハッ！ 誰かと思えば、あの時私がコテンパンに打ちのめした奴じゃん！ まさかお前までシンクロ次元に来てるなんてね。スタンダードはそこまで戦力不足なの？」
「……私は、もうあの時とは違うよ。あんたたちを倒して、私は郁哉を、仲間を守るんだ！」
「……キヒヒ！！ いいよ。そこまで言うなら、もう一度叩き潰して絶対的な力の差を見せつけてやる！」
「私も加わるわよ。……これ以上、この街で好き勝手させはしないわ！」


相手は2人…強がってこそいるが、心希は今にも倒れてしまいそうだ。……やるしか、ないのか。


「……それなら、タッグデュエルにしましょう。私と心希、そしてあなたたちで。」
「受けて立つよ！」
「構わないわ。」
「……月詠の好きにしなよ。私1人でも十分だけどね。」


心希にこれ以上の負担をかけることは出来ない。……早く終わらせて、心希を休ませなければ。


「……それでは、始めましょう。」





「「「「デュエル！！」」」」