01 笑う門にはヴィクトリー!　作：ギガプラント

（上波（うわなみ）町・とあるビル－映像モニター）














幾多の強者をなぎ倒し！



最強の称号を掴みとれ！



さぁデュエリスト達よカードを振るう時は来た！



次の王者はおまえだ！



ジェネシック・エレクトロニクス社主催、アストベリーカップ！参加登録受付開始！




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（貨物船・内部）



船員「……ろ！」


船員「…きろ！」


船員「起きろって言ってんだろコラ！」ｺﾞﾝｯ!


げんこつ


少年「ってえええぇぇぇ～！！」


船員「ったくどっから入ってきやがったこのガキは！」


少年「あ～痛ぇ…ん？なんで俺こんなとこ居るんだ…？」


船員「そりゃこっちの台詞だ！なんなんだお前は！」


少年「えーっと…確か…アストベリー杯に出場する為に上波町に…」


少年「そうだ！じーちゃん家に行く途中だったんだ！なぁ？ここ上波町か？」


船員「確かにここは上波町だがそんなことはどうでもいい！なんでこんなとこで寝てんのか聞いてんだよ！」



？「おい！騒がしいぞ！何やってんだ！？」


部屋に入ってくる大柄な男


船員「あぁ…猪狩さん…荷物運ぼうとしたらコンテナの陰にこのガキが…」


猪狩「あぁ？ガキだぁ？」


少年「ふわぁ…よく寝たぜ。にしてもなんか変わった船だったなぁ…箱ばっかだし」


猪狩「おい小僧、コソ泥にしちゃあ忍ぶ気の欠片も無ぇみてえだが…何モンだ？」


少年「俺か？俺の名前は楠 夏武斗（くすのき かぶと）！　大天島（おおてんとう）から来たんだ！」


猪狩「名前訊いてんじゃねぇ！この船は大天島から出航してきたんだ！そんなこたぁ分かってんだよ！」


少年「…びびったぁ、急にでけえ声出すなよおっさん…。」


猪狩「コソ泥がいい度胸じゃねえか…とっ捕まえて御上に突き出してやる…！」


少年「えぇ！？俺はコソ泥なんかじゃねえって！」


船員「じゃあ何が目的だ…何企んでこの船に乗り込んだ！？」


夏武斗「別に企んでなんかねえよ。俺はただじーちゃん家のある上波町に行こうとしただけで…乗船券だってちゃんと持ってるぜ？」





船員「ここは貨物船だ！乗船券なんてあるか！」





夏武斗「あれぇ？おっかしいなぁ…ちゃあんと地図辿って来たんだけどなぁ」


携帯型の端末を取り出す夏武斗


猪狩「ん？…そいつは『dPhone』（ディーフォン）じゃねえか。ってこたぁ、おまえデュエリストか？」


船員「dPhoneって…最近ジェネシック社が新しく開発した…」


夏武斗「ああ！アストベリー杯に出場する為に来たんだ！」




猪狩「ほう…おい小僧、一つチャンスをやろうか？」


夏武斗「チャンス？」


船員「猪狩さんまさか…」


猪狩「おうよ。この俺にデュエルで勝ったら見逃してやってもいいぜ。」


夏武斗「マジか！ってかおっさんもデュエリストなのか！？」


猪狩「馬鹿野郎ここはデュエル都市と言われた上波町だぞ？デュエリストなんざそこらかしこに腐るほど居る。」


夏武斗「そうなのかぁ…あ～ワックワクしてきたぜえ！」


船員「この状況で呑気な野郎だぜ…。」


夏武斗「なぁなぁおっさん、ホントに勝ったら見逃してくれんのか！？」


猪狩「ああ、勝てるもんならな。こっちも久し振りに本気で腕を振るいたかったところよ。」


船員「あーあ…えげつねえ」


猪狩「田舎もんが都会に憧れるのは結構だがな…粋がってるだけのガキはどうなるか、その身に刻んで教えてやらなきゃな…。」


夏武斗「よーし！行くぜぇ！」


猪狩「どっからでもかかってこい！」




dPhoneモードチェンジ！Ｄパッドモード！



ターゲットロックＯＫ！



ビジョンリンクＯＫ！



ファーストディールＯＫ！



デュエル！！




夏武斗「先攻は貰うぜ！俺のターン！」


夏武斗「まずはこいつだ『クロスソード・ハンター』！」星４・ＡＴＫ１８００


夏武斗「俺はこれでターンエンド！」


猪狩「俺のターン！ドロー！」


猪狩「攻撃力１８００か…なかなかでっけえ火力じゃねえか。気に入ったぜ小僧。」


猪狩「だが…そんなもんじゃ俺にゃあ勝てん！」


猪狩「俺は『アンカー・スローマン』を召喚する！」星４・ＡＴＫ２３００
大きな錨を持つ太ったおっさんのモンスター


夏武斗「すっげえ！レベル４で攻撃力２３００もあんのか！」


猪狩「おうよ！こいつのパワーにゃ並のモンスターじゃ敵わないぜ！」


猪狩「バトルだ！アンカー・スローマンでクロスソード・ハンターに攻撃！アンカーシュート！」


夏武斗「ぐっ！」ＬＰ４０００→３５００


猪狩「アンカー・スローマンは攻撃を行った場合、守備表示になる。」ＤＥＦ０


猪狩「俺はカードを２枚伏せてターンエンドだ。」


船員「おいあんちゃん！猪狩さんはここら一帯じゃ負けなしのデュエリストだ！勝ちが見えないのは当たり前だがサレンダーなんてしないでくれよ！ははは！」


夏武斗「へっ！頼まれたってしてやんねーよ！俺のターン！ドロー！」


夏武斗「自慢のパワーも守備表示になってんなら怖くねえ！俺は火樽（バレル・フライ）を召喚！」星３・ＡＴＫ１２００
樽を模したようなホタルのモンスター


夏武斗「火樽でアンカー・スローマンを攻撃だ！バーニング・ダイブ！」


猪狩「あめえんだよ！罠発動！『面舵一杯』！」


猪狩「自分フィールドのモンスターを全て攻撃表示に変更する！」


夏武斗「何っ！」


猪狩「攻撃したのはてめぇのモンスターだ！これで守備表示にもなんねえぜ！」


猪狩「そら！返り討ちだ！」


錨に貫かれた火樽が大爆発を起こす


猪狩「がっはっは！！いいやられっぷりじゃ………ってぐわあああ！」ＬＰ４０００→２９００
爆風（のビジョン）を喰らう猪狩


船員「猪狩さん！」


猪狩「こんにゃろお…小僧何しやがった…」


夏武斗「へへ！火樽の戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは相手も一緒に受けるんだぜ。」ＬＰ３５００→２４００


猪狩「ほう…考えなしのガキじゃあねえってことか…面白えじゃねえか」


夏武斗「俺はカードを１枚セット！これでターンエンドだ！」


猪狩「俺のターンだ！ドロー！」


猪狩「ちったあ頑張ったが、てめえの場にモンスターは居ねえ！俺の有利は変わらねえ！」


猪狩「『あらくれパイレーツ』を召喚！」星３・ＡＴＫ１３００
名前そのまんまのモンスター


猪狩「攻めさせてもらうぜ！あらくれパイレーツでダイレクトアタックだ！」


夏武斗「よっしゃ！罠カード発動！『虫の知らせ』！」


夏武斗「相手がダイレクトアタックしてきた時、デッキからレベル４以下の昆虫族モンスター１体を攻撃表示で特殊召喚する！」


夏武斗「さあ来い！『代打バッター』！」ＡＴＫ１０００


猪狩「そんな壁怖くもなんともねえ！そのまま攻撃だ！ぶった斬れ！」
バッターにサーベルを振り下ろすあらくれ。


夏武斗「ぐっ…！この瞬間モンスター効果発動！」ＬＰ２４００→２１００


夏武斗「代打バッターが破壊された時、手札から昆虫族モンスター１体を特殊召喚できる！」


猪狩「また壁を増やす気か？どんな雑魚を並べたところで…！」


夏武斗「おおっと？果たしてコイツが『雑魚』かな？」


猪狩「あん？」


夏武斗「現れろ！雄々しき巨体に雄々しきパワー！『ドン・ヘラクレス』！」星７・ＡＴＫ２７００
ごっついでっかいカブトムシのモンスター


猪狩「攻撃力２７００だと！？」


船員「あいつ…手札に最上級モンスターを握ってやがったのか。」


夏武斗「どーするおっさん？まだ攻撃残ってるぜ？」


猪狩「くそっ！ターンエンドだ！」


夏武斗「へへっ、俺のターン！ドロー！」


夏武斗「さてと、そろそろこっちも行かせてもらうぜ！俺は『スパイダー・スパイダー』を召喚！」星４・ＡＴＫ１５００


夏武斗「バトルだ！ドン・ヘラクレスでアンカースローマンを攻撃！ギガントホーン・タックル！」


猪狩「ぐっ…！」ＬＰ２９００→２５００


夏武斗「そしてスパイダー・スパイダーであらくれパイレーツを攻撃！」


猪狩「くそっ！あらくれパイレーツの効果発動！」ＬＰ２５００→２３００


猪狩「このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからあらくれパイレーツを特殊召喚する！」


猪狩「おら！２体目だ！」星３・ＡＴＫ１３００


夏武斗「へぇ、おっさんもやるじゃん。ターンエンド。」


船員「猪狩さんとまともにやりあうなんて…なんなんだこいつ。」


猪狩「こんのガキゃあ…一回痛い目見ねえと分からねえみてえだな…。ドロー！」


猪狩「俺は装備魔法カード！『グレート・ソード』を発動！こいつをあらくれパイレーツに装備するぜ！」


猪狩「装備モンスターの攻撃力は３００ポイントアップだ！」ＡＴＫ１３００→１６００


夏武斗「装備魔法か…でもまだドン・ヘラクレスは全然足りないぜ？」


猪狩「ふうん…グレート・ソードにはもう一つの効果があるんだよ！」


夏武斗「もう一つの効果？」


猪狩「戦士族モンスターをアドバンス召喚する場合、グレート・ソードを装備したモンスターを１体で２体分のリリースにできる！」


猪狩「俺はあらくれパイレーツをリリース！」


猪狩「さあ来い！アドバンス召喚！『剛腕船長 ウルガーリ』！」星８・ＡＴＫ３０００
マッスルな船長のモンスター。髭ゴジラ


船員「よしきた！猪狩さんのエースだ！」


夏武斗「攻撃力３０００のモンスター！？」


猪狩「バトルフェイズだ！ウルガーリでドン・ヘラクレスを攻撃！カリバーン・オブ・パイレーツ！」


夏武斗「くっ！」ＬＰ２１００→１８００


夏武斗「この瞬間、ドン・ヘラクレスの効果発動！墓地から他の昆虫族１体を特殊召喚する！」


夏武斗「俺は墓地から代打バッターを………！」


猪狩「おお～っと！小細工は無しだぜ坊主！カウンター罠発動！『デッド・アンカー』！」


猪狩「墓地のモンスターを対象とする効果を無効にし破壊する！」


猪狩「虫けらはおとなしく墓場で眠ってな！」
フィールドに復活しかけた代打バッターが不気味な錨に繋がれ再び墓地へ引きずりおろされる。


夏武斗「代打バッター！！くっそぉ！！」


猪狩「まだだ！ウルガーリは攻撃後に手札１枚を捨てる事でもう１度だけ追加攻撃できる！」


猪狩「次はそいつだ！スパイダー・スパイダーに攻撃！」


夏武斗「ぐあああ！！！」ＬＰ１８００→３００


猪狩「がっはっは！！虫使いだけにもう虫の息だな！これでターンエンドだ。」


猪狩「さあどうする？サレンダーするかあ？がっはっは！！それでも御上には突き出してやるがな！」


夏武斗「へへ…。」


猪狩「…ん？」


夏武斗「ふふ…ふ…ふふふ…。」


船員「！？」


夏武斗「っはっはっはっはっはっは！！！」


船員「こ、こいつ…！」


猪狩「笑ってやがる…。」


船員「この状況で…どうしちまったんだ！？おかしくなったか？」


夏武斗「強え！流石上波町のデュエリストだぜ！この町にはこんな強い奴が沢山いるんだなあ！！」


夏武斗「なんかもう…なんつうか、すっげぇワクワクしてきた！」


猪狩「ケッ！どんなにヘラヘラしたとこでてめぇに勝ち目はねえんだよ！」


船員「そ、そうだそうだ！現実逃避してんじゃねぞ！」


夏武斗「いんや？現実逃避なんかじゃないぜ？」


夏武斗「笑顔は勝利を運んでくるんだ。俺はまだ勝つ事を諦めてなんかいない。」


船員「な、何言ってんだこいつ…。」


猪狩「ほぉ…じゃあ呼んでみろよ！笑顔で勝利をな！」


夏武斗「よし！いっくぜえええ！笑顔１００倍突き進む！」





夏武斗「笑う門には………ヴィクトリイイイィィィ！！！」





夏武斗「俺のターン！ドロー！」








ドローカードﾁﾗｯ



夏武斗「よっし来たああ！俺は！『ビートルーパー』を召喚！」星３・ＡＴＫ１５００
馬ではなく大きなカブトムシに乗った騎兵のモンスター


夏武斗「ビートルーパーの効果発動！このカードの召喚に成功した時、手札か墓地からレベル３以下の昆虫族モンスター１体を特殊召喚できる！」



夏武斗「この効果で手札から更にモンスターを召喚するぜ！」



猪狩「レベル４以下か、今度はさっきみたいなデカ物は出せないぜ！どうする気だ小僧！」


夏武斗「へへっ！俺が特殊召喚するのは、チューナーモンスター『スワローテイル・フェアリー』！」星２・ＡＴＫ８００
揚羽蝶の羽を持つ妖精モンスター。


猪狩「チューナーモンスター！？こいつまさか！？」


夏武斗「俺はレベル３のビートルーパーにレベル２のスワローテイル・フェアリーをチューニング！」



鋼をも断ち切る一対の刃振りかざし！大地の果てまで突き進め！



シンクロ召喚！



来い！『突甲戦士 ギラファイター』！星５・ＡＴＫ２０００



遊星のウォリアー系に近いデザインのクワガタ戦士モンスター。
船員「シ、シンクロ使いだったのか…！」


猪狩「だ、だが攻撃力は俺のウルガーリの方が上だ！」


夏武斗「俺は装備魔法、『アブソーブ・ウィップ』を発動！」
不思議な光を纏った触手。


夏武斗「このカードを装備したモンスターが自身より高い攻撃力を持つモンスターに攻撃する時、相手モンスターから攻撃力を１０００ポイント吸収する！」


猪狩「きゅ、吸収だとおおお！！？」


夏武斗「このまま攻撃だ！ギラファイターで剛腕船長 ウルガーリを攻撃！」


夏武斗「この瞬間！アブソーブ・ウィップの効果発動！ウルガーリの攻撃力を吸収する！」ＡＴＫ３０００→２０００


夏武斗「いっけえええ！ギラファイター！クラッシャーダイブ！！！」ＡＴＫ２０００→３０００


猪狩「俺の…剛腕船長 ウルガーリが！」ＬＰ２３００→１３００


猪狩「ちくしょお…次のターンでお前を…！」


夏武斗「残念ながら次は無いぜ。」


猪狩「！？」


夏武斗「突甲戦士 ギラファイターのモンスター効果発動！このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、このカードの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える！」


猪狩「何っ！攻撃力の半分…ということは！！」


夏武斗「１５００ポイントのダメージを受けてもらうぜ！メンダブル・パワーフォース！」
プレイヤーへ特攻するギラファイター


猪狩「ぐわあああぁぁぁ！！！」ＬＰ１３００→０




ＷＩＮ・夏武斗




船員「マジで猪狩さんに勝ちやがった…」


猪狩「………」


船員「猪狩…さん？」


夏武斗「あれ？おっさん？」


猪狩「……ふ」


猪狩「ふはははハハハ！！！」


猪狩「小僧！やっぱり面白いじゃねえかお前！あの状況から切り換えされるなんざ思わなかったぜ！」


猪狩「約束だ。見逃してやっから誰か他のが来る前にとっとと行っちまいな。出口は分かんな？」


夏武斗「ああサンキュなおっさん！また今度デュエルしようぜ！」
立ち去る夏武斗




船員「大丈夫なんすか？突き出さなくて…？」


猪狩「大丈夫だよ。ホントにコソ泥だってんなら話は別だが、アイツはただの度の過ぎたうっかりボーイだ。見なかったことにしてもなんともねえ。」


船員「度が過ぎ過ぎじゃないすかね…？」


猪狩「…まぁ普通客船と貨物船間違えねぇわな。」


猪狩「ま、久し振りに面白えデュエルができたし良しとすっか。おめえも深追いしてやんじゃねえぞ。」


船員「りょーかいです。俺も良いもん見せて貰いましたし。」


猪狩「おいおいｗそんなに良かったのか？」


船員「いやデュエルもなんですけど………猪狩さんが負けたとこ。……俺いっつも負けてるんで。なんか…新鮮っつーか」


猪狩「てんめコラ！歯ァ食いしばれえええ！！！」


船員「ちょ！キレないでくださいよおおお！！！」





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（上波町・港）

夏武斗「ふう…一時はどうなるかと思ったけど、良いおっさんで良かったぜ。」


夏武斗「さて…と」


夏武斗「はるばる来たぜ上波町！待ってろよ～アストベリー杯！！」


夏武斗「よし！行くか！」



終











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次回予告

夏武斗「よっしゃあ！やってきたぜ上波町！」


夏武斗「って…ここどこだ？」


猪狩「あのうっかりボーイ…家に辿り着けるのかねぇ？」


船員「…なんか駄目な気がします。」


夏武斗「おお！なんかデュエルやってる！って、えっ！？負けたらデッキを奪われる！？そんなの見過ごせるか！俺がとっちめてやるぜ！」


夏武斗「次回！『寡黙なる雇われデュエリスト』」


夏武斗「ん？雇われデュエリストってなんだ…？」

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・初めて書いたオリジナル遊戯王ＳＳです。願わくば定期的に書いていきたいです。宜しくお願いします。ご意見ご感想等ございましたらコメントして頂けると嬉しいです。

・デュエル構成においての代打バッターの使いやすさは異常。そりゃアニメにも度々出てくるわけだ…。

・作中の装備魔法『グレート・ソード』はアニメＧＸにて五階堂が使用したカードです。覚えてた人は尊敬します。