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HOME > 遊戯王SS一覧 > 番外編(記念企画):でゅえるぶ!!後編

番外編(記念企画):でゅえるぶ!!後編 作:名無しのゴーレム

「ようこそ! さあ、入ってください!」
「邪魔するぞ。」
「お邪魔しまーす。」
「お、お邪魔します……」


こ、ここが薙野さんの自宅……入ってみるとやっぱり大きい。


「おう凉花! 相変わらずちっちゃいな~! ちゃんと飯食ってるか?」
「た、食べてます! 身長だって2センチ伸びました!」
「ハハハ、それでその小ささか! まだ小学生に間違われてんのか?」
「杏! それは中学の時の話です! まだそんなことは言われていません!」
「『まだ』? ふぅ~ん、自覚はあるんだ。」
「なっ!? ……案内します、付いてきてください。」


薙野さんが急ぎ足で歩いていく。……なるほど、強志さんの心配の理由、少し分かった気がします。





薙野さんが案内してくれた先、野外の大きな庭には、天宮さんともう1人、私たちと同じくらいの男の子だった。そこには何台かの大きなテーブルがあった。椅子が並べられていないところを見るに、立食ということでしょうか……


「……あ、美愛。」
「天宮さん。先に来ていたんですね。そちらは?」
「僕は神谷 敦人。月詠の友達で、君たちの隣の高校のデュエル部に所属してる。よろしくね。」
「私は矢次 美愛と申します。よろしくお願いします。」
「それじゃあ皆さん、部長たちが来るまでお待ちください。」
「あ、凉花。俺たちもおじさんたちに挨拶に行くよ。ほら姉さん、行くぞ。」
「え~、私は早くご飯を……」
「頼むから黙っててくれ。ご飯もまだだから。美愛と恭治さんはここにいてくれ。それじゃあ……」


そう言い残して、薙野さんと強志さん、杏さんは彼に引っ張られて家に入っていった。


「……あれは、元全国チャンピオンの矢次 杏さん? 美愛はあの人と一緒に住んでいるの?」
「はい。杏さんは私の居候先の家主さんで、一緒に住んでいるんです。」
「居候? 美愛ちゃんは矢次さんの親戚とかなの?」
「いえ、それには色々と事情が……」
「……敦人、詮索は駄目。」
「分かってるよ。ところで、月詠に聞いたけど美愛ちゃんはデュエル部に入るんだって?」
「え? いや、私、デュエルしたことが無くて……」
「心配ない。基本が分かるなら後は実践だけ。分からないところは私たちが教えるから大丈夫。」
「ど、どうも……」


どうやら、天宮さんはどうしても私にデュエル部に入って欲しいらしい。


「デュエルなら矢次さんに教わればいいんじゃない?」
「そうなんですけど……杏さん、いつも忙しそうで。」
「ふーん。……そう言えば、あなたは? どこかで見たことがあるような……」


神谷君は速見さんの方を見て言う。


「……ああ、俺は速見 恭治。済まないな、学生同士の会話の場に俺なんかがいて。」
「速見さん、気にしないでください。2人とも、この人は……」
「……速見? ということは、部長の……?」
「……あ! 思い出した! 速見 恭治、プロデュエリストだ!」
「ん? 君、俺を知ってるのか。」
「もちろん! プロのデュエルは毎日録画してますから! 速見さんのデュエル、いつもかっこいいです!」
「面を合わせて褒められると照れるな……そうだ、サインでもしようか?」
「いいんですか!? お願いします!」


「……速見さんってそんなにすごい人なんですか?」
「敦人が興奮しすぎなだけ。……あれ、部長たちだ。」
「え? ……あ、本当だ。薙野さんを呼ばないと……」




「こんばんは! これでデュエル部全員集合ね!」
「はい。京子、作文は終わったんですか?」
「いや~、実はまだで……でも、それはいいじゃん! すごいよね、凉花の家! いかにもお金持ちって感じ!」
「京子、それ、あんまり褒めてないわよ。……あ、お兄ちゃんじゃない。居たんだ。」
「居たんだとは何だ。俺が呼んだからお前もここに来たんだろ。」
「お兄ちゃんだって、私が凉花と同じ部活だからここに来られたのよ。私に感謝しなさい。」
「まあまあ2人とも。さて、全員揃ったことですし、お食事会を始めましょうか。」
「おう、待ってました!」
「姉さん……」


テーブルの上に料理が並べられていく。次々と置かれていくそれらは、瞬く間にテーブルの上を埋め尽くした。




「……皆さん、本日はお集まり頂き、誠にありがとうございます。この会は……」
「……凉花、堅苦しい挨拶は要らないぞ。」
「……そうですね。それでは、頂きましょう。」




「うーん、やっぱりここのご飯は旨い! ほら、美愛もいっぱい食え!」
「杏さん、こういうのには色々とマナーがあるんじゃ……」
「そんなの気にしなくてもいいさ。そんなきっちりした食事会でもないんだ、食べたいものを食べな。ほら、お前の友達だって……」


「月詠、このお肉美味しいよ!」
「……京子、行儀悪い。」
「そんなの気にしたら負けだって! ほら、月詠にもあげる!」
「……ありがとう。」


「……ほら、あんな風にな。」
「……そうですね。じゃあ、もう少しお料理を取ってきます。」
「あ、じゃあ私も行く! ほら、あれなんかどうだ?」
「わあ、美味しそうですね!」
「……はあ。あんまりがっつきすぎんなよ。特に姉さん、恭治さんの方にも行ってやらないと……」


強志さんが恭治さんの方を見る。そこには……


「……あのときはもう駄目だって思ったんだけどさ、次のドローで……」
「それ見ました! あれは本当に興奮しましたよ!」
「ああ、俺も来たって思ったよ。でも、その後……」


「……いや、やっぱ大丈夫そうだな。」
「はい、私もそう思います。」
「強志、矢次さん!」


向こうから薙野さんが歩いてくる。


「凉花、どうかしたか?」
「いえ、たいしたことではないんですが……矢次さんがデュエルしないのはなんでかなって思いまして。」
「ん? ああ、それはな……」


……ここは、本当のことを言ってしまいましょう。別に隠しておくようなことでもありませんし。


「……実は私、ついこの前杏さんに拾われたんです。」
「へぇ、拾われて……えぇ!?」


薙野さんの驚く声が庭中に響き渡る。


「……凉花、うるさい。」
「何かあったの?」
「あ、その、ええと……」


薙野さんが慌てふためいている。どうしたものでしょうか……


「何てことはないさ。皆、気にしないでくれ。」


咄嗟に強志さんがフォローに入ってくれた。


「……そう言えば美愛ちゃん、入部のこと考えてくれた?」
「部長さん、それはまだで……」
「なになに? 美愛、部活やるの? 何部?」
「矢次さん、美愛ちゃんは今日うち、デュエル部を見学に来てくれたんです。うちも部員不足が問題になっていて、それで……」
「……でも、自分のデッキもない私なんかがデュエル部には……」
「……ふぅん、なるほど。美愛はデュエル部に入りたいのか?」
「……分かりません。でも、デュエル部の皆さんはいい人たちで、だから……」
「……よし、分かった! ちょっと外す!」
「え? 杏さん!?」


杏さんはあっという間にこの庭から姿を消してしまった。


「……行ってしまいましたね。」
「嫌な予感しかしない……」
「……杏ならきっと大丈夫でしょう。……たぶん。」
「あなたたち、矢次さんをどんなのだと思っているの……? ところでね、美愛が入って5人になったら、参加したい大会があってね……」


部長さんが携帯を操作して、ある画面を見せてきた。それは……


「……『デュエルサバイバル団体戦』? ……なんですかこれ。」
「よく聞いてくれたわね! デュエルサバイバルってのは、これまでになかった新しい要素を加えたデュエルで……」
「……まあ、簡単に言えば大人数で広いフィールド上を移動しながらデュエルするということです。」
「へぇ……」


そんなデュエルがあるんですか……


「それで、団体戦には1チーム5人必要なの。だからね……」
「お~い、美愛!!」


え? 杏さんの声が聞こえた。さっき飛び出してから数分くらいしか経っていないように思うのだけど……


「……ふぅ。美愛、これやるよ。」
「……おい、それって……」


杏さんが持っていたもの、それは……


「えーと、デュエルディスクと……デッキ?」
「その通り! 私が前に使ってたやつだ。ほら、ディスクを着けてみな。」
「は、はい。」


……すごい、サイズがびったりだ。でもなんで……?


「お、よかった。事前に調節しといたんだ。じゃあさ、さっそくデュエルしてみろよ。相手はどうしようか……」
「え? ち、ちょっと待ってください! いきなりデュエルなんて……」
「なぁ凉花、美愛とデュエルしてやってくれよ。」
「杏さん、いくらなんでも急すぎるんじゃ……」
「……分かりました。デュエルの相手、私が務めさせて貰います。」
「え、えぇ……?」


なんでこんなことに……薙野さんはディスクを取りに行ってしまった。


「……姉さん。いきなりすぎじゃないか?」
「これくらいでいいんだよ。デュエルの本当の楽しさを知るにはデュエルするしかないんだから。」
「本当に、そこまで考えてたか?」
「……バレたか。美愛はどんなデュエルするかなって、少し気になってさ。」
「はぁ。……美愛、分からないことがあったら俺に聞け。」
「ありがとうございます。……」


……どうしたものでしょうか。まあ、デュエルするしかないんですけど。しばらくして、薙野さんが戻って来た。


「矢次さん、始めましょうか。」
「は、はい!」


……ついさっきまで杏さんにもらったデッキを見ていたけれど、どんなデッキかさっぱり分からなかった。儀式、融合、シンクロ、エクシーズ、それにペンデュラムまで入ってるなんて……


「行け美愛!」
「凉花、デュエル部の力、見せてあげなさい!」


皆さんがそれぞれ応援を始める。緊張しますね……


「よし、じゃあ私、矢次 杏が審判だ。それじゃあ……」



「「デュエル!!」」



凉花 手札5枚 LP4000
美愛 手札5枚 LP4000


「私のターン! 手札からフォトン・サーベルタイガーを召喚! フォトン・サーベルタイガーの効果発動! デッキからフォトン・サーベルタイガーを手札に加えます。更に通常魔法、融合発動! フォトン・サーベルタイガー2体を融合! 融合召喚! ツイン・フォトン・リザード!」


いきなり攻撃力2400の融合モンスターを……


「カードを1枚セットしてターンエンド。」


凉花 手札2枚 LP4000 ツイン・フォトン・リザード 伏せカード1枚
美愛 手札5枚 LP4000


「わ、私のターン、ドロー!」


ええと、この手札、どうしたら……


(……まずは、あのモンスターの攻撃を防がないと。)


「……モンスターをセットします。私はこれでターンエンド。」


凉花 手札2枚 LP4000 ツイン・フォトン・リザード 伏せカード1枚
美愛 手札5枚 LP4000 伏せモンスター


「私のターン、ドロー! 一気に攻めましょう。ツイン・フォトン・リザードの効果発動! このモンスターをリリースして、墓地のフォトン・サーベルタイガー2体を特殊召喚します。フォトン・サーベルタイガーは場に同名モンスターが存在するとき、攻撃力は2000になります。」


なっ……攻撃力2000が2体!?


「バトル! フォトン・サーベルタイガーで伏せモンスターを攻撃!」
「くっ……破壊されたのはペンデュラムモンスター、英霊獣使い―セフィラムピリカ。ペンデュラムモンスターは破壊されたときエクストラデッキに送られます。」


「あのデッキ、私と同じペンデュラム召喚を使うんだ……」
「……いや、あのデッキは矢次さんが使っていたもの。なら……」


「これであなたの場にモンスターはいません! フォトン・サーベルタイガーでダイレクトアタック!」

美愛 LP4000→2000

「く、くうっ……」
「まだ私のターンは終わっていません! 攻撃力2000のフォトン・サーベルタイガー2体をリリースして、手札から銀河眼の光子竜を特殊召喚!」


攻撃力3000……あれを突破しないといけないのですか。


「ターンエンド。さあ、どこからでもかかってきてください!」


凉花 手札2枚 LP4000 銀河眼の光子竜 伏せカード1枚
美愛 手札5枚 LP2000


「私のターン、ドロー!」


……よし、これなら!


「手札からフィールド魔法、セフィラの神託発動! このカードの発動時、デッキからセフィラモンスターを1枚手札に加えることが出来ます。私は宝竜星―セフィラフウシを手札に加えます。……行きます!スケール1のイェシャドール―セフィラナーガとスケール7の秘竜星―セフィラシウゴでペンデュラムスケールをセッティング!」


これでレベル2から6のモンスターのペンデュラム召喚が可能になりました。


「ペンデュラム召喚! 来て、セフィラムムピリカ、セフィラフウシ! セフィラフウシの効果発動! セフィラムピリカをチューナーにします。」
「チューナーに……まさか。」
「はい! 私はレベル3のセフィラフウシにレベル3のセフィラムピリカをチューニング! シンクロ召喚! 来て、メタファイズ・ホルス・ドラゴン!」


「……へぇ。私のデッキ、さっそく使いこなしてるじゃん。」


「シンクロ召喚の素材となったセフィラフウシはデッキに戻ります。セフィラの神託の効果発動! デッキの剣聖の影霊衣―セフィラセイバーをデッキの一番上に置きます。ホルス・ドラゴンの効果発動! 銀河眼の光子竜のコントロールをもらいます!」
「そんなっ!?」


これで立場は逆転しました。このまま……


「……リバースカードオープン! 速攻魔法、フォトン・リード! 手札のシャインエンジェルを特殊召喚!」
「……バトル! ホルス・ドラゴンでシャインエンジェルを攻撃!」

凉花 LP4000→3100

「シャインエンジェルが戦闘で破壊されたことにより、デッキから銀河の魔術師を特殊召喚します。」
「カードを 1枚セットして、ターンエンドです。」


凉花 手札2枚 LP3100 銀河の魔術師
美愛 手札2枚 LP2000 ペンデュラムゾーン イェシャドール―セフィラナーガ、秘竜星―セフィラシウゴ モンスターゾーン メタファイズ・ホルス・ドラゴン、銀河眼の光子竜 伏せカード1枚


「あれ、凉花が負けてるじゃん。これは美愛の勝ちかな?」
「……まだ分からない。凉花も何かを狙っている。」


「私のターン、ドロー! 手札からフォトン・クラッシャーを召喚! 私はレベル4の銀河の魔術師とフォトン・クラッシャーでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 輝光子パラディオス! パラディオスの効果発動! オーバーレイユニットを1つ取り除いて、銀河眼の光子竜の攻撃力を0にして、効果を無効にします!」

銀河眼の光子竜 攻撃力3000→0

「バトル! パラディオスで銀河眼の光子竜を攻撃!」


パラディオスの攻撃力は2000。攻撃力0の銀河眼の光子竜が破壊されたら、私は……


「美愛!」
「分かってます! リバースカードオープン! 速攻魔法、禁じられた聖槍発動! パラディオスの攻撃力を800ポイント下げます! く、ううっ……」

輝光子パラディオス 攻撃力2000→1200

美愛 LP2000→800

「なんとかライフを残しましたか……カードを1枚セットして、ターンエンドです。」


凉花 手札1枚 LP3100 輝光子パラディオス 伏せカード1枚
美愛 手札2枚 LP800 ペンデュラムゾーン イェシャドール―セフィラナーガ、秘竜星―セフィラシウゴ モンスターゾーンメタファイズ・ホルス・ドラゴン


「私のターン、ドロー!」


……ええと、この手札なら……あれ?


「もしかして……私の勝ち?」
「……え?」


いや、だからこれをこうして、そこから……


「…………」
「矢次さん? 大丈夫ですか? それに『私の勝ち』って、どういう……」


……うん。あの伏せカードが妨害しない限り、このターンで勝てる。よし、行こう。


「まずは手札から通常魔法、影依融合発動! このカードは相手の場にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキのモンスターを融合素材に出来ます。私はデッキのオルシャドール―セフィラルーツと影霊獣使い―セフィラウェンディを融合! 来て、エルシャドール・ウェンディゴ!」


「!! あれって月詠の……」
「……あのデッキ、シャドールも入っているなんて……」
「……いえ。多分、それだけじゃないわ。」
「部長? それ、一体……」

「墓地に送られたセフィラルーツの効果発動! ペンデュラムゾーンのセフィラシウゴを特殊召喚! セフィラシウゴの効果発動! デッキから2枚目のセフィラの神託を手札に加えます。セフィラの神託発動! 効果でデッキから炎獣の影霊衣―セフィラエグザを手札に加えます。スケール7のセフィラエグザをセッティング!」


「……美愛のやつ、完全に使いこなしてるじゃねえか。」
「私の見込み通りだ。さあ、まだまだ魅せてくれるんだよな?」


「ペンデュラム召喚! 来て、セフィラムピリカ! セフィラムピリカの効果発動! 墓地のセフィラウェンディを特殊召喚します! 手札のセフィラセイバーの効果発動! このモンスターをリリースして、儀式召喚を行います! 私はレベル3のセフィラムピリカとセフィラウェンディをリリースして、手札からブリューナクの影霊衣を儀式召喚します! ブリューナクの影霊衣の効果発動! パラディオスをデッキに戻します!」
「……本当に、これが初めてのデュエルなんですか!?」
「本当ですよ! レベル6のセフィラシウゴとエルシャドール・ウェンディゴでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! ガントレット・シューター!」


「嘘……でしょ?」
「……ペンデュラム、シンクロ、融合、儀式、そしてエクシーズ。そのすべてを1回のデュエルで揃えるなんて……」
「……思っていたよりも、ずっと逸材ね。美愛ちゃんがいれば、きっと……」


「バトルです! ブリューナクの影霊衣でダイレクトアタック!」


お願い、伏せカードを発動しないで……


「……きゃあっ!!」

凉花 LP3100→800

「……これで終わりです! メタファイズ・ホルス・ドラゴンでダイレクトアタック!」

凉花 LP800→0




「…………」
「……すごい、すごいよ! 初デュエルで凉花に勝っちゃうなんて!」
「……あんなの、初めて見た。」


……勝った、の?


「美愛、やったな! 初勝利だ!」
「まあ私には分かってたけどね。それでも、おめでとう!」
「いやぁ、プロのデュエルでもなかなか見ない、面白いデュエルだったよ! 君、デュエルの才能有るんじゃない?」
「ねぇ、次は僕とデュエルしない? さっきみたいなの、もう一度見たいんだ!」


あわわ、そんなにいっぺんに話しかけられると……


「……ふぅ、私の負けですね。矢次さん、初めてのデュエルはどうでしたか?」
「それは……とても、楽しかったです!」
「そうですか……ならよかった。」
「それで……部長さん。」
「ん? 何?」
「あの、その、私……」


すぅ、はぁ……よし、言うぞ。


「……デュエル部に、入部させてください!」


「……もちろん! 歓迎するわ、矢次 美愛ちゃん!」




デュエルの後、食事会はお開きになった。


「また明日、部室でね!」
「明日は歓迎会よ! 必ず来てよ!」
「……ディスクとデッキを忘れないように。」
「はい、分かりました。さようなら!」
「……本当に、矢次さんが入ってくれてよかったです。」
「あの~、薙野さん。」
「はい? どうかしましたか?」
「えっと……よかったらですが、他の皆みたいに、私のことも名前で呼んでくれませんか?」
「……はい、分かりました。なら……美愛も、私のことは凉花と呼んでください。」
「はい、凉花。……少し照れくさいですね。」
「フフッ、私もですよ。それでは、また明日。」
「はい。また明日!」




――そうして、私たちは自宅に戻った。


「……あ、そうだ美愛。さっき凉花のところの人と話して、明日からは美愛も凉花と一緒に登校することになったからな。」
「……え? じゃあ、私もあの車に?」
「そうだな。……なんだ、乗りたかったのか?」
「べ、別にそういう訳では……」
「……デュエル部、ねぇ……なあ美愛、デュエル部の顧問ってどんな人?」
「どんな人と言われても、まだ一度も会っていなくて……デュエル部は廃部寸前だったと聞いているので、あまり先生も熱心ではなかったのかもしれませんね。」
「そう、かぁ……なら、……面白そうだな。」
「? 杏さん、何が面白そうなんですか?」
「……姉さん、頼むから変なことはしないでくれよ。」
「変なことなんかしないって! まあ見てな、明日には分かるから!」


そう言うと杏さんは家を飛び出してどこかに行ってしまった。……なんとなく不安です。





――翌日。私は天宮さんと共に凉花の家の車に乗って舞網高校へと向かった。


「……美愛、いつの間に凉花のことを名前で?」
「あ、ついでですし月詠のことも名前で呼んだらどうですか? 月詠もその方がいいでしょう?」
「……好きにしてくれて構わない。」
「……なら、そうさせてもらいますね。月詠、これからよろしくお願いします。」
「……こちらこそ、よろしく。」




――そして、放課後。いよいよ初めての部活動。歓迎会の準備と言って、凉花と月詠は先に行ってしまいましたが……


「お邪魔しま……す?」


部室の扉を開けた、その先には……


「……おう、遅かったな! これで全員だな!」
「……杏さん!? どうしてここに!?」


部室を見ると、既に他の4人がいた。皆さんは知っていたんでしょうか……


「……あの、説明してもらえますか? どうして矢次さんがここにいるのか。」
「おいおい、分からないのかい風音部長? 私がここにいる理由なんか1つだけだろうに。」
「……? 杏、今度は一体何をしたんですか?」
「何をしたのか? いや、これからするんだよ。なんたって、私はこの部の顧問になったんだからな!」
「……はい?」


……いや、ちょっと待って。話が分からない。何を言ってるのかは分かりましたが……


「……どうやって?」
「どうやってなんて些細なことだろう、京子? さあ、これからの話をしようぜ!」
「……これからの、話?」
「ああ、そうだ。手始めに、この大会に参加しておいた。」


杏さんが見せたのは1枚のポスター。そこには……


「……これって。」
「ああ、『デュエルサバイバル団体戦』だ! デュエルサバイバルって初めて聞いたけど、名前からして面白そうだろ?」
「部長、これは……」
「ええ。私がずっと出たかった大会よ。でも、いくらなんでも……」
「ん? 早すぎるって? そんなこと言ってる場合じゃないだろう? 風音も3年生、なら出られるものには片っ端から出ないとな!」
「その通りですけど……」
「いいじゃん部長! 矢次さん、その大会っていつからなんですか?」
「よく聞いてくれた! まずは予選だが、行われるのは……2週間後だ!」
「……えぇ~!? それは早すぎるでしょ!?」
「大丈夫大丈夫! お前たち5人の実力、それに私が付くんだ、負けるわけないに決まってるだろ?」


……一体、その自信はどこから来ているんでしょうか?


「さあ、時間も無いんだ。さっそくデュエルと行くか!」
「あの、待ってください! 今日は美愛の歓迎会をする予定で……」
「あ、そうなんだ。なら歓迎デュエルにするか!」
「歓迎デュエル?」
「ああ、凉花は昨日したからいいとして、残りの3人と美愛がデュエルするんだ。自己紹介の代わりにもなるし、美愛のデュエル経験を増やすためにもいいだろう?」
「……まぁ、理にかなっているような、そうでないような……」
「よし、じゃあ始めようか! まずは誰から行く?」
「……私が。美愛とのデュエル、少し楽しみだった。」
「おう、いいねぇ! それじゃあ2人とも準備して!」


最初は月詠と……勝てるんでしょうか。


「……美愛、頑張ってください。私はずっと美愛を応援していますから。」
「凉花……ありがとうございます。」
「よし、準備が出来たな! 1試合目、矢次 美愛対天宮 月詠!」


互いにデュエルディスクを構える。ああ、やっぱり……


(デュエルは、楽しいです!)



「「デュエル!!」」




                        終わり……?
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ター坊
へえ、セフィラってこう使うんだと感心して見てました。それにしてもこっちの世界の凉花ちゃん可愛いなぁ。チビッ子で…あっ、セキュリティー呼ばれた (2015-07-14 16:48)
名無しのゴーレム
ター坊さん、コメントありがとうございます。
セフィラについては全部の召喚方法を使おうとしたら自然とこうなりました。おかげでロマン溢れるデュエルになったかと。
凉花に限ったことではありませんが、『何も起きない平和な世界ならこんな性格だろう』という感じなので、凉花も年相応な性格になりました。この調子で心希を出したらどうなるだろうと疑問に思ったのは内緒。これの続き、需要あるかなぁ…… (2015-07-14 17:42)

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49 44話 バトルロイヤル 886 2 2015-05-29 -
36 side郁哉:ただ彼女の為に 993 2 2015-05-30 -
96 side美愛:立ち込める暗雲 962 2 2015-05-31 -
48 side美愛:交錯する記憶 855 2 2015-06-01 -
79 side智:絶体絶命 903 2 2015-06-02 -
55 45話 反逆者の牙 958 4 2015-06-03 -
62 side凉花:銀河の光VS影の闇 1010 4 2015-06-04 -
60 46話 暴走 976 3 2015-06-05 -
95 47話 新たな戦い 775 2 2015-06-06 -
50 side京子:覚悟の証明 789 2 2015-06-07 -
88 side美愛:裏切り、脱走劇 904 2 2015-06-08 -
108 48話 旅立ち 925 2 2015-06-08 -
55 49話 吹き荒れる風の音 893 2 2015-06-09 -
123 side恭治:嵐を呼ぶ男 999 2 2015-06-10 -
82 side心希:裏切りの発覚 829 2 2015-06-11 -
42 50話 三度あることは 901 2 2015-06-12 -
58 51話 黒白の戦い 1009 2 2015-06-13 -
40 side恭治:守る理由 992 2 2015-06-14 -
111 side郁哉:突然の災難 883 2 2015-06-15 -
103 52話 捜索開始 1016 2 2015-06-16 -
97 side凉花:地下デュエル場 962 2 2015-06-17 -
98 53話 襲い来る脅威 953 2 2015-06-18 -
112 side月詠:自らの為の戦い 999 4 2015-06-19 -
92 解説とお知らせ 954 2 2015-06-19 -
40 54話 次への一手? 887 2 2015-06-22 -
58 side風音:行け! ブラスト・レディ 927 2 2015-06-29 -
50 side郁哉:神との対峙 887 2 2015-07-03 -
89 side月詠:進む彼ら、止まった私 944 2 2015-07-06 -
66 番外編(記念企画):でゅえるぶ!! 前編 991 2 2015-07-07 -
87 番外編(記念企画):でゅえるぶ!!後編 1110 2 2015-07-14 -
51 side凉花:Let’s 拷問タイム♪ 916 2 2015-07-21 -
93 side郁哉;2体目の神 1079 2 2015-08-08 -
70 55話 『守護者』 986 2 2015-08-16 -
87 side月詠:不死の大英雄VS蘇る太陽神 1071 2 2015-08-23 -
104 side京子:絆の力、結束の力(前編) 1010 4 2015-09-13 -
103 side京子:絆の力、結束の力(後編) 882 2 2015-09-21 -
72 side郁哉:立ち上がれ、何度でも 1032 2 2015-09-22 -
98 side月詠:最後の戦いへ 958 4 2015-09-27 -
109 解説コーナー1 1173 2 2015-09-28 -
36 コラボ企画 第1話『異世界での再会』 881 2 2015-09-29 -
115 コラボ企画 第2話 『反逆者と救世者』 1086 2 2015-10-03 -
72 コラボ企画 第3話『例え無力でも』 1059 2 2015-10-12 -
85 コラボ企画 最終話『またいつか』 1000 4 2015-10-17 -
91 コラボ企画 解説……? 907 4 2015-10-19 -
100 side凉花:地獄への帰還 1005 4 2015-11-03 -
53 56話 進化する最終兵器 950 4 2015-11-04 -
103 57話 戦場の流儀 992 4 2015-11-07 -
76 58話 抗う者たち 882 4 2015-11-10 -
80 side杏:それぞれの思惑 884 4 2015-11-12 -
90 side恭治:思い出クッキング 804 2 2015-11-23 -
80 side郁哉:『仲間』 889 2 2015-11-26 -
59 side月詠:決別 954 4 2015-11-28 -
111 side敦人:過去と現在、『彼ら』の変化 950 2 2015-12-02 -
46 side風音:速見 風音と『彼女』の関係 826 4 2015-12-19 -
56 side月詠:天宮 月詠と『彼女』の関係 965 2 2015-12-20 -
93 side凉花:薙野 凉花と『彼女』の関係 749 4 2016-03-03 -
53 59話 突然の再会 854 4 2016-03-04 -
125 side恭治:駆け抜ける旋風 919 4 2016-03-08 -
97 side涼花:交わる光と闇 903 2 2016-03-09 -
44 60話 襲い来る巨悪、託された未来 808 2 2016-03-13 -
79 side恭治:スピードの向こうへ 901 4 2016-03-14 -
109 side風音:最強の兄妹 899 4 2016-03-17 -
117 side美愛:黒き野望の胎動 901 2 2016-03-19 -
117 side美愛:造られた存在 911 4 2016-03-23 -
68 side京子:守り抜くために 900 2 2016-03-26 -
94 61話 次元を超えた力 838 4 2016-03-28 -
70 side敦人:すべては彼のために 731 4 2016-03-29 -
109 62話 未来への希望 920 5 2016-03-31 -
51 63話 神を討て 893 0 2016-04-09 -
139 64話 すべてを砕く闇 1031 2 2016-04-13 -
77 65話 残された光 735 4 2016-04-21 -
103 66話 終焉を齎す者 922 4 2016-04-25 -
43 67話 破滅へ導く四騎士 908 4 2016-04-27 -
107 side京子:いろんな想い、一つの願い 981 4 2016-05-31 -
174 68話 闇を祓う希望の光 1663 4 2016-08-12 -

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